ひじきの栄養と効果効能・調理法・保存法
3777views
ひじきの旬や原産地、種類などの基本情報、ひじきに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
ひじきとは
ひじきとは、褐藻類ホンダワラ科に分類される海藻の仲間です。潮間帯と呼ばれる、潮の満ち引きが激しい岩場に生息しています。環境の変化に強いため、市場への流通量が安定しています。
日本に流通するひじきのおよそ9割が、中国や韓国などで養殖された外国産です。日本国内では、房総半島や伊勢志摩、紀伊半島などの関東以南が主な原産地ですが、全国の海岸で生息がみられます。特に、長崎県や三重県、大分県など中国・四国・九州地方で多く収穫されています。国産のひじきは、ほとんどが天然ものです。
ひじきは、乾燥ひじきとして市販されていることが多く、旬がないイメージがあります。地域によって旬の時期がずれることはありますが、一般的なひじきの旬は3月~5月です。
ひじきは旬の時期になると、全長1mを超えるほどに成長します。根を残して刈り取ることで、翌年には同じくらいまで成長する仕組みです。冬に刈り取った新芽のひじきを「寒ひじき」と呼びます。
日本では、縄文・弥生時代にはすでにひじきが食べられていた報告があり、古くから和食に利用されている食べ物です。日本の軟水を使った農作物はカルシウムが少ないため、当時はひじきなどの海藻から、カルシウムを摂っていたと考えられています。
ひじきの品種・種類
国産のひじきは天然ものが多いため、品種改良はされておらず、ひじきに品種の概念はありません。しかし、産地によって加工方法が異なるため、味や食感が変わることもあります。
ひじきの可食部は、芽と茎の2種類です。それぞれ食感や形が異なるので、調理の際に使い分けるとよいでしょう。
芽ひじき
芽ひじきとは、ひじきの葉にあたる部分です。芽ひじきは、長ひじきに比べて細くて柔らかいのが特徴。そのため、炊き込みご飯や煮物などに使うと、味が馴染みやすいでしょう。
長ひじき
長ひじきとは、ひじきの茎にあたる部分です。芽ひじきよりも硬く、コリコリとした食感が楽しめます。短く細い芽ひじきに対して、長く太いのが特徴です。
ひじきに含まれる成分・栄養素
ひじき100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
文部科学省によると、ひじきは茹でるときに使用する釜によって栄養素が変化するとされています。生ひじきを加工するときに使われるのは、主にステンレス製か鉄製の釜です。下記表のとおり、ほとんどの栄養素で含有量が異なります。
大きく違うのは鉄で、ステンレス釜で加工した乾燥ひじき100gでは6.2mgであるのに対し、鉄釜では58.2mgと9倍以上も多く含まれています。
ひじきは、甲状腺ホルモンの構成成分となるヨウ素を多く含むのが特徴です。また、ナトリウムやカリウムなどのミネラルも豊富で、健康を整える効果のある栄養素が多く含まれています。
食品名 | 単位 | ほしひじき ステンレス釜 乾 | ほしひじき ステンレス釜 ゆで | ほしひじき ステンレス釜 油いため | ほしひじき 鉄釜 乾 | ほしひじき 鉄釜 ゆで | ほしひじき 鉄釜 油いため |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 149 | 10 | 51 | 145 | 10 | 51 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 625 | 40 | 213 | 605 | 40 | 213 |
水 分 | g/100 g | 6.5 | 94.8 | 89.5 | 6.5 | 94.8 | 89.5 |
たんぱく質 | g/100 g | 9.2 | 0.7 | 0.8 | 9.2 | 0.7 | 0.8 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 7.2 | 0.5 | 0.6 | - | - | - |
脂 質 | g/100 g | 3.2 | 0.3 | 4.7 | 3.2 | 0.3 | 4.7 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 1.7 | -0.2 | -4.4 | - | - | - |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.59 | -0.06 | -0.37 | - | - | - |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.37 | -0.04 | -2.62 | - | - | - |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.63 | -0.06 | -1.19 | - | - | - |
コレステロール | mg/100 g | Tr | 0 | 0 | Tr | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 58.4 | 3.4 | 4.1 | 56 | 3.4 | 4.1 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | 0.4 | 0 | 0 | - | - | - |
