あずきの栄養と効果効能・調理法・保存法
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あずきの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、あずきに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
あずきとは
あずき(azuki beans)とは、マメ科の植物の種子で、「ショウズ」とも呼ばれます。
原種であるヤブツルアズキは、ヒマラヤ~日本に生息することから、原産地は東アジアであると考えられています。日本では、縄文時代~古墳時代にはすでに利用されていたと考えられ、書物に登場するのは奈良時代です。
あずきの赤色は、東アジア諸国で魔除けの力があるとされ、古くから行事や儀式で利用されてきました。
日本では、主に北海道の生産量が多く、国内生産量の8割を占めています。北海道のほかには、京都や兵庫、岡山などでも栽培されており、それぞれの気候に適した品種が選ばれています。
あずきは、ほかの豆類と同様に、さやの中にある種子が可食部です。9月~11月が旬で、さやが茶色くなると収穫されます。
あずきと似た食べ物
あずきと見た目や味が似ている豆類は、ささげや金時豆などです。菓子類によく使われ、見た目も赤い豆類は、あずきと間違えやすいでしょう。
ささげ
ささげ(大角豆)はつる性のマメ科植物で、種子を食用に利用します。種子の大きさは1cm程度で、色もあずき色をしているため、あずきと間違えやすい食べ物です。
赤飯には一般的にあずきを用いますが、関東の一部地域ではささげを用いて赤飯を炊く風習があります。あずきは水に漬けると胴切れを起こすため、江戸時代には「切腹」を思わせる食べ物として縁起がよくないと考えられていたからです。
あずきよりも煮崩れしにくいささげは、煮豆や赤飯に向いています。
金時豆
金時豆(きんときまめ)は、あずきと似た赤紫色をした、いんげん豆の1種です。さや内の種子が可食部で、大きさは2cmほどに成長します。
粒が大きく、食感もよいことから煮豆に適しているほか、甘納豆の原料にも使われています。和食だけでなく、洋食にも合うマメ科の植物です。
赤えんどう
赤えんどうとは、えんどう豆の品種の1つで、種子が赤いことが特徴です。えんどう豆には緑色の青えんどうと、赤褐色の赤えんどうがあります。
種子が緑色の青えんどうは、うぐいす餡やスナック菓子などに使用されています。一方の赤えんどうは、みつまめや豆大福、落雁(らくがん)などの菓子用のえんどうです。
紫花豆
紫花豆も、あずきと似た赤紫色をした、いんげん豆の仲間です。あずきよりも種子が大粒で、寒冷地を好みます。
表皮が厚く、調理に時間はかかりますが、皮に含まれるポリフェノールなどの栄養素が豊富であることが特徴です。煮豆や甘納豆に使われます。
あずきの種類
あずきは、栽培する土地に合わせて品種改良が進んでいます。大きく分けて、普通品種と大納言の2種類があります。
普通品種
普通品種のあずきは、大きさが約5.5mm未満の小型~中型種です。有名な品種に、「エリモショウズ」「きたのおとめ」などがあります。
あずきの種皮の色は、赤以外にも黒や緑、斑紋などさまざまです。そのうち、種皮が白いものを白小豆と呼び、国内でも生産されています。
大納言
普通品種よりも大型の品種で、5.5mm以上のものを大納言と呼びます。大納言に含まれる品種は、あずきとは区別され、流通名も「大納言」と称されます。
あんこや甘納豆、赤飯などに使用され、価格が普通品種よりも高いことが特徴です。
あずきに含まれる成分・栄養素
あずき100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
あずきには、タンパク質や食物繊維、ミネラルが豊富に含まれます。とくに、栄養素は種皮に多く含まれているため、こしあんよりも粒あんのほうが栄養素が高い点に注目しましょう。
種皮には、サポニンやアントシアニンなど、健康によい栄養素も豊富です。
食 品 名 | 単位 | あずき 全粒 乾 | あずき 全粒 ゆで | あずき ゆで小豆缶詰 | あずき あん こし生あん | あずき あん さらしあん (乾燥あん) | あずき あん こし練りあん (並あん) | あずき あん こし練りあん (中割りあん) | あずき あん こし練りあん (もなかあん) | あずき あん つぶし練りあん | |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
エネルギー | kJ | 1279 | 512 | 860 | 624 | 1413 | 1022 | 1059 | 1185 | 1014 | |
kcal | 304 | 122 | 202 | 147 | 335 | 239 | 248 | 277 | 239 | ||
水 分 | g | 14.2 | 63.9 | 45.3 | 62 | 7.8 | -35 | -33.2 | -25.7 | 39.3 | |
たんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質 | g | 17.8 | 7.4 | 3.6 | 8.5 | 20.2 | -4.9 | -4.4 | -4.4 | 4.9 |
たんぱく質 | g | 20.8 | 8.6 | 4.4 | 9.8 | 23.5 | -5.6 | -5.1 | -5.1 | 5.6 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | 0.8 | -0.3 | 0.2 | -0.3 | -0.4 | -0.1 | -0.1 | -0.1 | 0.3 |
コレステロール | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
脂質 | g | 2 | 0.8 | 0.4 | 0.6 | 1 | -0.3 | -0.3 | -0.3 | 0.6 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | 46.5 | 18.2 | 47.7 | 26 | 52.4 | -60.4 | -63 | -70.9 | 54.7 |
