玉ねぎの栄養と効果効能・調理法・保存法
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玉ねぎの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、玉ねぎに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
玉ねぎとは
玉ねぎは、ネギ科ネギ属の代表的な淡色野菜です。
血液をさらさらにする効果や、疲労回復効果などを持ち、キャベツに次いで日本で2番目に多く消費されています。
可食部は、葉の根元が養分を蓄えて丸く太った鱗茎(りんけい)と呼ばれる部位。原産地は、イランを中心とした西アジアと言われています。
玉ねぎの歴史は古く、紀元前27〜25世紀にはエジプトで栽培されていた記録が残っており、ピラミッド建設に従事する労働者に、にんにく、大根と一緒にたまねぎが配給されていたそうです。
日本へは、江戸時代に南蛮船によって長崎に伝来。当初は観賞用でしたが、明治時代に入ってからは食用として栽培されるようになりました。
玉ねぎは年間通して店頭に並ぶ野菜ですが、旬は3〜5月です。国内の主な生産地である北海道では春に、その他の地域では秋に種を蒔きます。秋に蒔いた玉ねぎは5〜6月に収穫されますが、それを3・4月に早取りしたものが新玉ねぎです。
通常玉ねぎは収穫してから1ヶ月ほど乾燥させて保存性を高めますが、新玉ねぎは収穫してからすぐ出荷されるため、皮が薄くて瑞々しい食感があります。
玉ねぎの品種・種類
玉ねぎの代表的な品種と、その特徴について解説します。
黄玉ねぎ
黄玉ねぎは、国内でもっとも多く出回っている代表的な品種です。薄茶色の皮と球形に近い形、固くしまっているのが特徴。
玉ねぎは、辛味が強い「辛味品種」と、辛味の弱い「甘味品種」の大きく2つに分かれますが、黄玉ねぎは辛味品種に分類されます。
赤玉ねぎ
赤玉ねぎは、表皮と鱗葉(りんよう)が赤紫色の品種です。
輪切りにすると木の年輪のように赤紫色の模様が見られます。この特徴的な色から、「紫玉ねぎ」や「レッドオニオン」とも呼ばれています。
形は球または楕円形で、黄玉ねぎに比べると辛味が少ないため、サラダなど生食に適しています。
白玉ねぎ
白玉ねぎは極早生種や早生種。皮が白くて薄く、水分を多く含んでいるため果肉が柔らかいのが特徴です。
黄玉ねぎは辛味があるため、下ごしらえとして水にさらすのが一般的ですが、白玉ねぎは刺激が弱く甘みがあるため、そのまま食べることができます。
葉玉ねぎ
葉が付いた状態で、若い時期に収穫した玉ねぎを葉玉ねぎと言います。
長ねぎのような細長い葉と、水分が多めの小さな実(鱗茎部)を食べることができます。旬は1〜3月ですが、特に寒さが厳しい2月はもっともおいしくなります。
ペコロス
ペコロスは直径が3〜4cmほどの小ぶりな品種です。表皮は薄茶色で、見た目は黄玉ねぎに似ています。そのサイズから、「小玉ねぎ」や「プチオニオン」とも呼ばれます。
成熟しても大きくならないペコロス用の品種もありますが、栽培方法を工夫することで、一般的な黄玉ねぎでもペコロスサイズの玉ねぎを育てることが可能です。
黄玉ねぎを使用する場合は、玉ねぎを過密状態にして栽培することで、大きく成長するのを抑制します。おもな産地は愛知県や北海道です。
玉ねぎに含まれる成分・栄養素
玉ねぎ100gに含まれる栄養素は下記表の通りです。
なお、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載のあったものの中から、主要な玉ねぎに関するデータを抜粋して表にまとめています。
単位 | 生 | 水さらし | 茹で | 油炒め | 赤玉ねぎ・生 | 葉玉ねぎ・生 | |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 37 | 26 | 31 | 105 | 38 | 37 |
水 分 | g/100 g | 89.7 | 93 | 91.5 | 80.1 | 89.6 | 89.5 |
たんぱく質 | g/100 g | 1 | 0.6 | 0.8 | 1.4 | 0.9 | 1.8 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 0.6 | -0.4 | -0.5 | -0.9 | -0.6 | - |
脂 質 | g/100 g | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 5.9 | 0.1 | 0.4 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.01 | -0.01 | -0.01 | -0.42 | -0.01 | - |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | Tr | (Tr) | (Tr) | -3.48 | (Tr) | - |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.03 | -0.03 | -0.03 | -1.55 | -0.03 | - |
