山芋の栄養と効果効能・調理法・保存法

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yam

山芋の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、山芋に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

山芋とは

山芋(yam)は、長芋・大和芋・自然薯など、ヤマノイモ科ヤマノイモ属に分類される芋類の総称です。山芋という品種はなく、スーパーや八百屋などの店頭に山芋として並んでいるのはヤマノイモ科のつくね芋やいちょう芋です。

山芋として販売されているつくね芋やいちょう芋などの原産地は中国で、日本には平安時代に伝わったと考えられています。強い粘りと濃厚な風味が味わえる自然薯(じねんじょ)など、日本原産の山芋もあります。

山芋類はツル性の植物で、茎と根の中間的な性質を持った部分が肥大して、独特の粘りがある芋ができます。山芋は、芋類としては珍しく生のまま食べることができる食材です。

生の山芋をすりおろしてとろろとして食べられることが多いため、とろろ芋と呼ばれることもあります。とろろはご飯にかけて食べるのが一般的ですが、お好み焼きの生地に入れるとふわふわした柔らかな食感に焼き上げることができます。

山芋の品種・種類

ヤマノイモ科の植物は、世界に約600種類が存在し、多くがアフリカ・アジアの熱帯・亜熱帯地域に存在しています。その中から、日本で食用にする代表的なヤマノイモ科の芋の特徴を紹介します。

長芋

山芋のなかで最も一般的な長芋は、50~80cmほどの細長い形をしています。1年中出回っており、日本の食卓に欠かせない野菜のひとつと言えるでしょう。長芋の生産は、北海道や青森県で盛んです。

ほかの山芋類と比較すると粘りが少なくあっさりした食感で、水分量が多いのが特徴です。山芋類のなかではカロリーが低いため、ダイエット中に食べるなら長芋がおすすめです。

自然薯

自然薯(じねんじょ)は、日本原産の山芋で、粘り気が非常に強く、濃厚な旨味を持っています。

旬は11月から12月にかけてですが、自然薯は栽培が難しいこともあり流通量が少なく、天然ものもめったに出回りません。

自然薯には「若返りのビタミン」とも呼ばれるビタミンEが突出して多く含まれています。そのためアンチエイジング効果を期待するなら自然薯がおすすめです。

つくね芋 

つくね芋は、じゃがいものようなゴツゴツした球形の山芋です。関西地方での栽培が盛んな種類で、兵庫県の丹波芋・三重県の伊勢芋・奈良県の大和芋などがよく知られています。

つくね芋は、すりおろしたときの粘り気が強いのが特徴で、とろろ汁や揚げ物の材料に利用されています。食物繊維を多く含んでいるため、便秘解消にも効果が期待できます。

いちょう芋

いちょう芋は、いちょうの葉に似た平たい形をした山芋です。ほどよい粘り気があり、とろろとして食べられるほか、はんぺんやがんもどきの材料としても利用されます。

いちょう芋は、千葉・埼玉・群馬など関東地方で主に栽培されており、旬の時期は11月~3月ごろです。関東地方では大和芋と呼ばれることもあります。

大薯

大薯(だいじょ)は、インドや熱帯アジアが原産とされる大型の山芋です。台湾から沖縄へ伝わったと考えられており、現在でも主に沖縄や九州南部で栽培されています。台湾山芋や沖縄山芋と呼ばれることもあります。

