サバの栄養と効果効能・調理法・保存法

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さば

サバの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、サバに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

サバとは

サバ(mackerel)は青魚の一種です。漢字表記は「鯖」で、旧漢字の「靑」が使用されます。マグロやカツオと同じく適した水温を求めて移動する回遊魚です。

ブランドサバの台頭に加え、オメガ3脂肪酸の一種であるEPAやDHAの含有量の多さから健康面でも再注目されている食材といえるでしょう。

日本で水揚げされる品種はマサバとゴマサバの2種類で、日本海・太平洋海・東シナ海に生息します。もっとも収穫量が多いのは太平洋側の地域です。

農林水産省の「平成30年漁業・養殖業生産統計」では、漁獲量のトップは茨城県で全体漁獲量の約19%を占めています。次いで、長崎県・静岡県・三重県の順です。

国産のサバ以外には、ノルウェーを原産地とするノルウェーサバが輸入されています。

サバは古くから大衆魚として親しまれて、刺身や締めサバ、棒寿司、味噌煮、揚げ物などさまざまな料理方法で食されてきました。島根県のサバしゃぶ、福岡県の胡麻サバなど各地域での郷土料理が豊富です。

昔は安価だったサバも、現在では漁獲量低下の影響で高値の傾向があります。

サバの品種・種類

サバはサバ科サバ属に分類され、主要な品種は3種類あります。それぞれの特徴をご紹介します。

マサバ

マサバは温帯または熱帯に生息する品種です。日本近海に多く生息しているので、ほぼ1年中収穫できます。腹部分は白く、背中に斑点が見られます。

旬は10月から2月です。特に秋時期に獲れるマサバを「秋サバ」、冬時期に獲れるものを「寒サバ」と呼びます。

通常、サバの脂質量は12%程度ですが、産卵を控えた旬の時期には20%程度まで増加するのが特徴です。その分、脂質に含まれるDHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸の含有量も多くなる傾向があります。

ゴマサバ

ゴマサバは比較的温かい海に生息し、日本本州やオーストラリア、ニュージーランドなどで収穫されます。旬は夏時期です。

脂質量が低いため1年を通して味の変化が少ない品種ですが、7月から8月に沼津で獲れるゴマサバはマサバに負けず劣らず脂がのっていると言われます。見た目の特徴はお腹にあるゴマのような斑点です。

タイセイヨウサバ

タイセイヨウサバは、太平洋から地中海、黒海などに生息する品種です。そのうちノルウェーで獲れるサバがノルウェーサバと呼ばれます。

背中にはっきりとした縞模様があるのが特徴で、旬は9月から10月です。

ブランドサバの種類

日本近海で水揚げされるサバは、地域や漁獲時期によって名称も味わいも異なります。主な地域ブランドのサバをご紹介します。

八戸前沖サバ

青森県の八戸前沖で漁獲されるサバを八戸前沖サバ(はちのへまえおきさば)と言います。

低い海水温のなか、エサをたくさん食べて育つため質が良く「日本一脂がのったサバ」として有名です。

金華サバ

金華サバ(きんかさば)は宮城県金華山の周辺海域で獲れるマサバで、石巻港に水揚げされます。

収穫時期は秋。基準をクリアした大型のサバのみを扱っているため、脂がたっぷりとのっているのが特徴です。

松輪サバ

松輪サバ(まつわさば)は東京湾付近を回遊しているマサバで、神奈川県の松輪港で水揚げされます。

旬は10月から12月で、金色の見た目から「黄金サバ」とも呼ばれます。漁獲量が少ないため貴重なサバです。

首折れサバ

首折れサバは、世界自然遺産に登録されている鹿児島県屋久島の代表的な地魚です。品種はゴマサバで、鮮度を保つためにサバの首を折って血抜きをする技法から「首折れ」の名がつきました。

