ニンジンの栄養と効果効能・調理法・保存法
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ニンジンの旬・原産地・品種などの基本情報から、ニンジンが持つ栄養素とその効果効能、ニンジンの栄養素を損なわない調理法や保存法までを解説します。
ニンジンとは
ニンジンは、プロビタミンA(ビタミンAの前駆体)であるカロテンを豊富に含む、セリ科ニンジン属の緑黄色野菜です。
ニンジンのカロテン量は緑黄色野菜の中でもひときわ豊富で、カロテンという成分名もニンジンの英名carrotに由来しています。
16世紀に日本へ伝来したころは葉も根も食用にしていましたが、明治時代以降は根だけを食べるようになりました。
いまでも、根ほど広く出回らないものの、葉も食用として出荷されることがあります。天ぷらやお浸し、油炒めなどに適していて、味はセリに似て独特の清涼感があるのが特徴です。
旬は秋から冬にかけて。なお、現在おもに市販されている五寸ニンジンは全国各地の気候に合わせて通年栽培されており、旬に関わらず出荷されています。
ニンジンの品種
ニンジンの品種は大きく分けて2種類です。
アフガニスタン原産で、そこからヨーロッパへ伝わった西洋系ニンジンと、アジアへ伝わった東洋系ニンジンがあります。
西洋系ニンジン
日本で主に栽培されているのは、栽培の容易さから西洋系が中心です。
西洋系ニンジンの一般的な品種は、オレンジ色でβ-カロテンが豊富な五寸ニンジン。長さがおよそ五寸ほどであることからそう呼ばれます。
東洋系ニンジン
東洋系ニンジンのなかでは、京野菜として知られる京人参(金時ニンジン)が代表的。
赤色をしており、五寸ニンジンとは異なりβ-カロテンをほとんど含まない代わりに、赤色のカロテノイド色素であるリコピンが豊富です。
その他のニンジン
ちなみに漢方などで用いられる朝鮮人参(オタネニンジン)は、人参という名前がついているものの分類上は別の種で、ウコギ科の多年草に属します。
ニンジンに含まれる成分・栄養素
ニンジン100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
皮付きの状態と皮むきの状態で比較すると、皮付きのβ-カロテン量が300μg豊富なことが分かります。このことから、ニンジンは皮にも栄養が豊富に含まれていることが明らかです。
しかし皮をむいた状態でも100gあたり8300μgのβ-カロテンを含んでおり、中サイズ1/2本で1日のビタミンA必要摂取量が摂れるほどの豊富さを誇ります。
この含有量は、摂取が容易な一般野菜や果物のなかでトップクラスです。
なお、ニンジンの栄養は冷凍してもあまり損なわれないため、長期の保存には冷凍が適しています。ただし冷凍すると食感が損なわれるため、食べやすさを考えると細切り・薄切りにして保存した方がよいでしょう。
調理方法や保存方法の詳細については後述しますので、そちらも合わせてご確認ください。
食品名 | 単位 | ニンジン・皮付き(生) | ニンジン・皮付き(茹で) | ニンジン・皮むき(生) | ニンジン・皮むき(茹で) | ニンジン・皮むき(油炒め) | ニンジン(冷凍) | ニンジンジュース | 葉ニンジン(生) |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 39 | 36 | 36 | 36 | 109 | 35 | 28 | 18 |
水 分 | g/100 g | 89.1 | 90.2 | 89.7 | 90 | 79.1 | 90.2 | 92 | 93.5 |
たんぱく質 | g/100 g | 0.7 | 0.6 | 0.8 | 0.7 | 1.1 | 0.8 | 0.6 | 1.1 |
炭水化物 | g/100 g | 9.3 | 8.4 | 8.7 | 8.5 | 12.4 | 8.2 | 6.7 | 3.7 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.7 | 1 | 0.6 | 0.8 | 1 | 1.1 | 0.2 | 0.5 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 2.1 | 1.9 | 1.8 | 2 | 2.1 | 1.8 | 0 | 2.2 |
