酢の栄養と効果効能・調理法・保存法

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酢

酢の種類などの基本情報、酢に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

酢とは

酢とは、穀物や果実からつくった酒を発酵させた、酸味のある液体調味料のこと。酸味成分である酢酸を、3~5%ほど含んでいるものを指します。

英語ではvinegar(ビネガー)と言いますが、これはフランス語のvinaigre(ビネーグル)が語源です。vin(ワイン)とaigre(酸っぱい)を合わせた言葉で、直訳すると酸っぱいワインとなります。

酢は、人間が作った最古の調味料と考えられています。紀元前5000年ごろの古代バビロニアの記録に、酢が登場しているのがその証拠です。

日本では、4~5世紀ごろに中国から米酢の製造技術が伝来し、国内で酢が製造されるようになりました。

酢の原料や製法はさまざまで、世界には4000種類もの酢が存在すると言われています。

調味料であると同時に、クエン酸や酢酸などの栄養素が豊富なため、疲労回復・ダイエット・整腸作用・血圧を下げるなど、健康効果の高さでも注目されています。

寿司や中華料理などのあらやる料理に欠かせないお酢ですが、近年では飲むお酢も人気。黒酢や果実酢などを、水・炭酸水などで薄めて飲用することができます。

また、酢には抗菌作用および昆虫忌避効果もあるとされ、お掃除用スプレーや虫除けスプレーにも活用されています。

酢の品種・種類

酢は大きく、「醸造酢」と「合成酢」の2種類に分けることができます。それぞれの概要は以下の通りです。

醸造酢

米・麦などの穀物や果実、アルコールなどを原料とし、酢酸発酵させたものが醸造酢です。氷酢酸や酢酸を使用していないもののことを指します。

一般の家庭でも広く使われており、果実酢や穀物酢もこの醸造酢に含まれます。

合成酢

合成酢は、氷酢酸か酢酸を水で希釈し、砂糖・酸味料・調味料・食塩などを添加して造られます。

合成酢の生産量は少なく、家庭で使われることはほぼありません。

代表的な醸造酢の種類

さまざまな種類のある醸造酢。日本でよく使われている酢の特徴と、それぞれの違いを解説します。

穀物酢

穀物酢は、麦・米・コーンなどの穀物を、単独あるいはブレンドして製造したお酢です。

酸味やクセの少ないあっさりとした味わいなので、和洋中あらゆる料理に合います。糖質が少なく、比較的カロリーの低いお酢です。

米酢

米酢は、米を原料としています。まろやかな風味でコクがあり、和食との相性が良いお酢です。

寿司や酢の物によく合い、穀物酢と共に日本でよく使われている酢のひとつでもあります。原料が米なので糖質は高めです。

すし酢

すし酢とは、酢飯用に砂糖や塩などで調味した酢です。家庭では、ちらし寿司や手巻き寿司を作るときに活躍します。

黒酢

玄米や大麦を原料とする酢を、瓶(かめ)で発酵させたものが黒酢です。通常の酢と比べて黒っぽい色をしています。

必須アミノ酸を多く含むことから、健康食品として注目されています。香りやクセが強いのが特徴です。

りんご酢

りんご酢は、りんご果汁を発酵させて醸造します。フルーティで甘みが強く、酢が苦手な方でも受け入れやすい味わいが特徴。

飲むお酢としても人気で、低カロリーのためダイエット中にもおすすめです。

ぶどう酢(ワインビネガー)

ぶどう果汁を、アルコールと酢酸菌で発酵させた果実酢です。白ワインが原料の白ワインビネガー、赤ワインが原料の赤ワインビネガーが定番。ヨーロッパで広く用いられています。

バルサミコ酢

ぶどう果汁を樽で長期間熟成させて製造します。赤みがかった黒色をしており、独特な香りと甘みがあります。肉・魚料理のソースや、サラダのドレッシングによく使われています。

