腎機能の低下を防ぐ腎臓に良い食べ物
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腎臓病の症状や定義、原因について解説したうえで、腎臓病の予防・改善に役立つ良質なタンパク質や不飽和脂肪酸を豊富に含む食べ物を紹介します。
腎臓病とは
まずは、腎臓病の概要・症状・定義といった基本情報について解説します。
腎臓病の概要
腎臓病とは、腎臓の機能が障害され、疲労感や頻尿など、身体にさまざまな症状をきたす病気です。
腎臓は、腰の位置にある内臓の1種で、左右に1つずつあります。腎臓の働きは、老廃物の除去です。血中の水分や、ナトリウム・カリウムなどミネラルの量を調節し、体内を正常に保っています。成人の腎臓でも1個約120gと小さな臓器ですが、生体機能を維持するうえで大切な役割をもった臓器です。
腎臓病になって腎臓の機能が障害を受けると、体内のイオンバランスが崩れ、身体に多くの不調をきたします。腎臓の機能が落ちると、生命が維持できなくなるため、薬物治療や人工透析などで腎臓の機能を代替する治療が必要です。
腎臓が慢性的な障害を受けると、失った機能が回復することなく、症状は進行し続け、最終的に腎臓がまったく機能しなくなる病態まで進んでしまいます。そのため、腎臓病の進行を遅らせる食生活や治療が重要です。また日ごろから、腎臓病になりにくい食生活を心がけるとよいでしょう。
腎臓病の症状
腎臓病になると、主に次の症状が現れます。
- タンパク尿
- 血尿
- 浮腫(むくみ)
- 高血圧
- 頻尿
- 乏尿・無尿
- 疲労感
- 食欲低下
- 息切れ
- 嘔吐
慢性腎臓病の定義
腎臓病の中でも、下記の定義にあてはまるものは慢性腎臓病に分類されます。
タンパク尿:GFR(腎臓糸球体のろ過量)が、60ml/分/1.73㎡未満
上記の状態が、3ヶ月以上持続するものを慢性腎臓病と呼びます。
急性腎不全と慢性腎不全の違い
腎不全とは、腎臓病が進行し、機能が正常時の30%以下に低下した状態です。
腎不全には、大きく分けて、急性腎不全と慢性腎不全の2つがあります。急性腎不全は、慢性腎不全に比べて、症状が急速に進むことが特徴です。早ければ、数時間~1週間程度で進行し、尿が出にくくなる乏尿や、まったく出なくなる無尿が起こります。
急性腎不全の原因は、腎臓への血流減少や、結石・腫瘍によって尿のとおり道が閉鎖されるなど、さまざまです。急性腎不全は、原因を取り除けば腎機能回復の見込みがある点で、慢性腎不全とは異なります。
慢性腎不全は、症状が数年単位で進行し、基本的には腎機能の回復が見込めない疾患です。慢性腎不全は心筋梗塞などの心臓血管病のリスクとなり、病気の過程で他の病気を合併する因子にもなります。
慢性腎臓病の原因
慢性腎臓病の主な原因となる疾患・病態について解説します。
糖尿病
慢性腎臓病の原因は、約35~40%を糖尿病が占めています。
糖尿病とは、血糖値を下げるインスリンと呼ばれるホルモンが減少、あるいは働かなくなってしまうことで、血糖値が高値に維持される病気です。高血糖が持続すると、口渇や頻尿、疲労感、体重減少などの症状が起こります。
慢性腎臓病も、糖尿病に合併する病気の1つです。高血糖の持続により、老廃物を除去する腎臓の糸球体に負荷がかかり、次第に腎臓のろ過機能が低下することで、慢性腎臓病を発症します。
高血圧
高血圧も、慢性腎臓病の原因の1つです。
血圧とは、血液が動脈を流れるときに血管にかかる圧力のことをいいます。血圧を調節しているのは心臓で、心臓がポンプの役割をすることで全身に血液が送られます。また、血管の広がり方(弾力性)も血圧を左右する要因です。
健康な人でも、環境や運動により一時的に血圧が上がることはありますが、高血圧の人は血圧の高い状態が慢性的に続きます。高血圧になると、常に血管に強い圧力がかかるため、血管が硬くなります。腎臓の血管が硬くなり、ろ過機能が低下することで、慢性腎臓病を引き起こすのです。
慢性腎臓病のうち、高血圧が原因で発症するのは約30%と考えられています。
腎臓疾患
慢性腎臓病は、腎臓自体の病気でも発症します。慢性腎臓病の原因となる疾患は主に、糸球体腎炎・多発性のう胞腎・腎盂腎炎などです。
腎臓に炎症が起こったり、のう胞と呼ばれる液体の入った袋状の構造物ができたりすることで腎機能が低下し、慢性腎臓病を引き起こします。