食物繊維総量 | g/100 g | 2.8 | 3 | 2.4 | 2.8 | 3.1 | 2.9 | 0.2 | 2.7 |
ナトリウム | mg/100 g | 28 | 23 | 34 | 27 | 48 | 64 | 19 | 31 |
カリウム | mg/100 g | 300 | 270 | 270 | 240 | 400 | 170 | 280 | 510 |
カルシウム | mg/100 g | 28 | 32 | 26 | 29 | 35 | 30 | 10 | 92 |
マグネシウム | mg/100 g | 10 | 12 | 9 | 9 | 13 | 8 | 7 | 27 |
リン | mg/100 g | 26 | 29 | 25 | 26 | 37 | 35 | 20 | 52 |
鉄 | mg/100 g | 0.2 | 0.3 | 0.2 | 0.2 | 0.3 | 0.3 | 0.2 | 0.9 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.2 | 0.3 | 0.2 | 0.2 | 0.3 | 0.2 | 0.1 | 0.3 |
銅 | mg/100 g | 0.05 | 0.05 | 0.05 | 0.05 | 0.08 | 0.05 | 0.04 | 0.04 |
マンガン | mg/100 g | 0.12 | 0.16 | 0.1 | 0.17 | 0.14 | 0.16 | 0.07 | 0.26 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 8600 | 8500 | 8300 | 8700 | 12000 | 9800 | 4500 | 1700 |
レチノール活性当量(ビタミンA) | µg/100 g | 720 | 710 | 690 | 730 | 1000 | 810 | 370 | 140 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール(ビタミンE) | mg/100 g | 0.4 | 0.4 | 0.5 | 0.4 | 1.7 | 0.7 | 0.2 | 1.1 |
ビタミンK | µg/100 g | 17 | 15 | 18 | 18 | 22 | 4 | 2 | 160 |
葉酸 | µg/100 g | 21 | 17 | 23 | 19 | 31 | 24 | 13 | 73 |
ビオチン | µg/100 g | - | - | 2.8 | 2.5 | - | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 6 | 4 | 6 | 4 | 5 | 5 | 1 | 22 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
ニンジンの効果・効能
ニンジンに含まれる栄養の効果・効能を解説します。
β-カロテンがビタミンAとして機能。摂りすぎの心配がないのも嬉しい
ニンジンに豊富に含まれるβ-カロテンは、ビタミンAが不足するとビタミンAに変化して作用するプロビタミンA(ビタミンAの前駆体)の一種です。
ビタミンAには、皮膚や粘膜を丈夫にして感染症などへの抵抗力を強めたり、視機能を強化して夜間の視力を維持したりといった機能があります。
プロビタミンAの大きな特長のひとつが、ビタミンAが不足したときだけビタミンAになるため、過剰摂取の心配がない点です。
ビタミンA(レチノール)はレバーなどに多く含まれており、食生活によっては過剰摂取の心配がありますが、β-カロテンとして摂取する場合はこの心配が必要ありません。
β-カロテンとビタミンCによる抗酸化作用がアンチエイジングに効果
β-カロテンには、ビタミンAとして作用する以外にも、有害な活性酵素から体を守る抗酸化作用や、免疫力を増強する作用があります。
またニンジンにはビタミンCも含まれており、ビタミンCはコラーゲンの合成をサポートする機能や抗酸化作用を持ち、美肌やシミ対策、老化防止効果が期待される栄養素のひとつです。
なお、ニンジンにはビタミンCを失活させるアスコルビナーゼという酵素が含まれており、生食する場合は酢などで酵素の働きを防ぐ必要があると従来は考えられていました。
しかし近年の研究では、失活したビタミンCも本来の機能を果たすことが分かっており、生食でも問題なくビタミンCを摂取することができます。
