しじみの栄養と効果効能・調理法・保存法
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しじみの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、しじみに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
しじみとは
しじみ(Shijimi)は、あさりやはまぐりなどと同じ二枚貝の一種です。淡水や塩分の薄い汽水に生息し、見た目は濃い茶色や黒色をしています。
全国的に収穫されていますが、代表的な産地は島根県の宍道湖(しんじこ)と青森県の十三湖(じゅうさんこ)です。宍道湖では、2018年時点で全国漁獲量の40%をシェアするほどしじみ漁が盛んに行われています。
しじみの旬は年に2回あり、一度目は夏です。この時期のしじみは古くから「土用のしじみ」として親しまれてきました。産卵を控えたしじみは、栄養をたっぷり蓄えているため身が大きく食べ応えがあります。
二度目の旬は秋から冬にかけてです。別名では寒しじみと呼ばれます。冬に備えて栄養を蓄えているしじみは、うまみ成分を多く含み味わいも豊かです。
あさりやはまぐりとの違い
しじみと似た二枚貝に、あさりやはまぐりがあります。大きな違いはサイズと生息地です。
サイズははまぐりが一番大きくおよそ8cm、次いであさりの3~4cm、しじみがもっとも小さく、特に小さいものでは2cmほどになります。
生息地に関しては、しじみが淡水や汽水域など塩分濃度の低い水域に生息するのに対し、はまぐりとあさりは海の浅瀬を生息地にしています。
しじみの品種・種類
日本に生息しているしじみの品種は3種類です。以下で詳しく説明していきます。
瀬田しじみ
瀬田しじみ(せたしじみ)は滋賀県の琵琶湖に生息する固有種です。かつては琵琶湖の水が流れる瀬田川で多く獲れたため、瀬田しじみの名前がつきました。
見た目は貝の膨らみが大きく、表面に光沢があるのが特徴です。汽水域で獲れるしじみに比べてコクがあり、もっともおいしいしじみと称されます。
大和しじみ
大和しじみ(やまとしじみ)は、島根県宍道湖産や青森県十三湖などの汽水域で獲れるしじみです。主に夏時期が旬で、土用のしじみとして楽しまれています。
現在、市場に出回っているしじみのほとんどが大和しじみです。
真しじみ
真しじみ(ましじみ)は全国に広く生息する淡水性のしじみです。水田近くの小川に多く住んでいましたが、環境の変化や農薬の影響で生息数を減らしています。
現在では外来種のしじみが河川に増えたことにより、絶滅が危惧されている品種です。
しじみに含まれる成分・栄養素
しじみ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
二日酔いに効くイメージの強いしじみですが、これはしじみにアミノ酸の含有量が高いタンパク質が豊富に含まれているため。必須アミノ酸と非必須アミノ酸のバランスが優れており、しじみに含まれる多種多様なアミノ酸がアルコールの分解をはじめ、さまざまな代謝を促進してくれるのです。
しじみはタンパク質を構成しないアミノ酸を含んでおり、代表的なものはオルニチンやアラニン、タウリンなど。特に肝機能を助けるオルニチンは、あさりやはまぐりにはほとんど含まれないため、しじみ特有の栄養効果が期待できます。
古くからしじみが「黄疸に効く」と言われているのも、オルニチンを豊富に含んでいるからでしょう。
ほかにも鉄や亜鉛、ビタミンB12など身体に良い栄養素を多く含みます。しじみは貝としてはサイズが小さいですが、とても栄養価の高い食材なのです。
食品名 | 単位 | しじみ 生 | しじみ 水煮 | あさり 生 | あさり 缶詰 水煮 | はまぐり 生 | はまぐり 水煮 |
廃 棄 率 | % | 75 | 80 | 60 | 0 | 60 | 75 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 64 | 113 | 30 | 114 | 39 | 89 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 267 | 471 | 126 | 477 | 162 | 371 |
水 分 | g/100 g | 86 | 76 | 90.3 | 73.2 | 88.8 | 78.6 |
たんぱく質 | g/100 g | 7.5 | 15.4 | 6 | 20.3 | 6.1 | 14.9 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 5.7 | 12 | 4.5 | -15.4 | 4.4 | -10.6 |
脂 質 | g/100 g | 1.4 | 2.7 | 0.3 | 2.2 | 0.6 | 1.5 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 0.6 | 1.2 | 0.1 | 0.9 | 0.3 | 0.6 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.24 | 0.45 | 0.02 | 0.34 | 0.09 | 0.19 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.14 | 0.27 | 0.01 | 0.21 | 0.05 | 0.11 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.19 | 0.46 | 0.04 | 0.31 | 0.13 | 0.29 |