腎臓病の予防・改善で気をつけたい栄養素・食べ物
腎臓病を予防・改善するために気をつけたい栄養素について解説します。
なお、腎臓病と診断された人の食事制限については、自己判断せずに、主治医の指示に従ってください。
タンパク質
食べ物に含まれるタンパク質が体内で代謝されると、窒素化合物と呼ばれる老廃物ができます。
窒素化合物は、腎臓から体外に排出されますが、腎臓病で腎機能が低下すると、うまく排出できずに体内に蓄積されます。蓄積された窒素化合物は、さらなる腎機能の悪化を促進させる原因となります。
食事から摂取するタンパク質を減らすことで、体内にたまる窒素化合物を減らし、腎機能の悪化を抑制する効果を見込めます。日本腎臓学会のガイドラインによると、1日のタンパク質摂取量は、体重kgあたり0.6~0.7gです。
タンパク質は、肉類や卵、乳製品、大豆製品に多く含まれています。実は、日本人の主食である白米にも多く含まれ、精白米100gに含まれるタンパク質は6.1gです。
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食塩
塩分の多い食事は、腎臓病の引き金となる高血圧の原因となります。
高血圧は腎臓病を引き起こす原因であるだけでなく、腎臓病をさらに悪化させる原因にもなります。腎機能が低下すると、血中の塩分が排泄できずに、体内にたまり血管を硬くする要因になるためです。
食事中の塩分を減らすことで、腎臓のろ過機能を持つ糸球体への負担を減らし、腎臓病を悪化させる高血圧を改善します。日本高血圧学会では、1日の塩分摂取量を6g未満に抑えることが推奨されています。
食事の塩分摂取量を減らしたいときは、まずはしょうゆや味噌など、調味料の量を減らすとよいでしょう。
また、塩分の多い食べ物の食塩相当量は、次のとおりです。
- 食パン(1枚60gのとき):0.78g
- スパゲッティ(茹で100g):1.2g
- コーンフレーク(1食40g):0.84g
- しらす干し(100g):4.1g~6.6g
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カリウム
腎臓の機能が低下するとカリウムが排泄されにくくなるため、血中のカリウム濃度が高くなり高カリウム血症を引き起こしやすくなります。
高カリウム血症の症状は、嘔吐やけいれん、不整脈などの筋肉・神経症状です。血清カリウム濃度が5.5mEq/l以上で高カリウム血症と診断されます。
腎臓病では、1日のカリウム摂取量を1,500mg以下に制限する必要があると考えられています。カリウムは多くの食材に含まれているため、特にカリウムを多く含む食べ物を避けることがポイントです。
また、カリウムは水に溶けやすいため、食材を流水で洗ったり茹でこぼしをしたりすると、カリウムの摂取量を減らせます。
カリウムが多い食べ物は、主に次のとおりです。
- 果物:バナナ・夏みかん・メロン・干しがき・
- 野菜:里芋・かぼちゃ・にら・セロリ・なす・白菜・キャベツ・トマト
- 肉類・魚類全般
- 麺類
- その他:納豆・ひじき・牛乳・野菜ジュースなど
カリウムの効果効能・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANISA SUPLI MEDIA
腎臓病の予防・改善におすすめの栄養素・食べ物
腎臓病の予防・改善に効果的な栄養素と食べ物について解説します。
炭水化物でエネルギー補給
腎臓病予防や改善のためにタンパク質の摂取制限をおこなうと、エネルギー量が不足しやすくなり、筋肉を分解してエネルギーを確保しようとします。筋肉はタンパク質からできているため、筋肉が分解されると腎臓病を悪化させる窒素化合物の増加につながります。
エネルギーになる栄養素は、タンパク質・炭水化物・脂質の3つです。このうち、脂質を多く摂取すると、腎臓病の原因となる高血圧を起こしやすくなるため、腎臓病予防・改善をするときのエネルギー補給には、炭水化物を摂るとよいでしょう。
日本腎臓学会では、エネルギー必要量は一般成人と同じ25~35kcal/kg体重/日と明記されています。タンパク質を少なくし、炭水化物で必要なカロリーを摂るようにしましょう。
