アワビの栄養と効果効能・調理法・保存法
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アワビの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、アワビに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
アワビとは
アワビ(Abalone)とは、ミミガイ科に属する巻貝の総称です。北アメリカ・オーストラリア・アフリカ南部など海外にも生息しています。日本では古くから食されており、縄文時代の遺跡からもアワビの殻が発見されています。
室町時代以降は、アワビを薄くのした干物をお祝い事に用いました。薄くのした状態のアワビが、熨斗(のし)の起源とも言われています。アワビの名産地のひとつとして数えられる三重県では、今でも「熨斗アワビ」が伊勢神宮に奉納されています。
一般的なアワビの旬は6月から9月の夏です。比較的寒い地域で育つエゾアワビは、11月から1月の冬が旬となります。
国内で漁獲量が多いのは岩手県。次いで北海道や宮城県でも多く獲られますが、国内の漁獲量は2009年ピークに年々減少している状況です。アワビには天然物と養殖物がありますが、天然アワビは資源保護のため漁獲高が制限されています。
アワビの品種・種類
現在、日本で食されているアワビの品種や種類を紹介します。
クロアワビ
クロアワビは高級アワビとして知られている品種です。殻は細長く、硬めの肉質で食感が良いとされています。
刺身で食べるのにもっとも向いているアワビです。身は黒っぽい色をしています。
エゾアワビ
国内でもっとも入荷量の多い品種がエゾアワビです。浅い海域に生息しており、クロアワビの亜種とも考えられています。
東北地方や北海道沿岸で採れ、冬が旬です。養殖も盛んに行われています。
メガイアワビ
クロアワビより深い海域に生息しているのが、メガイアワビです。丸みのある殻に、放射状の筋が特徴。身は薄茶色で、色合いから「アカ」や「アカアワビ」などの名称で呼ばれることもあります。
身はほかの品種に比べやわらかめです。加熱調理すると甘みが増すため、酒蒸しや煮物に向いています。
マダカアワビ
マダカアワビは国内では最大級と称されるアワビです。国内では20cmを超えるサイズのものもあります。
背の高い殻と、やわらかい肉質が特徴。漁獲量が少なく、なかなか見られない種類のアワビです。
アワビに含まれる成分・栄養素
アワビ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
アワビにはパントテン酸・ビタミンB1・ビタミンB2などのビタミン類が多く含まれています。また、多くの魚介類に含まれるタウリンも豊富です。
栄養価の高いアワビは、疲労回復や滋養強壮作用などが期待されています。さらに低脂質低カロリーで高タンパク質なため、健康維持にも役立つでしょう。
食 品 名 | 単位 | くろあわび 生 | まだかあわび 生 | めがいあわび 生 | あわび 干し | あわび 塩辛 | あわび 水煮缶詰 | |
廃 棄 率 | % | 55 | 55 | 55 | 0 | 0 | 0 | |
エネルギー | kJ | 324 | 316 | 315 | 1090 | 393 | 359 | |
kcal | 76 | 74 | 74 | 257 | 93 | 85 | ||
水 分 | g | 79.5 | 80 | 80.1 | 27.9 | 72.5 | 77.2 | |
たんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質 | g | 11.2 | -11.5 | 8.8 | -27 | -10.5 | -13.8 |
たんぱく質 | g | 14.3 | 14.6 | 12.2 | 38 | 14.8 | 19.4 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | 0.3 | 0.1 | 0.1 | 0.6 | 2.6 | 0.3 |
コレステロール | mg | 110 | 100 | 110 | 390 | 190 | 140 | |
脂質 | g | 0.8 | 0.4 | 0.3 | 1.6 | 3.9 | 0.4 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | 3.7 | -3.3 | -6.8 | -23.8 | -1.4 | -1 |
g | ||||||||
利用可能炭水化物(質量計) | g | 3.3 | -2.9 | -6.1 | -21.4 | -1.3 | -0.9 | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 7.2 | 6.8 | 9.4 | 35.8 | 7 | 6.8 | |
* | * | * | * | * | * | |||
食物繊維総量 | g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
糖アルコール | g | - | - | - | - | - | - | |
炭水化物 | g | 3.6 | 3.3 | 6.8 | 23.8 | 1.4 | 1 | |
有機酸 | g | 0.1 | - | - | - | - | - | |
灰分 | g | 1.7 | 1.5 | 1.4 | 8.7 | 7.4 | 2 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 430 | 330 | 320 | 2900 | 2600 | 570 |
カリウム | mg | 160 | 250 | 230 | 490 | 180 | 130 | |
カルシウム | mg | 25 | 21 | 19 | 39 | 55 | 20 | |
マグネシウム | mg | 69 | 58 | 50 | 110 | 88 | 58 | |
リン | mg | 82 | 130 | 110 | 300 | 160 | 230 | |
鉄 | mg | 2.2 | 1.8 | 0.7 | 2 | 34 | 1.8 | |
亜鉛 | mg | - | - | - | 1.6 | 2.2 | 0.6 | |
銅 | mg | - | - | - | 0.74 | 0.25 | 0.42 | |
マンガン | mg | 0.01 | 0.01 | 0.01 | 0.05 | 0.11 | 0.02 | |
ヨウ素 | μg | 200 | 190 | 190 | - | - | - | |
セレン | μg | 8 | 8 | 8 | - | - | - | |
クロム | μg | 6 | 5 | 5 | - | - | - | |
