緑茶の栄養と効果効能・調理法・保存法
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緑茶の旬や生産地、主要な品種などの基本情報、似た種類との違い、緑茶に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわないお茶の入れ方や保存法などを紹介します。
緑茶とは
緑茶(green tea)とは、茶葉を摘み取ってすぐに発酵を止める製法で作られた、不発酵茶全般を指す言葉です。緑茶、あるいは日本茶とも呼ばれ、煎茶や玉露など、さまざまな種類があります。
緑茶に使われる茶葉は5月が旬です。緑茶は、1年に2~4回程度、茶葉を摘み取る摘採がおこなわれており、その年初めての茶葉を新茶と呼びます。新茶の一般的な旬は5月ですが、温暖な地域ではそれより早い時期に摘採がおこなわれることもあります。
茶葉を摘採する時期によって、緑茶の味や香りが変わり、新茶(一番茶)はうまみ成分が多く含まれることが特徴です。二番茶以降は、新茶よりもうまみが落ちますが、カテキンの含有量が増え、緑茶特有の苦味を味わえます。
緑茶は、奈良・平安時代に中国大陸から伝えられたと考えられています。奈良・平安時代は、緑茶は貴重で貴族など位の高い人の嗜むものでしたが、鎌倉時代に京都で茶葉の栽培が盛んになり全国に広がりました。庶民に普及したのは江戸時代に入ってからです。茶園が増え、生産量が安定したことから、武士を中心に緑茶文化が浸透したといわれています。
現在の緑茶の生産地は、静岡県と鹿児島県が中心です。その他に、三重県や京都府、宮城県でも毎年3,000トン以上が生産されています。
緑茶の種類
緑茶には、製造方法の違いによって煎茶や玉露、番茶、ほうじ茶などがあります。
煎茶(せんちゃ)
煎茶とは、茶葉を製造する過程で、蒸す・揉むという工程をたどる緑茶です。摘採後、茶葉が発酵しないうちに蒸し、揉みながら乾燥させます。
日本で生産される緑茶の約60%が煎茶のため、緑茶=煎茶とのイメージが強いかもしれません。お茶特有の渋味が程よく、さっぱりとした味が特徴です。
玉露(ぎょくろ)
玉露はかぶせ茶とも呼ばれ、摘採の3週間前から茶木をよしずで覆って、日光を遮断して栽培する緑茶です。
日光を遮ることで、緑茶のうまみ成分であるテアニンがカテキンに変換されなくなるため、苦味が少なくうまみの強い緑茶になります。また、遮光により発生する独特の香りは、覆い香と呼ばれます。
ほうじ茶
ほうじ茶とは、煎茶や番茶を強火で炒った緑茶の1つです。
茶葉も茶の色も茶色いため、緑茶とは異なる種類に見えますが、茶葉を発酵させないため緑茶の仲間に入ります。約200度もの熱で炒るため、茶葉に含まれるカフェインが気化し、カフェイン含有量が減ることが特徴です。
煎茶や玉露よりも香ばしい香りで、苦味が少なく爽やかな味わいをしています。
抹茶
抹茶とは、玉露のように覆いをして育てた茶葉を揉まずに乾燥させ、微粉砕機や石臼で挽いた緑茶の1種です。実は、抹茶には製造法の定義がなく、覆いをせずに栽培した茶葉を用いることもあります。
飲み物として使われるほか、お菓子などに使用される種類です。茶葉の品質によって、味に大きな差が出るため、有名茶園の抹茶は高級品として流通しています。
番茶
番茶とは、一番茶の摘み残り、あるいは二番茶や三番茶を指しますが、栽培される地域によってどの時期の茶葉を指すかが異なります。一般的には、新茶以外の緑茶と考えてよいでしょう。
茶葉は、新芽ほどカフェインが多く含まれるため、番茶はカフェイン量が少ないことが特徴です。妊婦やカフェインが気になる人でも、他の緑茶と比べてカフェイン量を気にせず飲めます。
緑茶と似た飲み物の違い
緑茶と似ている飲み物、烏龍茶と紅茶の違いを解説します。
烏龍茶
烏龍茶とは、緑茶と同じ茶葉から製造される飲み物です。
茶葉を発酵させない緑茶とは異なり、烏龍茶は少しだけ発酵を進めます。茶葉の撹拌・静置を繰り返すことで、色と味を引き出します。
烏龍茶の栄養と効果効能・入れ方・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
紅茶
紅茶は、発酵の工程をふむことで茶葉を酸化させ、揉切をおこなってカテキンの赤味を引き出した飲み物です。原料となる茶葉は緑茶や烏龍茶と同じですが、完全に発酵させることでまったく異なる色と味になります。
緑茶に含まれる成分・栄養素
緑茶100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
緑茶には、ミネラルやビタミンが豊富に含まれています。特にビタミンAや、ビタミンK、葉酸など、身体に必要な栄養素を多く含む食品です。
緑茶に多く含まれ、コレステロールを下げる効果のあるカテキンは、一般的に、新茶よりも二番茶のほうが含有量が多いと考えられています。
食 品 名 | 単位 | 玉露 茶 | 玉露 浸出液 | 抹茶 茶 | せん茶 茶 | せん茶 浸出液 | かまいり茶 浸出液 | 番茶 浸出液 | ほうじ茶 浸出液 | 玄米茶 浸出液 | |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
エネルギー | kJ | 998 | 22 | 984 | 948 | 7 | 2 | 1 | 1 | 0 | |
kcal | 241 | 5 | 237 | 229 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | ||
水 分 | g | 3.1 | 97.8 | 5 | 2.8 | 99.4 | 99.7 | 99.8 | 99.8 | 99.9 | |
たんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質 | g | -22.7 | -1 | 23.1 | -19.1 | -0.2 | -0.1 | - | - | - |
