ビタミンAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ
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ビタミンAの基本情報やプロビタミンAとの違い、ビタミンAの効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、1日の摂取目安量、多く含む食品、多く摂取するためのおすすめレシピについて解説します。
ビタミンAとは
ビタミンAは正式名称をレチノイドと言い、レチノール(アルコール)・レチナール(アルデヒド)・レチノイン酸(カルボン酸)などに分類されます。
ビタミンAは脂溶性ビタミンの一種で動物性食品に多く含まれており、脂質に溶けるため肝臓や脂肪組織に蓄えられ、加熱調理で損なわれにくい栄養素です。
ビタミンAの主な働きは、皮膚・粘膜・目の健康維持など。重篤な欠乏症では夜盲症などの症状を引き起こします。
ビタミンAとプロビタミンAの違い
ニンジン・ほうれん草・かぼちゃなどの緑黄色野菜に多く含まれることで有名なβ-カロテン(ベータカロテン)は、摂取するとビタミンAに変換されることからプロビタミンA(ビタミンA前駆体)と呼ばれ、日本人の食事摂取基準(2020 年版)ではこれもビタミンAとして換算しています。
なお、プロビタミンAは、ビタミンAが不足しているときだけビタミンAに変換されるため、プロビタミンAの摂りすぎによりビタミンAを過剰摂取する心配はありません。
プロビタミンAにはβ-カロテン以外にも、α-カロテン、クリプトキサンチンなどの種類があり、それぞれ吸収効率が異なります。
吸収効率に従ってレチノール換算量を算出したものが「レチノール当量」であり、プロビタミンAのなかで最もレチノール当量の大きい(吸収効率のよい)ものがβ-カロテンです。
β-カロテンは約8%(β-カロテン12μgがレチノール1μgに相当)、α-カロテン・クリプトキサンチンはじめ、β-カロテン以外のプロビタミンAは約4%がビタミンAに変換されます。
ビタミンAの効果・働き
ビタミンAの持つ代表的な効果・効能・働きについて解説します。
視機能を改善する・夜間の視力を維持する
ビタミンAは、光の明暗を察知するためのロドプシンという成分の主成分となっており、人間が夜間や暗所でも一定の視界を確保することができるのは、ビタミンAによるところが大きいと言えます。
目や皮膚の粘膜を健康に保つ
ビタミンAは皮膚や粘膜を構成する「上皮細胞」の生成にも関わっており、皮膚の生成や免疫機能の維持などに欠かせない成分です。毛髪や皮膚のうるおいを保ち、ニキビや肌荒れといったトラブルを防ぎます。
免疫機能を制御する
ビタミンAは、抗感染性ビタミンとも呼ばれ、免疫が正常に機能するために必須の栄養素です。免疫反応において重要な役割を持つ白血球細胞の発生させるうえで、中心的役割を果たします。
正常な成長と発達に不可欠
レチノールとレチノイン酸は、胎児の正常な発達に不可欠です。レチノイン酸は胎児の発育に際して、手足の発達・心臓、眼、耳の形成といった重要な機能を果たします。さらにレチノイン酸は、成長ホルモンに対して遺伝子発現を制御することが認められています。
がん予防に効果的。ただし過剰摂取に注意
ビタミンAは近年のがん研究において、がん予防や抑制にも効果が期待できるとされていました。一方で過剰摂取による害も確認されていることから、耐容上限量を越えての摂取は推奨されていません。
ビタミンAが不足・欠乏すると起こる症状
ビタミンAが不足・欠乏すると、次の症状が起こります。
- 夜盲症
- 視力の低下
- 目の疲れ
- 眼球の乾燥
- 肌荒れ・爪の変形、割れ・粘膜の乾燥
- 免疫力の低下による感染症リスクの上昇
ビタミンAは視機能に密接に関わっているため、不足すると目の疲れや眼球の乾燥、視力の低下、夜間に目が見えにくくなる夜盲症(鳥目)などを引き起こし、最終的に失明に至ることもあります。
また、皮膚・爪・粘膜が乾燥して免疫力が低下することによって感染症への抵抗力が弱まり、特に子どもにおいてはごく軽度のビタミンA欠乏であっても、感染症による高い死亡率および呼吸器疾患や下痢などの高い罹患率が示されているほどです。
またビタミンAの欠乏は、鉄欠乏性貧血を悪化させる可能性もあることが示唆されました。報告によれば、ビタミンAと鉄を組み合わせて補給することが、単独での補給よりも貧血抑制に有効だと考えられます。
ビタミンAが不足・欠乏する原因と対策
ビタミンAは肝臓に十分貯蔵されているので、健康な人であればただちに危険に陥るほど不足することは基本的にありません。
ただし、アルコールの大量摂取などによって貯蔵されたビタミンAを大量に消耗すると、欠乏リスクが高まるため注意が必要です。