モリブデン | μg | 15 | 14 | 14 | - | - | - | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr | Tr |
α|カロテン | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | - | - | |
β|カロテン | μg | 17 | 28 | 9 | 45 | - | - | |
β|クリプトキサンチン | μg | - | - | - | 2 | - | - | |
β|カロテン当量 | μg | 17 | 28 | 9 | 47 | 700 | Tr | |
レチノール活性当量 | μg | 1 | 2 | 1 | 4 | 58 | Tr | |
ビタミンD | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
α-トコフェロール | mg | 0.3 | 1.1 | 0.3 | 1.2 | 2.5 | 1.5 | |
β-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
γ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
δ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンK | μg | - | - | - | 3 | 92 | 0 | |
ビタミンB1 | mg | 0.15 | 0.02 | 0.16 | 0.36 | 0.2 | 0.04 | |
ビタミンB2 | mg | 0.09 | 0.1 | 0.09 | 0.11 | 0.7 | 0.04 | |
ナイアシン | mg | 0.8 | 1.5 | 1.1 | 3.3 | 1.5 | 1 | |
ナイアシン当量 | mg | 2.6 | -3.4 | 2.5 | -8.2 | -3.4 | -3.5 | |
ビタミンB6 | mg | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.05 | 0.1 | 0.02 | |
ビタミンB12 | μg | 0.4 | 0.4 | 0.4 | 2.4 | 12 | 0.7 | |
葉 酸 | μg | 20 | 22 | 29 | 87 | 130 | 3 | |
パントテン酸 | mg | 2.44 | 2.05 | 1.71 | 0.71 | 1.13 | 0.23 | |
ビ オ チ ン | μg | 1.2 | 1.1 | 1.1 | - | - | - | |
ビタミンC | mg | 1 | 2 | 1 | Tr | 0 | 0 | |
アルコール | g | - | - | - | - | - | - | |
食塩相当量 | g | 1.1 | 0.8 | 0.8 | 7.4 | 6.6 | 1.4 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
アワビの効果・効能
アワビに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
コラーゲンが皮膚を健康的に
アワビにはコラーゲンが豊富に含まれています。コラーゲンとは、皮膚や軟骨などに存在する繊維状のタンパク質です。皮膚を構成するコラーゲンを摂取すれば、健康的な肌の維持に役立つでしょう。
また、アワビには糖質や脂質の代謝を促すビタミンB2も多く含まれています。不足すると肌荒れにつながる場合があるため、肌にとって重要な栄養素です。
パントテン酸が免疫力強化
アワビにはビタミンの一種であるパントテン酸が多く含まれています。糖質・脂質・タンパク質の代謝を促す作用があり、身体のエネルギーを生み出すには欠かせない存在です。
さらに副腎の働きを強化する働きもあり、免疫力強化にも期待できます。抗ストレスホルモンの生成をサポートし、ストレスによる免疫力低下を緩和してくれるでしょう。
ビタミンB1で疲労回復
ビタミンB1はブドウ糖のエネルギー化をサポートする栄養素。脳のエネルギー源となるため、ブドウ糖を効率的に代謝することが重要です。
さらにビタミンB1は乳酸をはじめとする疲労物質を排出する作用があり、疲労回復を促してくれます。アワビには肝臓の機能を高めるタウリンも豊富なので、疲労の軽減を助けてくれるでしょう。
ビタミンB2が子どもの成長をサポート
糖質と脂質の代謝にかかわるビタミンB2は、子どもの成長期や胎児の発育に必要な栄養素です。「発育のビタミン」または「成長のビタミン」などと呼ばれ、妊娠期に欠乏すると胎児の成長障害が生じる場合があります。
妊婦は1日の摂取目安量よりプラス0.2mg多めに摂取することが推奨されています。
ジメチルサルファイドの胃潰瘍対策
ジメチルサルファイドとはアワビの肝部分に多く含まれる成分です。
主な作用は胃潰瘍の緩和効果です。さらに神経の安定作用も注目されています。
アワビの食べ方
アワビの選び方や食べ方について解説します。
アワビを選ぶポイント
おいしいアワビを見極めるには殻と身の状態をチェックします。殻は薄く、傷がついていないものを選びましょう。殻に対して身が大きいものを選ぶのがおすすめです。
身は肉厚でヒダが小さいものを選びましょう。持ったときにずっしりと重みを感じられるアワビは良質です。動いているアワビも活きの良い証拠と言えるでしょう。
殻の取り外し方
殻付きのアワビは、殻をたわしなどでよく洗ったあと、身に軽く塩を振ってヌメリをとります。
取り出すときはナイフやフォークなどを使います。スプーンでも代用可能です。殻の薄いほうからナイフやフォークを差し込むと、身を取り出しやすいでしょう。口部分は食べられないため取り除きます。
肝は新鮮なものなら食べられるので、鮮度の良いアワビが手に入ったらそのまま調理に使いましょう。
妊婦も食べられるアワビ
妊娠中は摂取する食品が制限されてしまいますが、アワビは妊婦も食べられます。
タンパク質が豊富なうえに、胎児に必要なビタミンB2が多いアワビは積極的に摂取したい食品とも言えるでしょう。
妊婦がアワビを食べると「目のきれいな赤ちゃんが生まれる」といった言い伝えもあります。
アワビの保存方法
アワビの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
冷蔵保存
海水に近い塩水をキッチンペーパーに含ませ、アワビを包んでから保存します。保存する場所は、冷蔵庫の野菜室が適切です。
ただし2日から3日程度しか日持ちしないため、長期保存する場合は冷凍保存を活用しましょう。
冷凍保存
アワビを冷凍保存する場合は、下処理をしてから冷凍します。殻からアワビを外し、口は取り除きましょう。肝は匂い移りしてしまうため、身から取り外します。それぞれをよく洗ってから、1個ずつラップに包んで冷凍庫へ入れましょう。
解凍する際は、氷水を使うとおいしさを損ないにくいです。冷凍保存したアワビは加熱調理して食しましょう。保存期間は2ヶ月から3ヶ月程度が目安です。