ところてんの栄養と効果効能・調理法・保存法
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ところてんの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、ところてんに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
ところてんとは
ところてん(心太)は、テングサやオゴノリなどの紅藻類を原料とする食品です。紅藻を茹でて溶かした煮汁を冷まし、固めたものを成形して作られます。一般的に、天突きと呼ばれる専用の器具で押し出して、細い麺状にした状態で販売されています。
ところてん自体にはほとんど味がなく、タレや甘味料で味付けして食べられるのが一般的です。
ところてんの食べ方には地域性があり、全国および関東以北では酢醤油で食べられることが多く、中部地域では三杯酢、関西地方では黒蜜、四国ではダシ汁が良く利用されます。
ところてんと寒天の違い
寒天は、和菓子やゼリーの材料となる乾物の一種で、ところてんと混同されることの多い食材です。寒天は、ところてんを戸外で凍結させ、乾燥させて作られます。すなわち、ところてんと寒天の原材料は同じで、違うのは製法だけです。
同じ海藻を原料とするところてんと寒天は、両者とも食物繊維やミネラル類を豊富に含んでいます。
寒天の一種である角寒天を戻してゼリー状にしたものと、ところてんの栄養価を比較すると、食物繊維やカルシウムは寒天に多く、マグネシウムやヨウ素はところてんに多く含まれます。特に、ところてんのヨウ素含有量は、寒天の約10倍と飛び抜けて多いのが特徴です。
また、ところてんのカロリーは寒天の3分の2程度。どちらも低カロリーな食材ではありますが、ヨウ素を多く摂りたいときや、ダイエット中にはところてんの方がよりおすすめと言えるでしょう。
一方で、寒天にはところてんの2倍以上の食物繊維が含まれており、食物繊維を補給する目的で食べるなら寒天のほうが優秀な食材と言えます。
寒天の栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
ところてんに含まれる成分・栄養素
ところてん100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。栄養価を比較するため、寒天の成分・栄養素を並記しています。
食 品 名 | 単位 | てんぐさ ところてん | てんぐさ 寒天 | てんぐさ 素干し | |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | |
エネルギー | kJ | 8 | 12 | 800 | |
kcal | 2 | 3 | 194 | ||
水 分 | g | 99.1 | 98.5 | 15.2 | |
たんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質 | g | -0.1 | - | - |
たんぱく質 | g | 0.2 | Tr | 16.1 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | - | - | - |
コレステロール | mg | Tr | 0 | 51 | |
脂質 | g | 0 | Tr | 1 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | - | - | - |
g | |||||
利用可能炭水化物(質量計) | g | - | - | - | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 0.1 | 0 | 6.5 | |
* | * | * | |||
食物繊維総量 | g | 0.6 | 1.5 | 47.3 | |
糖アルコール | g | - | - | - | |
炭水化物 | g | 0.6 | 1.5 | 53.8 | |
有機酸 | g | - | - | - | |
灰分 | g | 0.1 | Tr | 13.9 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 3 | 2 | 1900 |
カリウム | mg | 2 | 1 | 3100 | |
カルシウム | mg | 4 | 10 | 230 | |
マグネシウム | mg | 4 | 2 | 1100 | |
リン | mg | 1 | 1 | 180 | |
鉄 | mg | 0.1 | 0.2 | 6 | |
亜鉛 | mg | Tr | Tr | 3 | |
銅 | mg | 0.01 | Tr | 0.24 | |
マンガン | mg | 0.01 | 0.04 | 0.63 | |
ヨウ素 | μg | 240 | 21 | - | |
セレン | μg | Tr | 0 | - | |
クロム | μg | Tr | 1 | - | |
モリブデン | μg | 1 | 0 | - | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 0 | 0 | 0 |
α|カロテン | μg | 0 | 0 | 130 | |
β|カロテン | μg | 0 | 0 | 130 | |
β|クリプトキサンチン | μg | 0 | 0 | 13 | |
β|カロテン当量 | μg | 0 | 0 | 200 | |
レチノール活性当量 | μg | 0 | 0 | 17 | |
ビタミンD | μg | 0 | 0 | 0 | |
α-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0.2 | |
β-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | |
γ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | |
δ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンK | μg | 0 | 0 | 730 | |
ビタミンB1 | mg | 0 | Tr | 0.08 | |
ビタミンB2 | mg | 0 | 0 | 0.83 | |
ナイアシン | mg | 0 | 0 | 2.2 | |
ナイアシン当量 | mg | 0 | 0 | 4.9 | |
