スッポンの栄養と効果効能・調理法・保存法

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スッポンの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、スッポンに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

スッポンとは

スッポン(soft-shelled turtle)とは、は虫類のカメ目スッポン科に分類される淡水カメの仲間です。野生のスッポンは、中国などの東アジアに生息しています。暖かい気候を好むため、日本では本州、特に東海から九州にかけて養殖が盛んです。

日本で見られる野生のスッポンは、養殖されていたものやペットとして飼われていたものが逃げ出して野生化したものとされています。

スッポンの旬は、一般的には夏から秋にかけて。スッポンは他のカメの仲間と同様に、冬眠をする動物です。そのため、冬眠前の時期が一番脂がのっていて美味しいと言われています。しかし、養殖のスッポンは冬眠をさせないため、その他の時期でも味を損なうことなく食べられます。

スッポンの肉は、鶏肉に近い食感です。特にスッポンの出汁は美味とされています。肉はぶつ切りにして鍋に入れたり、煮物にしたりして出汁を料理に利用するのがおすすめです。出汁として使うだけでなく、その活血をお酒に入れて飲むこともあります。

スッポンの品種・種類

スッポンの仲間は、アフリカ大陸や東南アジアなど暖かい地域を中心に世界各地に生息しています。ニホンスッポンやインドシナオオスッポン、タイコガシラスッポンなど、食用にされる種類も多く存在します。

ニホンスッポン

現在、日本で食用にされているスッポンのほとんどが「ニホンスッポン」です。ニホンスッポンは日本での呼び名で、キョクトウスッポンと呼ばれることもあります。ロシアの極東部からベトナム南部まで、ユーラシア大陸に広く生息するスッポンです。

日本国内にも野生のニホンスッポンが生息しており、天然のスッポンとして高値で取引されています。東海から九州にかけて、スッポンの養殖も盛んです。一般に、養殖のスッポンは天然ものよりも安価で流通しています。

スッポンに似た品種「スッポンモドキ」

スッポンに似たカメの仲間に、スッポンモドキがいます。スッポンモドキは、オーストラリアやインドネシア周辺に生息しており、名前の通りスッポンとそっくりな見た目をしています。

スッポンとの違いは、甲羅が硬いことと、足の形が泳ぐことに適しているため陸にはあまり上がらないことです。

スッポンモドキも、スッポンと同様に食べることができます。しかし、スッポンの方が味が良く、栄養価も高いとされています。ペットとして流通していた歴史があり、日本でも見かけることがありますが、食用として養殖されることはほとんどありません。

スッポンに含まれる成分・栄養素

スッポン100g(甲殻、頭部、脚、内臓、皮等を除いたもの)に含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

スッポンには、ビタミンが豊富に含まれています。特に、ビタミンA(レチノール)の含有量が多いのが特徴です。また、各種ビタミンB群・ミネラルをバランスよく含んでいます。

三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)のうち、スッポンは炭水化物が少なくタンパク質が豊富です。

成分表を見ると脂質が多いように思えますが、不飽和脂肪酸に含まれるオレイン酸やDHAは善玉コレステロールと呼ばれており、健康上の懸念はほとんどありません。スッポンは不飽和脂肪酸を多く含んでおり、生活習慣病の予防に効果があると考えられます。

食品名単位すっぽん 肉 生
廃 棄 率%0
エネルギー(kcal)kcal/100 g197
エネルギー(kJ)kJ/100 g824
水 分g/100 g69.1
たんぱく質g/100 g16.4
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g-
脂 質g/100 g13.4
トリアシルグリセロール当量g/100 g12
飽和脂肪酸g/100 g2.66
一価不飽和脂肪酸g/100 g5.43
多価不飽和脂肪酸g/100 g3.36
コレステロールmg/100 g95
炭水化物g/100 g0.5
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g-
水溶性食物繊維g/100 g0
不溶性食物繊維g/100 g0
食物繊維総量g/100 g0
灰 分g/100 g0.6
ナトリウムmg/100 g69
カリウムmg/100 g150
カルシウムmg/100 g18
マグネシウムmg/100 g10
リンmg/100 g88
mg/100 g0.9
亜鉛mg/100 g1.6
mg/100 g0.04
マンガンmg/100 g0.02
ヨウ素µg/100 g-
セレンµg/100 g-
クロムµg/100 g-
モリブデンµg/100 g-
レチノールµg/100 g94
α-カロテンµg/100 g-
β-カロテンµg/100 g-
β-クリプトキサンチンµg/100 g-
β-カロテン当量µg/100 gTr
レチノール活性当量µg/100 g94
ビタミンDµg/100 g3.6
α-トコフェロールmg/100 g1
β-トコフェロールmg/100 g0
γ-トコフェロールmg/100 g0.2
δ-トコフェロールmg/100 g0
ビタミンKµg/100 g5
ビタミンB1mg/100 g0.91
ビタミンB2mg/100 g0.41
ナイアシンmg/100 g3
ビタミンB6mg/100 g0.11
ビタミンB12µg/100 g1.2
葉酸µg/100 g16
パントテン酸mg/100 g0.2
ビオチンµg/100 g-
ビタミンCmg/100 g1
食塩相当量g/100 g0.2
アルコールg/100 g-
硝酸イオンg/100 g-
テオブロミンg/100 g-
カフェインg/100 g-
タンニンg/100 g-
ポリフェノールg/100 g-
酢酸g/100 g-
調理油g/100 g-
有機酸g/100 g-
重量変化率%-
備考甲殻、頭部、脚、内臓、皮等を除いたもの
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

