グルコマンナンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
10892views
グルコマンナンの基本情報、似た栄養素であるイヌリンとの違い、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。
グルコマンナンとは
グルコマンナン(glucomannan)とは、グルコースとマンノースが結合した多糖類で、水溶性食物繊維の一種です。人間がグルコマンナンの分解酵素を持たないことから、難消化性成分と定義されます。
こんにゃくの原料となるこんにゃく芋の主成分なので、グルコマンナンは「こんにゃくマンナン」と呼ばれる場合もあります。もともとは水溶性の成分ですが、こんにゃくを作る過程で性質が変化する特徴を持っており、水酸化カルシウムをはじめとした凝固剤と反応することで、不溶性食物繊維に変化します。
こんにゃくの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
食物繊維の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
グルコマンナンとイヌリンの違い
グルコマンナンと似た効能を持つ食物繊維の一種、イヌリンとの違いを解説します。
イヌリンは、ごぼう・たまねぎ・にんにくなどに豊富に含まれる栄養素です。グルコマンナンと同じく水溶性食物繊維の一種ですが、イヌリンはほかの成分の影響を受けて性質が変化することはありません。
グルコマンナンと同様に難消化性成分として、整腸作用や血糖値の上昇を抑制する働きが期待されています。特にイヌリンは腸内細菌の代謝産物がインスリンの分泌を高めるため、「天然のインスリン」と呼ばれ注目を浴びています。さらにグルコマンナンと異なり、血中中性脂肪の低減効果も期待される成分です。
なおある研究では、グルコマンナンとイヌリンの両方を摂取したところ腸機能が改善した、という結果も報告されています。作用の似ている成分ですが、同時に摂取することで相乗効果も見込めそうです。
イヌリンの効果・多く含む食品・1日の摂取目安量・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
グルコマンナンの効果・働き
グルコマンナンの効果・効能について解説します。
食べ過ぎを防ぐダイエット効果
グルコマンナンをはじめとする食物繊維は、人間の消化酵素では分解できない栄養素なので、そのまま腸まで届きます。
また、こんにゃくなどから不溶性食物繊維としてグルコマンナンを摂取した場合、その過程で水分を吸って膨れるため、満腹感を得やすいメリットがあります。
摂取カロリーを減らしたいダイエット時の、食べ過ぎ防止に役立つでしょう。
便秘を改善する整腸作用
食物繊維は消化されないまま大腸まで届き、便のカサを増やす役割があります。腸のぜん動運が刺激されるため、便秘改善作用が期待できるのです。
さらにこんにゃくに含まれるグルコマンナンは、凝固剤の影響で不溶性食物繊維に変化しています。不溶性食物繊維は保水性が高い分、水分を吸収してさらに膨らむため、さらなる整腸作用が期待できるでしょう。
また、食物繊維は腸内で善玉菌のエサになるため、腸内フローラの改善も見込めます。
便秘の予防・解消におすすめの食べ物・飲み物【食物繊維・有機酸】 | NANIWA SUPLI MEDIA
糖尿病の予防効果
グルコマンナンは便として排出する過程で、糖をはじめ脂質やナトリウムなどを吸着して体外へ排出してくれます。糖の吸収を抑えられるので、糖尿病やその原因となる肥満の予防に役立つでしょう。
さらに水溶性食物繊維であるグルコマンナンは、血糖値の急上昇を抑える働きもあります。水溶性食物繊維は粘着性があり、消化物をドロドロの状態にすることで、消化吸収を緩やかにするためです。
これらの作用により、食物繊維は糖尿病予防として役立つ栄養素と考えられます。
糖尿病の予防・改善におすすめの血糖値を下げる食べ物・飲み物 | NANIWA SUPLI MEDIA
コレステロール値の低下作用
ある研究では被験者にグルコマンナンを摂取させた結果、コレステロール値が有意に低下したことがわかりました。グルコマンナンはコレステロールをもとにする胆汁酸を体外へ排出させ、血中コレステロール濃度を下げると考えられています。
さらにグルコマンナンは総コレステロールやLDL(悪玉)コレステロールに変化をもたらしますが、HDL(善玉)コレステロールには影響を与えない作用も判明しています。
LDLコレステロール値を下げる食品 | NANIWA SUPLI MEDIA
がんのリスク低下
欧米で実施された研究では、1日あたり24g以上の食物繊維を摂取することで、大腸がんや胃がんなどの発症リスクが低下したと報告されています。食物繊維の優れた整腸作用により、悪玉菌が減ることで、有害物質の発生や吸収を抑えるためと考えられます。
日本における食物繊維の摂取目安量は、成人男性で1日21g以上、成人女性で1日18g以上です。
グルコマンナンが不足・欠乏すると起こる症状
グルコマンナンが不足・欠乏すると起こる症状は次の3つです。
便秘
