お腹の張り(腹部膨満感)に効く食べ物と予防する生活習慣
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腹部膨満感の症状や定義、原因について解説したうえで、お腹の張りに効く栄養素を豊富に含む食べ物や飲み物を紹介します。
腹部膨満感とは|お腹が張るのはなぜ?
腹部膨満感は、食べ過ぎや飲み過ぎにより胃が膨らんだり、腸にガスがたまったりして起こる症状で、お腹全体やお腹の一部が張った感じがするものを指します。
暴飲暴食を原因とするものや、腸内環境(腸内フローラ)の悪化、胃腸の機能低下を原因とするもののほか、呑気症といって空気を飲み込む量の多さを原因とするものもあるなど、腹部膨満感と一口に言ってもさまざまです。
腹部膨満感を伴う疾患
食べ過ぎや飲み過ぎに心当たりがないのに、なぜかお腹の張りが解消しないという方は、腹部膨満感を伴う病気を患っている可能性があります。そのほかの症状と照らし合わせてみましょう。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群では、ストレスや自律神経の乱れ、情緒の不安定などを原因として腸の運動機能に異常をきたします。日本だけでなく先進国に多い病気で、消化器科を受診する人の3割が過敏性腸症候群に該当するという報告もあります。
腸が適切なぜん動運動を行えないことにより、下痢や便秘が長期間続くほか、血行不良や自律神経の乱れから来るめまい・頭痛・吐き気・肩こりなどの症状が現れる場合もあります。
次の症状に心当たりがある場合は、過敏性腸症候群を疑ってみるとよいでしょう。
- 普段から下痢、または便秘になることが多い
- 下痢と便秘の症状を繰り返している
- 腹痛や不快感を伴う
- 排便により腹痛や不快感がやわらぐ
- 排便後に残便感がある
大腸がん
大腸がんは、運動不足、野菜や果物の摂取不足、肥満、飲酒、喫煙などの生活習慣をリスク要因として発生する疾患です。
初期段階ではほとんど自覚症状はあらわれません。進行すると、腹部膨満感や下痢・便秘の繰り返し、腹痛、残便感などが現れるほか、血便、貧血、体重減少なども見られます。
大腸がんは進行の早いがんではないため、早期発見により適切な治療を受けることができれば、90%以上の確率で根治できるとされています。生活習慣に不安のある方、また現在40歳以上で大腸がん検診を定期的に受けていない方は、早期の受診を検討した方が良いでしょう。
腹部膨満感の種類と原因
腹部膨満感には、腸管にガスがたまって生じるもの、胃の運動機能が低下して起こるもののほか、体液が腹部にたまって生じるもの(腹水)や、妊娠によって生じるものなどさまざまな原因が考えられます。
ガスによる腹部膨満感(鼓脹)の原因
お腹、特に下腹部が張って苦しいと感じる場合、ガスによる腹部膨満感の可能性が疑われます。
人は食べ物を摂取すると、腸管などの消化管内でガスを発生させます。たまったガスは、普段の呼吸やおならとして排泄されるのですが、ガスの排泄が消化管内でのガスの産生量に追いつかなくなると腹部膨満感が生じます。
消化管内でのガスの産生量が過剰になる原因としては、ストレスによる心因性のものと、腸内細菌叢(腸内フローラ)を原因とするものの大きく2つが考えられます。
心因性のガス産生過剰には、呑気症や自律神経の乱れなども含まれます。
胃部膨満感の原因
胃の重苦しさや不快感をうったえるものを、胃部膨満感と言います。ガスによる腹部膨満感と異なり、胃部膨満感は胃の運動機能低下を主な原因とします。
あるいは、胃の運動機能は正常であっても、それを上回る食事量を慢性的に摂取している場合、消化が追い付かず同じように胃部膨満感を生じます。
胃部膨満感の原因のなかには、胃拡張のような排出障害を原因とするものもあります。胃拡張は単なる食べ過ぎでなく、胃潰瘍が治った後の出っ張りによって胃の出口がせまくなったり、手術後に排出機能が低下したりすることで、胃の内容物を十二指腸へ送り出せないことによって生じます。
腹部膨満感の予防・解消におすすめの食べ物
腹部膨満感の予防・解消に効果的な食べ物を紹介します。
生姜:ガスの排出を助ける
生姜は、体温を調節する効果から冷え改善などの目的で摂取されることの多い食品ですが、胃腸の不快感や膨満感の軽減にも効果的です。
生姜に含まれるジンゲロールやショウガオールという成分には、腸で産生されたガスを排出するのを助ける働きがあります。この働きから、生姜の根を乾燥させたものは、ショウキョウと呼ばれ漢方でも用いられます。
生姜の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
米:消化されやすく、ガスを産生しにくい炭水化物
炭水化物のなかには、トウモロコシ・じゃがいも・オートミールのように消化されにくいものもあり、これらの食品を主食として摂取し続けるとガスが過剰に蓄積してしまい、腹部膨満感の原因となる可能性があります。
それに対して米は、小腸で完全に消化される食品であるため、ガスが蓄積する可能性を抑えられるのです。
の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
バナナ:高ナトリウムが原因の膨満感に効果的
バナナに豊富に含まれるカリウムには、過剰な水分を排出してむくみなどの症状を軽減・解消する働きがあります。体が水分を保持しすぎる原因は、ナトリウム(塩分)の過剰摂取によるものです。
そして、膨満感のなかにはガスを原因とするものばかりではなく、カリウムとナトリウムのバランスが崩れたことを原因として生じるものもあります。