コレステロール | mg/100 g | 62 | 130 | 40 | 89 | 25 | 79 |
炭水化物 | g/100 g | 4.5 | 5.5 | 0.4 | 1.9 | 1.8 | 2.9 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
食物繊維総量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
灰 分 | g/100 g | 1.2 | 1.8 | 3 | 2.4 | 2.8 | 2.3 |
ナトリウム | mg/100 g | 180 | 100 | 870 | 390 | 780 | 490 |
カリウム | mg/100 g | 83 | 66 | 140 | 9 | 160 | 180 |
カルシウム | mg/100 g | 240 | 250 | 66 | 110 | 130 | 130 |
マグネシウム | mg/100 g | 10 | 11 | 100 | 46 | 81 | 69 |
リン | mg/100 g | 120 | 200 | 85 | 260 | 96 | 190 |
鉄 | mg/100 g | 8.3 | 14.8 | 3.8 | 29.7 | 2.1 | 3.9 |
亜鉛 | mg/100 g | 2.3 | 4 | 1 | 3.4 | 1.7 | 2.5 |
銅 | mg/100 g | 0.41 | 0.61 | 0.06 | 0.29 | 0.1 | 0.23 |
マンガン | mg/100 g | 2.78 | 7.3 | 0.1 | 1.24 | 0.14 | 0.3 |
ヨウ素 | µg/100 g | - | - | 55 | - | - | - |
セレン | µg/100 g | - | - | 38 | - | - | - |
クロム | µg/100 g | - | - | 4 | - | - | - |
モリブデン | µg/100 g | - | - | 9 | - | - | - |
レチノール | µg/100 g | 25 | 57 | 2 | 3 | 7 | 12 |
α-カロテン | µg/100 g | 13 | 29 | 1 | - | 0 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 97 | 220 | 21 | - | 25 | 50 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 1 | 1 | 0 | - | - | - |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 100 | 230 | 22 | 35 | 25 | 50 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 33 | 76 | 4 | 6 | 9 | 16 |
ビタミンD | µg/100 g | 0.2 | 0.6 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 1.7 | 3.9 | 0.4 | 2.7 | 0.6 | 2.8 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0.1 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 2 | 5 | Tr | 3 | Tr | 1 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.02 | 0.02 | 0.02 | Tr | 0.08 | 0.15 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.44 | 0.57 | 0.16 | 0.09 | 0.16 | 0.27 |
ナイアシン | mg/100 g | 1.5 | 1.5 | 1.4 | 0.8 | 1.1 | 1.6 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.1 | 0.04 | 0.04 | 0.01 | 0.08 | 0.05 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 68.4 | 81.6 | 52.4 | 63.8 | 28.4 | 20.3 |
葉酸 | µg/100 g | 26 | 37 | 11 | 10 | 20 | 23 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.53 | 0.35 | 0.39 | 0 | 0.37 | 0.45 |
ビオチン | µg/100 g | - | - | 22.7 | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 2 | 1 | 1 | 0 | 1 | 1 |
食塩相当量 | g/100 g | 0.4 | 0.3 | 2.2 | 1 | 2 | 1.2 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | 78 | - | - | - | 64 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
しじみの効果・効能