たんぱく質 | g | 29.1 | 1.3 | 29.6 | 24.5 | 0.2 | 0.1 | Tr | Tr | 0 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | - | - | 3.3 | 2.9 | - | - | - | - | - |
コレステロール | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
脂質 | g | 4.1 | 0 | 5.3 | 4.7 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | - | - | 1.6 | - | - | - | - | - | - |
g | |||||||||||
利用可能炭水化物(質量計) | g | - | - | 1.5 | - | - | - | - | - | - | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 6.4 | 0.3 | 9.5 | 8.4 | 0.3 | 0.1 | 0.1 | Tr | 0 | |
* | * | * | * | * | * | * | * | * | |||
食物繊維総量 | g | 43.9 | - | 38.5 | 46.5 | - | - | - | - | 0 | |
糖アルコール | g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | |
炭水化物 | g | 43.9 | Tr | 39.5 | 47.7 | 0.2 | Tr | 0.1 | 0.1 | 0 | |
有機酸 | g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | |
灰分 | g | 6.3 | 0.5 | 7.4 | 5 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 11 | 2 | 6 | 3 | 3 | 1 | 2 | 1 | 2 |
カリウム | mg | 2800 | 340 | 2700 | 2200 | 27 | 29 | 32 | 24 | 7 | |
カルシウム | mg | 390 | 4 | 420 | 450 | 3 | 4 | 5 | 2 | 2 | |
マグネシウム | mg | 210 | 15 | 230 | 200 | 2 | 1 | 1 | Tr | 1 | |
リン | mg | 410 | 30 | 350 | 290 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | |
鉄 | mg | 10 | 0.2 | 17 | 20 | 0.2 | Tr | 0.2 | Tr | Tr | |
亜鉛 | mg | 4.3 | 0.3 | 6.3 | 3.2 | Tr | Tr | Tr | Tr | Tr | |
銅 | mg | 0.84 | 0.02 | 0.6 | 1.3 | 0.01 | Tr | 0.01 | 0.01 | 0.01 | |
マンガン | mg | 71 | 4.6 | - | 55 | 0.31 | 0.37 | 0.19 | 0.26 | 0.15 | |
ヨウ素 | μg | - | - | - | 4 | 0 | - | - | - | - | |
セレン | μg | - | - | - | 3 | 0 | - | - | - | - | |
クロム | μg | - | - | - | 8 | 0 | - | - | - | - | |
モリブデン | μg | - | - | - | 1 | 0 | - | - | - | - | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α|カロテン | μg | - | - | - | - | - | - | - | - | 0 | |
β|カロテン | μg | - | - | - | - | - | - | - | - | 0 | |
β|クリプトキサンチン | μg | - | - | - | - | - | - | - | - | 0 | |
β|カロテン当量 | μg | 21000 | 0 | 29000 | 13000 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
レチノール活性当量 | μg | 1800 | 0 | 2400 | 1100 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンD | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
α-トコフェロール | mg | 16 | - | 28 | 65 | - | - | - | - | 0 | |
β-トコフェロール | mg | 0.1 | - | 0 | 6.2 | - | - | - | - | 0 | |
γ-トコフェロール | mg | 1.5 | - | 0 | 7.5 | - | - | - | - | 0 | |
δ-トコフェロール | mg | 0 | - | 0 | 0 | - | - | - | - | 0 | |
ビタミンK | μg | 4000 | Tr | 2900 | 1400 | Tr | 0 | Tr | 0 | 0 | |
ビタミンB1 | mg | 0.3 | 0.02 | 0.6 | 0.36 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンB2 | mg | 1.16 | 0.11 | 1.35 | 1.43 | 0.05 | 0.04 | 0.03 | 0.02 | 0.01 | |
ナイアシン | mg | 6 | 0.6 | 4 | 4.1 | 0.2 | 0.1 | 0.2 | 0.1 | 0.1 | |
ナイアシン当量 | mg | -14 | -1 | 12 | -11 | -0.3 | -0.1 | 0.2 | 0.1 | 0.1 | |
