梅の栄養と効果効能・調理法・保存法

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梅

梅の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、梅に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

梅とは

梅(plum)は、バラ科サクラ亜科サクラ属スモモ亜属の木になる果実です。スモモ亜属には、他にスモモとアンズがあります。

疲労回復や殺菌効果のあるクエン酸や、カルシウムやマグネシウムをはじめとしたミネラルを豊富に含み、昔から「一日一粒で医者いらず」と言われるほど、健康食材として日本人に親しまれてきました。

梅の原産地は諸説ありますが有力なのは中国中部で、日本に伝わってきたのは奈良時代だと言われています。

日本最古の歌集「万葉集」には、全部で約4,500首の作品がのっていますが、そのうち約120首は梅を素材に詠まれています。

スーパーなどで見かける、赤しそと一緒に漬けた「赤梅干し」が登場したのは、江戸時代の中期です。それまで梅干しは貴重なものでしたが、この頃から一般的に食べられるようになりました。

旬は、夏が始まる前の梅雨の時期(5〜6月)です。未熟な青梅は梅酒や梅シロップに、完熟の梅は梅干しなどに加工されます。

梅の品種・種類

梅の品種は500種以上あるとされています。その中から代表的な品種を紹介します。

南高梅(なんこうばい・なんこううめ)

南高梅は、梅の生産量全国1位である和歌山県の代表的な品種です。

大きい実、小さな種、薄い皮、柔らかい果肉という特徴があり、梅酒や梅干し、甘露煮など、何にでも使える梅です。

古城(こじろ)

古城は、南高梅と同様に和歌山県の代表的な品種です。別名「青いダイヤ」とも呼ばれています。

南高梅に比べて小さく、実がしっかりと硬いため、主に梅酒や梅シロップに適しています。

白加賀梅(しろかがうめ・しらかがうめ)

白加賀梅は、奈良県と茨城県の代表品種です。江戸時代から栽培されており、生産量の多い梅のひとつ。

果肉は繊維が少なく肉厚で、梅酒や梅干しに向いています。

竜峡小梅(りゅうきょうこうめ)

竜峡小梅は、おもに長野県の下伊那地方で栽培されている品種です。小梅の中では1位の生産量を誇ります。

種が小さく、カリカリ梅干に利用される梅です。

甲州小梅(こうしゅうこうめ)

甲州小梅は、山梨県を代表する品種です。小梅の中では種が小さく、果肉が厚いという特徴があります。

竜峡小梅と同様に、カリカリ梅干に加工されます。

梅に含まれる成分・栄養素

梅100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

食品名単位梅 生梅漬 塩漬梅漬 調味漬梅干し 塩漬梅干し 調味漬梅びしおうめジュース(果汁20%)梅酒
廃 棄 率%1515202025000
エネルギー(kcal)kcal/100 g282453339620049156
エネルギー(kJ)kJ/100 g117100222138402837205653
水 分g/100 g90.472.380.265.168.742.487.668.9
たんぱく質g/100 g0.70.71.50.91.50.7Tr0.1
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g0.4-0.4--0.5----
脂 質g/100 g0.50.40.50.20.60.5TrTr
トリアシルグリセロール当量g/100 g-0.4-0.3-0.4-0.1-0.4-0.4--
飽和脂肪酸g/100 g-0.03-0.02-0.03-0.01-0.04-0.03--
一価不飽和脂肪酸g/100 g-0.24-0.19-0.24-0.1-0.29-0.24--
多価不飽和脂肪酸g/100 g-0.08-0.06-0.08-0.03-0.09-0.08--
コレステロールmg/100 g0000000-
炭水化物g/100 g7.96.710.510.521.148.112.320.7
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g--------
水溶性食物繊維g/100 g0.91.11.21.41.30.50.1-
不溶性食物繊維g/100 g1.61.62.22.21.20.80-
食物繊維総量g/100 g2.52.73.43.62.51.30.1-
灰 分g/100 g0.519.97.323.38.18.30.10.1
ナトリウムmg/100 g276002700870030003100354
カリウムmg/100 g2401501004401301903039
カルシウムmg/100 g12478765252711
マグネシウムmg/100 g8322634151122
リンmg/100 g14151721151923
mg/100 g0.62.91.212.470.2Tr
亜鉛mg/100 g0.10.10.10.10.1TrTrTr
mg/100 g0.050.110.070.110.050.050.010.01
マンガンmg/100 g0.070.210.070.230.10.10.010.01
ヨウ素µg/100 g0--3---0
セレンµg/100 g0--0---0
クロムµg/100 gTr--3---1
モリブデンµg/100 g1--1---Tr
レチノールµg/100 g00000000
α-カロテンµg/100 g7-0000--
β-カロテンµg/100 g220-27744Tr--
β-クリプトキサンチンµg/100 g30-01700--
β-カロテン当量µg/100 g240827834TrTr0
レチノール活性当量µg/100 g20127Tr000
ビタミンDµg/100 g0000000-
α-トコフェロールmg/100 g3.31.40.20.30.20.10.1-
β-トコフェロールmg/100 g00.100.10Tr0-
γ-トコフェロールmg/100 g22.11.21.81.50.90.1-
δ-トコフェロールmg/100 g00.10.10.10.100-
ビタミンKµg/100 g0000000-
ビタミンB1mg/100 g0.030.020.030.020.010.0300
ビタミンB2mg/100 g0.050.040.030.010.010.0300.01
ナイアシンmg/100 g0.40.30.10.40.10.20Tr
ビタミンB6mg/100 g0.060.060.020.050.030.020.010.01
ビタミンB12µg/100 g00000000
葉酸µg/100 g81210000
パントテン酸mg/100 g0.350.20.070.120.04000
ビオチンµg/100 g0.5--0.7---0.1
ビタミンCmg/100 g60000000
食塩相当量g/100 g019.36.922.17.67.90.10
アルコールg/100 g-------10.2
硝酸イオンg/100 g--------
テオブロミンg/100 g--------
カフェインg/100 g--------
タンニンg/100 g--------
ポリフェノールg/100 g--------
酢酸g/100 g--------
調理油g/100 g--------
有機酸g/100 g--------
重量変化率%--------
備考未熟果(青梅)廃棄部位: 核廃棄部位: 核廃棄部位: 核廃棄部位: 核廃棄部位: 核(100 g: 96.2 mL、100 mL: 103.9 g)アルコール: 13.0 容量 %
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