炭水化物の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANISA SUPLI MEDIA
タンパク質は動物性タンパク質を中心に
タンパク質であるアミノ酸の中には、体内で生成できない必須アミノ酸が存在します。腎臓病を悪化させるからとタンパク質をまったく摂らないでいると、必須アミノ酸が不足し身体の栄養が足りなくなってしまいます。
そのため、必須アミノ酸を多く含む良質なタンパク質を摂取することが大切です。
タンパク質には、大豆などの植物に含まれる植物性タンパク質と、肉類や魚類に含まれる動物性タンパク質があります。必須アミノ酸を多く含むのは、動物性タンパク質です。
牛肉を始めとする肉類や卵、魚介を中心に良質なタンパク質を摂取しましょう。
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不飽和脂肪酸で腎臓病の悪化を防ぐ
脂質の中でも不飽和脂肪酸は、悪玉コレステロールの上昇を抑制する効果のある栄養素です。悪玉コレステロールが増えると、動脈硬化のリスクが高くなると考えられています。
不飽和脂肪酸を多く含む食材には、魚類やオリーブオイル、大豆などです。魚類や大豆は、タンパク質も多く含むため、多く摂取することは逆効果になりますが、適量の摂取は日本腎臓学会も推奨しています。
調理をする際に使用するサラダ油には、悪玉コレステロール増加の原因になる飽和脂肪酸が多く含まれるため、代わりにオリーブオイルを使用すると動脈硬化予防に効果的です。
オリーブの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANISA SUPLI MEDIA
腎臓病の予防・改善に効果的な生活習慣
腎臓病を予防・改善するために心がけたい食生活や生活習慣について解説します。
食事は1日3回規則正しく取ることを心がける
人間の身体は空腹の時間が長い場合、エネルギーの吸収・貯蔵量が増加します。そのため、1日の食事回数が少ないと、摂取したエネルギーが体内に貯蔵されやすくなり、肥満につながります。
肥満は、糖尿病や高血圧を引き起こし、腎臓病の原因にもなるため、食事は1日3回きちんと食べましょう。
また、空腹時間が続いて血糖が下がった状態で、大量の食事を摂ると血糖が急激に上がり、インスリンの分泌量が増加します。インスリン分泌・作用以上を予防するためにも、規則正しい食事が大切です。
よく噛んで食べる
噛む回数が少ない、あるいは早食いをすると、血糖値が上がりやすくなり、腎臓病の原因となる糖尿病を引き起こすリスクが高まります。
また、満腹中枢は食事を始めて20分程度で働き始めるため、早食いは食べすぎの原因にもなります。よく噛んで食べ、少なくとも30分以上かけるようにしましょう。よく噛むことで満腹中枢が刺激され、食べすぎを防げます。
適度な運動をする
腎臓病の原因となる肥満・高血圧を防止するには、適度な運動も大切です。
運動は、エネルギーを消費して肥満を起こしにくくするほか、インスリンの機能を正常に保つ効果もあります。また運動には、血管を柔らかくしたり、血流を調節したりして、血圧を下げる効果があると考えられています。
参考文献
- CKD診療ガイド2012|日本腎臓学会(PDF)
- 糖尿病|ドクターズ・ファイル
- 高血圧|日本臨床内科学会
- 慢性腎臓病の食事療法|東京女子医科大学腎臓病総合医療センター
- 日本高血圧学会 減塩・栄養委員会|日本高血圧学会
- 穀類|日本食品標準成分表(PDF)
- 魚介類|日本食品標準成分表(PDF)
- 慢性腎臓病 生活・食事指導マニュアル 〜 栄養指導実践編 〜|日本腎臓学会(PDF)
記事の監修
AYA ARAHARA
ヨガインストラクター。
ホテル、外資系化粧品メーカー、美容業の広報/PRとして業務を経て、アロマテラピーや美容業界の実用書等の、編集・執筆活動のほか、ライフワークとしてヨガインストラクターとしても活動している。
近著としては、「ママになっても美しい人の食事術」(PHP研究所)編集協力、「枯れないからだ」(河出書房新社)編集協力など多数。最新作は「寝る前5分の新習慣! 極上の眠りに導く安眠ヨガ」が好評発売中!
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