アスパラガスの栄養と効果効能・調理法・保存法
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アスパラガスの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、アスパラガスに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
アスパラガスとは
アスパラガスは、ユリ科アスパラガス属の野菜。英語では「asparagus」と表記します。可食部は、地上に伸び出てくる茎の部分です。
原産地は南ヨーロッパからロシア南部とされており、その地域では古くからアスパラガスが自生しています。食用として栽培され始めたのは紀元前200年頃のギリシャやローマで、日本には江戸時代後半に伝わってきました。
当初は観賞用でしたが、大正時代以降に本格的に栽培を開始。当時はホワイトアスパラガスが主に栽培され、ほとんどは缶詰に加工されて流通していました。
アスパラガスの旬は5〜6月。日本国内では、長野県や佐賀県、栃木県、北海道などで生産されています。
アスパラガスの品種・種類
アスパラガスには緑色のものと白色のものがあります。緑色のグリーンアスパラガスと、白色のホワイトアスパラガスは、栽培方法が違うだけで同じ種類の野菜です。
グリーンアスパラガス
グリーンアスパラガスは、市場で最も流通しているアスパラガスです。名前の通り茎が緑色で、歯ごたえと甘みがあります。ハウスものの旬は4月下旬〜5月下旬、路地ものは5月中旬〜6月です。
グリーンアスパラガスは芽が出た後、そのままにして育てるため、日光によって葉緑素がたくさん作られるため緑色になります。
ホワイトアスパラガス
ホワイトアスパラガスはグリーンアスパラガスと品種は同じですが、土をかぶせて太陽光をあてないようにして育てる(軟白栽培)ため、葉緑素が作られず茎も穂先も白くなるのが特徴です。
缶詰用に加工されたものは柔らかいですが、生のホワイトアスパラガスは皮がかたいため、剥いてから調理します。
ミニアスパラガス
ミニアスパラガスは、グリーンアスパラガスを長さ10cmほどの若いうちに収穫したものです。
流通しているほとんどのミニアスパラガスが、タイなど海外から輸入されたもの。火の通りが早く、皮まで柔らかく食べやすいため、皮を剥いたりといった下ごしらえが不要で調理が楽になります。
パープルアスパラガス
パープルアスパラガスは、名前の通り茎や穂先が紫色をしているのが最大の特徴です。形や大きさはグリーンアスパラガスとほとんど差がありません。
紫色の色素はブルーベリーなどに含まれる「アントシアニン」というポリフェノールの一種です。
アスパラガスに含まれる成分・栄養素
アスパラガス100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | アスパラガス 若茎 生 | アスパラガス 若茎 ゆで | アスパラガス 若茎 油いため | アスパラガス 水煮缶詰 |
廃 棄 率 | % | 20 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 22 | 24 | 57 | 22 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 92 | 100 | 239 | 92 |
水 分 | g/100 g | 92.6 | 92 | 88.3 | 91.9 |
たんぱく質 | g/100 g | 2.6 | 2.6 | 2.9 | 2.4 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 1.8 | -1.8 | -2 | -1.6 |
脂 質 | g/100 g | 0.2 | 0.1 | 3.9 | 0.1 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | -0.2 | -0.1 | -3.7 | -0.1 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.07 | -0.02 | -0.31 | -0.02 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0 | 0 | -2.19 | (Tr) |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.08 | -0.05 | -1.06 | -0.04 |
コレステロール | mg/100 g | Tr | Tr | (Tr) | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 3.9 | 4.6 | 4.1 | 4.3 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | 2.1 | -2.3 | -2.3 | -2.3 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.4 | 0.5 | 0.4 | 0.4 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 1.4 | 1.6 | 1.7 | 1.3 |
食物繊維総量 | g/100 g | 1.8 | 2.1 | 2.1 | 1.7 |
灰 分 | g/100 g | 0.7 | 0.7 | 0.8 | 1.3 |
ナトリウム | mg/100 g | 2 | 2 | 3 | 350 |
カリウム | mg/100 g | 270 | 260 | 310 | 170 |
カルシウム | mg/100 g | 19 | 19 | 21 | 21 |
マグネシウム | mg/100 g | 9 | 12 | 10 | 7 |
リン | mg/100 g | 60 | 61 | 66 | 41 |
鉄 | mg/100 g | 0.7 | 0.6 | 0.7 | 0.9 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.5 | 0.6 | 0.5 | 0.3 |
銅 | mg/100 g | 0.1 | 0.13 | 0.11 | 0.07 |
マンガン | mg/100 g | 0.19 | 0.23 | 0.22 | 0.05 |
ヨウ素 | µg/100 g | 1 | - | - | - |
セレン | µg/100 g | 0 | - | - | - |
クロム | µg/100 g | 0 | - | - | - |
モリブデン | µg/100 g | 2 | - | - | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 5 | 2 | 4 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 370 | 360 | 370 | 7 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 9 | 8 | 11 | 0 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 380 | 370 | 380 | 7 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 31 | 30 | 31 | 1 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 1.5 | 1.6 | 2 | 0.4 |