酢に含まれる成分・栄養素

酢100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

食品名単位黒酢穀物酢米酢バルサミコ酢ぶどう酢(ワインビネガー)りんご酢甘酢黄身酢ごま酢三杯酢すし酢 にぎり用中華風合わせ酢
エネルギー(kcal)kcal/100 g5425469922261252302178670151
エネルギー(kJ)kJ/100 g22710519241492109522961907360295631
水 分g/100 g85.793.387.974.293.792.667.252.153.2767260.6
たんぱく質g/100 g10.10.20.50.10.10.16.540.90.23
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g--------5-3.6---
脂 質g/100 g0000Tr00138003.4
トリアシルグリセロール当量g/100 g--------10.8-7.9---3.3
飽和脂肪酸g/100 g--------3.59-1.16---0.51
一価不飽和脂肪酸g/100 g--------4.66-2.92---1.27
多価不飽和脂肪酸g/100 g--------2.09-3.46---1.39
コレステロールmg/100 g0000000540--00
炭水化物g/100 g92.47.419.41.22.428.420.330.218.114.325.6
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g----16.4--0.5------
水溶性食物繊維g/100 g00000000--00
不溶性食物繊維g/100 g00000000--0Tr
食物繊維総量g/100 g00000000--0Tr
灰 分g/100 g0.2Tr0.10.40.20.21.26.52.62.1105.8
ナトリウムmg/100 g1061229418470230068078039002200
カリウムmg/100 g4741614022595421105623160
カルシウムmg/100 g52217342611805412
マグネシウムmg/100 g21161124166111727
リンmg/100 g5221522861220100271267
mg/100 g0.2Tr0.10.70.20.202.31.70.20.10.7
亜鉛mg/100 g0.30.10.20.1Tr0.10.11.710.20.20.4
mg/100 g0.01TrTr0.010.01TrTr0.080.26TrTr0.01
マンガンmg/100 g0.55--0.130.03-------
ヨウ素µg/100 g0002Tr-019-1500Tr
セレンµg/100 g00Tr00-022-104
クロムµg/100 g21151-1Tr-112
モリブデンµg/100 g91421-16-8320
レチノールµg/100 g00000001800000
α-カロテンµg/100 g0--0Tr0------
β-カロテンµg/100 g0--0Tr0------
β-クリプトキサンチンµg/100 g0--0-0------
β-カロテン当量µg/100 g0000Tr00213000
レチノール活性当量µg/100 g0000000190Tr000
ビタミンDµg/100 g0000Tr(Tr)02.3--00
α-トコフェロールmg/100 g0--0Tr-------
β-トコフェロールmg/100 g0--0Tr-------
γ-トコフェロールmg/100 g0--0Tr-------
δ-トコフェロールmg/100 g0--0Tr-------
ビタミンKµg/100 g0000(Tr)Tr016-00Tr
ビタミンB1mg/100 g0.020.010.010.01Tr00.010.090.080.010.010.02
ビタミンB2mg/100 g0.010.010.010.01Tr0.010.010.210.060.020.010.07
ナイアシンmg/100 g0.60.10.30.2Tr0.10.1Tr10.40.20.6
ビタミンB6mg/100 g0.060.010.020.05Tr0.010.010.10.120.030.020.07
ビタミンB12µg/100 g0.10.10.1Tr0.10.30.11.20.10.10.10.1
葉酸µg/100 g100TrTr0054264013
パントテン酸mg/100 g0.0700.080.030.080.0601.680.130.10.070.22
ビオチンµg/100 g10.10.41.40.1-0.125.3-1.30.34.8
ビタミンCmg/100 g0000Tr0000000
食塩相当量g/100 g0000.1001.25.81.729.85.5
アルコールg/100 g--------0.2---
硝酸イオンg/100 g------------
テオブロミンg/100 g------------
カフェインg/100 g------------
タンニンg/100 g------------
ポリフェノールg/100 g------------
酢酸g/100 g44.24.45.64.84.73.11.61.933.61.7
調理油g/100 g------------
有機酸g/100 g------------
重量変化率%------------
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

