豆乳の栄養と効果効能・調理法・保存法
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豆乳の製造法や生産量、主要な種類などの基本情報、似た食品との違い、豆乳に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
豆乳とは
豆乳とは、原料の大豆を煮詰めることで、タンパク質などの大豆成分を溶け出させ、余分な繊維成分を除去した製品です。
豆乳の原料となる大豆は、約2000年前に朝鮮半島から日本へと伝えられました。当時は大豆を「おおまめ」と呼んでおり、古事記など古い書物からも大豆を食べていた記録が見つかっています。
豆乳が生まれたのは鎌倉時代と考えられています。奈良時代に中国から伝えられた豆腐の製造法を発展させ、最初は僧侶たちが豆乳を飲むようになりました。豆乳が一般家庭に広まったのは、昭和50年以降だといわれています。
日本の豆乳生産量は、令和2年時点で年間約12.5万キロリットルです。豆乳の栄養素が注目されたことで平成に入ってから増加し続け、令和元年に10万キロリットルを超えました。調整豆乳や豆乳飲料を含めると、約43万キロリットルもの豆乳製品が生産されています。
日本人の豆乳年間消費量は、2019年時点で1人あたり3.6リットル。これは、タイ・ベトナム・韓国に次ぐ消費量です。
豆乳と同じ大豆が原料の食品との違い
豆乳と同じ大豆を原料として作られる食品との違いについて解説します。
豆腐
豆腐は、大豆を煮出した汁に「にがり」などの凝固剤を入れて固めたものです。
原材料は豆乳と同じ大豆で、製造工程も途中まで同じですが、そのままで製品になるものを「豆乳」、豆乳を固めたものを「豆腐」と呼びます。大豆の煮汁を使っているため、大豆そのものや納豆などの加工食品と比べて含まれるタンパク質が少ないことがデメリットです。
液体の豆乳はスープなど、限られた料理にしか使えませんが、豆腐は切って具材にしたり、潰して混ぜたりと料理の幅が広がります。
豆腐の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
おから
おからは、豆腐や豆乳を作るときに煮出して搾った大豆のかすです。
かすといっても、タンパク質や食物繊維など大豆本体の栄養素は残っています。特に、煮汁として出ていかない食物繊維が豊富に含まれています。
水分は搾られているためおからに含まれる水分量は少なく、炒り煮などの煮物にするのが一般的です。栄養を多く含んだ食べ物なので、クッキーやケーキに入れて、ヘルシーなお菓子を作るのもよいでしょう。
おからの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
豆乳の種類
一般的に市販されている豆乳には、「無調整豆乳」と「調整豆乳」があります。2つの豆乳の違いについて解説します。
無調整豆乳
無調整豆乳とは、大豆と水以外の原材料を使用していない豆乳です。
大豆固形分が8%以上含まれるものを無調整豆乳と呼び、調整豆乳よりも強く大豆の味を感じられます。無調整豆乳は砂糖や塩、添加物を含まないため、肌荒れなどを起こしにくく健康によい飲み物です。
無調整豆乳は製造工程で大豆の臭みをとっていますが、原材料のみで作られているため、大豆の味が苦手な人は飲みにくく感じることがあります。そのまま飲むのが苦手な人は、料理に使用したり、他の飲み物と混ぜて飲んだりするのがおすすめです。
調整豆乳
調整豆乳とは、大豆を絞った豆乳液に、砂糖や食塩、植物油などを加えて口当たりをよくした豆乳です。大豆固形分が6%以上のものを調整豆乳と呼んでいます。
調味料で味付けされていることで、大豆の臭みが少なくなり、そのままでも飲みやすいのが特徴です。砂糖や食塩が入っているので、料理に使うときはあまり向きません。
豆乳飲料
豆乳飲料とは、調整豆乳液に果汁や乳製品などを加えて、より飲みやすくした飲料です。
日本農林規格(JAS規格)では、大豆固形分を4%以上含むものを豆乳飲料と呼びます。含まれる果汁や乳製品の重量割合が5%以上10%未満の場合は、大豆固形分を2%以上含むものと規定されています。
豆乳に含まれる成分・栄養素
豆乳100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
豆乳のタンパク質含有量は、無調整豆乳で100gあたり3.6g、調整豆乳で100gあたり3.2gと多くのタンパク質が含まれています。同じくタンパク質を豊富に含む肉類と比べ、豆乳は脂質が少ないことも特徴です。
豆乳は、鉄やモリブデンなどのミネラルも豊富で、美容や健康への効果が期待されています。
食 品 名 | 単位 | 豆乳 | 調製豆乳 | 豆乳飲料・麦芽コーヒー | |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | |
エネルギー | kJ | 183 | 262 | 248 | |
kcal | 44 | 63 | 59 | ||
水 分 | g | 90.8 | 87.9 | 87.4 | |
たんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質 | g | 3.4 | 3.1 | 2.1 |