コレステロール | mg/100 g | 1 | 0 | 0 | (Tr) | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 8.8 | 6.1 | 7.3 | 12 | 9 | 7.6 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.6 | 0.5 | 0.7 | 1.7 | 0.6 | 0.7 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 1 | 1 | 1 | 0.9 | 1.1 | 2.3 |
食物繊維総量 | g/100 g | 1.6 | 1.5 | 1.7 | 2.7 | 1.7 | 3 |
ナトリウム | mg/100 g | 2 | 4 | 3 | 3 | 2 | 3 |
カリウム | mg/100 g | 150 | 88 | 110 | 210 | 150 | 290 |
カルシウム | mg/100 g | 21 | 18 | 18 | 24 | 19 | 67 |
マグネシウム | mg/100 g | 9 | 7 | 7 | 11 | 9 | 14 |
リン | mg/100 g | 33 | 20 | 25 | 47 | 34 | 45 |
鉄 | mg/100 g | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.3 | 0.6 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.2 | 0.1 | 0.1 | 0.3 | 0.2 | 0.3 |
銅 | mg/100 g | 0.05 | 0.04 | 0.05 | 0.08 | 0.04 | 0.03 |
マンガン | mg/100 g | 0.15 | 0.1 | 0.12 | 0.18 | 0.14 | 0.35 |
ヨウ素 | µg/100 g | 1 | - | 0 | - | - | - |
セレン | µg/100 g | 1 | - | 0 | - | - | - |
クロム | µg/100 g | 0 | - | 1 | - | - | - |
モリブデン | µg/100 g | 1 | - | 1 | - | - | - |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 1 | 1 | 1 | 2 | 0 | 1500 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | Tr | Tr | Tr | Tr | 0 | 120 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.1 | Tr | 0 | 0.9 | 0.1 | 1.1 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 1.8 | 0 | 0.3 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0.1 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | Tr | Tr | Tr | 7 | Tr | 92 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.03 | 0.03 | 0.03 | 0.04 | 0.03 | 0.06 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.01 | 0.01 | 0.01 | 0.02 | 0.02 | 0.11 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.6 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.16 | 0.09 | 0.11 | 0.22 | 0.13 | 0.16 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 16 | 11 | 11 | 21 | 23 | 120 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.19 | 0.14 | 0.15 | 0.29 | 0.15 | 0.13 |