ビタミンB6 | mg | 0.69 | 0.07 | 0.96 | 0.46 | 0.01 | 0.01 | 0.01 | Tr | 0.01 | |
ビタミンB12 | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
葉 酸 | μg | 1000 | 150 | 1200 | 1300 | 16 | 18 | 7 | 13 | 3 | |
パントテン酸 | mg | 4.1 | 0.24 | 3.7 | 3.1 | 0.04 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ビ オ チ ン | μg | - | - | - | 52 | 0.8 | - | - | - | - | |
ビタミンC | mg | 110 | 19 | 60 | 260 | 6 | 4 | 3 | Tr | 1 | |
アルコール | g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | |
食塩相当量 | g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
緑茶の効果・効能
緑茶に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
カテキンの抗酸化作用でコレステロールを低減
カテキンとは、緑茶の渋味成分で、ポリフェノールの1種です。タンニンとも呼ばれます。
カテキンには強い抗酸化作用があるため、悪玉コレステロールを下げる効果があると考えられます。抗酸化作用とは、脂質の代謝を抑制し、肥満や老化の原因となる過酸化脂質の生成を抑制する作用です。
カテキンは、コレステロールが多く含まれるサラダ油やラードに対して、強い抗酸化作用を示すことがわかっています。
また、ビタミンCと同時に摂取することで、抗酸化作用に相乗効果が起こって、より強い抗酸化作用が生じると考えられている栄養素です。緑茶には、カテキンだけではなく、ビタミンCも豊富に含まれるため、コレステロールを下げる効果が期待されます。
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カフェインでダイエット
カフェインとは、アルカロイドと呼ばれる植物由来の化合物です。
コーヒーや栄養ドリンクに多く含まれているほか、緑茶もカフェインを豊富に含みます。コーヒーのカフェイン濃度は60mg/100mlであるのに対し、煎茶のカフェイン濃度は20mg/100mlです。
カフェインには、エネルギー消費を促進させる効果があることが知られています。カフェインが体内に吸収されると、血中の脂質を分解し、分解産物を尿中に排出を促進します。そのため、ダイエット中の飲み物として、カフェインを多く含む緑茶が効果的です。
緑茶の中でも、玉露のカフェイン濃度は特に高く160mg/100mlのため、ダイエットを目的に緑茶を飲む場合は、玉露を選ぶとよいでしょう。
ただし、妊娠中の女性が、カフェインを過剰摂取すると、新生児の低体重リスクが高まると考えれています。妊婦の1日のカフェイン摂取量は、上限200~300mgが推奨されており、カフェインを多く含む玉露は避け、煎茶やほうじ茶を選びましょう。
カフェインの効果効能・1日の摂取目安量・効果的な摂取方法・副作用|NANIWA SUPLI MEDIA
β-カロテンが肌荒れ予防に効果
β-カロテンとは、植物の色素成分のことで、にんじんやかぼちゃなどの緑黄色野菜に、多く含まれるカロテノイドの1種です。
β-カロテンは、体内でビタミンAに変換されます。ビタミンAは、視覚や皮膚・粘膜を正常に保つ働きをしており、肌あれ予防や改善など美容効果の高い栄養素です。
β-カロテンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
緑茶の飲み方・食べ方
緑茶の栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
緑茶のおいしい入れ方
緑茶の種類によって、おいしく飲める温度が異なります。
緑茶の種類 | お湯の温度 |
煎茶 | 80度前後 |
玉露 | 50度前後 |
ほうじ茶 | 90~100度 |
煎茶や玉露を飲むときは、一度湯のみにお湯を移して冷ましてから、茶葉を入れた急須にお湯を戻して緑茶を入れるとよいでしょう。
2煎目をおいしく入れる方法
緑茶の2煎目は、1煎目よりもうまみが少なく苦味が強いといわれていますが、入れ方を工夫すると2煎目もおいしく飲めます。
2煎目を入れるときは、1煎目のお湯を急須に残したままにしないようにしましょう。1煎目のお湯が残っていると、2煎目の渋みが強くなってしまいます。
また、1煎目を入れたあとに急須の蓋を少し開けておくと、うまみが逃げにくくなります。茶葉が蒸されると、うまみが逃げて2煎目をおいしく飲めないため、注意が必要です。
緑茶はそのまま食べることもできる
飲み物としてのイメージの強い緑茶葉ですが、実はそのまま食べることも可能です。
茶葉を粗くすりつぶし、ワカメなどと一緒にごはんに混ぜ込むことで、緑茶おにぎりができます。また、和食の薬味としても使えるほか、天ぷらやから揚げの衣に混ぜるなど、さまざまな使い方で緑茶の風味を活かせます。
緑茶の保存方法
緑茶の栄養素を損なわない保存方法を解説します。
2週間~1ヶ月で使いきれる量を購入する
緑茶は、空気に触れると酸化して味が落ちたり、風味が飛んだりしやすくなります。緑茶を購入するときは、1ヶ月程度で使いきれる量を目安に購入すると、いつでもおいしいお茶を楽しめます。
開封後の緑茶は、空気に触れないように密閉容器に入れ、遮光して涼しい場所に保管しましょう。
においの吸着や湿度に気を付けて保存する
緑茶を冷蔵庫で保存すると、茶葉が冷蔵庫内のにおいを吸着してしまいます。また、冷蔵庫は開け閉めすることで内部の湿度が変わりやすくなるため、緑茶が結露する原因になります。
緑茶は冷蔵庫では保管せず、温度・湿度の変化が少ない場所に保存するとよいでしょう。