しじみに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
タンパク質で健康な身体作り
人間にとってタンパク質は臓器や筋肉を構成する栄養素のため、健康維持には欠かせません。ただし、体内で効率よく利用するにはアミノ酸の含有量が重要です。
しじみのタンパク質はアミノ酸をバランスよく含んでいるため、身体作りに役立つでしょう。
オルニチンで肝臓サポート
オルニチンはタンパク質を構成しない遊離アミノ酸の一種です。体内でタンパク質として合成されずに、肝臓でアンモニアなどの解毒に役立ってくれます。
疲労物質とも呼ばれるアンモニアは身体にとって有毒なため、肝臓で尿素へ変換しなければなりません。オルニチンは肝臓の働きを助け、アンモニアの解毒を進めることで疲労回復にも効果が期待できます。
アミノ酸がアルコール分解促進
しじみに含まれる多種多様なアミノ酸は、体内の代謝促進をサポートしてくれます。しじみの効能でもっとも注目されているのが、二日酔いの予防でしょう。
二日酔いはアルコールの代謝物であるアセトアルデヒドが原因となり発生します。オルニチンやアラニン、メチオニンなどのアミノ酸はアセトアルデヒドの分解を高めるため、二日酔い防止が期待できるのです。
ただし、アセトアルデヒドが血管内を循環してしまってからでは効果が見込めません。お酒を飲むタイミングでしじみを一緒に摂取する方法が効果的と言えます。
タウリンが筋肉疲労を軽減
疲労回復成分として注目されるタウリンは、これまで多くの研究が行われてきました。
ある研究では、運動前にタウリン水を摂取したところ、血中のミオグロビン濃度の上昇や大腿直筋の平均周波数の低下が見られました。筋肉疲労を抑制する結果が示されたことから、タウリンには筋肉の回復もサポートする作用があると言えるでしょう。
鉄とビタミンB12で貧血予防
しじみは、貧血と関わりの深いビタミンB12や鉄を豊富に含んでいます。
ビタミンB12は、血液細胞の健康を維持する栄養素です。主に動物性食品に含まれ、欠乏すると巨赤芽球性貧血を引き起こす危険性があります。過剰なダイエットや菜食主義の人は欠乏する場合があるので注意しましょう。
一方、ミネラルの一種である鉄は主に赤血球のヘモグロビンに存在する成分です。欠乏すると鉄欠乏性貧血を起こし、頭痛や集中力の低下を招きます。特に妊婦は貧血を起こしやすい状態のため、貧血予防としてしじみを積極的に摂取してみましょう。
亜鉛やビタミンB2が子供の発育に役立つ
子供の成長や発育に欠かせないのが亜鉛やビタミンB2です。
亜鉛はDNAの合成やタンパク質の代謝に関わるだけでなく、正常な免疫システムを維持するのに役立ちます。
ビタミンB2は別名「発育のビタミン」とも呼ばれる栄養素です。糖質や脂質をエネルギーとして代謝するために働く補酵素で、妊娠中の欠乏は胎児の成長障害を引き起こします。
しじみの食べ方や注意点
しじみの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
新鮮なしじみの見分け方
スーパーで新鮮なしじみを選ぶには、殻に注目しましょう。貝殻にツヤがあり、柄がはっきりとしているしじみは新鮮な証拠です。
殻の口が閉じられているかもチェックしてください。口が開いていたり、殻が割れていたりするなど劣化が見られるしじみは避けましょう。
しじみの砂抜きは塩水で
しじみはしっかり砂を吐き出させないと、臭みが発生してしまうので注意が必要です。
砂抜きは塩水に浸して行う方法と、真水に浸して行う方法の2つがあります。真水に浸すと浸透圧の関係でしじみの成分が溶け出してしまうため、おすすめは塩水を利用する方法です。
1リットルあたり10g程度の塩を入れた塩水にしじみを入れ、冷暗所で3時間以上放置します。浸けたあとは軽く擦り洗いすれば完了です。
おいいく栄養を摂取するなら味噌汁
しじみを使った代表的な料理と言えば味噌汁です。しじみには旨味を作るコハク酸などのアミノ酸が多く含まれるため、茹でると出汁がよく出ます。
アミノ酸のなかにはオルニチンやタウリンなど水溶性の栄養素が含まれるため、味噌汁は栄養を効率よく摂取するためにもおすすめです。
しじみが小さく身を食べることが難しそうであれば、水から茹でて出汁をしっかりとりましょう。一方、身まで食べる場合は沸騰させてからしじみを入れると、身が硬くなりすぎずおいしく食べられます。
ノロウイルスに注意
しじみや牡蠣などの二枚貝は、加熱が不十分な状態で食べるとノロウイルスを引き起こす可能性があります。
ノロウイルスを防ぐ方法はしっかり加熱することです。熱に弱い菌のため、85度以上のお湯で1分以上加熱してから食べるようにしましょう。
しじみの保存方法
しじみの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
冷蔵保存
しじみを手軽に保存するなら冷蔵保存が良いでしょう。冷蔵保存する場合は、砂抜きをしてから保存袋に入れます。乾燥しないように口をしっかり閉じ、密閉させるのがポイントです。
しじみは冷蔵だと3日程度しか日持ちしないため、もっと長く保存する場合は冷凍させる方法があります。
冷凍保存
しじみは凍らさせても栄養が損なわれないので、長期保存したい場合は冷凍保存がおすすめです。冷凍保存なら1ヶ月近く保存することができます。
しじみを冷凍させるとオルニチンの量が増えるという研究結果もあるため、栄養の観点からも利点がありそうです。
冷凍保存する場合も、冷蔵保存と同じく砂抜きをしてから保存袋に入れます。研究ではマイナス4度の環境がもっともオルニチンの量が増えたため、新聞紙などにくるみ緩やかに冷凍させる方法が適しているでしょう。
使うときは解凍せず、そのまま加熱調理ができます。