ビタミンB6 | mg | 0 | 0 | 0.08 | |
ビタミンB12 | μg | 0 | 0 | 0.5 | |
葉 酸 | μg | 0 | 0 | 93 | |
パントテン酸 | mg | 0 | 0 | 0.29 | |
ビ オ チ ン | μg | Tr | 0 | - | |
ビタミンC | mg | Tr | 0 | Tr | |
アルコール | g | - | - | - | |
食塩相当量 | g | 0 | 0 | 4.8 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
ところてんの効果・効能
ところてんに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
水溶性食物繊維で生活習慣病を予防
海藻を原料とするところてんは、食物繊維が豊富な食材です。食物繊維は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類に大きく分けることができ、ところてんには両方が含まれていることから、さまざまな生活習慣病予防に効果が期待できます。
水溶性食物繊維は、腸内の善玉菌のエサとなり、腸内環境の改善に寄与します。善玉菌が増えて悪玉菌が減ることで、便秘・下痢・お腹のハリなどの不快な症状が解消され、体調が整うでしょう。
また、脂質・コレステロール・ナトリウムなど生活習慣病の原因となる物質を吸着し、体外に排出する効果もあります。水溶性食物繊維は、肥満・糖尿病・高コレステロール血症といった疾患の予防にも効果的です。
食物繊維の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
便秘解消に効果的な不溶性食物繊維
不溶性食物繊維には、水溶性食物繊維と同様に整腸作用があるほか、体内で水分を吸収して膨らみ、腸のぜん動運動を盛んにする効果があります。
腸が活発に動くことで便通が良くなり、便秘や滞留便が解消します。不溶性食物繊維には、便のカサを増やす効果もあります。
カルシウムで骨・歯の健康維持
ところてんは、海藻由来のミネラル類を含んでいます。なかでも豊富なのが、骨と歯の主成分であるカルシウムです。
カルシウムは、人体に最も多く存在するミネラルで、不足すると骨が脆くなり、骨折・ひび・骨粗しょう症・くる病などを発症するリスクが高まります。成長期の子供や、骨が脆くなりやすい更年期以降の女性にとって、特に大切な成分です。
カルシウムの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
丈夫な骨の形成を助けるマグネシウム
マグネシウムは、カルシウムと共にところてんに多く含まれるミネラルです。マグネシウムには、カルシウムの働きを助け、カルシウムが骨から溶け出すのを防ぐ機能があります。
カルシウムとマグネシウムは、どちらも丈夫な骨・歯を作るには欠かせないミネラルであり、2種類とも含むところてんは骨の健康維持に役立つ食材と言えます。
マグネシウムには、血液循環を正常に保つ作用もあります。
マグネシウムの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
新陳代謝を促進するヨウ素
ところてんには、微量ミネラルのヨウ素(ヨード)が豊富です。ヨウ素は、甲状腺ホルモンの成分として、基礎代謝の向上・酸素の消費量増加を助け、体の働きを活発にします。
ヨウ素が不足すると、甲状腺ホルモンがうまく働かなくなり、甲状腺の肥大や甲状腺腫により皮膚の乾燥・脱毛などの症状が出ることがあります。胎児や乳児の正常な発育にも不可欠で、妊娠中や授乳中の女性にとっても大切な成分です。
ヨウ素の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
低カロリー・食物繊維豊富でダイエット食品として優秀
ところてんは、100gあたり8kcalと非常にカロリーの少ないダイエット向きの食品です。
ところてんに豊富な食物繊維は、胃や腸で水分を吸収して膨らむ性質があり、ダイエット中の空腹感を紛らわすことができます。食事の前や食事中にところてんを食べることで満腹感が得られ、無理なく食事の量や食欲をコントロールできるでしょう。
食物繊維には、糖の吸収を穏やかにする作用があるのもポイント。食物繊維を摂ることで食後血糖値の急上昇を予防し、脂肪の蓄積を防ぐことができます。
ところてんの食べ方
ところてんの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
ところてんの洗い方
パックに入って販売されているところてんは、洗わずに食べられます。ただし、ところてん特有の臭みや、保存液である酢水のにおいが気になるときは、水で軽く洗い、ザルで水気を切ってから食べても良いでしょう。
洗っただけではにおいが抜けない場合、ところてんをしばらく水に浸けておくと食べやすくなります。
添付のタレや酢醤油をかけて食べる
ところてんの最も一般的な食べ方は、商品に添付されたタレや酢醤油で味付けして食べる方法です。
つるんとした喉越しと酢醤油の酸味が楽しめるところてんは、夏バテで食欲が出ないときにもおすすめです。
黒蜜やきなこでスイーツ風にアレンジしても良い
関西地方では、ところてんを黒蜜などの甘い味付けで食べる習慣があります。きなこをかけたり、フルーツやあんこをトッピングしてあんみつ風にしたりと、デザート感覚で食べられます。
低カロリーなところてんは、甘いものを制限しているダイエット中のおやつ・間食にも最適です。ただし、黒蜜や砂糖などの甘味料を大量にかけて、結果的にカロリー・糖質の摂りすぎとならないように注意しましょう。
ところてんの保存方法
ところてんの栄養素や食味を損なわない保存方法を解説します。
常温・冷蔵保存が可能
市販のところてんは、製品表示に従って高温・直射日光を避けた常温の環境か、冷蔵庫で保存します。冷蔵保存が推奨されている商品や、手作りのところてんは冷蔵庫に入れましょう。
また、さっぱりとした食味を損なわないために、常温保存しているものであっても、食べる数時間前には冷蔵庫に入れ、冷やしてから食べるのがおすすめです。
食感が損なわれるため冷凍保存はNG
水分を多く含むところてんは、一度冷凍すると著しく食感が損なわれます。基本的には冷凍保存はできないと考えておきましょう。
ところてんを長期保存したい場合は、保存液として酢水を使用している、賞味期限が数カ月程度と長いタイプのところてんを選んでください。