グレープシードオイル(ぶどう油)の栄養と効果効能・調理法・保存法
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グレープシードオイルの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、グレープシードオイルに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
グレープシードオイルとは
グレープシードオイル(grapeseed oil)は、ぶどうの種(グレープシード)から抽出したオイルです。味や香りがほとんどないため、素材の味を活かしたい調理に適しています。グレープシードオイルの原料となるぶどうの種は、ワインを蒸留した後に残ったもの。そのためグレープシードオイルは「ワインの副産物」とも称されます。
ワインを蒸留した後のぶどうの種を洗って乾燥し、細かく挽いて圧搾して抽出したものがグレープシードオイルです。ぶどうの種には13%ほどしか油が含まれていないので、イタリア・フランス・スペイン・チリなど、ぶどうを大量に生産・消費する国で生産される傾向にあります。
またあっさりとした使い心地から、料理用オイルとしてだけでなく、マッサージオイルやスキンケア、ヘアケア用のオイルとしても人気を集めています。近年、健康効果や美容効果に注目が集まっていますが、もともとは1930年以降にヨーロッパで製造された歴史ある油です。
ぶどうの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
赤ワインの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
グレープシードオイルの品種による違い
グレープシードオイルはぶどうの種を原料としているため、用いられるぶどうの種類によって成分に多少の違いがあるとされています。
しかし、どのような品種のぶどうの種を用いたグレープシードオイルがどのような特徴を持つか、といったデータは執筆時点で見当たらないため、本稿ではあくまでも「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」に記載された各成分の数値に基づいて解説します。
グレープシードオイルに含まれる成分・栄養素
グレープシードオイル100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。なお比較のため、その他の油脂類の成分表をあわせて並記しています。
食 品 名 | 単位 | ぶどう油 | オリーブ油 | なたね油 | とうもろこし油 | ひまわり油 ハイリノール | ひまわり油 ミッドオレイック | ひまわり油 ハイオレイック | サフラワー油 ハイオレイック | サフラワー油 ハイリノール | ごま油 | あまに油 | えごま油 | |
エネルギー | kcal | 882 | 894 | 887 | 884 | 899 | 892 | 899 | 892 | 883 | 890 | 897 | 897 | |
たんぱく質 | g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | 96.5 | 98.9 | 97.5 | 96.8 | 99.9 | 98.4 | 99.7 | 98.5 | 96.6 | 98.1 | 99.5 | 99.5 |
コレステロール | mg | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | |
脂質 | g | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
g | ||||||||||||||
利用可能炭水化物(質量計) | g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 3.5 | 1.1 | 2.5 | 3.2 | 0.1 | 1.6 | 0.3 | 1.5 | 3.4 | 1.9 | 0.5 | 0.5 | |
* | * | * | * | * | * | * | * | * | * | * | * | |||
食物繊維総量 | g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
糖アルコール | g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | |
炭水化物 | g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
有機酸 | g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | |
灰分 | g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 0 | Tr | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr | 0 | Tr |
カリウム | mg | 0 | 0 | Tr | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr | 0 | Tr | |
カルシウム | mg | 0 | Tr | Tr | Tr | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | Tr | 1 | |
マグネシウム | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr | 0 | Tr | |
リン | mg | 0 | 0 | Tr | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr | Tr | 1 | 0 | 1 | |
鉄 | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.1 | 0 | 0.1 | |
亜鉛 | mg | 0 | 0 | Tr | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr | 0 | 0 | |
銅 | mg | 0.02 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.01 | 0 | 0 | |
マンガン | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.01 | |
ヨウ素 | μg | - | 0 | 0 | 0 | - | - | - | - | - | 0 | - | - | |
セレン | μg | - | 0 | 0 | 0 | - | - | - | - | - | 1 | - | - | |
クロム | μg | - | Tr | 0 | Tr | - | - | - | - | - | 1 | - | - | |
モリブデン | μg | - | 0 | 0 | 0 | - | - | - | - | - | 0 | - | - | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | - | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α|カロテン | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr | |
β|カロテン | μg | 6 | 180 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr | 10 | 22 | |
β|クリプトキサンチン | μg | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 2 | |
β|カロテン当量 | μg | 6 | 180 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr | 11 | 23 | |
レチノール活性当量 | μg | Tr | 15 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | |
ビタミンD | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
α-トコフェロール | mg | 28 | 7.4 | 15 | 17 | 39 | 39 | 39 | 27 | 27 | 0.4 | 0.5 | 2.4 | |
β-トコフェロール | mg | 0.7 | 0.2 | 0.3 | 0.3 | 0.8 | 0.8 | 0.8 | 0.6 | 0.6 | Tr | 0 | 0.6 | |
γ-トコフェロール | mg | 5.8 | 1.2 | 32 | 70 | 2 | 2 | 2 | 2.3 | 2.3 | 44 | 39 | 59 | |
