牡蠣の栄養と効果効能・調理法・保存法

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oyster

牡蠣の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、牡蠣に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

牡蠣とは

牡蠣(oyster)は、あさりやハマグリなどと同じ二枚貝の一種です。通常、二枚貝は殻を開閉するために貝柱を2つ持っていますが、牡蠣には1つしかありません。

牡蠣は一度岩場にくっつくとほとんど移動しない性質を持つため、筋肉量が少なく身体のほとんどが内臓で構成されています。この内臓にビタミンやミネラルが多く含まれており、その栄養価の高さから牡蠣は「海のミルク」とも呼ばれています。

牡蠣は世界中で古くから食されている食品で、日本では室町時代には養殖技術が完成していたと言われています。

全国各地の近海で獲れ、有名な産地は北海道、広島県、宮城県など。もっとも漁獲量が多いのは広島県で、全体の漁獲量のうち約60%を占めています。

牡蠣の品種・種類

日本で獲れる牡蠣は、大きく分けると2種類あります。それぞれの特徴をご紹介します。

真牡蠣

冬から春にかけて旬を迎える品種が真牡蠣(マガキ)です。浅瀬でも育つので養殖しやすく、主に太平洋側で育てられています。市販されている真牡蠣のほとんどが養殖です。

ブランド牡蠣としては、北海道厚岸産の「カキえもん」、岩手県産の「雪解け牡蠣」などがあります。広島県特有のブランド牡蠣である「かき小町」は真牡蠣を品種改良したもので、夏でも食べられるのが特徴です。

岩牡蠣

岩牡蠣(イワガキ)は6月から8月の夏時期に旬を迎える牡蠣です。近年は養殖も増えましたが、天然物もいまだ多くあります。海の深くにある岩場に生息しているため、天然物の場合は素潜りなどの方法で獲られます。

真牡蠣に比べサイズが大きく、殻も頑丈な点が特徴。新潟県や鳥取県など日本海側で漁獲されることが多く、鳥取県で獲れる「夏輝」はブランド牡蠣のひとつとして有名です。

牡蠣に含まれる成分・栄養素

牡蠣100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

牡蠣にはビタミンB群や亜鉛、タウリンなどが多く含まれることからエナジーフードとして知られています。とくに亜鉛の含有量は食品の中でトップクラスです。

ミネラルやビタミンが豊富で栄養価の高い牡蠣は、健康維持にも大いに役立つ食品と言えます。

食 品 名単位かき 養殖 生かき 養殖 水煮かき 養殖 フライかき くん製油漬缶詰
廃 棄 率%75000
エネルギーkJ24537810761196
kcal5890256288
水 分g8578.746.651.2
たんぱく質アミノ酸組成によるたんぱく質g4.97.35.5-
たんぱく質g6.99.97.612.5
脂質脂肪酸のトリアシルグリセロール当量g1.32.21021.7
コレステロールmg386036110
脂質g2.23.611.122.6
炭水化物利用可能炭水化物(単糖当量)g2.57.115.6-11.2
g*
利用可能炭水化物(質量計)g2.36.514.2-10.1
差引き法による利用可能炭水化物g6.710.13612.1
***
食物繊維総量g00-0
糖アルコールg----
炭水化物g4.97.132.911.2
有機酸g0.10.10.1-
灰分g2.11.71.82.5
無機質ナトリウムmg460350380300
カリウムmg190180180140
カルシウムmg84596735
マグネシウムmg65425342
リンmg100140110260
mg2.12.91.84.5
亜鉛mg14181225
mg1.041.440.872.81
マンガンmg0.390.370.371.03
ヨウ素μg677150-
セレンμg466244-
クロムμg343-
モリブデンμg456-
ビ タ ミ ンレチノール(ビタミンA)μg244218Tr
α|カロテンμg111-
β|カロテンμg61011-
β|クリプトキサンチンμg000-
β|カロテン当量μg6111218
レチノール活性当量μg2443192
ビタミンDμg0.10.10.10
α-トコフェロールmg1.32.93.19.5
β-トコフェロールmg000.10
γ-トコフェロールmgTrTr46.7
δ-トコフェロールmg000.20.9
ビタミンKμg0Tr210
ビタミンB1mg0.070.070.070.05
ビタミンB2mg0.140.150.160.09
ナイアシンmg1.51.61.41.6
ナイアシン当量mg2.63.32.6-3.5
ビタミンB6mg0.070.070.070.02
ビタミンB12μg23243032
葉 酸μg39313325
パントテン酸mg0.540.410.390.56
ビ オ チ ンμg4.87.44.4-
ビタミンCmg3320
アルコールg----
食塩相当量g1.20.910.8
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

牡蠣の効果・効能

牡蠣に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

ビタミンB12と鉄で貧血予防

牡蠣には、ミネラルの一種である鉄が含まれています。鉄が欠乏すると血液内のヘモグロビンが減少し、貧血を起こしやすくなります。女性にはとくに必要な栄養素と言えるでしょう。

また、牡蠣に豊富に含まれるビタミンB12も貧血と関わりの深いビタミンです。欠乏すると巨赤芽球性貧血を起こす危険性が高まります。

どちらも妊娠期は通常より多めの摂取が推奨される栄養素で、これらの栄養素を豊富に含む牡蠣は貧血予防にうってつけの食品と言えるでしょう。

グリコーゲンやタウリンでスタミナアップ

牡蠣には糖質が多く含まれますが、その約半分はグリコーゲンという物質です。グリコーゲンは体内でエネルギー源となる栄養素で、不足するとスタミナが低下しやすくなります。