スッポンの効果・効能

スッポンに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

皮膚・骨・血管を作るコラーゲン

コラーゲンは皮膚の構成要素のひとつで、タンパク質の一種です。他のタンパク質と同様に、筋肉や骨、血管、皮膚を作る役割をしています。人間の身体を作っているタンパク質の約30%がコラーゲンであり、さらにそのうち約70%が皮膚を構成しています。

コラーゲンは加齢とともに減少する傾向があり、肌の細胞の隙間を埋める役割を持つ成分のため、減少すると肌が乾燥しやすくなります。

皮膚を健康に保つレチノール(ビタミンA)

レチノール(ビタミンA)は、目や皮膚を健康に保つ働きをしているビタミンの一種です。レチノールが欠乏すると、網膜の異常や皮膚の乾燥・角質化が起こります。

さらに、レチノールの摂取量と肌の保湿との関連性も報告されており、肌の乾燥を防ぐ効果が期待されています。

疲労回復に効くミネラルとビタミンB群

ビタミンB群は、神経系やエネルギー代謝に作用する栄養素です。特にビタミンB1は脳神経の働きを維持したり、栄養素の代謝を助ける働きをしたりします。そのため、疲労回復の効果がある栄養素として注目されています。

また、ミネラルも疲労回復に効果のある栄養素です。鉄をはじめとする各種ミネラルは、全身の組織を健康に保つ効果があり、ミネラルが不足すると疲労感を感じやすくなります。

スッポンの食べ方

スッポンの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

スッポンのさばき方

スッポンを家でさばくことは稀かもしれませんが、養殖のスッポンなら天然のものよりも安く手に入れられます。

スッポンをさばくときは、引っ張り出した首を切り落とします。お腹が上になるようにひっくり返して、起き上がろうとして首を出したところをタオルや布巾をあててつかみ、すばやく包丁で切り落としましょう。

スッポンは「一度食いついたら離さない」と言われるほど噛む力が強いうえに用心深いため、まな板に乗せるとすぐに首を引っ込めてしまいます。そのため、噛まれないよう警戒しつつも、手際よく作業することが大切です。

なおスッポンは傷みやすく、時間が経つと臭くなってしまうため、首を切り落とした後はすぐに調理しましょう。

スッポンの調理方法

首を落としたスッポンは、まず最初に甲羅を外す必要があります。甲羅と柔らかい皮膚の部分の境目を探して包丁を入れましょう。スッポンを回転させながら包丁を一周させると、甲羅を外せます。

内臓をとり出して解体し、足の皮を剥いで骨を取り除けば、そのまま調理に使用できます。爪・胆のう・膀胱・皮以外は食べられ、甲羅や骨からは出汁がとれるので捨てずにとっておきましょう。

なお、スッポンはさばいたものを真空パックした状態でも販売されています。家庭でさばくのが難しい場合は、専門店でさばいたものを購入するのがおすすめです。

スッポンの食べ方

スッポンの最大の魅力は、甲羅や骨、肉から出る出汁。そのため、出汁を存分に味わえる鍋や煮物に使うのがおすすめです。特に、鍋で残った出汁で作る締めの雑炊は美味とされています。

スッポンの肉質は、鶏肉に近いのが特徴です。意外に思うかもしれませんが、から揚げにすると鶏肉よりも弾力があって旨味も強いとされています。

スッポンを調理する際の注意点

スッポンは甲羅まで利用できる食材ですが、膀胱と胆のうの取り扱いには注意が必要です。

スッポンの膀胱は臭みが強いため、内臓を取り出す前に切り取ります。先に取り出さないと、臭みが肉に移ってしまうからです。調理前にスッポンを締めるのは、尿の臭みの影響を最小限に留める意味があります。

胆のうとは、肝臓に付随する内臓の一つです。胆汁という消化液を貯める役割しています。胆汁の苦みが強いことから、スッポンの胆のうは苦玉とも呼ばれています。胆のうは非常に苦いため、スッポンを食べるときは胆のうを取り除いて調理しましょう。

スッポンを食べる際の注意点

スッポンの首を落とすときに吹き出す活血は、飲むこともできます。血を放置すると固まってしまうため、ワインなどのお酒に入れて飲みます。

一部では美味とされていますが、特に天然のスッポンの血には注意が必要です。野生の動物には寄生虫が住みついていることも多く、血中に寄生虫がいる可能性も否定できません。

寄生虫には、人間の体内に寄生して皮下に腫瘤を作ったり、脳や目に侵入する種類もいます。そのため、スッポンの血を飲んだり、肉を生食したりすることはおすすめできません。

スッポンの保存方法

スッポンの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

生きたスッポンの保存方法

生きたスッポンは暑さに弱いため、涼しい場所で管理します。バケツに水を張り、スッポンを入れて日の当たらない涼しい場所に置くと良いでしょう。水が傷まないように、ときどき水を入れ替えるのがポイントです。

死んだスッポンは傷みやすく、尿の影響で肉が臭くなります。そのため、調理直前にさばくのが、栄養素を保ち美味しく食べるコツです。

さばいたスッポンの保存方法

さばいた状態のスッポンは、一般的に冷凍で保存されます。直前にさばいたスッポンよりも栄養価は落ちますが、家庭でさばく手間がないのがメリットです。

冷凍しても、良い出汁がとれて美味しく食べられます。

参考文献

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