g | * | * | * | * | * | * | * | * | * | ||
利用可能炭水化物(質量計) | g | 42.3 | 16.5 | 44.9 | 23.6 | 47.7 | -56.8 | -59.3 | -66.9 | 51.6 | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 37.7 | 14.9 | 46.8 | 22 | 43.8 | -63.6 | -65.5 | -73 | 49.4 | |
食物繊維総量 | g | 24.8 | 12.1 | 3.4 | 6.8 | 26.8 | -3.9 | -3.5 | -3.5 | 5.7 | |
糖アルコール | g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | |
炭水化物 | g | 59.6 | 25.6 | 49.2 | 27.1 | 66.8 | -58.8 | -61.1 | -68.6 | 54 | |
有機酸 | g | 1.2 | 0.3 | - | - | - | - | - | - | - | |
灰分 | g | 3.4 | 1 | 0.7 | 0.5 | 1 | -0.3 | -0.3 | -0.3 | 0.5 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 1 | 1 | 90 | 3 | 11 | -2 | -2 | -2 | 56 |
カリウム | mg | 1300 | 430 | 160 | 60 | 170 | -35 | -32 | -32 | 160 | |
カルシウム | mg | 70 | 27 | 13 | 73 | 58 | -42 | -38 | -38 | 19 | |
マグネシウム | mg | 130 | 43 | 36 | 30 | 83 | -17 | -16 | -16 | 23 | |
リン | mg | 350 | 95 | 80 | 85 | 210 | -49 | -44 | -44 | 73 | |
鉄 | mg | 5.5 | 1.6 | 1.3 | 2.8 | 7.2 | -1.6 | -1.5 | -1.5 | 1.5 | |
亜鉛 | mg | 2.4 | 0.9 | 0.4 | 1.1 | 2.3 | -0.6 | -0.6 | -0.6 | 0.7 | |
銅 | mg | 0.68 | 0.3 | 0.12 | 0.23 | 0.4 | -0.14 | -0.12 | -0.12 | 0.2 | |
マンガン | mg | 1.09 | 0.44 | 0.28 | 0.74 | 1.33 | -0.42 | -0.38 | -0.38 | 0.4 | |
ヨウ素 | μg | 0 | 0 | - | Tr | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
セレン | μg | 1 | Tr | - | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | Tr | |
クロム | μg | 2 | 1 | - | 1 | 13 | -1 | -1 | -1 | 1 | |
モリブデン | μg | 210 | 90 | - | 59 | 150 | -34 | -31 | -31 | 49 | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α|カロテン | μg | 2 | Tr | - | - | - | 0 | 0 | 0 | 0 | |
β|カロテン | μg | 8 | 4 | - | - | - | 0 | 0 | 0 | 0 | |
β|クリプトキサンチン | μg | 1 | Tr | - | - | - | 0 | 0 | 0 | 0 | |
β|カロテン当量 | μg | 9 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
レチノール活性当量 | μg | 1 | Tr | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンD | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
α-トコフェロール | mg | 0.1 | 0.1 | 0 | 0 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0.1 | |
β-トコフェロール | mg | 0.2 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr | |
γ-トコフェロール | mg | 3 | 1.3 | 0.8 | 1.4 | 3.4 | -0.8 | -0.7 | -0.7 | 0.9 | |
δ-トコフェロール | mg | 11 | 4.2 | 2 | 3.8 | 3.9 | -2.2 | -2 | -2 | 1.9 | |
ビタミンK | μg | 8 | 3 | 4 | 7 | 5 | -4 | -4 | -4 | 6 | |
ビタミンB1 | mg | 0.46 | 0.15 | 0.02 | 0.02 | 0.01 | -0.01 | -0.01 | -0.01 | 0.02 | |
ビタミンB2 | mg | 0.16 | 0.04 | 0.04 | 0.05 | 0.03 | -0.03 | -0.03 | -0.03 | 0.03 | |
ナイアシン | mg | 2.2 | 0.5 | 0.3 | 0.1 | 0.8 | -0.1 | -0.1 | -0.1 | 0.1 | |
ナイアシン当量 | mg | 6.2 | 2.2 | 1.1 | 1.8 | 5.1 | -1.1 | -1 | -1 | 1.1 | |
