亜麻仁油の栄養と効果効能・調理法・保存法
4205views
亜麻仁油の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、よく似た野菜との栄養価の違い、亜麻仁油に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
亜麻仁油とは
亜麻仁油(flaxseed oil,linsee oil)は、亜麻仁(アマニ)から抽出した油脂のことです。
体内で合成できない必須脂肪酸の一種、オメガ3脂肪酸に含まれるa-リノレン酸を豊富に含有することから、健康効果の高いオイルとして注目が高まっています。
亜麻仁に含まれるリグナンは、大豆イソフラボンなどと同じく女性ホルモンに似た働きを示す植物エストロゲンの一種です。ただし、亜麻仁から抽出された亜麻仁油にはリグナンは含まれていません。
亜麻仁は、エジプトや中央アジア原産と考えられる亜麻(アマ)という植物の種子で、現在はカナダやアメリカ北西部などに広く分布しています。
亜麻は亜麻科の1年草で、亜麻から採った繊維をフラックスといい、フラックスで紡いだ糸や織った布をリネンといいます。
ヘンプの原料となる大麻は麻科のため、亜麻科の亜麻とは厳密には異なりますが、どちらも丈夫で涼しい特徴を持つことから、一般には総称して「麻100%」と表記することがあります。
亜麻仁油とえごま油の違い
亜麻仁油とよく似たオイルとして、えごまから抽出したえごま油があります。
亜麻仁油とえごま油の違いは、主に香りです。逆にいえば、それ以外に明確な違いを見極めることが困難なくらい、その役割や成分はよく似ています。成分量の違いは、次項で詳述します。
どちらもα-リノレン酸を豊富に含むことから、血液をサラサラにする効果のある油脂として活用されています。
しかし低品質なえごま油は魚臭いと形容されることもあり、人によっては食べ続けるのが難しく感じるようです。品質のよいえごま油であれば、強い香りはありません。
亜麻仁油に含まれる成分・栄養素
亜麻仁油100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
参考までに、えごま油とオリーブオイル(およびその種子や果実)の成分表も併記しています。
比べてみると分かる通り、亜麻仁油とえごま油に成分的な違いはほとんどありません。α-リノレン酸の含有量で比較しても、亜麻仁油57gに対してえごま油58gとほぼ同量です。
一方で、オリーブオイルは亜麻仁油やえごま油に比べて、非必須脂肪酸である一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)が多く含まれています。
なお、亜麻仁油の代表的な成分であるα-リノレン酸は、表中の多価不飽和脂肪酸に含まれます。
食品名 | 単位 | 亜麻仁油 | えごま油 | オリーブ油 | 亜麻仁(炒り) | えごま(乾燥) | オリーブ 塩漬 グリーンオリーブ |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 25 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 921 | 921 | 921 | 564 | 544 | 145 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 3852 | 3852 | 3853 | 2362 | 2276 | 607 |
水 分 | g/100 g | Tr | Tr | 0 | 0.3 | 5.6 | 75.6 |
たんぱく質 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 21.9 | 17.7 | 1 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | - | - | - | 19.9 | - | - |
脂 質 | g/100 g | 100 | 100 | 100 | 43.5 | 43.4 | 15 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 99.5 | 99.5 | 98.9 | 41.3 | 40.6 | -14.6 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 8.09 | 7.64 | 13.29 | 3.64 | 3.34 | -2.53 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 15.91 | 16.94 | 74.04 | 6.59 | 6.61 | -10.63 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 71.13 | 70.6 | 7.24 | 29.27 | 28.83 | -0.82 |
コレステロール | mg/100 g | 2 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 30.5 | 29.4 | 4.5 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | - | - | - | - | 2.5 | (Tr) |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 9.1 | 1.7 | 0.2 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 14.8 | 19.1 | 3.1 |
食物繊維総量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 24 | 20.8 | 3.3 |
灰 分 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 3.8 | 3.9 | 3.9 |
ナトリウム | mg/100 g | 0 | Tr | Tr | 70 | 2 | 1400 |
カリウム | mg/100 g | 0 | Tr | 0 | 770 | 590 | 47 |
カルシウム | mg/100 g | Tr | 1 | Tr | 210 | 390 | 79 |
マグネシウム | mg/100 g | 0 | Tr | 0 | 410 | 230 | 13 |
リン | mg/100 g | 0 | 1 | 0 | 720 | 550 | 8 |
鉄 | mg/100 g | 0 | 0.1 | 0 | 9 | 16.4 | 0.3 |
亜鉛 | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 6.1 | 3.8 | 0.2 |
銅 | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 1.26 | 1.93 | 0.17 |
マンガン | mg/100 g | 0 | 0.01 | 0 | 2.99 | 3.09 | 0.04 |
ヨウ素 | µg/100 g | - | - | 0 | 0 | Tr | - |
