スイカの栄養と効果効能・調理法・保存法

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watermelon

スイカの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、スイカに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

スイカとは

スイカ(Watermelon)はウリ科スイカ属に分類される植物の果実です。

苗を植えて1年で収穫される一年草のため、本来は野菜に分類される植物ですが、一般的には果物として扱われているため農林水産省では「果実的野菜」として取り扱われます。いちごやメロンも、スイカと同じ果実的野菜です。

スイカの原産地はアフリカと言われており、日本には奈良時代に伝わったとされています。

中国より西から伝わってきた瓜(うり)のため、「西瓜」と呼ばれるようになりました。明治時代には品種改良が進み、現在のようなスイカが栽培されるようになったと言われています。

日本の主な生産地は熊本県や千葉県、山形県です。農林水産省の「平成30年産野菜生産出荷統計」では3県だけで全体収穫量の約40%を占めており、もっとも生産量が多い熊本県では約47,000トンものスイカが生産されています。

スイカの品種・種類

スイカは各地でさまざまな品種が開発され、種類の多い野菜です。サイズの違いや果肉の色、形、果皮の色などの特徴があり、それぞれを組み合わせて多くの品種が生み出されています。

サイズや形状による違い

まずはサイズや形の違いについて説明しましょう。スイカは、サイズ違いでは大玉種と小玉種、形状では球形と長楕円形の品種に分かれます。

大玉種

一般的にスイカとして認識されているのは大玉種です。5kgから7kgくらいの重さが標準ですが、大きいものでは30kg近くになります。小玉種より収穫時期は遅く、6月から8月頃が旬です。

小玉種

重さが1kg~2kg程度の小ぶりなスイカは小玉種に分類されます。収穫時期は5月から8月です。大玉種と比較して皮が薄く、糖度が高いことで知られています。

球形

見た目が丸いスイカは球形の品種です。日本で栽培されるスイカのほとんどが球形と言われています。

長楕円形

ラグビーボールのような形をしている長楕円形の品種もあります。有名な種類は富山県の黒部スイカです。別名「マダーボール」とも呼ばれます。

果肉の色による違い

次は果肉の色に関する違いです。スイカの果肉は赤い色の品種をよく見かけますが、黄色の果肉もあります。

赤肉種

スイカのなかでも馴染み深いのが、果肉が赤い赤肉種です。カロテノイド色素であるリコピンが含まれているため、果肉が赤くなります。

黄肉種

果肉が黄色いスイカは黄肉種です。クリームスイカとも呼ばれます。

昔は味が薄い品種と言われていましたが、近年では品種改良のおかげで糖度が高いスイカも多くあります。産地としては千葉県の成田市が有名です。

果皮の色による違い

最後は果皮の色についてです。一般的なスイカは濃い緑色に黒の縞模様ですが、ほかにもさまざまな色のスイカが存在します。

黒皮

縞模様がわからないほど、全体が黒っぽい見た目をしているのが黒皮スイカです。生産数が少ないため希少価値が高く、高級スイカとして扱われます。

黄皮

果皮の色が全体的に黄色いスイカは黄皮スイカです。果肉が赤肉種の種類は国内で改良された品種で、「太陽スイカ」とも呼ばれます。

産地ごとの品種

次に、各地の代表的な商品をご紹介します。

植木スイカ

熊本県で栽培されるスイカでもっとも有名な品種が植木(うえき)スイカです。スイカの名産地として名高い植木町で栽培されます。

大玉の赤肉種で、シャリシャリとした食感と糖度の高さが特徴です。

富里スイカ

富里(とみざと)スイカは千葉県富里市で生まれた品種です。昭和初期から栽培が始まり、皇室に献上されたことで有名になりました。

昼夜の温度差が激しい地域で育つため、甘いスイカができると言われています。

尾花沢スイカ

山形県の尾花沢市で栽培されているのが尾花沢スイカです。尾花沢市は豪雪地帯として知られていますが、夏は気温が高く、厳しい環境下で育ったスイカは甘みが際立ちます。

大玉種で、シャリシャリとした歯ごたえの良さも特徴です。

黒部スイカ

富山県で長年作り続けられてきたスイカが黒部スイカです。水はけが良いとされる黒部川扇状地で古くから栽培されていました。

長楕円形の大型種で、重いものでは25kg近くまで大きくなります。

スイカに含まれる成分・栄養素

スイカ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

スイカの成分はほとんど水分が占めています。成分表を見てもわかるとおり、スイカ100gあたり89.6gが水分です。この水分が体内から熱を奪ってくれるため、スイカは身体を冷やす食材とも言われます。

