黒豆の栄養と効果効能・調理法・保存法

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black soybeans

黒豆の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、黒豆に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

黒豆とは

黒豆(black soybean)とは、大豆の1種で、種皮が黒い大豆のことです。

そもそも大豆には、一般的な色である黄大豆や、種皮の青い青大豆、赤い赤大豆など多くの品種があります。

そのなかで、種皮にアントシアニンと呼ばれる植物性色素を含み、黒い外観をもつのが黒豆です。大ぶりでふっくらとした実は、主に煮豆に使われます。そのほか、熟しきる前に収穫する黒豆の枝豆も注目されています。

黒豆の歴史は古く、平安時代後期には栽培が始まっていたとの記録があります。当時は黒豆ではなく、烏(カラス)のように真っ黒な外見から、烏豆と呼ばれていました。

現在はおせち料理に欠かせない黒豆ですが、黒豆がおせちに入れられるようになったのは、室町時代です。当時は、丹波を中心に栽培されていました。黒豆の煮物が庶民に普及したのは、江戸時代後期からと考えられています。

その頃から、おせち料理の黒豆には、「健康」を祈願する意味が込められるようになりました。現在は北海道や京都府、岡山県などで栽培されており、品種によって原産地が異なります。

黒豆の旬は、品種によって早ければ10月、遅いものでは12月です。枝豆として栽培されるときは、9月~10月に収穫します。一般的な枝豆の旬は初夏に収穫されますが、黒枝豆の場合は秋が旬です。

黒豆の品種

黒豆といえば、京丹波の「丹波黒」が有名です。栽培のしやすさや加工の方法によって、栽培地域に適した品種の改良が進み、70種以上の品種があります。

丹波黒(たんばぐろ)

丹波黒は代表的な品種で、煮豆にも枝豆にも使われる大ぶりな実が特徴の黒豆です。

ふっくらとした大粒な実はやわらかく、適度な粘り気が煮豆に適しています。枝豆用の品種としても人気が高く、熟す前に収穫されます。

栽培期間が長いことや、他の品種よりも栽培の手間がかかることから、流通量が少なく高価な黒豆です。

光黒(ひかりぐろ)

光黒は、北海道など寒い地域で栽培できるように改良された品種です。

他の品種よりも表面の光沢が強く、光り輝いて見えることから、光黒の名前が付けられました。糖質が多く甘味が強いことから、煮豆やお菓子の原料に使われる黒豆です。

玉大黒(たまだいこく)

玉大黒は、丹波黒と同じ極大粒に分類される大型の黒豆です。

長野県で育成された品種で、早熟でウイルスに抵抗性が高いことから、関東を中心に多く栽培されています。

大粒で食感がよいため、煮豆に利用される品種です。

雁喰(がんぐい)

雁喰は、主に東北地方で栽培されている品種です。

丹波黒や玉大黒とは異なり、扁平な形状をしていて、表面にくぼみがあります。このくぼみが鳥に食べられたあとの黒豆に見えることから、カモ科の水鳥「雁(ガン)」が「喰った」黒豆という意味で名付けられたと言われています。

甘味が強いため煮豆に利用される品種で、とくにおせち料理に使われる黒豆です。

クロダマル

クロダマルは、新丹波黒を改良して作られた品種で、九州などの暖地での栽培に向いています。

外観がよく、煮豆に利用されるほか、枝豆としても人気のある品種です。豆腐などの加工食品としても利用されます。

クロダマルの最大の特徴は、新丹波黒よりもアントシアニンの含有量が多いことです。ポリフェノールの1種であるアントシアニンが多いことで、より強い抗酸化活性を持っています。

黒豆に含まれる成分・栄養素

黒豆100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

大豆として一般的な黄大豆と比較して、黒豆は種皮にアントシアニンが豊富に含まれることが特徴です。

アントシアニンはポリフェノールの1種で、強い抗酸化作用を持っています。ワインや、ブルーベリーなどに多く含まれる栄養素です。

また黒豆は、黄大豆と比べて脂質が少ないこともポイントです。タンパク質を積極的に摂りたいが脂質が気になる、という場合は、黄大豆でなく黒豆を選択するのもよいでしょう。