大薯は、粘りが強く、味が濃い山芋です。白色のものと紫色のものがあり、紫色の大薯には眼精疲労や視力の維持に効果的なアントシアニンが豊富に含まれています。

山芋に含まれる成分・栄養素

山芋100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

食品名単位いちょう芋長芋 生長芋 水煮やまと芋(つくね芋)
自然薯
大薯
廃 棄 率%15100102015
エネルギー(kcal)kcal/100 g1086559123121109
エネルギー(kJ)kJ/100 g452272247515506456
水 分g/100 g71.182.684.266.768.871.2
たんぱく質g/100 g4.52.224.52.82.6
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g31.41.42.81.71.7
脂 質g/100 g0.50.30.30.20.70.1
トリアシルグリセロール当量g/100 g0.30.1-0.10.10.3Tr
飽和脂肪酸g/100 g0.110.04-0.040.030.110.02
一価不飽和脂肪酸g/100 g0.030.02-0.020.020.04Tr
多価不飽和脂肪酸g/100 g0.130.08-0.080.070.110.02
コレステロールmg/100 g000000
炭水化物g/100 g22.613.912.627.126.725
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g23.614.112.926.925.723.7
水溶性食物繊維g/100 g0.60.20.20.70.60.5
不溶性食物繊維g/100 g0.80.81.21.81.41.7
食物繊維総量g/100 g1.411.42.522.2
灰 分g/100 g1.310.91.511.1
ナトリウムmg/100 g53312620
カリウムmg/100 g590430430590550490
カルシウムmg/100 g121715161014
マグネシウムmg/100 g191716282118
リンmg/100 g652726723157
mg/100 g0.60.40.40.50.80.7
亜鉛mg/100 g0.40.30.30.60.70.3
mg/100 g0.20.10.090.160.210.24
マンガンmg/100 g0.050.030.030.270.120.03
ヨウ素µg/100 g1111TrTr
セレンµg/100 g1101Tr1
クロムµg/100 g0Tr000Tr
モリブデンµg/100 g321414
レチノールµg/100 g000000
α-カロテンµg/100 g---Tr-0
β-カロテンµg/100 g---6-3
β-クリプトキサンチンµg/100 g-----0
β-カロテン当量µg/100 g5Tr0653
レチノール活性当量µg/100 gTr001TrTr
ビタミンDµg/100 g000000
α-トコフェロールmg/100 g0.30.20.20.24.10.4
β-トコフェロールmg/100 g00Tr0.100
γ-トコフェロールmg/100 g000Tr00
δ-トコフェロールmg/100 g000Tr00
ビタミンKµg/100 g000000
ビタミンB1mg/100 g0.150.10.080.130.110.1
ビタミンB2mg/100 g0.050.020.020.020.040.02
ナイアシンmg/100 g0.40.40.30.50.60.4
ビタミンB6mg/100 g0.110.090.080.140.180.28
ビタミンB12µg/100 g000000
葉酸µg/100 g138662924
パントテン酸mg/100 g0.850.610.50.540.670.45
ビオチンµg/100 g2.62.21.642.43
ビタミンCmg/100 g76451517
食塩相当量g/100 g000000.1
アルコールg/100 g------
硝酸イオンg/100 g------
テオブロミンg/100 g------
カフェインg/100 g------
タンニンg/100 g------
ポリフェノールg/100 g------
酢酸g/100 g------
調理油g/100 g------
有機酸g/100 g0.7---0.40.5
重量変化率%--81---
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

山芋の効果・効能

山芋に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

高血圧に効果的なカリウム

ミネラルの一種であるカリウムを多く含む山芋は、高血圧やむくみの改善効果が期待できる野菜です。

カリウムには細胞内液の浸透圧を調節し、余分なナトリウムの排出を促す作用があります。カリウムが豊富な山芋を摂取することで、塩分の摂りすぎが原因となる高血圧を改善し、血管や心臓への負担を和らげることができます。

また、体内の塩分と水分のバランスが崩れることで起こるむくみの解消にも、山芋が効果的と言えるでしょう。

山芋に含まれるカリウムの量は、種類によって大きな差はありませんが、長芋のカリウム含有量はやや少なめです。カリウムを多く摂りたいときは「山芋」として販売されることの多いつくね芋やいちょう芋を選ぶようにしましょう。

食物繊維で腸内環境を整えて便秘・下痢を改善

食物繊維が豊富な山芋は、便秘や下痢など腸の不調に効果的な食材です。山芋には腸内の善玉菌の働きを助け腸内環境を改善する水溶性食物繊維と、水分を吸収して膨らみ腸のぜん動運動を促す不溶性食物繊維が豊富に含まれています。

また、山芋に含まれる水溶性食物繊維にはコレステロールを吸着し体外へ排出する作用があり、コレステロール値が気になる方にもおすすめです。

水溶性食物繊維・不溶性食物繊維どちらも最も多く含まれているのはつくね芋で、次いで自然薯に豊富です。腸内環境を整えたいときは、長芋の2倍程度の食物繊維を含有しているつくね芋・自然薯がおすすめです。