水溶性食物繊維 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
不溶性食物繊維 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
食物繊維総量 | g/100 g | 51.8 | 3.7 | 4.5 | 51.8 | 3.7 | 4.5 |
灰 分 | g/100 g | 22.7 | 0.8 | 1 | 25.2 | 0.8 | 1 |
ナトリウム | mg/100 g | 1800 | 52 | 64 | 1800 | 52 | 64 |
カリウム | mg/100 g | 6400 | 160 | 200 | 6400 | 160 | 200 |
カルシウム | mg/100 g | 1000 | 96 | 110 | 1000 | 96 | 110 |
マグネシウム | mg/100 g | 640 | 37 | 44 | 640 | 37 | 44 |
リン | mg/100 g | 93 | 2 | 3 | 93 | 2 | 3 |
鉄 | mg/100 g | 6.2 | 0.3 | 0.3 | 58.2 | 2.7 | 2.9 |
亜鉛 | mg/100 g | 1 | 0.1 | 0.1 | 1 | 0.1 | 0.1 |
銅 | mg/100 g | 0.14 | 0.01 | 0.01 | 0.14 | 0.01 | 0.01 |
マンガン | mg/100 g | 0.82 | 0.06 | 0.08 | 0.82 | 0.06 | 0.08 |
ヨウ素 | µg/100 g | 45000 | 960 | 1300 | 45000 | 960 | 1300 |
セレン | µg/100 g | 7 | Tr | 0 | 7 | Tr | 0 |
クロム | µg/100 g | 26 | 1 | 2 | 26 | 1 | 2 |
モリブデン | µg/100 g | 17 | 1 | 1 | 17 | 1 | 1 |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 2 | 0 | Tr | 2 | 0 | Tr |
β-カロテン | µg/100 g | 4400 | 330 | 390 | 4400 | 330 | 390 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 18 | 1 | 2 | 18 | 1 | 2 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 4400 | 330 | 390 | 4400 | 330 | 390 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 360 | 28 | 33 | 360 | 28 | 33 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 5 | 0.4 | 1.3 | 5 | 0.4 | 1.3 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0.4 | Tr | 1.8 | 0.4 | Tr | 1.8 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | Tr | 0 | 0 | Tr |
ビタミンK | µg/100 g | 580 | 40 | 43 | 580 | 40 | 43 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.09 | Tr | 0.01 | 0.09 | Tr | 0.01 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.42 | 0 | Tr | 0.42 | 0 | Tr |
ナイアシン | mg/100 g | 1.8 | 0 | 0 | 1.8 | 0 | 0 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 93 | 1 | 2 | 93 | 1 | 2 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.3 | 0 | 0 | 0.3 | 0 | 0 |
ビオチン | µg/100 g | 17.4 | 0.7 | 0.9 | 17.4 | 0.7 | 0.9 |
ビタミンC | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
食塩相当量 | g/100 g | 4.7 | 0.1 | 0.2 | 4.7 | 0.1 | 0.2 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | 4.3 | - | - | 4.3 |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | 990 | 870 | - | 990 | 870 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
ひじきの効果・効能
ひじきに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