セレン | µg/100 g | - | - | 0 | 3 | 3 | - |
クロム | µg/100 g | - | - | Tr | 25 | 2 | - |
モリブデン | µg/100 g | - | - | 0 | 13 | 48 | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | Tr | 0 | 0 | - | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 10 | 22 | 180 | 15 | - | 450 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 3 | 2 | 5 | 2 | - | 0 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 11 | 23 | 180 | 16 | 16 | 450 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 1 | 2 | 15 | 1 | 1 | 38 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.5 | 2.4 | 7.4 | 0.4 | 1.3 | 5.5 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0.6 | 0.2 | 0 | 0.3 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 39.2 | 58.6 | 1.2 | 10.2 | 23.6 | 0.2 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0.6 | 4.6 | 0.1 | 0.2 | 0.5 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 11 | 5 | 42 | 7 | 1 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0.01 | 0.54 | 0.01 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0.17 | 0.29 | 0.02 |
ナイアシン | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 2.6 | 7.6 | Tr |
ビタミンB6 | mg/100 g | - | - | 0 | 0.41 | 0.55 | 0.03 |
ビタミンB12 | µg/100 g | - | - | 0 | Tr | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | - | - | 0 | 46 | 59 | 3 |
パントテン酸 | mg/100 g | - | - | 0 | 0.24 | 1.65 | 0 |
ビオチン | µg/100 g | - | - | 0 | 33.5 | 34.6 | - |
ビタミンC | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr | 12 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0.2 | 0 | 3.6 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | - | - | - | - | - |
備考 | 試料: 食用油 | 試料: 食用油 | 試料: エキストラバージンオイル別名: オリーブオイル | 別名: あぶらえ | 緑果の塩漬試料: びん詰液汁を除いたもの廃棄部位: 種子 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
亜麻仁油の効果・効能
亜麻仁油に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
血液をサラサラにして動脈硬化や血栓を防ぐ
α-リノレン酸を含むオメガ3脂肪酸には、血流に含まれる血小板の働きを抑制して、血流を改善する効果があります。
血流が改善すると、動脈硬化や血栓の予防、心疾患リスクの低下などにつながります。
LDLコレステロールや血圧を低下して生活習慣病予防
α-リノレン酸には、LDLコレステロールを低下させる作用や、血圧を下げる効果があります。
LDLコレステロールとは、いわゆる悪玉コレステロールのこと。LDLコレステロールが増えすぎると血管壁にたまり、活性酸素によって過酸化脂質となってしまいます。
蓄積した過酸化脂質が血管を細めると、高血圧・血栓・動脈硬化などを進行させ、心筋梗塞・狭心症・脳梗塞などを引き起こしてしまうのです。
美しい肌や髪を保つ美容効果も
α-リノレン酸には血流改善効果があると紹介しましたが、血流が改善することによって、肌や髪を美しく保つ美容効果も期待できます。
改善された血流は皮膚のしわやたるみを予防し、アンチエイジング効果により美肌を維持。また毛包に十分な栄養が行き渡ることによって、抜けにくい太い髪を作ることにもつながります。
また、研究のなかには、肌水分喪失量が減少し、肌の粗さが改善したことを報告するものもありました。
ダイエット効果はある?
亜麻仁油にダイエット効果を期待する声も多いようですが、実態は「長期間摂取した結果ウエストが細くなった」ことを報告する研究が一部ある程度です。
その報告に関しても、体重の減少など明確なダイエット効果が確認されているかどうかは研究によってまちまちで、一概にダイエット効果があると言い切ることは今のところできません。
亜麻仁油の食べ方
亜麻仁油の栄養素を損なわない調理方法や注意点を解説します。
亜麻仁油のおすすめ調理方法
亜麻仁油に含まれるオメガ3脂肪酸は、タンパク質と一緒に摂取することで、胆汁が分泌されてより効率的に吸収されます。
そのため、サプリメントとして摂取するよりも、食品として摂取した方が吸収効率の面からは優れていると言えるでしょう。
またオメガ3脂肪酸は熱により酸化しやすいため、栄養素を損なわず摂取したいなら加熱調理は避けた方が無難です。
オメガ3脂肪酸が加熱により酸化する温度は180度からなので、温かい味噌汁やスープに入れる程度ならば問題ありません。
亜麻仁油の独特な香りは、ヨーグルトや味噌といった発酵食品との相性に優れています。ヨーグルトや味噌と混ぜて、ドレッシングのようなサラダソースやディップソースにしてもよいでしょう。
亜麻仁油を摂取する際の注意点
亜麻仁油にはアナフィラキシー反応(免疫の過剰反応)の報告があるため、万が一アレルギーの可能性がある人は避けましょう。
亜麻仁(種子)には女性ホルモンの作用を示す植物性エストロゲンが含まれているので、妊娠中の摂取も避けてください。
なお、亜麻仁油も亜麻仁も、摂取量によって下痢を起こす可能性があります。
亜麻仁油の保存方法
オメガ3脂肪酸は熱や光、空気で酸化しやすく、放っておくと過酸化脂質になるため保存方法には注意が必要です。
冷蔵庫で保存する必要はありませんが、高温を避けて常温・暗所に保存するようにしましょう。