δ-トコフェロール | mg | 1.2 | 0.1 | 1 | 3.4 | 0.4 | 0.4 | 0.4 | 0.3 | 0.3 | 0.7 | 0.6 | 4.6 | |
ビタミンK | μg | 190 | 42 | 120 | 5 | 11 | 11 | 11 | 10 | 10 | 5 | 11 | 5 | |
ビタミンB1 | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンB2 | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ナイアシン | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.1 | 0 | 0 | |
ナイアシン当量 | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.1 | 0 | 0 | |
ビタミンB6 | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | - | |
ビタミンB12 | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | - | |
葉 酸 | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | - | |
パントテン酸 | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | - | |
ビ オ チ ン | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | - | - | - | - | - | 0 | - | - | |
ビタミンC | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
アルコール | g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | |
食塩相当量 | g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)|文部科学省
グレープシードオイルの効果・効能
グレープシードオイルに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
不飽和脂肪酸がコレステロール値を改善
グレープシードオイルの脂肪組成のうち、およそ7割を占めるのがリノール酸です。リノール酸は多価不飽和脂肪酸に分類される脂質の一種で、善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らす働きがあると言われています。
食品成分 | グレープシードオイル(ぶどう油) | |
脂肪酸総量 | g | 92.28 |
飽和脂肪酸 | g | 10.93 |
一価不飽和脂肪酸 | g | 17.8 |
多価不飽和脂肪酸 | g | 63.55 |
n9オレイン酸 | mg | 17000 |
n-6リノール酸 | mg | 63000 |
n-3αーリノレン酸 | mg | 450 |
n-6γーリノレン酸 | mg | 0 |
悪玉コレステロールはコレステロールを全身に運ぶ役割をしており、生命に欠かせない物質ですが、一方で増加により動脈硬化の発症リスクが高まります。そんな悪玉コレステロールを減少させる効果から、ヨーロッパでは古くから「血管の修理人」とも呼ばれています。
一方で、日本の研究ではリノール酸を多く含む植物油がコレステロール値を下げるという説が誤りであることと、グレープシードオイルのような高リノール酸植物油を過剰摂取することの健康面への影響を指摘するものもあります。
詳細は「グレープシードオイルの使い方」で後述しますが、少なくともとればとるほど健康効果が期待できるというものでない点には注意が必要です。
脂質の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
LDLコレステロール値を下げる食品|NANIWA SUPLI MEDIA
プロアントシアニジンが活性酸素に効果を発揮
グレープシードオイルの原料であるぶどうの種には、ポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンが含まれています。
ポリフェノールは、活性酸素を除去・抑制する抗酸化作用を持つ抗酸化物質の一種です。体を酸化させる活性酸素は、老化を進行させるほか、がん・心血管疾患・生活習慣病との関連も指摘されています。
ポリフェノールの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンEが生活習慣病予防に効果
グレープシードオイルには、オリーブオイルの約4倍のビタミンEが含まれています。
ビタミンEは脂質性のビタミンで、強い抗酸化力と過酸化物質を抑制する働きがあることから、「若返りのビタミン」と言われています。
ビタミンEを摂取することで、動脈硬化やがんなどの生活習慣病や免疫力低下、老化を引き起こす活性酸素の発生を抑制することできます。
また、ビタミンEは末梢血管を広げて血行をよくし、血行不良による冷えや頭痛、生理痛を改善するのに効果を発揮します。
ビタミンEの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
グレープシードオイルの使い方
グレープシードオイルの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
グレープシードオイルの食べ方
グレープシードオイルは味や香りがほとんどないので、合わせる料理を選びません。和洋問わず、生のままでも加熱してもおいしく食べられます。揚げ物にも使えますが、高温にしすぎると酸化してしまい健康面での影響が気になります。
そのため普段使っている調理油をすべてグレープシードオイルに置き換えるというよりも、ドレッシングやソース、たまに焼き調理や炒め調理で使ったりすることで、摂取する油のバランスを整えるイメージで使うとよいでしょう。
グレープシードオイルの選び方
一口にグレープシードオイルと言っても、さまざまな種類の製品があります。
まず、グレープシードオイルの特徴を活かすなら、低温圧搾法により抽出されたオイルがおすすめです。オイルの抽出法には大きく分けて、高温圧搾法(ホットプレス)と低温圧搾法(コールドプレス)の2種類があります。
高温圧搾法は少量の原料からより多くのオイルが抽出できるため安価な傾向がある一方、原料に含まれていた栄養素の一部が加熱により失われてしまいます。それに対し低温圧搾法は、抽出できるオイルが少ないため高価になる傾向がある一方で、栄養素の損失が少ないと言われています。
そのほかのポイントとして、保管する際の酸化を防げるかどうかも重要な点です。遮光性の高い容器に入ったもののほうが、光による酸化を防げます。また、グレープシードオイルは一度に大量に使うタイプのオイルではないので、容量が少ないボトルを選んでおくと、長期保存による劣化・酸化を防ぎやすいと言えます。
グレープシードオイルのその他の使い方
グレープシードオイルは、食用油・料理油としての使用法以外にもさまざまな使い道があります。
ヘアオイルとして髪に塗ればツヤ出し効果が得られるほか、保湿によりフケを抑える効果も期待できます。またマッサージオイルとして、体・手・足などをマッサージする際に使っても問題ありません。
グレープシードオイルを購入したものの、容量が多すぎて使いきれない場合や過剰摂取がきになる場合には、美容目的で使ってみてください。
グレープシードオイルの保存方法
最後に、グレープシードオイルの保存方法を解説します。
グレープシードオイルは、直射日光と高温多湿を避けて、室温の暗所に保存しましょう。冷蔵庫に入れる必要はありませんが、冷蔵庫で保存しても問題ありません。冷蔵保存すると油分が白く固まることがありますが、湯せんなどして温めれば問題なく使用できます。
なお、加熱せず生で使う場合は、およそ1か月を目安に使いましょう。1か月を過ぎたものは、加熱調理に使うことができます。
参考文献
- グレープシードオイル
- 抗酸化物質 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
- Cardiovascular risk beyond LDL-C levels: Other lipids are performers in cholesterol story: Postgraduate Medicine: Vol 116, No 3|Taylor and Francis Online
- Grape Seed Oil Compounds: Biological and Chemical Actions for Health
- グレープシードオイルの健康効果とは?含まれる成分や選び方 -Food for Well-being