柿の栄養と効果効能・調理法・保存法

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persimmon

柿の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、柿に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

柿とは

柿(persimmon)は、カキノキ科カキ属の落葉樹であるカキノキになる果実です。種を除いた果肉を生で食べるほか、乾燥させて干し柿にすることもできます。

柿の原産地は中国と考えられ、日本や朝鮮半島などの東アジアで古くから栽培されてきました。日本で品種改良された柿がヨーロッパやアメリカに広まったため、世界中で「KAKI」と呼ばれています。

柿は、日本人にとって馴染み深いフルーツで、日本の国果にも指定されています。縄文・弥生時代の遺跡から柿の種が出土するなど、古くから柿が食べられていたことを示す証拠も見つかっています。

「柿が赤くなると医者が青くなる」という言葉があるほど、柿の栄養価は高く、ビタミンやミネラルなどの栄養成分を豊富に含んでいます。

秋の果物である柿の旬は、10~12月です。柿は、日本全国で栽培されていますが、出荷量が多いのは和歌山県や奈良県です。

柿の品種・種類

柿は、甘柿と渋柿の2種類に分けられます。甘柿と渋柿のそれぞれの利用方法や代表品種は以下の通りです。

甘柿

甘柿は、熟すにつれて渋味が抜けて甘くなる柿で、生食に向いた種類です。

甘柿には完全甘柿と不完全甘柿の2つのタイプがあります。完全甘柿は、種が入っても入らなくても渋味が抜けて甘くなる品種です。柿のなかでも甘みが強いのが特徴で、富有柿や次郎柿などの品種がよく知られています。

一方、不完全甘柿は、種が多く入ると渋味が抜ける種類で、渋味のあるものは渋抜きしてから出荷されます。西村早生や禅寺丸柿が不完全甘柿の代表的な品種です。

渋柿

渋柿は、渋味や苦味が強く、そのままでは生食に向かない種類です。炭酸ガスやアルコールを利用して渋抜きするか、干し柿にして渋味を抜いてから食べられます。

渋柿には、種が入っても渋い完全渋柿と、種の周辺だけ甘くなる不完全渋柿の2種類があります。完全渋柿としてよく知られている品種は愛宕柿・西条柿で、不完全渋柿の代表品種は刀根早生・平核無柿などです。

干し柿

干し柿は、渋柿を乾燥させた食品です。渋柿には乾燥させることで渋味が抜けて、甘みが強くなる性質があります。

成分が濃縮された渋柿は、食物繊維やミネラルなどの栄養素を生の柿より効率良く摂取できます。ただし、生柿よりカロリーも高くなるため、ダイエット中の食べ過ぎには注意が必要です。