カルシウムで強い骨を形成
カルシウムは、骨の主成分となる栄養素です。血中のカルシウムが不足すると、骨からカルシウムが溶け出します。その状態が長く続くと、骨粗しょう症になるリスクが高まります。
カルシウムは骨の成分となるだけではなく、血圧や脳神経の維持にも効果的です。カルシウムが欠乏すると、高血圧や動脈硬化を起こしやすくなると考えられています。
カルシウムの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI
鉄で鉄欠乏性貧血を予防
鉄は、ヘモグロビンとして赤血球の産生に利用される栄養素です。血中の赤血球は酸素を取り込んで、身体中の細胞に運ぶ役割をしています。鉄が欠乏し、ヘモグロビンが減少すると身体が酸素不足になり、めまいや疲労感、動悸を生じて貧血になります。
日本では、鉄の欠乏によって起こる鉄欠乏性貧血が3分の2を占めており、特に女性に起こりやすい貧血です。無理なダイエットや月経で、体内の鉄が欠乏すると起こりやすくなります。
ひじきには鉄が豊富で、カロリーも少ないため、ダイエット中に積極的に摂りたい食材です。
鉄の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ヨウ素が自律神経を正常に維持
ヨウ素は、甲状腺ホルモンの構成成分となる栄養素です。自律神経を維持し、身体を健康に保つ効果があります。
ヨウ素が不足すると、甲状腺の機能が低下して、自律神経系を保てなくなるリスクがあります。ヨウ素には、身体や脳の成長や発達に関係する効果もあり、胎児の生育にも欠かせない栄養素です。
ヨウ素の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
β-カロテンの抗酸化作用で老化防止
β-カロテンは、カロテノイドの一種で、体内に摂取されるとビタミンAに変化する栄養素です。ビタミンAは、皮膚や目を健康に保つ働きをしています。
β-カロテンは強い抗酸化作用を持ち、老廃物である活性酵素を除去して老化を防ぐ効果があります。
β-カロテンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ひじきの食べ方
ひじきの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
ひじきの戻し方
市販のひじきは乾燥タイプが多く、水やお湯で戻す必要があります。ひじきを戻す方法は、下記の3つです。
◎水戻し
◎茹で戻し
◎茹でこぼし
水戻しは、乾燥ひじきをたっぷりの水に浸け、30分程度置いてから水を捨てて戻す方法です。火を使う必要がなく、料理の片手間で下処理できます。
茹で戻しは、鍋に乾燥ひじきと水を入れ、水が沸騰したら弱火にして5分間茹でる方法です。火を使う必要はありますが、水戻しよりも早くひじきを戻せます。
茹でこぼしとは、30分水で戻したあとに、沸騰したお湯に移して弱火で5分間茹でる方法です。手間はかかりますが、ひじきに含まれるヒ素を極力減らせます。
上記3つの方法で戻したひじきは、ザルに移して流水で約30秒洗って下処理は完了です。
ひじきの可食部位別おすすめの食べ方
柔らかい芽ひじきは、味が染み込みやすいため、炊き込みご飯に入れるのがおすすめです。また、煮物では長ひじきよりも短時間で味が染み込むので、忙しいときは煮物にも芽ひじきを使うとよいでしょう。
長ひじきは、コリコリとした食感を活かせる炒め物やナムルがおすすめの食べ方です。煮物に入れても、芽ひじきとは違う存在感のある食感が楽しめます。
ひじきに含まれるヒ素は通常量なら問題ない
2004年英国食品規格庁は、ひじきに含まれる多量のヒ素について勧告をだしました。ヒ素により、がんのリスクが高まるとの指摘があったためです。
イギリスの勧告に対し、厚生労働省は日本人が摂取するひじきの量では、健康に問題はないと発表しました。健康に影響がでるとされるのは、ひじきを1日平均で4.7g以上を継続的に摂取したケースです。日本人のひじきの1日平均摂取量は約0.9gとされ、健康被害がでる量ではありません。
ひじきに含まれる無機ヒ素は、水溶性の成分です。そのため、加工する段階で茹でている乾燥ひじきのヒ素は、ほとんど流れ出てしまっていると考えられます。それでもヒ素が気になる場合は、調理前の水戻し時間の延長や茹でこぼしで、さらに含有ヒ素量を減らすことが可能です。
ただし、生のひじきにはヒ素が残留しているため、しっかりと茹でる必要があります。不安なときは生ひじきは避け、乾燥ひじきを使うとよいでしょう。
ひじきの保存方法
ひじきの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
乾燥ひじきは長期間の保存が可能
水に戻す前の乾燥ひじきは、一般的に半年から1年間保存できます。未開封の乾燥ひじきであれば、湿度の低い涼しい場所で保管します。開封後は冷蔵庫や冷凍庫で保存すると、味が悪くなりにくいでしょう。
戻したひじきは冷凍保存がおすすめ
水戻ししたひじきは痛みやすいため、できるだけ早く食べるようにしましょう。水戻し後のひじきは、冷凍保存すると3ヶ月程度は味を保てます。
ひじきの煮物は冷凍保存すると長くもつ
調理後のひじきは保存できないイメージがありますが、ひじきの煮物は冷凍保存が可能です。
お弁当用の冷凍食品でも、ひじきの煮物がよく販売されています。同様に、家庭で調理したひじきの煮物も、フリーザーパックなど空気が入らないよう袋に入れて保存すると、数ヶ月保存できます。