タイムの栄養と効果効能・調理法・保存法

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タイムの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、タイムに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

タイムとは

タイム(Thyme)は、シソ科イブキジャコウソウ属の植物です。日本では「立麝香草(タチジャコウソウ)」とも呼ばれます。

すがすがしい香りがあるタイムの葉は、ハーブとして肉・魚料理の臭み消しや香りづけ、ハーブティーとして楽しめます。タイムの精油にはリラックス効果や呼吸器系疾患への効果があり、アロマテラピーでも定番のオイルです。

タイムの原産地は南ヨーロッパで、世界には350以上の品種が存在すると言われています。滋賀県の伊吹山などに生えるイブキジャコウソウは、日本に自生する唯一のタイムの仲間です。

タイムの歴史は古く、古代エジプトではミイラの防腐剤として使われていたほか、古代ギリシャでは勇気の象徴として薬用や料理にも用いられていたと言われています。

タイムは通年出回っていますが、花が咲く前の4~5月ごろに収穫される葉は、特に香りが豊かです。

乾燥させたタイムや、粉状にしたものもスパイスとして販売されていて、スープや魚料理などの風味づけに手軽に使えるため人気があります。

タイム・ローズマリー・オレガノなどシソ科ハーブの効能

タイムのほか、シソ科にはローズマリーやオレガノなど料理にも使えるハーブが多くあります。それぞれの主な効能は次の通りです。

  • タイム:強い殺菌作用・防腐作用
  • ローズマリー:記憶力や集中力を高め頭をスッキリとさせる
  • オレガノ:消化促進作用

タイムとローズマリーの違い

タイムとローズマリーは同じシソ科で、共に強い香りを持つハーブです。タイムは葉が楕円形をしているのに対し、ローズマリーは針のような細長い葉を付けます。

タイムとローズマリーは、どちらも肉・魚料理の臭み消しに使われますが、どちらかというと、タイムは魚向き、ローズマリーは肉向きという特徴があります。ローズマリーは好き嫌いの分かれる独特な香りを持っており、ジビエなど臭みの強い肉料理に向いているハーブです。

タイムの品種・種類

タイムには多くの品種があると言われていますが、料理には「コモンタイム」「レモンタイム」「クリーピングタイム」の3種が一般的に用いられています。それぞれの特徴を説明します。

コモンタイム

コモンタイムは、最も一般的なタイムです。料理に用いられるのはほとんどがコモンタイムで、ほかの品種よりも香りが強いため魚や肉の臭み消しに役立ちます。

初夏にはピンク色の花を咲かせますが、花もエディブルフラワーとして食べることができます。上に向かって立ち上がるように成長する直立性の品種です。

レモンタイム

レモンのような爽やかな香りを持った品種は、レモンタイムと呼ばれています。コモンタイムよりもマイルドで優しい香りを持っており、ハーブティーに最適です。菓子の風味付けなどに、レモンの代用として用いることもできます。

クリーピングタイム

直立性のコモンタイムやレモンタイムとは異なり、クリーピングタイムは地面を這うように茎を伸ばすほふく性の品種です。

丈夫で育てやすくグラウンドカバーとして雑草対策にもなることから、園芸品種として人気。食用とする場合はハーブティーに向いています。

タイムに含まれる成分・栄養素

タイム100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

食品名単位タイム 粉
廃 棄 率%0
エネルギー(kcal)kcal/100 g352
エネルギー(kJ)kJ/100 g1473
水 分g/100 g9.8
たんぱく質g/100 g6.5
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g-
脂 質g/100 g5.2
トリアシルグリセロール当量g/100 g-3.2
飽和脂肪酸g/100 g-1.92
一価不飽和脂肪酸g/100 g-0.33
多価不飽和脂肪酸g/100 g-0.83
コレステロールmg/100 g0
炭水化物g/100 g69.8
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g-
水溶性食物繊維g/100 g-
不溶性食物繊維g/100 g-
食物繊維総量g/100 g-
灰 分g/100 g8.7
ナトリウムmg/100 g13
カリウムmg/100 g980
カルシウムmg/100 g1700
マグネシウムmg/100 g300
リンmg/100 g85
mg/100 g110
亜鉛mg/100 g2
mg/100 g0.57
マンガンmg/100 g6.67
ヨウ素µg/100 g-
セレンµg/100 g-
クロムµg/100 g-
モリブデンµg/100 g-
レチノールµg/100 g0
α-カロテンµg/100 g0
β-カロテンµg/100 g980
β-クリプトキサンチンµg/100 g0
β-カロテン当量µg/100 g980
レチノール活性当量µg/100 g82
ビタミンDµg/100 g0
α-トコフェロールmg/100 g-
β-トコフェロールmg/100 g-
γ-トコフェロールmg/100 g-
δ-トコフェロールmg/100 g-
ビタミンKµg/100 g-
ビタミンB1mg/100 g0.09
ビタミンB2mg/100 g0.69
ナイアシンmg/100 g3.4
ビタミンB6mg/100 g-
ビタミンB12µg/100 g0
葉酸µg/100 g0
パントテン酸mg/100 g-
ビオチンµg/100 g-
ビタミンCmg/100 g0
食塩相当量g/100 g0
アルコールg/100 g-
硝酸イオンg/100 g-
テオブロミンg/100 g-
カフェインg/100 g-
タンニンg/100 g-
ポリフェノールg/100 g-
酢酸g/100 g-
調理油g/100 g-
有機酸g/100 g-
重量変化率%-
備考
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