大豆の栄養と効果効能・食べ方・注意点・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

食 品 名単位黒大豆 国産 乾黒大豆 国産 ゆでいり大豆 黒大豆
廃 棄 率%000
エネルギーkJ14526421796
kcal349155431
水 分g12.765.12.4
たんぱく質アミノ酸組成によるたんぱく質g31.513.833.6
たんぱく質g33.914.736.4
脂質脂肪酸のトリアシルグリセロール当量g16.58.520.3
コレステロールmgTr-(Tr)
脂質g18.88.622
炭水化物利用可能炭水化物(単糖当量)g7.71.78.8
g**
利用可能炭水化物(質量計)g7.31.68.3
差引き法による利用可能炭水化物g11.32.617.9
*
食物繊維総量g20.67.919.2
糖アルコールg---
炭水化物g28.99.834.3
有機酸g1.60.31.6
灰分g4.61.45
無機質ナトリウムmg1Tr4
カリウムmg18004802100
カルシウムmg14055120
マグネシウムmg20064220
リンmg620220640
mg6.82.67.2
亜鉛mg3.71.43.7
mg0.960.331.06
マンガンmg2.240.982.37
ヨウ素μg001
セレンμg313
クロムμg2012
モリブデンμg570170240
ビ タ ミ ンレチノール(ビタミンA)μg0-0
α|カロテンμg1Tr2
β|カロテンμg241112
β|クリプトキサンチンμg313
β|カロテン当量μg261114
レチノール活性当量μg211
ビタミンDμg0-0
α-トコフェロールmg3.11.83.1
β-トコフェロールmg1.70.81.3
γ-トコフェロールmg147.216
δ-トコフェロールmg104.811
ビタミンKμg361532
ビタミンB1mg0.730.140.12
ビタミンB2mg0.230.050.27
ナイアシンmg2.50.42.5
ナイアシン当量mg11411
ビタミンB6mg0.50.120.41
ビタミンB12μg0-0
葉 酸μg35043280
パントテン酸mg0.980.170.68
ビ オ チ ンμg269.327
ビタミンCmg3Tr1
アルコールg---
食塩相当量g000
備 考食物繊維:AOAC2011.25法ポリフェノール1.1g(100 g:155mL、100 mL:64g)食物繊維:AOAC2011.25法ポリフェノール0.4g
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

黒豆の効果・効能

黒豆に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

黒豆のタンパク質はダイエット向き

タンパク質は、大豆に多く含まれる栄養素のうちの1つで、主にエネルギー源として使われます。

タンパク質には動物性と植物性の2種類があり、黒豆に含まれるタンパク質は、植物性タンパク質です。

黒豆に含まれる植物性タンパク質は、動物性タンパク質に比べて脂質が少なくカロリーも控えめのため、ダイエット中のエネルギー源としておすすめできます。

体内に取り込まれたタンパク質は、エネルギーに変換されるだけでなく、アミノ酸に分解されて筋肉を作ったり、ホルモンなどの材料になります。

タンパク質の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA

鉄を摂取して貧血予防

鉄は、赤血球や筋肉、肝臓に貯蔵されるミネラルです。

赤血球は、鉄と結合して全身に酸素を運搬する働きをしていて、鉄が欠乏すると貧血を引き起こす原因になります。

月経や出血が起こると、肝臓や脾臓に貯蔵されている鉄が利用されるため、貧血の症状を起こしやすくなります。

鉄の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

食物繊維が豊富な黒豆は便秘に効果的

大豆は食物繊維が豊富な食べ物で、黒豆100g中に含まれる食物繊維は16.0gです。

食物繊維は、水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けずに粘性をもつ不溶性食物繊維があります。黒豆に含まれる食物繊維は、不溶性食物繊維が多く、便の量を増やしたり、腸を刺激して排便を促したりします。