もっとも一般的な食べ方は鮮度の高さを味わえる刺身です。関東や関西などの高級料理店でも取り扱われます。

関サバ

関サバ(せきさば)は豊予海峡で漁獲され、大分県の佐賀関で水揚げされるマサバです。ブランドサバの先駆けとも言われます。

主な漁獲手法は一本釣り。品質管理が徹底されているのが特徴で、水揚げ後は生け簀(いけす)に一定期間放たれてから出荷に合わせて締められます。

岬サバ

関サバと同じく豊予海峡で漁獲されますが、愛媛県の佐田岬で水揚げされるサバを岬サバ(はなさば)と呼びます。

漁師の手で一本釣りされたサバのうち、一定の重量を満たしたものだけがブランドを名乗れるため品質の高さがウリです。

清水サバ

清水サバは、高知県土佐清水市のブランドサバです。潮の流れが早くエサが豊富な足摺岬沖では、身の締まったゴマサバが定期的に漁獲されます。

旬は10月から12月で、立縄漁法による一本釣りされたサバは鮮度の良さが魅力です。

サバに含まれる成分・栄養素

サバ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

サバはタンパク質が豊富で、生のマサバでは100gあたり20.6gのタンパク質が含まれます。そのほかにも、体内で合成されないビタミンや必須脂肪酸を多く含んだ栄養価の高い食品と言えるでしょう。

サバには糖質は含まれないうえにタンパク質が豊富なため、スポーツなどで身体づくりをしている人にとっては理想的な食材です。

ただし、脂質が多い分カロリーは高いので、ダイエットの際は注意してください。しっかりと運動して、カロリーを消費すれば健康的なダイエットにつながるでしょう。

食品名単位マサバ 生マサバ 水煮マサバ 焼きマサバ フライゴマサバ 生ゴマサバ 水煮ゴマサバ 焼きゴマサバ サバ節タイセイヨウサバ 生タイセイヨウサバ 水煮タイセイヨウサバ 焼き
廃 棄 率%50000500003500
エネルギー(kcal)kcal/100 g247309318332146155195360326348370
エネルギー(kJ)kJ/100 g10321293133213916116488151506136414561548
水 分g/100 g62.157.454.147.270.768.860.814.654.551.447
たんぱく質g/100 g20.622.625.2202324.831.173.917.218.621.8
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g17.4-19.2-21.416.319.520.424.9-62.7-14.2-15.4-18
脂 質g/100 g16.822.622.425.15.15.26.65.126.828.529.3
トリアシルグリセロール当量g/100 g12.817.317.121.93.73.84.72.822.323.523.8
飽和脂肪酸g/100 g4.576.125.874.681.21.231.551.024.314.554.59
一価不飽和脂肪酸g/100 g5.036.626.6810.110.870.891.110.7710.2910.5610.78
多価不飽和脂肪酸g/100 g2.663.793.846.171.481.481.870.96.767.387.42
コレステロールmg/100 g61807970596274300687880
炭水化物g/100 g0.30.30.46.50.30.20.3Tr0.40.40.5
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g---6.8-------
水溶性食物繊維g/100 g000-0000000
不溶性食物繊維g/100 g000-0000000
食物繊維総量g/100 g000-0000000
灰 分g/100 g1.111.31.11.31.21.66.41.11.11.4
ナトリウムmg/100 g110941201306656883709996120
カリウムmg/100 g3302803703104203505401100320280390
カルシウムmg/100 g6710141213198607912
マグネシウムmg/100 g30293430333146140282733
リンmg/100 g2202102802102602403501200210210260
mg/100 g1.21.31.61.31.61.82.27.20.911.2
亜鉛mg/100 g1.11.11.41.11.11.21.48.40.911.1
mg/100 g0.120.140.160.130.130.150.140.430.060.070.09
マンガンmg/100 g0.010.010.010.080.010.010.010.050.010.010.01
ヨウ素µg/100 g212324--------
セレンµg/100 g706621--------
クロムµg/100 g266--------
モリブデンµg/100 g001--------
レチノールµg/100 g373134428811Tr444263
α-カロテンµg/100 g00000000000
β-カロテンµg/100 g10010TrTr0000
β-クリプトキサンチンµg/100 g00010Tr00000
β-カロテン当量µg/100 g10010TrTr0000
レチノール活性当量µg/100 g373134428811(Tr)444263
ビタミンDµg/100 g5.14.34.93.54.34.95.712106.610.5
α-トコフェロールmg/100 g1.322.13.21.21.11.70.90.70.60.8
β-トコフェロールmg/100 g00000000000
γ-トコフェロールmg/100 g0003.70000000
δ-トコフェロールmg/100 g0000.10000000
ビタミンKµg/100 g2-4194450000
ビタミンB1mg/100 g0.210.250.30.20.170.150.210.250.140.190.22
ビタミンB2mg/100 g0.310.30.370.30.280.280.360.850.350.340.38
ナイアシンmg/100 g11.71113.49.914.612.818.5156.55.37.6
ビタミンB6mg/100 g0.590.480.540.330.650.510.550.680.350.280.33
ビタミンB12µg/100 g12.91921.910.612.613.916.768.112.18.8
葉酸µg/100 g1113131610121830121316
パントテン酸mg/100 g0.660.750.790.70.720.761.011.550.720.720.93
ビオチンµg/100 g4.98.58.2--------
ビタミンCmg/100 g1Tr00Tr0001TrTr
食塩相当量g/100 g0.30.20.30.30.20.10.20.90.30.20.3
アルコールg/100 g-----------
硝酸イオンg/100 g-----------
テオブロミンg/100 g-----------
カフェインg/100 g-----------
タンニンg/100 g-----------
ポリフェノールg/100 g-----------
酢酸g/100 g-----------
調理油g/100 g-----------
有機酸g/100 g-----------
重量変化率%-8477110-8873--9077
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