タイムの効果・効能

タイムに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

脳の働きを良くするロスマリン酸

ロスマリン酸とは、タイムやローズマリーなどシソ科の植物に含まれるポリフェノールの一種で、抗酸化作用や抗アレルギー作用があります。また、脳機能との関連性も指摘されており、アルツハイマー病の予防効果も示唆されている栄養素です。

タイムの葉・茎には、ロスマリン酸をはじめとしたポリフェノールが多く含まれています。ロスマリン酸を含むローズマリーやレモンバームとともに、タイムは脳を活性化したいときにおすすめのハーブです。

肥満予防に効果的なビタミンB1・ビタミンB2

タイムには、代謝を促進し、ダイエットに効果的と考えられているビタミンB1・ビタミンB2などのビタミンB群が含まれています。

ビタミンB群は水溶性のビタミンで、ビタミンB1は糖質の代謝を助け、ビタミンB2は脂質の代謝を促進する栄養素です。代謝を高めることで、疲労回復や肌荒れを改善する効果もあります。

また、タイムには、消化酵素のα-アミラーゼ・α-グルコシダーゼへの強い阻害作用があることが発見され、食後血糖値の上昇抑制や糖尿病予防への効果も期待されています。

健康な体を維持する必須ミネラル類

タイムには、カリウム・カルシウム・マグネシウム・リン・鉄・亜鉛など、人間の体にとって大切な必須ミネラル類が含まれています。これらの必須ミネラルには、骨や皮膚など細胞の健康を維持したり、生活習慣病の予防効果や貧血を改善する効果があります。

タイムは、スパイスや料理の風味付けとして使う際に、栄養素も合わせて摂取できる使い勝手のよいハーブと言えるでしょう。

抗菌・抗ウイルス作用のあるチモール・カルバクロール・γ-テルピネン

タイムの香り成分であるチモール・カルバクロール・γ-テルピネンには、強力な殺菌作用や防腐作用、抗ウイルス効果があると考えられています。

タイムが持つ殺菌作用は、古代エジプトでミイラの防腐剤として用いられていたことや、冷蔵保存の技術がない時代に料理の貯蔵性を高めることに使われてきた歴史が証明しています。

インフルエンザや風邪などウイルス性の病気が流行しているときや、風邪のひき初めに喉が痛くなったときなど、タイムのハーブティーを飲んだり、うがいに使用することで症状の悪化を防げる可能性があります。

タイムの食べ方

タイムの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

新鮮なハーブを楽しむなら自家栽培がおすすめ

タイムは、強健で育てやすいハーブです。タイムの葉をフレッシュハーブとして楽しみたい場合は、家庭で育ててその都度収穫するのがおすすめ。草丈が5cmほどになったら、ハサミで枝ごとカットして収穫しましょう。

タイムの葉の収穫時期は、4~10月を中心に1年中です。春から夏には花を咲かせますが、葉をハーブとして利用する場合は、花が咲く前につぼみを摘み取っておいたほうが、葉の香りが強くなります。

料理や好みによって使い分けよう

肉・魚料理の臭み消しや風味付けにタイムを使う場合は、生の葉やドライハーブのほか、数種類の香草を束ねたブーケガルニを利用します。

炒めものやグリル、煮物などあらゆる料理の具材として使用できるほか、料理によってはトッピングとして彩りを添えるのもおすすめです。フレッシュよりドライタイムのほうが香りが強い傾向にあるので、料理や好みによって使い分けましょう。

食後血糖値を抑える効果は熱を加えても失われない

食後高血糖や糖尿病への予防効果が期待されているタイムですが、熱を加えてもその効果は失われないというデータも発表されているので、安心して加熱調理してください。

ビタミンB群を効率的に摂取するならハーブティー

タイムに含まれるビタミンB群は水に溶けやすい性質を持っているため、多く取り入れたいときはハーブティーがおすすめです。

フレッシュのタイムにお湯を注いでハーブティーとすることもできますし、ハーブティー用の乾燥タイムも販売されています。タイムのハーブティーはやや苦味があるため、飲みにくいと感じた場合はブレンドハーブティーがおすすめです。

タイムの保存方法

タイムの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

フレッシュのタイムは冷蔵保存

生のタイムの葉・茎は、ビニール袋などに入れて冷蔵庫の野菜室で保管します。湿っぽいとカビが生えやすくなるので、水気を良くふき取って乾燥気味に管理してください。

長期保存する場合はドライハーブが便利

タイムを長期間保存したい場合は、乾燥させてドライハーブにしましょう。洗って水気を切ったタイムを直射日光の当たらない風通しの良い場所に置いて乾燥させると、夏場なら1週間程度でドライハーブが出来上がります。

さらに長く保存したい場合は、ドライハーブにしたタイムを冷凍保存することもできます。

オイルやビネガーに漬けて保存

タイムは、オリーブオイルなどの油やビネガーに漬けて保存することもできます。

葉・茎をそのままオイルやビネガーに入れて数日間漬けると、タイムの香りが移り、風味豊かなハーブオイル・ハーブビネガーが楽しめます。タイムを漬けたものは早めに使い切るようにしましょう。

参考文献

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