食事によるビタミンAの不足対策には、ビタミンAの前駆体であるβ-カロテンを豊富に含んだ緑黄色野菜や、同じく色の濃い果物を積極的に摂取するほか、ビタミンA強化食品(牛乳・シリアルなど)の摂取、レバー・卵黄などの摂取を検討してください。
また発展途上国においては、高濃度のレチノールパルミチン酸エステル(ビタミンA剤)を定期的に投与することが推奨されます。
ビタミンAを過剰摂取すると起こる症状
ビタミンAは脂溶性ビタミンのため体内に蓄積されやすく、過剰摂取すると次のような過剰症を引き起こします。
なお「ビタミンAとプロビタミンAの違い」でも説明した通り、β-カロテンを始めとするプロビタミンAはビタミンA過剰症を引き起こしません。ビタミンA過剰症を引き起こすのは、動物性食品に含まれる既成ビタミンAのみです。
- 吐き気
- 頭痛
- 倦怠感
- 食欲不振
- めまい
- 皮膚乾燥(乾燥肌)
- 落屑(外側皮膚の喪失)
- 脳水腫
ビタミンAは過剰に摂取するとめまいや頭痛を引き起こすほか、妊娠初期では出生異常を引き起こす場合があり、妊婦は特に注意が必要です。ビタミンAは健康な人であれば不足することは少なく、むしろサプリメントなどによる過剰摂取の可能性が示唆されています。
普段からマルチビタミンサプリを摂取している場合は、ビタミンAの配合量をチェックしておくとよいでしょう。
ビタミンAの1日の摂取目安量
ビタミンAの1日の摂取目安量は、成人男性でおよそ900μg、成人女性でおよそ700μgです。これは動物性食品で摂取した場合、およそレバー5gで十分な量となります。
また植物性食品で摂取する場合は、レチノールではなくプロビタミンAとしての摂取となり、ニンジンなら100g(約3/4本分)、ニンジンジュースで200g(缶1本分)、ほうれん草なら150g(1束200gとして約3/4束)で摂取することができます。
ビタミンAの食事摂取基準(μgRAE/日)※1
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
年令等 | 推定平均必要量※2 | 推奨量※2 | 目安量※3 | 耐容上限量※3 | 推定平均必要量※2 | 推奨量※2 | 目安量※3 | 耐容上限量※3 |
0~5(月) | - | - | 300 | 600 | - | - | 300 | 600 |
6~11(月) | - | - | 400 | 600 | - | - | 400 | 600 |
1~2(歳) | 300 | 400 | - | 600 | 250 | 350 | - | 600 |
3~5(歳) | 350 | 450 | - | 700 | 350 | 500 | - | 850 |
6~7(歳) | 300 | 400 | - | 950 | 300 | 400 | - | 1,200 |
8~9(歳) | 350 | 500 | - | 1,200 | 350 | 500 | - | 1,500 |
10~11(歳) | 450 | 600 | - | 1,500 | 400 | 600 | - | 1,900 |
12~14(歳) | 550 | 800 | - | 2,100 | 500 | 700 | - | 2,500 |
15~17(歳) | 650 | 900 | - | 2,500 | 500 | 650 | - | 2,800 |
18~29(歳) | 600 | 850 | - | 2,700 | 450 | 650 | - | 2,700 |
30~49(歳) | 650 | 900 | - | 2,700 | 500 | 700 | - | 2,700 |
50~64(歳) | 650 | 900 | - | 2,700 | 500 | 700 | - | 2,700 |
65~74(歳) | 600 | 850 | - | 2,700 | 500 | 700 | - | 2,700 |
75以上(歳) | 550 | 800 | - | 2,700 | 450 | 650 | - | 2,700 |
妊婦(付加量)初期 | +0 | +0 | ||||||
中期 | +0 | +0 | ||||||
後期 | +60 | +80 | ||||||
授乳婦(付加量) | +300 | +450 |
※2プロビタミンAカロテノイドを含む
※3プロビタミンAカロテノイドを含まない
出典:日本人の食事摂取基準(2020 年版)
ビタミンAを多く含む食品
ビタミンAはレバーに多く含まれており、鶏レバー・豚レバーが特に多く、牛レバーにはそこまで含まれていません。レバー以外に、チーズ・バター・マーガリン・牛乳といった乳製品や魚にも比較的豊富に含まれています。
野菜ではニンジンに特に多くβ-カロテンが含まれており、ほうれん草・春菊・かぼちゃ・小松菜の順でプロビタミンAが豊富です。