梅の効果・効能

梅に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

クエン酸:疲労回復・食欲増進に効果的

梅干しには「クエン酸」が豊富に含まれており、疲労回復に効果があります。

身体の疲れの原因は乳酸です。乳酸が体内にたまると、だるさや肩こりなどの症状を引き起こします。

クエン酸は、乳酸を体外に排出するのを促す効果があり、また乳酸をエネルギー源に変える働きもあるため、疲労回復に役立つのです。

また、クエン酸は唾液の分泌を促して、食欲を増進させる効果もあります。さらに、胃液や消化酵素の分泌を高めて消化吸収を助けてくれるので、夏バテや風邪などで食欲が落ちている時に食べると良いでしょう。

梅リグナン(ポリフェノール):強い抗酸化作用

梅に含まれる「梅リグナン」は、ポリフェノールの一種です。

強い抗酸化作用があり、活性酸素の発生によるがんなどの生活習慣病を予防したり、細胞を若々しく保って老化を予防したり、といった効果があります。

カリウム:むくみを予防する

梅に含まれる「カリウム」は、細胞の浸透圧を調節して血圧を下げる、筋肉と心筋の活動を正常に保つ、体内にある過剰な水分(ナトリウム)を排出してむくみを予防する、などさまざまな効果があります。

鉄:貧血を予防する

鉄は人体に必須のミネラルのひとつで、体中に酸素を行き渡らせてエネルギー代謝を促す、二酸化炭素を回収して肩コリを予防する、赤血球の材料になり貧血を予防する、新陳代謝を促して肌のシミ・シワを予防する、といった効果があります。

梅干しの調理方法

梅干しの栄養素を損なわない洗い方や調理方法を解説します。

梅干しのおすすめ調理方法

梅干しに含まれる「バニリン」は、脂肪燃焼作用があると言われています。

和歌山県に住む女性201名を対象にした調査では、紀州梅干しを毎日食べている人は、食べていない人に比べてBMI値が低い結果が出たという報告があります。

これは、バニリンが脂肪細胞に刺激を与え、脂肪細胞が燃焼することが影響していると考えられます。

バニリンは加熱調理すると増加する性質を持っているので、炊き込みご飯や焼き梅干しにして食べると効率的に摂取できるでしょう。

梅干しを食べる際の注意点

梅干しは梅を塩に漬けているため、多くの塩分を含んでいます。

1日あたりの食塩摂取量の目安は、男性で7.5g未満、女性で6.5g未満とされており、梅干し1粒で約1/3日分の塩分を摂取する計算になります。

特に血圧を気にする方や、塩分制限がある方は、1日1粒にとどめておきましょう。

梅の保存方法

梅の栄養素を損なわない保存方法を解説します。

生の梅の保存方法

生の梅は痛みやすく、買ったままの状態で置いておくとカビが生えてしまいます。まだ青い梅の場合、冷暗所で追熟させるか、冷凍保存するようにしましょう。冷蔵保存すると、低温障害を起こして風味を損なってしまいます。

冷凍保存の場合は、まず梅を水につけてアクを抜きましょう。青梅は一晩程度、完熟した梅はアク抜きの必要はありません。

竹串などでヘタを取り除き、水気をキッチンペーパーなどで丁寧に拭き取ります。最後に冷凍用保存袋に入れて、空気を抜いて口を閉じ、冷凍庫に入れます。

梅干しの保存方法

梅干しは塩分濃度によって保存方法が変わります。昔ながらの塩辛い梅干しは、塩分濃度が20%以上あり、常温での長期保存が可能です。

スーパーで見かける「しそ梅」「かつお梅」「はちみつ梅」といった調味梅干しは塩分濃度が8〜10%と低く、冷蔵庫で保存しないと傷んでしまいます。また、開封後はできるだけ早く食べ切るようにしましょう。

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