消化酵素のアミラーゼで胃腸の機能をサポート

山芋には消化酵素のアミラーゼ(ジアスターゼ)が豊富に含まれています。アミラーゼは、唾液や膵液に含まれる消化酵素で、でんぷんやグリコーゲンを分解し消化を助ける作用があります。

アミラーゼが豊富な山芋を摂取することで、米などでんぷんを含む食材の消化をスムーズにし、胃もたれや胸焼けの予防・解消が期待できます。胃腸が弱っているときには、消化にも良い、すりおろしたとろろがおすすめです。

抗インフルエンザ効果のあるディオスコリンA

山芋には抗インフルエンザ効果が認められているディオスコリンAというたんぱく質が含まれており、インフルエンザの予防にも効果的です。免疫力をアップさせたいときや感染症が流行している季節に積極的に摂っておきたい野菜の一つと言えるでしょう。

長芋を用いた実験では、ディオスコリンAを含む長芋の抽出液1mlで、インフルエンザの感染抑制効果が期待できることが報告されています。

また、山芋の粘り成分であるムチンには粘膜を守る作用があります。鼻や口などの粘膜を保護することで、インフルエンザや風邪のウイルスが侵入するのを防ぐ効果も期待できます。

山芋の食べ方

山芋の栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

栄養を余さず摂取するには皮ごと食べる

品種にもよりますが、長芋などの山芋は皮ごと食べることができます。山芋の皮には抗酸化作用のあるポリフェノールがβカロテンが含まれており、アンチエイジングや生活習慣病の予防に効果的です。

山芋を皮ごとすりおろしてとろろにしたり、皮を付けたまま焼く・蒸すなどの加熱調理をすると栄養素を損ないません。

なお、皮に生えているひげ根は取り除いたほうが食感が良くなります。

生のまま食べると消化酵素の働きを損なわない

山芋に含まれる消化酵素のアミラーゼは、でんぷんやグリコーゲンの消化を助け、胃腸の働きをサポートする栄養素です。

アミラーゼは熱に弱く、加熱調理することで働きが失われてしまうという弱点があります。胃腸の調子が気になるときには、とろろ芋やサラダなどとして、生のまま山芋を食べるのがおすすめです。

山芋を調理する際の注意点

山芋を素手で触ると、シュウ酸カルシウムの作用で手がかゆくなることがあるため、注意が必要です。

山芋を調理する際に手にかゆみを感じたら、流水で十分に洗い流してください。水だけではかゆみが治まらない場合、お湯・酢・塩などで手を洗うとより効果的です。

かゆみを引き起こすシュウ酸カルシウムは、山芋の皮付近に多く含まれています。山芋の皮付近を触るときには調理用手袋などを着用するか、事前に酢水に山芋を漬けておくとかゆみを感じにくくなります。

山芋の保存方法

山芋の栄養素を損なわない保存方法を解説します。

常温保存・冷蔵保存

山芋の保存に適した温度は2~5℃です。冬場なら常温保存も可能ですが、室温が高い場合は冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。

皮つきの山芋を1本まるごと保存する場合は、乾燥や光が当たるのを防ぐためにキッチンペーパーや新聞紙で包んでからビニール袋に入れてください。高温多湿を避けた場所で適切に保存すれば、1ヶ月程度は日持ちします。

カットされた山芋は、切り口から傷むの防ぐためにラップで包み、ビニール袋に入れて冷蔵保存し、1週間を目安に使い切ってください。

冷凍保存

山芋をすりおろしてとろろとして冷凍する場合は、変色防止に酢を数滴混ぜてから冷凍保存用袋に入れて凍らせましょう。

解凍するときは、流水解凍か自然解凍します。1食分ずつ小分けしておくと便利です。

カットした山芋を冷凍することもできます。山芋を食べやすい大きさに切って、酢水に漬けてから冷凍すると変色や味の劣化を予防できます。冷凍での保存期間の目安は1ヶ月程度です。

参考文献

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