便秘を予防したいときや、改善したいときにも、食物繊維の豊富な黒豆は効果的です。

食物繊維の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法|NANIWA SUPLI MEDIA

β-カロテンで皮膚や粘膜の健康維持

β-カロテンとは、ビタミンAの前駆物質で、体内でビタミンAに変換される栄養素です。かぼちゃやニンジンなど、色の濃い野菜に多く含まれています。

黄大豆と比較して、黒豆はβ-カロテンの多い大豆です。β-カロテンは、体内でビタミンAになると、皮膚や粘膜の機能を維持する働きがあります。

皮膚や粘膜を健康に維持することで、環境中のウイルスなどの侵入を防ぎます。

β-カロテンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

葉酸は正常な細胞合成をサポート

葉酸は、赤血球を作るときに必要な栄養素で、ビタミンB群の1種です。

新しい細胞の合成に必要不可欠な葉酸は、妊娠中の女性や成長期の子どもに欠かせません。葉酸が不足すると、貧血や免疫力の低下、肌荒れなどが起こります。

美容意識の高い人は、意識して摂取したい栄養素です。

葉酸の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

アントシアニンの強い抗酸化作用

アントシアニンとは、赤や青などの植物由来の色素成分です。

黒豆だけでなく、小豆やぶどうやなす、イチゴなど、赤や紫の野菜・果物に多く含まれています。視力に関与する栄養素であり、その健康効果が期待されています。

また、アントシアニンは、強い抗酸化作用がある栄養素です。抗酸化作用によって、老化や動脈硬化の原因になる活性酵素と呼ばれる物質を取り除きます。

黒豆の食べ方

黒豆の栄養素を損なわない調理方法・食べ方・注意点などを解説します。

黒豆が余っているなら黒豆おこわ

黒豆は、おせち料理に煮豆として入れることが一般的です。しかし、年に1度しか使わないとどうしても余ってしまいがち。そんなときは、黒豆おこわがおすすめです。

もち米と黒豆を炊飯器に入れ、1時間程度水に浸します。もち米と黒豆を軽く混ぜたら、炊飯するだけ。

黒豆を茹でる手間がなく、もちもちのおこわに黒豆の風味が楽しめるレシピです。もちろん、普通のお米と一緒に炊いても、ふっくらとした黒豆の食感を楽しめます。

黒豆のミネストローネ

黒豆には和食のイメージがありますが、洋食にも合うため、ミネストローネなどのスープにもおすすめです。

通常、ミネストローネにはひよこ豆やえんどう豆、いんげん豆を混ぜたミックスビーンズが使われます。

そのため、黒豆を入れても違和感がないだけでなく、彩りもよくなります。

大豆イソフラボンを含むサプリメントなどと摂取するときの注意点

黒豆と、大豆イソフラボンを含むサプリメントなどを同時に摂取するときは、摂取量に注意しましょう。

大豆イソフラボンは、黒豆を含む大豆・大豆製品に含まれる栄養素です。女性ホルモンと似た働きをすることで、美容や健康に効果的であると注目されています。

一方で、大豆イソフラボンを含む特定保健用食品などを、大豆製品とは別に大量に摂取する場合は、摂取量に気をつけましょう、ホルモンバランスなどに、マイナスの影響を与える可能性が示唆されています。

そのため、食品安全委員会では、大豆イソフラボンの一日摂取目安量の上限を70~75mgに設定しています。大豆製品に含まれる大豆イソフラボン量を40~45mg、特定保健用食品として摂取する量を30mgとしたときの、摂取目安量の上限です。

黒豆に含まれる大豆イソフラボンの量は、おおよそ100mg/100gと考えられています。1回に食べる量は30g程度のため、含まれる大豆イソフラボンの量は約33mgです。

黒豆などの大豆製品を、通常量摂取する場合は、上限量を超えることはほとんどありません。しかし、サプリメントなどを同時に摂取するときは大豆イソフラボンの1日摂取量に注意が必要です。

黒豆の保存方法

黒豆の栄養素を損なわない保存方法を解説します。

乾燥状態の黒豆は冷蔵保存がおすすめ

水に戻す前の乾燥した黒豆であれば、半年程度は常温、あるいは冷蔵保存が可能です。冬は常温でも保存できますが、梅雨の湿気などでカビが生える恐れがあるため、基本的には冷蔵保存をしましょう。

酸化を防ぎ、風味を保つためには、黒豆を密閉容器に入れるなどして、空気と触れる機会を少なくすることがポイントです。

水に戻してしまったら冷凍保存も可能

水に戻したあとの黒豆は、数日程度なら冷蔵庫での保存が可能です。このときも密閉容器に入れると、栄養素の損失を抑えられるでしょう。

料理に使う分よりも多く、水で戻してしまった場合などは、より長く保存したいこともあります。その場合は、冷凍庫で保存すると、1か月程度は風味を保てます。1か月以上冷凍保存すると、風味や栄養素を損なうことがあるので、注意しましょう。

参考文献

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