グルコマンナンをはじめとした食物繊維は、優れた整腸作用が期待されます。そのため摂取量が不足すると腸内環境が乱れ、便秘が起こりやすくなるでしょう。
さらに排便が滞ると、肛門に過剰な負荷がかかることで痔になったり、悪玉菌の増加による大腸がんのリスクが高まったりします。
肌荒れ
食物繊維の不足により便秘が起きると、肌にも影響が出ます。腸内環境が乱れると、皮脂の過剰分泌や悪玉菌の影響で肌荒れにつながるためです。
肥満
メカニズムは未だ解明されていませんが、腸内細菌と肥満の関係についてさまざまな論文が発表されています。ある研究では、マウスに肥満の人が持つ腸内フローラを移植したところ、研究対象のマウスが肥満化したという結果が報告されています。
この報告から、整腸作用のある食物繊維が不足すると、肥満につながる可能性が考えられます。また、グルコマンナンは満腹感を刺激し、カロリーオーバーを防いでくれる働きがあります。不足すると食べ過ぎが起きて、肥満リスクが高まると言えるでしょう。
グルコマンナンを過剰摂取すると起こる副作用
グルコマンナンを過剰摂取すると起こる症状のひとつは、便秘です。
こんにゃくに含まれるグルコマンナンは凝固剤の影響で、不溶性食物繊維に変化しています。不溶性食物繊維は消化されにくいため、摂取しすぎると便秘が悪化する可能性があります。最悪の場合、腸内で詰まって腸閉塞の危険性も考えられます。
食物繊維は、不足しても過剰に摂取しすぎても腸の不調につながるため、摂取量に注意したい栄養素です。ただし、日本人は平均的に食物繊維の摂取量が足りていない傾向にあります。「平成29年国民健康・栄養調査」によれば、若年層を中心に全ての年代で食物繊維摂取量が不足していることが示されています。
そのため、食品から摂取する分には食べ過ぎのリスクは低いと考えられるでしょう。一方で、サプリメントなどから食物繊維を摂取している人は、過剰摂取にも注意しましょう。
また、こんにゃく芋を原料とする製品の中でも、こんにゃくゼリーのように凝固剤を使用していない製品は、水溶性食物繊維のグルコマンナンが含まれます。水溶性食物繊維を過剰摂取すると、下痢や軟便を招く場合があるので気をつけましょう。
グルコマンナンの1日の摂取目安量
グルコマンナン単体の摂取目安量は定められていませんが、厚生労働省の「食事摂取基準(2020年版)」では、食物繊維の摂取目安量は成人男性でおよそ21g以上、成人女性で18g以上が推奨されています。
この数値を参考にしつつ、グルコマンナンが含まれるこんにゃくだけを摂取するのではなく、芋類や海藻類などさまざまな食品から食物繊維を摂取すると良いでしょう。
また、ダイエット効果を高める摂取量としては、健康食品会社のオリヒロの研究が参考になります。研究では、1日あたり1.5gのグルコマンナンを摂取すると、もっとも強い膨満感が得られたことがわかりました。
グルコマンナンを多く含む食品
グルコマンナンをもっとも多く含む食品はこんにゃくです。ただし、板こんにゃくをはじめ、凝固剤を使用するこんにゃく製品は不溶性食物繊維のグルコマンナンを含んでいます。
水溶性食物繊維としてグルコマンナンを摂取したい場合は、凝固剤を使用しないこんにゃくゼリーを選択すると良いでしょう。
グルコマンナンを効率よく摂取する方法
グルコマンナンは満腹感が得られる栄養素なので、食事に多く取り入れすぎると、ほかの食品を食べる前にお腹が満たされてしまい、かえって栄養バランスが乱れる可能性があります。
そこで、グルコマンナンを普段の食事に効率よく取り入れるなら、主食類をこんにゃくに置き換える方法がおすすめです。
白米や麺類の半分をこんにゃくに置き換えると、無理なくグルコマンナンを摂取できるでしょう。食べ過ぎを防いでくれるので、ダイエット効果も見込めます。
こんにゃくを活用したダイエット法の詳細については、下記記事もご覧ください。
こんにゃくダイエットの効果と正しいやり方・継続のコツ・注意点 | NANIWA SUPLI MEDIA
参考文献
- 日本人の食事摂取基準(2020 年版)|厚生労働省
- 日本食品標準成分表2015年版(七訂)|文部科学省
- 食品成分データベース|文部科学省
- Linus Pauling Institute | Oregon State University
- 統合医療情報発信サイト「eJIM(イージム)」|厚生労働省
- 食物繊維 | e-ヘルスネット
- 食物繊維の必要性と健康 | e-ヘルスネット
- こんにゃくとグルコマンナンの化学|J-Stage
- Konjacグルコマンナン多糖類およびイヌリンオリゴ糖は、結腸粘膜バリア機能を促進し、C57BL / 6Jマウスにおける腸類のリンパ組織免疫を調節する。 | Bibgraph(ビブグラフ)
- 血漿脂質およびグルコース濃度、体重、および血圧に対するグルコマンナンの効果:系統的レビューおよびメタ分析|国立医学図書館
- エネルギー収穫能力が向上した肥満関連腸内微生物叢|国立医学図書館
- Vol.3『グルコマンナン顆粒のダイエット食品としての利用』 | 研究開発 | オリヒロ株式会社 - ORIHIRO - 健康食品
- 平成29年「国民健康・栄養調査」の結果|厚生労働省