干し柿には、あんぽ柿・枯露柿・市田柿・吊るし柿など、製造方法や水分含有量が異なるいくつかの種類があります。

甘柿と渋柿の違い

甘柿と渋柿の違いは、渋味成分であるタンニン(シブオール)が口の中で溶けるか溶けないかです。

甘柿に含まれるタンニンは、果実が熟すにつれて可溶性タンニンから不溶性タンニンに変化します。口に含んでもタンニンが溶けないので、渋味を感じにくくなります。

一方、渋柿には水に溶けやすい可溶性タンニンが含まれており、口の中で渋味成分が溶けることで苦味を感じるのです。

柿に含まれる成分・栄養素

柿100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

食品名単位甘がき 生渋抜きがき 生干しがき
廃 棄 率%9158
エネルギー(kcal)kcal/100 g6063276
エネルギー(kJ)kJ/100 g2512641155
水 分g/100 g83.182.224
たんぱく質g/100 g0.40.51.5
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g0.3-0.3-1
脂 質g/100 g0.20.11.7
トリアシルグリセロール当量g/100 g0.1(Tr)-0.8
飽和脂肪酸g/100 g0.02-0.01-0.15
一価不飽和脂肪酸g/100 g0.04-0.02-0.36
多価不飽和脂肪酸g/100 g0.03-0.01-0.22
コレステロールmg/100 g000
炭水化物g/100 g15.916.971.3
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g13.313.7-
水溶性食物繊維g/100 g0.20.51.3
不溶性食物繊維g/100 g1.42.312.7
食物繊維総量g/100 g1.62.814
灰 分g/100 g0.40.31.5
ナトリウムmg/100 g114
カリウムmg/100 g170200670
カルシウムmg/100 g9727
マグネシウムmg/100 g6626
リンmg/100 g141662
mg/100 g0.20.10.6
亜鉛mg/100 g0.1Tr0.2
mg/100 g0.030.020.08
マンガンmg/100 g0.50.61.48
ヨウ素µg/100 g00-
セレンµg/100 g00-
クロムµg/100 g10-
モリブデンµg/100 g1Tr-
レチノールµg/100 g000
α-カロテンµg/100 g171115
β-カロテンµg/100 g160100370
β-クリプトキサンチンµg/100 g5003802100
β-カロテン当量µg/100 g4203001400
レチノール活性当量µg/100 g3525120
ビタミンDµg/100 g000
α-トコフェロールmg/100 g0.10.20.4
β-トコフェロールmg/100 g00Tr
γ-トコフェロールmg/100 g000
δ-トコフェロールmg/100 g000
ビタミンKµg/100 g000
ビタミンB1mg/100 g0.030.020.02
ビタミンB2mg/100 g0.020.020
ナイアシンmg/100 g0.30.30.6
ビタミンB6mg/100 g0.060.050.13
ビタミンB12µg/100 g000
葉酸µg/100 g182035
パントテン酸mg/100 g0.280.270.85
ビオチンµg/100 g21.1-
ビタミンCmg/100 g70552
食塩相当量g/100 g000
アルコールg/100 g---
硝酸イオンg/100 g---
テオブロミンg/100 g---
カフェインg/100 g---
タンニンg/100 g---
ポリフェノールg/100 g---
酢酸g/100 g---
調理油g/100 g---
有機酸g/100 g---
重量変化率%---
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

柿の効果・効能

柿に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

柿タンニンは生活習慣病や感染症の予防に効果的

柿の渋味成分であるタンニンは、植物性ポリフェノールの一種です。柿タンニンは、抗酸化作用・抗ウイルス作用・消臭作用などさまざまな効能がある栄養成分として注目されています。

柿タンニンをはじめとするポリフェノールは、若々しく健康な体の維持を助ける抗酸化物質です。抗酸化物質とは、体に害を及ぼす活性酸素を除去し、がん・生活習慣病や老化を予防する栄養素のことです。

また、渋柿由来のタンニンには強力な抗ウイルス作用があり、インフルエンザウイルスやノロウイルスを抑制する効果も研究で証明されました。

さらに、タンニンを含む柿の抽出物の摂取が、健康な成人の口臭および便臭を減少させたという実験結果も発表されています。

美白・美肌効果が期待できるビタミンC

ビタミンCは、野菜や果物に多く含まれる水溶性ビタミンの一種です。生活習慣病の予防や免疫力の維持などさまざまな効能があるビタミンCは、人間の体内で作り出せないため、食品やサプリメントから摂取する必要があります。

ビタミンCには肌のハリツヤを維持するコラーゲンの生成を促す機能や、シミの原因となるメラニン色素を抑制する働きがあり、美容成分としても利用されています。

柿のビタミンC含有量は、果物類のなかでもトップクラスの多さ。柿1個(約200g)で1日の推奨摂取量のビタミンCを補うことができます。

ビタミンCを特に多く含むのは甘柿なので、美肌効果を期待する場合は甘柿を選ぶようにしましょう。一方、柿のビタミンCは、干し柿にすることで大幅に失われてしまいます。ビタミンCを多く摂りたいときは、干し柿より生柿がおすすめです。