たんぱく質 | g | 3.6 | 3.2 | 2.2 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | -1.8 | 3.4 | 2.1 |
コレステロール | mg | 0 | 0 | 0 | |
脂質 | g | 2 | 3.6 | 2.2 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | 1 | 1.9 | 4.3 |
g | |||||
利用可能炭水化物(質量計) | g | 0.9 | 1.8 | 4.1 | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 3.3 | 4.8 | 8 | |
* | * | * | |||
食物繊維総量 | g | 0.2 | 0.3 | 0.1 | |
糖アルコール | g | - | - | - | |
炭水化物 | g | 3.1 | 4.8 | 7.8 | |
有機酸 | g | - | - | - | |
灰分 | g | 0.5 | 0.5 | 0.4 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 2 | 50 | 42 |
カリウム | mg | 190 | 170 | 110 | |
カルシウム | mg | 15 | 31 | 20 | |
マグネシウム | mg | 25 | 19 | 13 | |
リン | mg | 49 | 44 | 36 | |
鉄 | mg | 1.2 | 1.2 | 0.3 | |
亜鉛 | mg | 0.3 | 0.4 | 0.2 | |
銅 | mg | 0.12 | 0.12 | 0.07 | |
マンガン | mg | 0.23 | - | 0.13 | |
ヨウ素 | μg | Tr | - | - | |
セレン | μg | 1 | - | - | |
クロム | μg | 0 | - | - | |
モリブデン | μg | 54 | - | - | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 0 | 0 | 0 |
α|カロテン | μg | - | - | 0 | |
β|カロテン | μg | - | - | 0 | |
β|クリプトキサンチン | μg | - | - | 0 | |
β|カロテン当量 | μg | 0 | 0 | 0 | |
レチノール活性当量 | μg | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンD | μg | 0 | 0 | 0 | |
α-トコフェロール | mg | 0.1 | 2.2 | 0.3 | |
β-トコフェロール | mg | 0 | 0.1 | 0 | |
γ-トコフェロール | mg | 2 | 3.1 | 1.8 | |
δ-トコフェロール | mg | 1 | 0.5 | 0.6 | |
ビタミンK | μg | 4 | 6 | 3 | |
ビタミンB1 | mg | 0.03 | 0.07 | 0.01 | |
ビタミンB2 | mg | 0.02 | 0.02 | 0.01 | |
ナイアシン | mg | 0.5 | 0.2 | 0.4 | |
ナイアシン当量 | mg | 1.4 | 1 | 0.9 | |
ビタミンB6 | mg | 0.06 | 0.05 | 0.03 | |
ビタミンB12 | μg | 0 | 0 | 0 | |
葉 酸 | μg | 28 | 31 | 15 | |
パントテン酸 | mg | 0.28 | 0.24 | 0.12 | |
ビ オ チ ン | μg | 3.9 | - | - | |
ビタミンC | mg | Tr | Tr | Tr | |
アルコール | g | - | - | - | |
食塩相当量 | g | 0 | 0.1 | 0.1 | |
備 考 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
豆乳の効果・効能
豆乳に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
タンパク質が肌や髪を健康に維持
タンパク質とは、筋肉や肌、髪など人間の身体の約20%を構成する物質です。人体の外側だけでなく、体内で働くホルモンや細胞などもタンパク質でできています。
豆乳には、100gあたり3.6gものタンパク質が含まれており、肌や髪を健康に保つため、美用意識の高い人が注目している食品です。
食品中のタンパク質は、動物性タンパク質と植物性たんぱく質に分けられます。
動物性タンパク質とは、肉類や魚介類、乳製品に含まれるタンパク質です。「ホエイ」「カゼイン」「卵白」の3種類に分類され、それぞれ原料や製造方法が異なります。動物性タンパク質は、身体に必要不可欠な必須アミノ酸を含んでいますが、脂質も多いことがデメリットです。
一方の植物性タンパク質は、植物に含まれるたんぱく質を指し、代表的なものに「大豆タンパク」と「小麦タンパク」があります。すべての必須アミノ酸は含みませんが、脂質が少なく、カロリーも少ないことがメリットです。
タンパク質の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