果物では、あんず・メロン・かきなどに多く含まれ、あんず・かき・プルーンなどはドライフルーツにすることでより摂取しやすくなります。
なお、ビタミンAを多く含む食品・食材の詳細は下記表の通りです。
ビタミンAを多く含む動物性食品(単位:μg/100g)
食品名 | レチノール | α-カロテン | β-カロテン | クリプトキサンチン | β-カロテン当量 | レチノール当量 |
鶏レバー(生) | 14,000 | - | - | - | 30 | 14000 |
豚レバー(生) | 13000 | - | - | - | Tr | 13000 |
牛レバー(生) | 1100 | - | - | - | 40 | 1100 |
やつめうなぎ(生) | 8200 | 0 | 0 | 0 | 0 | 8200 |
ほたるいか(ゆで) | 1900 | - | - | - | Tr | 1900 |
うなぎ(かば焼) | 1500 | (0) | (0) | (0) | (0) | 1500 |
ぎんだら(生) | 1100 | 0 | 0 | (0) | (0) | 1100 |
あなご(生) | 500 | 0 | 0 | 0 | 0 | 500 |
さんま(焼き) | 13 | 0 | 0 | 0 | 0 | 13 |
鶏卵全卵(ゆで) | 130 | 0 | 3 | 26 | 16 | 140 |
プロセスチーズ | 240 | - | - | - | 230 | 260 |
普通牛乳 | 38 | 0 | 6 | 0 | 6 | 38 |
ビタミンAを多く含む野菜(単位:μg/100g)
食品名 | レチノー ル | α-カロテン | β-カロテン | クリプトキサンチン | β-カロテン当量 | レチノール当量 |
にんじん(根,皮むき,ゆで) | 0 | 2,400 | 7,500 | 0 | 8,600 | 720 |
ほうれんそう(葉,ゆで) | 0 | 0 | 5,400 | 45 | 5,400 | 450 |
しゅんぎく(葉,ゆで) | 0 | 0 | 5,300 | 0 | 5,300 | 440 |
にんじん(ジュース,缶詰) | 0 | 1,300 | 3,800 | 0 | 4,500 | 370 |
西洋かぼちゃ(ゆで) | 0 | 18 | 3,900 | 90 | 4,000 | 330 |
こまつな(葉,ゆで) | 0 | 0 | 3,100 | 28 | 3,100 | 260 |
ブロッコリー(ゆで) | 0 | 0 | 770 | 5 | 770 | 64 |
トマト(生) | 0 | 4 | 540 | 0 | 540 | 45 |
スイートコーン(ゆで) | 0 | 7 | 20 | 53 | 49 | 4 |
ビタミンAを多く含む果物(単位:μg/100g)
食品名 | レチノー ル | α-カロテン | β-カロテン | クリプトキサンチン | β-カロテン当量 | レチノール当量 |
あんず 乾 | 0 | 0 | 4800 | 270 | 5000 | 410 |
メロン 露地メロン 赤肉種 生 | 0 | 16 | 3600 | 0 | 3600 | 300 |
あんず 生 | 0 | 0 | 1400 | 190 | 1500 | 120 |
かき 干しがき | 0 | 15 | 370 | 2100 | 1400 | 120 |
(すもも類) プルーン 乾 | 0 | 130 | 1100 | 220 | 1300 | 110 |
(かんきつ類) うんしゅうみかん 砂じょう 早生 生 | 0 | 11 | 94 | 2000 | 1100 | 92 |
(かんきつ類) うんしゅうみかん 砂じょう 普通 生 | 0 | 0 | 190 | 1800 | 1100 | 92 |
(かんきつ類) セミノール 砂じょう 生 | 0 | 0 | 410 | 1300 | 1100 | 89 |
パッションフルーツ 果汁 生 | 0 | 0 | 1100 | 16 | 1100 | 89 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)より抜粋
ビタミンAを効率よく摂取するおすすめレシピ
ビタミンAを効率よく摂取したい場合には、過剰摂取の心配のない植物性食品、特に高効率でプロビタミンAが摂取できる、ニンジン・ほうれん草・小松菜・かぼちゃなどの緑黄色野菜を積極的に摂取するといいでしょう。
具体的なレシピとしては、ニンジンしりしり・かぼちゃのニョッキ・野菜炒めなどがおすすめです。
またビタミンAは、油といっしょに摂取することでより吸収率が高まります。そのため生で食べる場合も、ドレッシングや動物性食品と合わせて摂るようにしましょう。