β-トコフェロール | mg/100 g | Tr | 0 | Tr | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0.2 | 0.1 | 1.3 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 43 | 46 | 48 | 4 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.14 | 0.14 | 0.15 | 0.07 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.15 | 0.14 | 0.17 | 0.06 |
ナイアシン | mg/100 g | 1 | 1.1 | 1.2 | 1.2 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.12 | 0.08 | 0.11 | 0.02 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 190 | 180 | 220 | 15 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.59 | 0.54 | 0.58 | 0.12 |
ビオチン | µg/100 g | 1.8 | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 15 | 16 | 14 | 11 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0.9 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | Tr | Tr | 0 | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | 3.6 | - |
有機酸 | g/100 g | 0.2 | - | - | - |
重量変化率 | % | - | 96 | 90 | - |
備考 | 試料: グリーンアスパラガス廃棄部位: 株元 | 試料: グリーンアスパラガス株元を除いたもの | 株元を除いたもの | 試料: ホワイトアスパラガス液汁を除いたもの |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
アスパラガスの効果・効能
アスパラガスに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
アスパラギン酸:疲労回復や体調不良の予防に効果的
アスパラギン酸はアミノ酸の一種で、アスパラガスから発見された栄養素です。アスパラギン酸はクエン酸回路に働きかけ、疲労のもととなる乳酸の分解を促す作用があり、疲労回復に効果があります。
また、細胞内液と細胞外液のバランスを整え、体調不良を予防する効果も。人は病気にかかると細胞内のビタミンやミネラルを消費するため、それによって体液のバランスが崩れてしまいます。
これに対してアスパラギン酸は、不足している成分を細胞に運び体液のバランスを整える働きがあるのです。
ビタミンA:皮膚や粘膜、目の健康を維持する
ビタミンAは、皮膚や粘膜を構成する「上皮細胞」の生成に関わりがあり、皮膚の生成や免疫力の維持に重要な栄養素です。
目の網膜にある「ロドプシン」は、光の明暗を感知する働きがあり、ロドプシンの主成分となるのがビタミンAです。そのため、ビタミンAを摂取することで、夜間や暗い場所でも一定の視界を確保することができます。
ビタミンC:免疫力を高める・貧血を予防する・シミを予防する
ビタミンCは体内で作り出すことができないため、食べ物などで外から摂取する必要があります。
ビタミンCは、免疫力を高めて風邪や感染症の予防をする、鉄の吸収を助けて貧血を予防・改善する、ストレスに対抗する機能を持った「ステロイドホルモン」を作ってストレスに強くなる、メラニン色素の生成を抑制してシミやそばかすの発生を予防する、抗酸化作用によって老化を遅らせる(アンチエイジング効果)、といった作用があり、健康・美容面でさまざまな効果を発揮します。
葉酸:胎児の発育リスクを軽減する
アスパラガスに豊富に含まれる葉酸は、ビタミンB群の一種です。葉酸は、DNAの形成に関わる物質(S-アデノシルメチオン)を増やすため、神経閉鎖障害などの胎児の発育リスクを予防します。
神経閉鎖障害は妊娠初期に起こるため、妊娠を控えた女性は妊娠前から摂取することが推奨されています。
また、葉酸は心不全や心筋梗塞、脳梗塞、認知症などのリスクとなる「ホモシステイン」というアミノ酸の代謝に関わっており、これらの病気・障害のリスクを軽減することが期待できます。
ルチン:毛細血管を強くする・血流を促す
ルチンは、アスパラガスの穂先の部分に多く含まれている栄養素です。強い抗酸化作用を持つポリフェノールの一種で、「ビタミンP1」とも呼ばれています。
ルチンは、ビタミンCとともに働き毛細血管を強くすることで出血性の疾患を予防する、毛細血管の弾力性を保って血流を促す、すい臓に働きかけインスリンの分泌を促して糖尿病を予防する、脳細胞の酸化を防いで認知症を予防する、といった効果があります。
アスパラガスの食べ方
アスパラガスの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
アスパラガスの茹で方
アスパラガスは、穂先と茎の部分で固さが異なります。均一にしゃきっとした食感にするために、茎の部分から先に入れます。
沸騰したお湯に塩を入れて、アスパラガスの茎から先に入れ、手で持ちながら20〜30秒ほど茹でます。その後、倒すようにしてアスパラガスを穂先まで入れて2〜3分茹でます。
アスパラガスを調理する際の注意点
アスパラガスには、ビタミンB群やビタミンCなど、水に溶けやすい水溶性の栄養素が含まれています。
それらをなるべく逃さないために、小さく切りすぎず、さっと茹でることが大切です。電子レンジで加熱するのも方法の1つです。
アスパラガスの保存方法
アスパラガスの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
冷蔵保存
冷蔵保存する場合は、保存袋に入れて、畑での向きを同じく立てた状態にして保存しましょう。これは、穂先が起き上がろうとしてエネルギーを消費して鮮度が落ちてしまうのを防ぐためです。
冷凍保存
アスパラガスは生の状態で冷蔵保存するより、冷凍保存した方が保存期間が1〜2日ほど伸びます。
冷凍保存する場合は、まずアスパラガスの切り口を切り落とし、茎の部分の皮を剥きます。アスパラガスを4本ほどラップで包み、冷凍用保存袋に入れて冷凍庫に入れます。
冷凍保存で約3週間保存することができます。