また、暑さで汗をかきやすく水分が不足しがちな夏には水分補給としても重宝する食材です。

スイカの成分は水分ばかりで栄養価が低そうに思われますが、ミネラルやビタミンが豊富です。特に赤肉種のスイカには、黄肉種には少ないβ-カロテンが多く含まれ、その健康作用に注目が集まっています。

食品名単位スイカ いり 味付けスイカ 赤肉種 生スイカ 黄肉種 生
廃 棄 率%604040
エネルギー(kcal)kcal/100 g5463737
エネルギー(kJ)kJ/100 g2284155155
水 分g/100 g5.989.689.6
タンパク質g/100 g29.60.60.6
アミノ酸組成によるタンパク質g/100 g-28.70.3-
脂 質g/100 g46.40.10.1
トリアシルグリセロール当量g/100 g36.9-0.1-
飽和脂肪酸g/100 g6.24-0.01-
一価不飽和脂肪酸g/100 g4.01-0.02-
多価不飽和脂肪酸g/100 g25.01-0.03-
コレステロールmg/100 g000
炭水化物g/100 g13.49.59.5
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g--7.6-
水溶性食物繊維g/100 g1.10.10.1
不溶性食物繊維g/100 g60.20.2
食物繊維総量g/100 g7.10.30.3
灰 分g/100 g4.70.20.2
ナトリウムmg/100 g58011
カリウムmg/100 g640120120
カルシウムmg/100 g7044
マグネシウムmg/100 g4101111
リンmg/100 g62088
mg/100 g5.30.20.2
亜鉛mg/100 g3.90.10.1
mg/100 g1.490.030.03
マンガンmg/100 g1.430.030.03
ヨウ素µg/100 g2400
セレンµg/100 g1100
クロムµg/100 g100
モリブデンµg/100 g9011
レチノールµg/100 g000
α-カロテンµg/100 g-0-
β-カロテンµg/100 g-830-
β-クリプトキサンチンµg/100 g-0-
β-カロテン当量µg/100 g1683010
レチノール活性当量µg/100 g1691
ビタミンDµg/100 g000
α-トコフェロールmg/100 g0.60.10.1
β-トコフェロールmg/100 g0.100
γ-トコフェロールmg/100 g19.500
δ-トコフェロールmg/100 g0.600
ビタミンKµg/100 g100
ビタミンB1mg/100 g0.10.030.03
ビタミンB2mg/100 g0.160.020.02
ナイアシンmg/100 g0.80.20.2
ビタミンB6mg/100 g0.710.070.07
ビタミンB12µg/100 g000
葉酸µg/100 g12033
パントテン酸mg/100 g1.040.220.22
ビオチンµg/100 g9.10.90.9
ビタミンCmg/100 gTr1010
食塩相当量g/100 g1.500
アルコールg/100 g---
硝酸イオンg/100 g---
テオブロミンg/100 g---
カフェインg/100 g---
タンニンg/100 g---
ポリフェノールg/100 g---
酢酸g/100 g---
調理油g/100 g---
有機酸g/100 g---
重量変化率%---
廃棄部位: 種皮廃棄部位: 果皮及び種子廃棄率: 小玉種の場合 50 %廃棄部位: 果皮及び種子廃棄率: 小玉種の場合 50 %
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

スイカの効果・効能

スイカに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

β-カロテンとリコピンの抗酸化作用

スイカの赤肉種には、β-カロテンやリコピンなどのカロテン類が多く含まれています。カロテン類には優れた抗酸化作用があり、動脈硬化やがん予防が期待されている栄養素です。

リコピンの作用にはこれまでいくつかの研究が進められており、トマトに含まれるリコピンを摂取した際に血中コレステロール値の低下が見られたと言います。特にスイカはトマトよりもリコピンが多いので、その作用が期待できる食材と言えるでしょう。

ビタミンCによるがん予防効果

スイカには水溶性のビタミンであるビタミンCが多く含まれています。ビタミンCには抗酸化作用があり、身体の酸化が引き起こすあらゆる病気を予防する効果が期待されています。