カリウムで高血圧や動脈硬化を改善

柿には多くのミネラル類が含まれています。特に柿に豊富なのは、高血圧の改善に効果的なカリウムです。

カリウムは、人間の体に必要なミネラルのひとつで、細胞内液の浸透圧を調節する機能があり、余分な塩分を体外に排出しやすくします。塩分の摂りすぎが一因となる高血圧や動脈硬化の予防・改善に効果的な栄養素です。

カリウムは、甘柿よりも渋柿に多く含まれており、干し柿には生柿の3倍以上のカリウムが含まれています。塩分の多い食事のあとのデザートとして食べるには、渋抜き柿や干し柿がおすすめです。

便秘改善に効果的な食物繊維

食物繊維は、人間の消化酵素で分解できない栄養素です。便秘・下痢を改善する整腸作用のほか、コレステロールや血糖値の上昇を抑える効能などさまざまな健康効果があります。

食物繊維には、腸のぜん動運動を促して便通を改善する効果のある不溶性食物繊維と、善玉菌のエサとなり腸内環境を整える水溶性食物繊維の2種類があります。

柿には不溶性食物繊維・水溶性食物繊維のどちらも含まれていますが、便秘改善効果を見込める不溶性食物繊維が特に豊富です。食物繊維を効率的に摂取できるのは干し柿なので、便秘対策は干し柿を積極的に摂るようにしましょう。

柿の食べ方

柿の栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

栄養豊富な柿の皮・葉も活用する

果肉だけでなく、柿の皮や葉にも多くの栄養素が含まれています。

柿の皮には食物繊維やポリフェノールなどが豊富。より多く柿の栄養を摂りたいときは、皮も捨てずに果実と一緒に食べてみてください。

また、柿の葉には非常に多くのビタミンCが含まれています。ビタミンCの作用による美肌・美白効果を期待するときは、柿の葉茶を飲んでみましょう。

柿を加熱すると栄養価がアップする

柿を加熱すると、GABAやシトルリンなどのアミノ酸が大幅に増加することが近年の研究でわかってきました。ストレス軽減効果が期待されるGABAは約3倍、血流を促進するシトルリンは約2倍に増加します。

柿に含まれるアミノ酸を効率的に摂りたいときは、オーブントースターで生の果実を焼く「焼き柿」や、加熱してジャムやペーストに加工するのがおすすめです。

柿の食べ過ぎは胃石症を引き起こすことも

柿に含まれるタンニンを摂りすぎると、胃石ができる場合があるので注意が必要です。柿の渋味成分であるタンニンには、胃酸と混ざることで食物繊維を石のように固まらせる性質があります。

1日あたり2~3個の柿を食べ続けたことで柿胃石を発症した例もあるため、1日に食べる柿は多くても2個程度にとどめておきましょう。柿胃石にはコーラを飲む療法が有効とも言われていますが、体調に異変を感じたら速やかに医療機関を受診してください。

また、タンニンを過剰に摂取すると便秘を引き起こすことも。便秘改善に有効な食物繊維を多く含む柿ですが、食べ過ぎると逆効果となる可能性があります。

柿の保存方法

柿の栄養素を損なわない保存方法を解説します。

ヘタの乾燥を防ぐと長持ちする

生の柿は、ビニール袋に入れて常温または冷蔵庫で保存できます。完熟していない硬い柿は、常温の環境に数日置いて食べごろまで追熟させましょう。

柿の果実は、ヘタの部分を湿らせておくと長持ちします。冷蔵保存する場合、水を含んだキッチンペーパーを小さく折りたたんでヘタを覆い、ラップに包んでヘタが乾くのを予防しましょう。冷蔵庫に入れるときは、ヘタを下にして置くと乾燥しにくくなります。

完熟した柿を冷凍すればシャーベットとして楽しめる

食べきれずに余ってしまった柿は、冷凍保存するのがおすすめです。一つひとつラップで包んで冷凍用保存袋に入れて凍らせます。

完熟した柿を冷凍すると、半解凍の状態でシャーベットのように食べられます。

参考文献

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