ビタミンB6 | mg | 0.4 | 0.11 | 0.05 | 0 | 0.03 | 0 | 0 | 0 | 0.03 | |
ビタミンB12 | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
葉 酸 | μg | 130 | 23 | 13 | 2 | 2 | -1 | -1 | -1 | 8 | |
パントテン酸 | mg | 1.02 | 0.43 | 0.14 | 0.07 | 0.1 | -0.04 | -0.04 | -0.04 | 0.18 | |
ビ オ チ ン | μg | 9.6 | 3.3 | - | 2.5 | 7.2 | -1.4 | -1.3 | -1.3 | 1.7 | |
ビタミンC | mg | 2 | Tr | Tr | Tr | Tr | 0 | 0 | 0 | Tr | |
アルコール | g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | |
食塩相当量 | g | 0 | 0 | 0.2 | 0 | Tr | 0 | 0 | 0 | 0.1 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
あずきの効果・効能
あずきに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
食物繊維が整腸作用を促進
あずきには、食物繊維が豊富に含まれています。とくに種皮に多い栄養素で、茹でたあずき100gの食物繊維は約12g。これは茹でたさやえんどうの約4倍、茹でたキャベツの約6倍です。
食物繊維は、人間の消化酵素では消化されない栄養素で、体内に吸収されることはありません。しかし、食物繊維が小腸や大腸を通ることで、腸内環境を整えたり大腸内の便の排泄を促したりする効果があります。
便秘を解消したいときに、積極的に摂取したい栄養素です。
食物繊維の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法|NANIWA SUPLI MEDIA
サポニンの抗酸化作用で老化予防
サポニンとは、マメ科の植物に含まれる苦味成分です。あずきの場合は、主に種皮に含まれています。
サポニンには抗酸化作用があり、老化の原因となる活性酵素を除去し、体内を綺麗に保つ効果があると考えられています。老化予防だけでなく、動脈硬化の予防や免疫機能の改善も期待できる栄養素です。
アントシアニンで視覚機能改善
アントシアニンは、植物に含まれる赤や青、紫などの色素成分で、ポリフェノールの1種です。
あずきの種皮に含まれる栄養素で、視覚機能を正常に保つ役割をします。目にある網膜において、光の受容に関与するロドプシンと呼ばれるタンパク質を、合成する働きをもちます。
また、サポニンと同様に抗酸化作用があることもわかっており、健康に良いとされる栄養素です。
ポリフェノールの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
あずきの食べ方
あずきの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
あずきの洗い方
乾燥あずきを洗うときは、種皮が破れないように、優しく洗うことがポイントです。
あずきをボウルに入れて洗い、その際に割れたものや、水に浮いているものを取り除きます。割れたり浮いたりしているあずきは、傷んでいる可能性があるからです。
あずきの下準備
あずきを煮るときは、先に渋抜きと呼ばれる工程が必要です。あずきには渋味があるため、渋味を抜いて食べやすくするために行います。
渋抜きの際の茹で汁には、あずきの栄養素が多く溶け出しています。そのため、渋抜きで出た茹で汁はすべて捨てずに、取っておくと栄養素を逃しにくいでしょう。
あずきは渋抜きをするときに種皮が破れやすいため、鍋のあずきを混ぜる際は丁寧に行います。おたまなどで、力強く混ぜてはいけません。
砂糖を入れずに食べるあずき料理
あずきは、砂糖を入れて煮詰めたあんこのイメージが強いですが、料理にも使えます。
野菜カレーやスープに入れると、プチプチとした食感を楽しめるでしょう。もちろん、栄養素たっぷりのあずきは、健康にも効果的です。
また、あずきの色を利用して、サラダのトッピングに使うのもおすすめです。かぼちゃやカリフラワーなどのサラダに入れると、彩りも豊かになります。
あずきの保存方法
あずきの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
茹でる前のあずきは冷凍保存する
茹でる前のあずきは、冷凍保存が可能です。冷凍庫で1年程度は保存でき、品質も保てます。
冷凍保存をするときは、あずきを密閉容器に入れたり、ラップに包んだりして、できるだけ空気に触れないようにしましょう。
あんこは冷凍するとそのまま食べられる
あずきを茹でてあんこを作ると、つい茹ですぎて余ってしまいます。そんなときは、一口大から一握り程度の大きさにラップで分け、冷凍保存するのがおすすめです。
アイスとしてそのまま食べられるので、子どものおやつやちょっとしたデザートにもぴったりです。製氷皿に直接入れて冷やすと、簡単に一口サイズのあずきアイスが作れます。
ただし、茹でたあずきを冷凍保存する場合は、1か月程度を目安に消費しましょう。
害虫に注意する
あずきを保存するときは、コクゾウムシなどの害虫に注意しましょう。
コクゾウムシとは、イネ科の穀物を食べる害虫で、家庭でもお米やあずきなどに湧くことが知られています。暑さに強く、湿気が多いところを好む昆虫です。
あずきのコクゾウムシには、次の対策が有効です。
- 昆虫が侵入しないように密閉容器に入れる
- 直射日光を避け、湿気の少ない場所に保管する
参考文献
- 野菜類|日本食品標準成分表(PDF)
- 抗酸化物質|e-ヘルスネット
- アントシアニン|ヤクルト中央研究所
- 栄養学の基本がまるごとわかる事典(西東社)
- きちんとわかる栄養学(西東社)