また、牡蠣はスタミナアップに効果的なタウリンも豊富です。タウリンは栄養ドリンク剤にも配合され、疲労回復作用が期待されています。人間の身体のさまざまな臓器に存在し、摂取すると心臓や肝臓の機能アップにも役立ちます。

亜鉛は成長や健康維持に重要

ミネラルの一種である亜鉛は、体内でさまざまな作用を持ちます。全身の細胞に存在し、免疫機能の維持や正常な味覚にも関わる栄養素です。

とくに子供の成長には欠かせない栄養素で、妊娠中や乳児期には積極的に摂取することが推奨されています。

セレンのアンチエイジング作用

セレンには抗酸化作用があり、体内で発生する活性酸素の働きを弱めてくれます。活性酸素は過剰に発生すると、細胞を傷つける危険性がある物質です。

老化とも関係の深い物質なので、セレンが含まれる牡蠣を摂取して健康的な身体を目指しましょう。

牡蠣の食べ方や注意点

牡蠣の栄養素を損なわない食べ方・調理方法・選び方などを解説します。

牡蠣の選び方

新鮮な牡蠣を選ぶには、まず身がふっくらして透明感のある牡蠣を選びましょう。身が潰れてしまっていたり、黄色がかっていたりする牡蠣は鮮度が落ちている証拠です。

「外套膜(がいとうまく)」と呼ばれる膜部分の黒い模様がはっきりしている牡蠣も、鮮度が高いと言えます。

殻付きの牡蠣の場合は、口が閉じているものを選びましょう。また、傷が少なく、殻に厚みがある牡蠣もおすすめです。

効率よく栄養を摂取するなら生食

水溶性のビタミンやタウリンは熱に弱いため、栄養素を効率よく摂取するなら生食がベストです。

また、亜鉛はクエン酸を同時に摂取することで吸収効率が高まるため、牡蠣にレモンをかけて食べる方法は栄養摂取の観点からも理にかなっています。牡蠣に含まれる鉄もビタミンCと相性が良いので、より吸収しやすくなるでしょう。

アンチエイジング目的なら野菜と合わせて

牡蠣には活性酸素を弱める作用を持つセレンが含まれます。セレンの抗酸化パワーをより高めるには、抗酸化ビタミンが多く含まれる野菜と合わせるのが良いでしょう。

抗酸化作用の高いリコピンが含まれるトマトや、β‐カロテン・ビタミンEなどを豊富に含むパプリカなどの野菜がおすすめです。

ノロウイルスを死滅させるには加熱調理

牡蠣をはじめとする二枚貝は、ノロウイルスの危険性があるため注意が必要です。汚染された牡蠣を生で食べてしまった場合、腹痛や嘔吐などの中毒症状を招きます。

この汚染の有無は鮮度ではなく、育った海域が関係しています。生のまま食べたい場合は、保健所が指定した海域で獲れる「生食用の牡蠣」を必ず選びましょう。

生食用以外の牡蠣を食べる場合は、加熱調理が有効です。牡蠣の中心部が85度より高い状態のまま1分以上加熱すると、ノロウイルスは死滅すると考えられています。

心配な人は生食用であっても加熱してから食べると良いでしょう。また、ノロウイルスの二次感染を防ぐために、牡蠣の調理に使った器具はよく洗ってから次の調理に使うようにしてください。

妊娠期は生食を避けよう

牡蠣はビタミンやミネラルがたっぷりで、妊婦にとって必要な栄養素を豊富に含んでいます。

しかし妊娠中は免疫力が落ちているため、ノロウイルスに汚染された牡蠣を食べると、食中毒の症状が重く出てしまう場合があります。妊娠期に食べる場合はとくに、調理する際にしっかり加熱してから食すようにしましょう。

牡蠣の保存方法

牡蠣の栄養素を損なわない保存方法を解説します。

ただし牡蠣は鮮度が重要なので、なるべく購入した日に食べ切るのが賢明です。数日間保存したい場合は、下記の方法を参考にしてください。

むき身の場合

密閉されたパックに入った牡蠣のむき身はそのまま冷蔵保存し、パッケージに表示されている期限以内に食べ切るようにしましょう。開封してしまった場合は水で洗った後、バットなどに並べて保存します。保存期間は1日から2日程度です。

冷凍保存する場合は、片栗粉をまぶしてから塩水で洗うと、解凍したときに身が縮みにくくなります。水気をよく切り、バットに並べて冷凍保存します。保存期間は1ヶ月で、調理する場合は塩水解凍か自然解凍がおすすめです。

殻付きの場合

殻付きの牡蠣は殻を開かず、購入した状態のまま冷蔵庫に入れます。乾燥しないように塩水を含ませたキッチンペーパーに包み、ラップをしてから保存してください。保存期間の目安は2日から3日程度ですが、なるべく早く食べきりましょう。

冷凍保存する場合は牡蠣を殻のままよく洗い、水気を切ったら保存袋などに入れます。1ヶ月程度日持ちしますが、食べる際は必ず加熱しましょう。解凍する場合は電子レンジで加熱する方法で構いません。

参考文献

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