クレアチンの効果・多く含む食品・効率よく摂取する方法
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クレアチンの基本情報、効果・働き、多く含む食品、効率よく摂取する方法、過剰摂取による影響について解説します。
クレアチンとは
クレアチン(creatine)とは、アミノ酸の1種で、エネルギーを産生する際に必要な物質です。クレアチンの98%が筋肉、1.5%は神経系に分布します。
クレアチンの材料になるのは、グリシン・アルギニン・メチオニンの3つのアミノ酸です。腎臓でグリシンとアルギニンからクレアチンのもとになる物質が作られ、肝臓でメチオニンも加わってクレアチンが合成されます。
肝臓から筋肉に運ばれたクレアチンは、エネルギー源を使って、およそ50%がクレアチンリン酸と呼ばれる物質へと変化します。エネルギーを貯めこんだクレアチンリン酸は、もっているリン酸を手放すことでエネルギーを産生する仕組みです。
クレアチンはいわば、エネルギーを貯めこむ器のような役割を果たす物質です。
食品から摂取することも可能で、肉・魚・乳製品に多く含まれていますが、サプリメントとして精製したものも流通しています。
クレアチンと似た栄養素
クレアチンは筋肉を回復させたり、エネルギーを産生したりする効果のある物質です。そのため、筋肉増強に関与するプロテインやBCAA、HMBと同様に、サプリメントも販売されています。
ここでは、クレアチンとプロテイン・BCAA・HMBの違いを解説します。
プロテイン
プロテインとはタンパク質のことで、クレアチンと同じように肉や魚、乳製品に多く含まれる栄養素です。人体の約20%はタンパク質でできており、筋肉や皮膚、髪などを構成しています。
しかし食品には、タンパク質だけでなく脂質や炭水化物も含まれるため、筋肉増強を目的にサプリメントとして摂取するケースもあります。プロテイン製品の主な種類は、以下の通りです。
- ホエイプロテイン
- カゼインプロテイン
- ソイプロテイン(大豆)
タンパク質の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
BCAA
BCAAとは、必須アミノ酸のバリン・ロイシン・イソロイシンのことです。
筋肉を構成するタンパク質内に多く含まれるアミノ酸で、筋タンパク質の合成促進や筋肉の損傷を抑える働きをもっています。クレアチンとは異なり、持久力を維持する効果のある栄養素です。
HMB
HMBとはβ‐hydroxy-β-methylbutyrateの略で、必須アミノ酸であるロイシンが代謝されてできた物質です。細胞分裂に関与し、タンパク質合成を促進する働きをしています。
また身体を構成するタンパク質の分解を抑制したり、エネルギー代謝に関与したりします。プロテインやBCAAに続いて、クレアチンとともに注目されている栄養素です。
クレアチンの効果・働き
クレアチンの効果・効能について解説します。
運動パフォーマンスを向上させる
クレアチンの効果の1つが、運動パフォーマンスの向上です。
日常的に運動をしているアスリートに対し、8週間クレアチンを摂取する実験をおこなったところ、高強度運動のパフォーマンスが向上したとの研究報告があります。高強度運動とは、短距離走や自転車こぎなどの運動です。
ただし、持久力の向上にクレアチンは関与しないことがわかっています。
筋肉量を増加させる
クレアチンの摂取は、運動と一緒におこなうことで、筋力量を増加させる効果をもっています。67~80歳の高齢者に対し、筋力トレーニングとクレアチンサプリの摂取を同時におこなったところ、筋力を高めたとの報告もあります。
ジョギングやジムでのトレーニングなど、運動と併せることでクレアチンによる筋肉量の増加効果を期待できるでしょう。
肉体的・精神的疲労を軽減する
クレアチンには、筋肉疲労を回復させる効果があります。そもそも筋肉の疲労は、筋肉に蓄えられている糖が減少することで起こる仕組みです。そこでエネルギー産生に必要なクレアチンを補うことで、筋肉疲労を軽減する効果があります。
またクレアチンを経口摂取することで、メンタル面での疲労解消に役立ちます。クレアチンは、少量ではあるものの脳神経にも分布している物質です。ストレスや脳機能の亢進など消費されたクレアチンを補うと、精神的な疲労が回復すると考えられています。
睡眠不足下でのパフォーマンスを維持
クレアチンは、睡眠不足時のパフォーマンスの向上効果をもっているとの実験報告※があります。
睡眠不足の状態でクレアチンを摂取したグループと、摂取しないグループにわけて、スポーツでのパフォーマンスを比較した実験です。この実験では、同量のカフェインよりもクレアチンのほうがパフォーマンスに大きな影響を与えたと報告しています。
クレアチンを過剰摂取すると起こる副作用
食品に含まれるクレアチンを過剰に摂取するリスクは低いですが、サプリメントで摂取する場合は過剰摂取に注意しましょう。
クレアチンを過剰摂取すると起こる症状は次の通りです。
- 腎機能障害
- 体重増加
- 脱水症状
- 下痢
クレアチンはクレアチニンと呼ばれる代謝産物へと変わり、腎臓から尿中に排泄される仕組みです。クレアチンを過剰摂取すると、処理をおこなう腎臓に負荷がかかり、腎機能障害のリスクを高めます。