サバの効果・効能

サバに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

筋肉や内臓を構成するタンパク質

成分表のとおり、サバはタンパク質の含有量が多い食品です。タンパク質は人間の筋肉や内臓を構成する主要な成分であり、ホルモンや酵素の調節にも関わっています。

タンパク質が欠乏すると体力や免疫力の低下が起きるため、食事の摂取量が減る高齢者は特に気を付けるべきでしょう。

必須脂肪酸のEPAやDHA

サバには脂肪酸が多く含まれ、人間の体内で合成できないEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA (ドコサヘキサエン酸)などの必須脂肪酸が豊富です。この2つの脂肪酸にはさまざまな作用があり、多くの研究論文が公表されています。

ある研究では100gあたりEPAとDHAが8.82g以上含まれたサバなどを12日間摂取し続けたところ、血管の拡張作用が見られました。

さらに高血圧の患者に1日サバ缶を2缶ずつ摂取してもらったところ血圧の低下が見られたという研究もあり、必須脂肪酸を多く含んだ食材は高血圧の予防に役立つ可能性があります。

妊婦中に摂取したいDHA

DHAなどの必須脂肪酸は胎児の神経器官形成に役立つため、妊娠期に積極的に摂取したい栄養素です。魚には水銀が含まれるため、妊娠中に食べる食材には注意する必要がありますが、サバの摂取は基本的に問題ないと言われています。

また、DHAの摂取は脳の発達や学習機能の回復作用が期待されるので、子供の成長にも役立つでしょう。

代謝活性に重要なビタミンB群

サバにはビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシンなどの水溶性ビタミンが多く含まれます。ビタミンB群は体内の代謝活性をサポートする栄養素です。

人体の機能には欠かせない成分ですが、体内で合成できないため食品から摂取する必要があります。

貧血予防にも期待

サバには鉄とビタミンB12が含まれ、いずれも貧血予防には欠かせない栄養素です。

ミネラルの一種である鉄は赤血球内のヘモグロビンに存在し、不足すると貧血や集中力の低下を引き起こします。魚にはより吸収されやすいヘム鉄が含まれるため、貧血予防に期待ができるでしょう。

ビタミンB12は血液細胞をサポートする役割を持ち、貧血の一種である巨赤芽球性貧血を予防してくれます。鉄とビタミンB12を両方摂取できるサバは、女性の強い味方になってくれそうです。

