えごまの栄養と効果効能・調理法・保存法

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えごま

えごまの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、えごまに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

えごまとは

えごま(Perilla)は、東南アジアが原産地とされるシソ科の植物です。漢字では「荏胡麻」と表記します。種子がごまに似ていることから、えごまと呼ばれるようになりました。別名は「あぶらえ」です。

えごまの種子(実)から搾汁できる「えごま油」のイメージが強い作物ですが、種子そのものや葉も食べることができます。えごまの種子は、料理や菓子の材料として使うほか、すりつぶして「えごま味噌」にも加工されます。

えごまの葉には独特なクセがあるため、日本では野菜としてあまり利用されてきませんでした。その一方で、韓国ではサンチュやキムチの材料として一般的によく使われています。

近年では韓国料理の影響もあり、国内でもえごまの葉が徐々に流通するようになってきました。

露地栽培のえごまの葉の旬は6~8月の夏の時期で、ハウス栽培のものは年間を通して出回っています。種子の収穫期は、葉が枯れ始める10月ごろです。

えごまとしそ(大葉)の違い

えごまは、しそ(大葉)と同じシソ科の植物の変種です。そのため、葉の形は一見区別が付かないほどよく似ています。

見た目はそっくりですが、えごまとしそは香りや風味が異なります。しそにはさっぱりとした爽やかな香りがありますが、えごまは少し苦味を感じるような濃厚な風味を持っています。えごまの葉は、日本人の中でも味の好き嫌いが分かれる野菜です。

えごま油と亜麻仁油(アマニ油)の違い

えごま油はシソ科の植物を原料とするのに対し、亜麻仁油はアマ科の亜麻の種から抽出されるため、両者の違いは原材料です。

また、血圧や中性脂肪を下げる効果のあるn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)がどちらの油にも豊富ですが、えごま油のほうが10%ほど多くのn-3系脂肪酸を含んでいます。より効率的にn-3系脂肪酸を摂取したいときは、亜麻仁油よりもえごま油が適していると言えるでしょう。

えごま油の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

亜麻仁油の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

えごまの種類

えごまは、種皮の色によって黒種・白種に分けられます。

黒種(黒えごま)

種皮が黒褐色または赤褐色のえごまは、黒種(黒えごま)と呼ばれています。油分が多く、油を絞るのに最適なえごまです。

白種(白えごま)

白種は、種皮が灰白色の品種です。黒種と比較して皮が厚く油が少ないので、料理のトッピングなどとして種そのものを食べるのに向いています。

えごまに含まれる成分・栄養素

えごま100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

なお、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載のある、乾燥えごまとえごま油の成分表を記載しています。

食品名単位えごま 乾えごま油
廃 棄 率%00
エネルギー(kcal)kcal/100 g544921
エネルギー(kJ)kJ/100 g22763852
水 分g/100 g5.6Tr
たんぱく質g/100 g17.70
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g--
脂 質g/100 g43.4100
トリアシルグリセロール当量g/100 g40.699.5
飽和脂肪酸g/100 g3.347.64
一価不飽和脂肪酸g/100 g6.6116.94
多価不飽和脂肪酸g/100 g28.8370.6
コレステロールmg/100 g00
炭水化物g/100 g29.40
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g2.5-
水溶性食物繊維g/100 g1.70
不溶性食物繊維g/100 g19.10
食物繊維総量g/100 g20.80
灰 分g/100 g3.90
ナトリウムmg/100 g2Tr
カリウムmg/100 g590Tr
カルシウムmg/100 g3901
マグネシウムmg/100 g230Tr
リンmg/100 g5501
mg/100 g16.40.1
亜鉛mg/100 g3.80
mg/100 g1.930
マンガンmg/100 g3.090.01
ヨウ素µg/100 gTr-
セレンµg/100 g3-
クロムµg/100 g2-
モリブデンµg/100 g48-
レチノールµg/100 g00
α-カロテンµg/100 g-Tr
β-カロテンµg/100 g-22
β-クリプトキサンチンµg/100 g-2
β-カロテン当量µg/100 g1623
レチノール活性当量µg/100 g12
ビタミンDµg/100 g00
α-トコフェロールmg/100 g1.32.4
β-トコフェロールmg/100 g0.30.6
γ-トコフェロールmg/100 g23.658.6
δ-トコフェロールmg/100 g0.54.6
ビタミンKµg/100 g15
ビタミンB1mg/100 g0.540
ビタミンB2mg/100 g0.290
ナイアシンmg/100 g7.60
ビタミンB6mg/100 g0.55-
ビタミンB12µg/100 g0-
葉酸µg/100 g59-
パントテン酸mg/100 g1.65-
ビオチンµg/100 g34.6-
ビタミンCmg/100 gTr0
食塩相当量g/100 g00
アルコールg/100 g--
硝酸イオンg/100 g--
テオブロミンg/100 g--
カフェインg/100 g--
タンニンg/100 g--
ポリフェノールg/100 g--
酢酸g/100 g--
調理油g/100 g--
有機酸g/100 g--
重量変化率%--
備考別名: あぶらえ試料: 食用油
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