食物繊維が便秘解消・予防に効果
食物繊維は人の消化酵素で消化することのできない物質の総称で、以前は消化吸収できないことから食べ物のカスとして重要視されていませんでした。
しかし近年、整腸作用などが注目され、現在では第6の栄養素と言われることもあるほど重要な栄養素として注目されています。
食物繊維には水に溶ける水溶性食物繊維と水に溶けない不溶性食物繊維とがあり、ニンジンにはどちらもバランスよく含まれているのが特徴です。
水溶性食物繊維は糖質の吸収を抑え、不溶性食物繊維は便のかさを増やして腸の働きを刺激するほか、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌のエサとなって腸を整えます。
カリウムがむくみ解消・高血圧予防に効果
カリウムには体内の余分なナトリウム(塩分)を体外に排出する作用があるため、塩分の摂り過ぎを調節してむくみや高血圧を予防します。
カリウムが不足した状態を低カリウム血症と言い、筋力低下・自律神経失調・嘔吐・便秘などさまざまな症状を引き起こします。
一方、カリウムを過剰に摂取しすぎると高カリウム血症となり、悪心・嘔吐・知覚過敏・不整脈・脱力感などを引き起こすため、食べ過ぎにも注意が必要です。
カリウムは刻み昆布・干しヒジキ・乾燥ワカメ・味付けのりなどの乾物、インスタントコーヒーなどに多く含まれているため、これらを食べ過ぎている場合は注意してください。
リコピンの抗酸化作用はβ-カロテンの2倍以上
「ニンジンの品種」でも解説した通り、β-カロテンを豊富に含むのは五寸ニンジンをはじめとする西洋系ニンジンです。
京人参をはじめとする東洋系ニンジンのなかには、β-カロテンの代わりにリコピンを豊富に含んだ品種も少なくありません。
リコピンはトマトに豊富に含まれることで有名な栄養素で、強い抗酸化作用を持つことで知られていますが、その効力はβ-カロテンの2倍以上。ビタミンEの約100倍にも匹敵します。
※抗酸化作用とは、体内で発生する活性酵素を除去する働きを指します
ニンジンの調理方法
ニンジンの栄養を損なわない調理方法について解説します。
ニンジンの洗い方
ニンジンの洗い方は、スーパーなどで購入して見た目に汚れがついていない場合は、水洗いするだけで十分です。
見た目がきれいなニンジンは、出荷時点で汚れを落とすために皮をむいているため、そのまま食すことができます。
ただし泥などの汚れがついている場合、特にヘタの周りなどのくぼみに汚れがたまっている場合は、5分程度水につけてしっかり洗いましょう。
葉っぱが付いている場合も洗い方は同様ですが、葉には農薬が残っている場合が多いため、重曹を溶かした水ですすぐか、調理の前に下茹でするとより確実です。
ニンジンのおすすめ調理方法
ニンジンを食べる際は、皮をむかずに食べることでより栄養を効率的に摂取することができます。
またニンジンには、加熱すると壊れる栄養素も豊富に含まれているため、加熱する際はなるべく高温は避け、短時間でサッと火を通すことで、より栄養素を損なわずに吸収できるでしょう。
ニンジンを調理する際の注意点
ニンジンを電子レンジで加熱する際は注意が必要です。100g以下の少量のニンジンを電子レンジで加熱すると、スパークを放ち発火する可能性があります。
ニンジンを電子レンジで加熱する際は、一度に100g以上調理するか、少量の水をかけて発火を回避しましょう。
ニンジンの保存方法
ニンジンの保存方法について解説します。
常温保存
冬場などの寒い季節は、丸ごとなら常温保存が可能です。紙に包むか、段ボール箱に入れたままでもよいでしょう。
3~4日経つと紙や箱が湿ってくるので、これを取り換えることでおよそ1ヵ月程度は保存が可能です。
冷蔵保存
ニンジンは湿気に弱いので、冷蔵保存する際は新聞紙やペーパータオルで包んで、できれば土中と同じように立てて保存しましょう。
紙に包むことで、乾燥と湿気を同時に防ぐことができます。
冷凍保存
カットしたニンジンは切り口から乾燥してすぐ傷んでしまうため、そのままの保存はできません。
薄切りや細切りにして、フリーザーバッグに薄く広げて冷凍しましょう。
ニンジンは解凍したときに食感が変わりやすいため、薄切りや細切りにすることで食感が気になりにくく、より食べやすくなります。
冷凍保存の場合もおよそ1ヵ月の保存が可能です。使用する際は、事前解凍せず凍ったまま加熱すれば食べられます。