ビオチン | µg/100 g | 0.6 | - | 0.5 | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 8 | 5 | 5 | 9 | 7 | 32 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
玉ねぎの効果・効能
玉ねぎに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
硫化アリル:血液をサラサラにする
硫化アリルは、玉ねぎ特有のツンとした匂いのもとになっている成分です。
血液の凝固を抑制する作用があり、血をサラサラにして動脈硬化予防や血栓予防に効果が期待できます。
また、血液中の過剰な糖や脂質を減らす働きもあり、血中コレステロール値を正常に保ったり、インスリンの分泌を促進したりといった効果もあります。
さらに、硫化アリルの一種であるアリシンには、血流を改善する効果があります。
ケルセチン:血管を若々しく保つ・脂肪燃焼を助ける
ポリフェノールの一種であるケルセチンは、強い抗酸化作用を持っており、血管を丈夫にしたり、血管を柔らかくしたり、など血管のアンチエイジング効果があります。
また、悪玉コレステロールを減らす・脂肪吸収を抑えるといった働きもあることから、ダイエット向けのサプリメントに用いられる栄養でもあります。
カリウム:むくみを解消する
玉ねぎに豊富に含まれるカリウムは、体の細胞内の過剰な水分(ナトリウム)を排出する働きがあります。
塩分の摂りすぎによって細胞に溜まった水分の排出を促すことで、血圧を下げたり、むくみを予防・改善したりといった効果が期待できます。
玉ねぎの調理方法
玉ねぎの洗い方や調理方法を解説します。
玉ねぎの下ごしらえ
玉ねぎの辛味を抑えるためには、水にさらすのが効果的です。
玉ねぎに含まれる硫化アリルの1種であるアリシンは、水溶性で水にさらすことで溶け出すため、辛味を抑えることができます。
なおアリシンは熱に弱い成分なので、加熱する場合は水にさらす必要はありません。
ただし水にさらし過ぎると、水溶性のビタミンB群やカリウムも溶け出してしまいます。5〜10分程度冷水にさらしたら、引き上げて水気を絞りましょう。
玉ねぎのおすすめ調理方法
玉ねぎを丸ごと使って、スープや煮汁ごと食べる料理にすることで、水溶性の栄養も逃さずに摂取することができます。
また、ポリフェノールの1種で脂肪燃焼効果のあるケルセチンは、油と一緒に摂取することで吸収率が高まります。肉と一緒に調理したり、炒め物にしたりすると良いでしょう。
さらに、血液をサラサラにする効果がある硫化アリルは、加熱すると効果が上がります。
また、硫化アリルは空気に触れることで血液をサラサラにする成分アリシンに変化するので、みじん切りにして10分ほど空気に触れさせましょう。
この時、アリシンを増やす切り方は、玉ねぎの繊維と垂直に包丁を入れてから90度回転して、繊維と平行に切るのがポイントです。
玉ねぎを調理する際の注意点
玉ねぎを切っていると、涙や鼻水が出てくることがあります。
これは、玉ねぎを切ることで細胞が壊れ、催涙成分である硫化アリルが気化し、空気中に放出されるためです。
涙や鼻水を出さずに玉ねぎを切るためには、いくつか方法があります。
1つ目の方法は、硫化アリルを目や鼻に触れさせないように水中メガネやマスクを装着します。
2つ目の方法は、硫化アリルが気化しにくいように、調理の前に玉ねぎを十分に冷やす方法です。
3つ目に、電子レンジで加熱するのも有効な手段です。レンジで20秒ほど温めることで涙を抑えることはできますが、食感が落ちてしまう恐れがあります。
いずれの方法でも、換気扇を回して、空気中に放出された硫化アリルを強制的に排出するようにしましょう。
玉ねぎの保存方法
玉ねぎの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
玉ねぎは、湿気を嫌う野菜です。湿度が高い場所だと、根や芽が出たり、腐ったりといった原因になってしまいます。
基本的に常温保存で問題ありませんが、日の当たらない、風通しの良い場所においておきましょう。ただし、気温や湿度が高くなる夏場は冷蔵庫で保存してください。
丸ごと保存する場合は、1つずつ新聞紙に包んで湿気を避けるようにします。新聞紙に包んだら、カゴに入れるかネットに吊るして常温保存しましょう。
使いかけの場合は、切り口が空気に触れないようにラップでぴったりと包み、冷蔵庫に入れます。
冷凍保存する場合は、皮をむいて好みの大きさにカットし、冷凍保存用の袋に平らになるように入れます。空気を抜いて封をし、冷凍庫に入れてください。
常温保存は約2ヶ月、夏場で冷蔵保存にする場合と冷凍保存の場合は、約1ヶ月保存することができます。