えごまの効果・効能

えごまに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

βカロテン・ビタミンCなどの抗酸化物質で生活習慣病の予防

えごまの葉には、βカロテンやビタミンCなどの抗酸化物質が豊富に含まれています。

抗酸化物質は、体に有害な活性酸素の働きを抑えて生活習慣病やガンの予防に役立つほか、アンチエイジングにも効果的な栄養素です。

βカロテンは、えごまの種子や油にも含まれていますが、より抗酸化作用が強いと言われているのはえごまの葉。効率的に抗酸化作用を得たいときは、種子や油だけでなく葉も料理に取り入れてみましょう。

抗炎症・抗酸化作用のあるロスマリン酸

ロスマリン酸はローズマリーやスペアミントなどシソ科の植物に含まれる成分で、抗炎症作用や抗酸化作用があることがわかっています。

えごまの葉には多くのロスマリン酸が含まれており、花粉症などのアレルギー反応を改善する効果が期待できる食材です。

最も多くのロスマリン酸を含有しているのはえごまの葉の部分で、種の10~15倍ものロスマリン酸が含まれています。抗酸化作用や抗炎症作用を期待する場合、葉を積極的に食べてみてください。

食物繊維で便秘を改善

食物繊維には腸内環境を整える作用があり、便秘や下痢などの悩みに効果的です。脂質・糖・ナトリウムを体外に排出する作用もあるので、生活習慣病の予防も期待できます。

えごまの種子や葉には多くの食物繊維が含まれており、えごまの種に含まれる食物繊維総量はごま(乾)の約2倍です。

食物繊維には水溶性食物繊維・不溶性食物繊維の2種類がありますが、えごまの種子には、腸のぜん動運動を活発化して便通を改善する不溶性食物繊維が特に豊富で、便秘にお悩みの方におすすめです。

悪玉コレステロールを低下させる不飽和脂肪酸が豊富

えごまの種から取れるえごま油には、不飽和脂肪酸の一種であるn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)が多く含まれています。

特に、n-3系脂肪酸のなかでもa-リノレン酸という栄養素が豊富で、このa-リノレン酸には悪玉コレステロールを減らし、動脈硬化の予防や血圧を低下させる作用が認められています。

n-3系脂肪酸は体内で合成することができないため食事から摂取する必要があり、欠乏すると皮膚炎などを起こすことがあります。厚生労働省が定めるn-3系脂肪酸の成人の1日の食事摂取基準は1.6g~2.2gで、えごま油小さじ1杯程度で補うことができます。

えごまの食べ方

えごまの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

えごまの葉の洗い方

えごまの葉は、流水もしくはボウルにはった水で両面を優しく洗ってください。長時間水にさらしておくとビタミンCなど水溶性の栄養素が流出してしまう可能性があるので、なるべく短い時間で洗いましょう。

えごまの食べ方

えごまの葉に豊富なβカロテンは、油と一緒に摂取することで吸収率が良くなる性質を持っています。

韓国料理のサンチュやキムチなどによく利用されているえごまの葉は、独特の風味で肉の油っぽさを和らげてくれるため、肉との相性も抜群です。えごまの葉は、肉など油を含む食材とともに食べてみましょう。

また、えごまの葉に多く含まれているロスマリン酸は、加熱することにより増幅させられる成分です。ロスマリン酸には抗炎症・抗酸化作用があるので、えごまの葉は茹でる、蒸すなど加熱してから食べるのもおすすめです。

えごまを食べる際の注意点

発泡ポリスチレン製の容器にえごま油と熱湯を加えると、容器の内面が変質して薄くなり、お湯もれを引き起こす可能性があります。

発泡ポリスチレンは、カップ麺の容器などに使われる容器ですが、えごま油を直接注がないようにしてください。

えごまの保存方法

えごまの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

えごまの葉の保存方法

えごまの葉は、冷蔵庫の野菜室で保存します。乾燥に弱いため、濡らしたキッチンペーパーで包んでからポリ袋に入れるか、瓶など高さのある容器に水を入れ、葉の軸が水に浸かるように立てて入れてください。冷蔵保存では1週間ほど持ちます。

えごまの葉を冷凍する場合、洗って水気を拭き取った葉を、乾いたキッチンペーパーで1枚ずつ挟み、密閉できる保存袋に入れて凍らせましょう。

えごまの種の保存方法

えごまの種の保管場所には高温多湿を避けた場所を選び、気温が高い時期は冷蔵庫で保存してください。環境にもよりますが2年ほど保存できます。

冷凍する場合は、密閉できる容器に入れて冷凍庫で保管してください。

参考文献

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