研究でも食物からビタミンCをよく摂取している人は、肺がんや乳がんのリスクが低いという結果が注目されており、積極的に摂取したい栄養素と言えるでしょう。

カリウムによる夏バテ防止効果

夏時期は大量の汗をかくとともにミネラルも多く排出されてしまうため、夏バテが起きやすくなります。スイカにはミネラルが多く含まれるので、夏の栄養補給にぴったりです。

特に多く含まれるカリウムは、血液や骨にも含まれる重要な成分。欠乏すると脱力感や食欲不振などの症状が出るので気を付けましょう。

シトルリンによる血圧低下作用

シトルリンはほかの果実にはほとんど含まれない、スイカ特有の栄養素とも言えます。アミノ酸の一種であるシトルリンは、腎臓の働きをサポートする役割や血圧低下作用が期待されている成分です。

研究論文では疲労回復効果も注目されています。

食物繊維による整腸作用

スイカには食物繊維が多く含まれています。食物繊維は腸のぜん動運動を促進し、便秘改善作用が期待される栄養素です。

また、脂質や糖、ナトリウムなどの排出を促してくれるため、肥満や高血圧などの予防にも役立ちます。

スイカの食べ方と注意点

スイカの栄養素を損なわない食べ方や、食べるときの注意点などを解説します。

冷やすときは水道水が最適

スイカは冷やしすぎると甘みが弱まると言われています。最適な温度は8度から10度のため、冷蔵庫ではなく水道水で冷やすのが最適です。

丸のままのスイカに濡らしたタオルをかぶせて水道水を上から垂らしましょう。大きなボウルに入れて作業すると、水の節約にもなります。

塩をかけて甘みアップ&熱中症予防にも効果的

スイカの食べ方として、塩をかける方法は有名です。2種類の味が混じることで起こる作用は対比効果と言い、塩をかけたスイカは甘みが強調されます。

さらにスイカにはミネラルやブドウ糖などが豊富なため、塩を加えればスポーツドリンクと同等の栄養価を誇ります。汗をかきやすい夏にはうってつけの食材でしょう。

細かくカットして食べるのもおすすめ

スイカはそのまま食べる方法が一般的ですが、細かくカットしてデザートのトッピングに使ったり、フルーツポンチの材料として活用したりする方法もおすすめです。

そのほかシャーベットやゼリー、スムージーにしてもおいしく食べられます。

皮や種まで捨てずに食べたい

スイカは果肉部分だけを利用し、皮に近い部分は捨ててしまうという人も多いと思います。

しかし、スイカの特徴のひとつでもある栄養素シトルリンは、皮の近くにある白い部分に多く含まれているのです。その量は果肉の約2倍もあるため、そのまま捨ててしまうのはもったいないと言えるでしょう。

白い部分はスムージーの材料や、ぬか漬けをはじめとした漬物として活用できるので、捨てずに試してみてください。

また、種もカリウムやビタミンB郡などが豊富に含まれるため、余すことなく食べたい人はフライパンで炒った種に塩をふって食べる方法がおすすめです。

身体を冷やすので食べすぎには要注意

スイカは水分が多い食品のため、過剰摂取すると身体が冷えすぎてしまう場合があります。身体を冷やしてはいけない妊婦は特に摂取量に気を付けるべきでしょう。

また、胃液が大量の水分で薄まり、消化器官に負担をかけてしまう危険性もあります。カロリーが低く、ダイエットに向いている食材ではありますが食べすぎには要注意です。1日あたり200gを目安に楽しみましょう。

スイカの保存方法

スイカの栄養素を損なわない保存方法を解説します。保存方法は以下の方法があります。

常温保存

スイカはバナナやキウイなどとは異なり、収穫された時点で成長が止まります。追熟しない分、劣化が早いので購入したらすぐに食べることをおすすめします。

すぐに食べられない場合でも、スイカは冷やしすぎると甘みが弱まるため、1個まるまるの場合は常温で保存しましょう。

直射日光を避け、風通しの良い涼しい場所で保管するのがベストです。保存期間は2週間ほどを目安にしてください。

冷蔵保存

カットしたスイカは日持ちしないので、冷蔵庫で保存します。切り口が空気に触れないようにラップなどで包み、野菜室に入れてください。保存期間は2日から3日ほどです。

冷凍保存

長期保存する場合は冷凍保存が可能です。皮を取り除き、果肉の状態で保存します。保存期間は1ヶ月から2ヶ月ほどですが、解凍したスイカは生食には向かないためそのままスムージーなどに活用します。

種を取り除き、果肉をつぶしたものを保存袋に入れて冷凍するとより使いやすいのでおすすめです。

参考文献

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