前日の夕食などで塩分を過剰に摂取した心当たりがある場合は、翌日の朝食でバナナを摂取してみましょう。ナトリウムとカリウムのバランスが取れて、腹部膨満感が軽減する可能性があります。
なお、カリウムの摂取にはココナッツウォーターもおすすめです。
バナナの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
ヨーグルト:腸内フローラを改善
ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、腸にたどり着くと善玉菌のエサとなることで、悪玉菌が住みにくい環境を作り腸内フローラ(※)の状態を改善に効果を発揮します。
善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れると、腸のぜん動運動が低下して便秘がちになったり、産生された有害細菌を排出するために下痢の頻度が多くなったりします。
腸内フローラを改善するためには、継続的な乳酸菌の摂取が必要とされているため、ヨーグルトや乳酸菌サプリなどによって意識して摂取しましょう。
※腸内フローラ……腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)。腸内の細菌群のこと、およびそのバランスのこと。
乳酸菌の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
きゅうり・アスパラガス:利尿作用により膨満感を緩和する
およそ96%と高い水分量かつ低繊維含有量を誇るきゅうりは、摂取するだけで排尿を増加させる利尿作用が期待できます。
またアスパラガスに含まれるアミノ酸の一種、アスパラギン酸にも利尿作用があり、同様に排尿を増加させる効果が期待できるでしょう。
保持する水分量が減少することで、腹部膨満感が軽減する可能性があります。
きゅうりの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
パパイヤ:適度な下剤効果で腸の働きを助ける
生のパパイヤには、パパインと呼ばれる乳白色の物質が含まれています。パパインを含んだ果実は、熟すと適度な下剤効果を持ち、腸の機能をサポートします。
腹部膨満感予防のために避けたいお腹の張りを起こす食べ物
普段から慢性的に腹部膨満感を感じる人は、お腹の張りを引き起こしやすい食べ物を避けましょう。
甘味料
甘味料は、ガスがたまり下痢などを引き起こす可能性があります。原材料表にキシリトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトールなどの表示がある食品は食べ過ぎに注意しましょう。
炭酸水
炭酸水は、含有するガスが腹部膨満感の原因になります。また、カロリーゼロの炭酸飲料には甘味料が含まれるため、同じく腹部膨満感の原因となります。
にんにく
にんにくは、胃腸から吸収されにくい糖質(FODMAP)を多く含んだ高FODMAPな食品です。高FODMAPな食品は、水分をたもったまま腸を移動するのでその他の食品に比べて過剰発酵しやすいとされています。
過剰に発酵した食品はガスの産生量を増やすため、注意が必要です。
にんにくの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
ポップコーン
ポップコーンは低カロリーなわりにかさがあるため、お腹の張りやすい食べ物のひとつです。ポップコーンの食べ過ぎによる腹部膨満感は一時的なものですが、お腹の張りを解消したいときは控えた方が良いでしょう。
大盛のサラダ
ポップコーンと同じく、サラダもカロリーの低さに対してかさがあるため、食べ過ぎると胃を占領してお腹が張る原因となります。
特に、玉ねぎやきのこといった、にんにくと同じ高FODMAPな食品がサラダに吹く前ていると、さらに膨満感を増加させる可能性があります。
コーヒー
ブラックコーヒーは胃腸にとって刺激物となります。胃腸が弱い人は飲むだけで炎症を引き起こす可能性があり、また飲みやすくするために砂糖や甘味料を加えればやはり刺激が強くなってしまいます。
コーヒーを飲んだ直後にお腹に異変を感じる方は、普段から飲む量を減らすようにしましょう。
牛乳
牛乳をはじめ、乳製品に含まれる乳糖(ラクトース)を受け付けない乳糖不耐症の人も多くいます。乳糖のほか、牛乳のタンパク質の80%を占めるカゼインを受け付けないカゼイン不耐症の人も少なくありませんので、乳製品を摂取したときの胃腸の様子もしっかりチェックしましょう。
牛乳の代替品としては、アーモンドミルクやココナッツミルクがおすすめです。
豆類
豆類には、腹部膨満感のなかでも特に胃部膨満感を引き起こすデンプン質が含まれています。
しかし、豆類は多くの人にとって重要な栄養源でもあるため、だからといって豆類を一切摂らないようにすることもおすすめできません。むしろ、多少の胃部不快感があったとしても積極的に食べることが推奨される食品です。
豆類そのものを回避するのではなく、調理前に水でしっかりすすいだり、その他の胃部膨満感につながる食品を避けたりすると良いでしょう。
記事の監修
AYA ARAHARA
ヨガインストラクター。
ホテル、外資系化粧品メーカー、美容業の広報/PRとして業務を経て、アロマテラピーや美容業界の実用書等の、編集・執筆活動のほか、ライフワークとしてヨガインストラクターとしても活動している。
近著としては、「ママになっても美しい人の食事術」(PHP研究所)編集協力、「枯れないからだ」(河出書房新社)編集協力など多数。最新作は「寝る前5分の新習慣! 極上の眠りに導く安眠ヨガ」が好評発売中!
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