酢の効果・効能

酢に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

食欲を増進させて消化を促進

酸味のある酢は、食欲が出ないときや胃腸の調子が悪いときに有用です。

酢は、クエン酸や酢酸などの酸味成分を豊富に含んでいます。酢の酸味には唾液腺を刺激する作用があり、唾液の分泌を活発にして食欲を増進させる効果があります。

また、酢は胃液の分泌を促し、消化吸収を助ける作用も認められています。犬にブドウ酢希釈液を飲ませたところ胃液分泌量が増加した、という実験結果も発表されています。

ダイエットや便秘予防に効果的

酢に多く含まれる酢酸・クエン酸・アミノ酸は、ダイエットに効果的と言われています。

特に、酢の主成分である酢酸は、脂肪の燃焼を促す効果や、脂肪の蓄積を抑える効果が認められている成分です。

りんご酢を含む飲料を、人間が朝晩2回、12週間にわたって摂取したところ、体重・BMI・内臓脂肪面積・腹囲などが低下したという研究結果も出ています。

また、酢酸には腸のぜん動運動を促す効果もあると考えられています。便通の乱れは、ダイエットの妨げにもなるため、酢酸を多く含む酢は、肥満や体型にお悩みの方にとってマストな調味料と言えるでしょう。

高血圧を改善する

酢は、高血圧にも効果的とされています。

醤油や味噌など塩分の多い調味料に代わって酢を使用することで、料理の味を損なわずに塩分の摂取量を減らせることが一つの理由です。

また、酢そのものにも血圧上昇を抑える作用があると言われています。酢に含まれる酢酸から生成されるアデノシンという物質には、血管を拡張させ血圧を下げる働きがあるのです。

酢を用いた特定保健用食品も多数あり、「血圧が高めの方に適した食品です」と表示することが許可されています。

抗菌・殺菌効果で食中毒菌の増殖を抑える

酢に含まれる酢酸は、抗菌作用があることで知られています。

酢酸は、さまざまなウイルスやカビに効果的と言われていますが、特に、人間の体に害を及ぼすこともある食中毒菌への効果が認められているのは注目すべき点です。

実際に、酢は菌の繁殖を抑えるとして、古くから酢漬け・ピクルス・らっきょうなどの保存食にも用いられてきました。

酢の使い方

酢を活用する調理方法・飲み方などを解説します。

酢の調理方法

酢は、酸味が非常に強いため、原液のまま摂取するのは難しい調味料です。そのため、料理に取り入れたり、薄めてドリンクとして飲むのが無難でしょう。

肉・魚・野菜などさまざまな食材との相性が良く、酢の物・ピクルス・煮物・酢豚・寿司など、あらゆる料理の調味料として活躍します。

酢には、豚肉や鳥肉を短時間で柔らかくする効果もあります。

酢の種類は、料理によって使い分けするのがおすすめです。一般的に、穀物酢はどんな料理にも合い、米酢は和食向け、黒酢は中華向け、ぶどう酢やバルサミコ酢は洋食によく合うと言われています。

食欲増進効果も望める調味料なので、夏バテで食欲が出ないときに料理に取り入れてみてください。

酢の飲み方

酢は料理に活用するほか、水や炭酸水などで薄めて飲用することもできます。

料理用の酢は、クセや酸味が強いため、希釈しても飲みづらいものが大半です。そのため初心者の方や酸味が苦手な方は、果汁などで調味されたジュース感覚で飲めるドリンク用の酢がおすすめ。

一方、ダイエット目的の方は糖質・カロリーが少なめの酢を選ぶようにしてください。希釈する倍率は、商品ごとに定められたものを守りましょう。

酢を食べる際の注意点

酢には酸が多く含まれているため、歯や内臓に及ぼす影響に注意が必要です。

調味料として適量を料理に取り入れたり、希釈して飲料として飲む分には、酸が唾液と中和されるので多くの場合は問題ありません。

ただし、原液の酢を多量に摂取すると、胃や口腔内が荒れる可能性があるので注意してください。

唾液が出にくいなどで不安な方は、酢を摂ったあとに口をゆすぐ・うがいなどの対策をしておくといいでしょう。

酢の保存方法

酢の栄養素を損なわない保存方法を解説します。

強い殺菌力を持つ酢は腐ることがなく、常温でも保存できます。常温保存の場合、賞味期限内であれば開栓後半年ほどは味が劣化する心配もありません。

ただし、果汁などの添加物が入ったものや、製品に「要冷蔵」の記載があるものは冷蔵庫に入れるようにし、早めに使い切るようにしましょう。

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