ソイプロテインの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
大豆イソフラボンが更年期障害を軽減
大豆イソフラボンとは、大豆の胚芽に含まれるポリフェノールの1種です。
豆乳に含まれる大豆イソフラボンは、複数種の配糖体を含む大豆イソフラボン配糖体で、体内の腸内細菌の分解・発酵を受けて、大豆イソフラボンアグリコンに変わります。腸管から吸収されるのは、大豆イソフラボンアグリコンです。
大豆イソフラボンは、女性ホルモンの1つであるエストロゲンと似たような働きをする栄養素で、更年期障害の症状軽減などに効果的と考えられています。また、女性ホルモンの減少でリスクが高まる骨粗しょう症に対しても予防効果があるといわれています。
イソフラボンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
サポニンがダイエットをサポート
サポニンとは、植物の渋味やえぐみ成分で、特に大豆などのマメ科の植物に多く含まれています。
サポニンには抗酸化作用があり、脂質の酸化を防ぐことで血中のコレステロールを下げる働きをしています。コレステロールが低減すると肥満や動脈硬化の予防に繋がることから、ダイエットをサポートする食品として人気です。
レシチンが脳神経を健康に保つ
レシチンとは、細胞を取り囲む細胞膜を形成する主成分です。
レシチンは、神経伝達をする神経伝達物質を生成する栄養素で、脳を活性化したり中枢神経系を正常に保つ働きがあります。そのため、認知症予防に効果的な栄養素です。
またレシチンは、脂質の運搬・貯蔵にかかわるタンパク質と脂質を結びつける役割をしています。脂質を運んで体外へ排出するため、高血圧予防や動脈硬化予防に効果的です。
豆乳の食べ方
豆乳の栄養素を損なわない調理方法・食べ方などを解説します。
豆乳はスープだけじゃなく味噌汁に入れてもOK
豆乳は牛乳の代わりにクリーム系のスープに使われますが、実は味噌汁に入れてもおいしく食べられる食品です。
味噌汁の具材を煮込んだあとに、火を弱めて豆乳を入れます。豆乳は甘味のない無調整豆乳を使用し、好みに合わせて量を調節しましょう。最後に味噌を溶いたら、豆乳味噌汁の完成です。
通常の味噌汁よりも白く濁ったような見た目ですが、大豆のまろやかさを感じられる食べ方です。
クリームソースに豆乳を入れてヘルシーに食べる
クリームソースを作るときに、牛乳の代わりに豆乳を入れると、あっさりヘルシーなクリームソースになります。
クリームソースは、多めに作っておけばパスタやグラタンなどさまざまな料理に変身する優れものです。豆乳の風味が弱い方が好みの場合は、牛乳と豆乳の割合を変えて作るとよいでしょう。
冬に食べたい豆乳鍋
健康志向の人に人気なのが豆乳鍋です。
水を使って出汁を作る代わりに、豆乳で出汁を作ります。具材は豚肉や白菜など一般的なもののほか、ニンジン・ごぼう・レンコンなどの根菜類や鮭・ブリなどの魚介類も相性抜群です。
キムチと一緒に煮込んでキムチ豆乳鍋にすると、より身体が温まりますよ。
大豆イソフラボンの摂取上限に注意
豆乳に多く含まれる大豆イソフラボンには、女性ホルモンと同じような作用があるため、過剰に摂取するとホルモンバランスが崩れるリスクがあります。
食品安全委員会が示す大豆イソフラボンの安全な1日の摂取量目安は、70~75mgが上限です。サプリメントなどの特定保健用食品を摂取する場合の上乗せ上限は、+30mgを推奨しています。
大豆イソフラボンの分離体である、大豆イソフラボンアグリコンの各食品100gに含まれる大豆イソフラボンの含有量は、次のとおりです。
食品名 | 平均含有量 |
豆乳 | 24.8mg |
大豆 | 140.4mg |
豆腐 | 20.3mg |
おから | 10.5mg |
納豆 | 73.5mg |
通常の食事では問題にならない量ですが、サプリメントなどを摂る場合には上限目安量に注意しましょう。
豆乳の保存方法
豆乳の栄養素を損なわない保存方法を解説します。
未開封の場合は常温保存でOK
未開封の豆乳は、パックに記載されている賞味期限まで常温で保存できます。
未開封の場合の賞味期限は製造メーカーによって幅がありますが、おおむね3ヶ月程度です。ただし、日本のように高温多湿の気候では未開封でも傷みやすいため、日光の当たらない涼しい場所に保管しておくとよいでしょう。
開封後は冷蔵保存が必要
開封後は冷蔵庫で保管し、2~3日で飲みきるようにしましょう。
豆乳は殺菌処理をされ、同じように殺菌した容器に密閉されます。未開封の状態では内部の衛生状態が保たれますが、一度開封すると空気と一緒に雑菌なども入り込んでしまいます。
環境中の細菌は少量なら人間の身体に害はなく、数日程度の保存なら問題はありません。しかし保存期間が長くなると、栄養たっぷりの豆乳内で雑菌が繁殖して、食中毒などのリスクが高まるので注意が必要です。
豆乳が固まってしまった場合の対処法
豆乳を飲もうとしたら固まっていた、という経験のある方もいるかもしれません。同じ大豆製品である豆腐や湯葉のように、固まった豆乳もそのまま飲めそうに思えますが、固まった豆乳を飲むのは危険です。
豆乳は製造時に殺菌し容器に充填されますが、開封すると容器内に空気が入ります。そのときに周囲の細菌も一緒に入り込むことで、豆乳内で細菌が繁殖し、固形成分が発生する原因になるのです。
豆乳を飲もうとしたときに固まっていることに気が付いたら、飲むのをやめて残った豆乳は破棄しましょう。