また、クレアチンには血管の水分を筋肉へ移動させる作用があるため、過剰摂取で脱水症状を引き起こす可能性もあります。むくみや体重増加といった症状が現れるリスクもあるため、クレアチンサプリは摂取量を守って摂取しましょう。
クレアチンの1日の摂取目安量
クレアチンの1日の摂取目安量として、厚生労働省が定める基準はありません。
体重70kgの男性は、1日2g程度のクレアチンが必要との研究報告もあります。ただし、クレアチンは体内で生成されるため、必要な量をすべて食品から摂取する必要はありません。
体内に含まれるクレアチン量は120~140gで、そのうち約2gが毎日新しいクレアチンに入れ替わっています。入れ替わる2gのうち、一部は食べ物として摂取されたクレアチンです。
しかしプロのアスリートなど、高強度の運動をおこなう場合は1日摂取量3~5gが推奨されています。一方で前述の通りクレアチンには過剰摂取による副作用もあるため、とくにサプリメントで摂取するときは商品ごとに指定された用法・用量を守りましょう。
クレアチンを多く含む食品
クレアチンを多く含む食品と、食品100gあたりの含有量は次の通りです。
食品名 | クレアチン含有量(g) |
タラ | 0.3 |
ニシン | 0.65~1 |
カレイ | 0.2 |
サケ | 0.45 |
マグロ | 0.4 |
牛肉 | 0.45 |
豚肉 | 0.5 |
牛乳 | 0.01 |
魚類や肉類に多く含まれているのがわかります。クレアチンは100℃以上の加熱によって、より早く代謝物質であるクレアチニンへ変化してしまうとの報告もあります。
そのため、生食可能な魚類は、加熱調理するよりも刺身で食べるほうが効率よくクレアチンを摂取できるでしょう。
クレアチンを効率よく摂取する方法
最後に、クレアチンを効率よく摂取する方法と、一緒に摂取したい栄養素を紹介します。
食後や運動後に摂取する
筋肉増強や疲労解消効果を得たいなら、食後や運動後にクレアチンを多く含む食品やサプリメントを摂取しましょう。
運動で分解促進された筋肉は、運動後に修復しはじめます。運動後のタイミングでクレアチンを摂取すると、筋肉に吸収されやすくなり筋肉量の増加に効果的です。
また、血糖を下げるホルモンであるインスリンがクレアチンの吸収率を高めるため、食後に摂取するのもよいでしょう。食事によって血糖が上がってインスリンが分泌されるのは、食後1~2時間以内です。そのため、クレアチンは食事直後に摂取すると効率よく体内に取り込めます。
ブドウ糖と一緒に摂取すると効果的
食後や運動後以外でクレアチンを摂取するなら、ブドウ糖が多く含まれる食品と一緒に摂るのがおすすめです。ブドウ糖を摂取すると血糖値が上がり、クレアチンの吸収を促進するインスリンが分泌されます。
ブドウ糖は炭水化物の一種で、穀類・いも類・果物に多く含まれています。
炭水化物の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
参考文献
- 日本人の食事摂取基準(2020 年版)|厚生労働省
- 日本食品標準成分表2015年版(七訂)|文部科学省
- 食品成分データベース|文部科学省
- | Linus Pauling Institute | Oregon State University
- 統合医療情報発信サイト「eJIM(イージム)」|厚生労働省
- クレアチン|MDSマニュアル
- クレアチン|SRL
- HMB(β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸)|Abbot
- 長期間のクレアチン摂取が持久的能力に及ぼす影響に関する研究|デサントスポーツ科学(PDF)
- Creatine in Humans with Special Reference to Creatine Supplementation|Sports Medicine(PDF)
- クレアチンリン酸|e-ヘルスネット
- クレアチン|北里大学臨床薬学研究センター
- 加熱によるクレアチンからクレアチニンへの変化に関する速度論的研究|日本食品工業学会誌(PDF)
- IOC consensus statement: dietary supplements and the high-performance athlete|British Journal of Sports Medicine
- Effects of creatine on mental fatigue and cerebral hemoglobin oxygenation|Neuroscience Research(PDF)
- Effects of Creatine, Ginseng, and Astragalus Supplementation on Strength, Body Composition, Mood, and Blood Lipids During Strength-Training in Older Adults|Journal of Sports Science & Medicine
- Skill execution and sleep deprivation: effects of acute caffeine or creatine supplementation - a randomized placebo-controlled trial|Journal of the International Society of Sports Nutrition