カルシウムの吸収促進にビタミンD

サバには脂溶性ビタミンのビタミンDが含まれます。ビタミンDはカルシウムの吸収を促進し、骨や歯の発育に役立つ栄養素です。

カルシウムの豊富な食品と食べ合わせることで、より効率的に栄養を摂取できるでしょう。

サバの食べ方

サバの栄養素を損なわないおろし方・調理方法・食べ方などを解説します。

サバのおろし方・下処理

スーパーでサバをまるまる1本購入した場合、下処理が必要です。

まず、包丁の背を使いサバの鱗を落としてから、頭を切り落としましょう。次に内臓と血合いを取り除きますが、腹側を切り開いてからかき出します。最後に流水で洗いながら、残りの内臓や血合いを取り除けば下処理は完了です。

サバの調理方法

サバは生で食べる刺身から、煮物、揚げ物、焼き物までさまざまな調理方法があります。

ただ、生のサバを調理する際に気になるのがサバ独特の臭みです。煮魚の場合は熱湯にくぐらせたり、焼き魚にする際は塩や酒をふって水気を取ったりしてから調理すると良いでしょう。

それでも臭みが気になる場合は、生姜や酢、味噌などと一緒に調理する方法がおすすめです。

サバの食べ方

生の魚は下処理が必要だったり、保存期間が短かったりするため、なかなか気軽に取り入れられないという人はサバ缶を使用してみましょう。

サバ缶はすでに加熱してある状態のため、そのまま食べられますし、サバの骨に含まれる栄養素まで摂取できます。サラダのトッピングとしてもおすすめです。

さらに野菜などと組み合わせて加熱調理すれば、食べ応えのある一品にすることができます。EPAやDHAなどの不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸に比べて酸化しやすいため、抗酸化作用のあるβ-カロテンやビタミンEを含んでいる緑黄色野菜やナッツなどと合わせると良いでしょう。

サバを調理する際の注意点

EPAやDHAなどのサバに含まれる不飽和脂肪酸は、加熱した際に脂と一緒に失われてしまう場合があります。効率的に栄養を摂取するには、煮汁ごと食べられる煮込み料理などがおすすめです。サバ缶も汁は捨てずにそのまま料理に使いましょう。

また、生のサバで注意したいのが食中毒の原因となるアニサキスです。魚介類はアニサキス幼虫が寄生しやすく、そのまま人間の体内に入ると胃や腸に食いつき激しい腹痛が起きる場合があります。

アニサキスは塩漬けや酢などを使った下処理でも死滅しません。ご家庭で食べる際はより新鮮な状態のサバを食すか、70℃以上の加熱またはマイナス20℃の環境で1日以上冷凍してから調理すると安心でしょう。

サバを食べる際の注意点

サバのヒスチジンが原因となる食中毒にも気をつけましょう。ヒスチジンは時間の経過と共にアレルギーを引き起こすヒスタミンに変化し、じんましんや嘔吐、下痢などの症状が現れる場合があります。

加熱や冷蔵でもヒスタミンは分解されないため、購入したサバはできるだけ早く食べきることが重要です。

サバの保存方法

サバの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

基本的な保存方法

サバは「サバの生き腐れ」という言葉があるほど、足の早い食材です。できるだけ早く食べるのが得策ですが、保存する場合は冷蔵と冷凍に限らず正しい手順を踏んでから保存してください。

1本まるまるのサバは、前述した方法で下処理をしたのち捌いてからキッチンペーパーで水気をよく拭き取ります。切り身のサバも同様に水気を取ってから、空気に触れないようラップなどに包んで保存しましょう。

血合いなどは生臭さの原因になるのでしっかり取り除いてから保存するのが基本です。

冷蔵保存

ラップに包んだサバを手持ちのトレーなどにのせて冷蔵保存しましょう。購入した際のプラスチックのトレーは、サバから出た汁や血が付着しているため保存には向きません。

上記の工程を経ても冷蔵では1日程度しか持たないため、長期保存する場合は冷凍保存がおすすめです。

冷凍保存

冷凍保存する場合はラップにくるんだサバを保存袋などに入れて保存しましょう。保存期間は2週間から3週間が目安です。鮮度が落ちないうちに食べ切るようにしてください。

使う際は常温保存ではなく、冷蔵庫に移して解凍する方法がベストです。ただし完全に解凍できるまで6時間ほどかかるため、時間を短縮したい場合は氷水につける方法もあります。

解凍したサバは生食はできないため、煮物や焼き魚として活用しましょう。

参考文献

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