カルシウムの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
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カルシウムの基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、1日の摂取目安量、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。
カルシウムとは
カルシウム(calcium)は、骨や歯の形成に大きく関わる人体に必須のミネラルのひとつです。
体重の1~2%の量(成人でおよそ1kg)が体内に存在していて、人間の身体にもっとも多く含まれるミネラルでもあります。
カルシウムは体内で合成することができないため、カルシウムを含有した食品やサプリメントなどから摂取する必要があります。
カルシウムを多く含む食品としては、牛乳、小魚、海藻、大豆などが代表的ですが、緑黄色野菜からも摂取することが可能です。
厚生労働省の国民健康・栄養調査によれば、日本人の食事からのカルシウム平均摂取量は長年必要な量に達していないことがわかっており、その原因のひとつとして飲用水がミネラル含有量の少ない軟水であることが挙げられます。
一方で、サプリメントや健康食品などのカルシウム強化食品の継続的な使用による過剰摂取にも注意しなければいけません。
カルシウムは、欠乏すると骨粗しょう症や高血圧、動脈硬化などのリスクが増大する反面、過剰摂取すると軟組織の石灰化・泌尿器系結石・鉄や亜鉛の吸収障害をもたらします。
カルシウムとリン・ビタミンDの関係
カルシウムの吸収には、リンとビタミンDが深く関わっています。
カルシウムの吸収率を高めるには、リンとビタミンDの摂取量をコントロールする必要があるのです。
カルシウムとリンは、摂取量の比率が1:2~2:1の間がもっとも吸収が良いとされ、カルシウムの効率的な吸収を促すためにはリンを摂取しすぎてはいけません。
リンを含んだ食品添加物は、酸味の素として加工食品や清涼飲料水などに使われることが多いため、加工食品や清涼飲料水の摂取が多い人は注意した方がよいでしょう。
またカルシウムは、ビタミンDによって吸収が促進されます。ビタミンDは日光(紫外線)に当たると腎臓で作られるほか、食事からも摂取することができます。
なお、食事により摂取したカルシウムは主に小腸で吸収されますが、その吸収率は低く、一般的な成人で25~30%程度です。
カルシウムの効果・働き
カルシウムの体内における効果・効能・働きは次の通りです。
- 骨や歯を形成して丈夫にする
- 皮膚・粘膜を強く健康に保つ
- 心臓・筋肉の収縮弛緩をコントロールする
- 血液や体液を一定の状態に保つ
- 脳や神経の情報伝達を正常化する
- 精神を安定させる
- ホルモン分泌を調節する
- 免疫作用において重要な役割を果たす
- 酵素の働きを助ける
主要な働きについて掘り下げてそれぞれ解説します。
骨を健康に保ち骨折を予防する
血液中のカルシウム濃度は一定の範囲に保たれていて、カルシウム濃度が低下すると副甲状腺ホルモンの分泌量が増加して、主に骨からカルシウムが溶け出すことによって元の濃度を維持しようとします。
そのため、カルシウムが不足すると骨から溶け出すカルシウム量が増え、骨粗しょう(スカスカの状態)になってしまいます。
十分なカルシウムの摂取は、骨量を維持することに繋がるとともに、骨粗しょう症やそれを原因とする骨折の予防につながります。
成長期の子どもの骨量を増加させる
骨量の維持という観点からは、小学生から高校生までの成長期に十分なカルシウムを摂取し、最大骨量を高めることが特に重要です。
骨量は成長期に最大骨量(ピークボーンマス)を迎えたのち、加齢とともに減少していきます。
そのため、子どものときに十分なカルシウムを摂取することで、最大骨量を増大させることが大切なのです。
出血を止める・神経や筋肉の働きを正常に保つ
体内のカルシウムは99%が骨と歯になり、残りの1%が血液・筋肉などに存在し、出血を止める・神経や筋肉の働きを正常に保つといった役割を果たします。
バリア機能や水分保持機能を高め美肌に
血液や筋肉、細胞内に含まれるカルシウムは、健康で美しい肌の形成にも関係しています。
カルシウムが十分にあると、肌の表面になる角質層は紫外線などの外部刺激を防ぐ厚みを持ち、水分を保持する働きも高まるため透明感のある肌になります。
睡眠時間の長さにも影響
東京大学と理化学研究所の研究グループが行ったマウス実験によれば、カルシウムが睡眠時間の長さに関係している可能性も示唆されています。
カルシウムが不足・欠乏すると起こる症状
カルシウムが不足・欠乏すると起こる症状は次の通りです。
- 骨粗しょう症
- 高血圧
- アレルギー疾患
- 皮膚粘膜の疾患
- 更年期障害
- 神経症状
- 不眠
- 動脈硬化
- 筋肉活動の低下(まぶたの痙攣、足がつるなど)
- 神経細胞活動の低下(物忘れ、ストレス抵抗力の低下など)
なお、カルシウム不足によりイライラしやすくなる、怒りっぽくなると言われるのは、血液中のカルシウム濃度が低下することで低カルシウム血症となり、情緒不安定、集中困難といった精神症状が起きるためです。
ただし低カルシウム血症の原因は、カルシウムの摂取不足よりも副甲状腺機能低下症やビタミンD欠乏症によるところが大きく、カルシウムを摂取したからといってイライラが解消・改善される医学的な根拠はありません。
カルシウムが不足・欠乏する原因と対策
カルシウムの不足・欠乏は摂取量の不足が原因ですが、血液中のカルシウム濃度が低下する「低カルシウム血症」には次のような原因が考えられます。
- カルシウムの摂取量低下
- カルシウムの吸収を低下させる病気
- 副甲状腺ホルモン濃度の低下
- 副甲状腺ホルモンへの反応の低下・欠如
- マグネシウム濃度の低下(低マグネシウム血症)による副甲状腺ホルモンの働きの低下
- ビタミンD欠乏症(摂取不足、日光の不足)
- 腎機能障害
- 膵炎
低カルシウム血症の治療には、カルシウムサプリメントやビタミンDが用いられ、大抵の場合、カルシウムサプリメントを経口摂取することでカルシウム濃度は元に戻ります。
カルシウムを過剰摂取すると起こる症状
カルシウムを過剰摂取すると起こる症状は次の通りです。
- 高カルシウム血症
- 高カルシウム尿症
- 軟組織の石灰化
- 泌尿器系結石
- 前立腺がん
- 鉄や亜鉛の吸収障害
- 便秘
上記の症状に加え、2008年、2010年の報告によると、カルシウムサプリメントの使用により心血管疾患のリスクが上昇することも示唆されています。
耐容上限量の範囲内だったとしても、ビタミンDとの併用によってより少ない摂取量で過剰になる可能性もあるため、サプリメントや強化食品を使用する場合には内容量を確認した方がよいでしょう。
なお、17歳以下には耐容上限量が設定されていないものの、これは多量摂取をむやみに勧めるものではなく、多量摂取の安全性を保証するものでもありません。
身長を伸ばすことや骨量・骨密度の増大などを目的として、成長サプリメントやカルシウム強化食品を日常的に摂取する場合、過剰になりすぎないよう成人と変わらず注意が必要です。
カルシウムの1日の摂取目安量
カルシウムの1日の摂取目安量(摂取推奨量)は、成人男性で750~800mg、成人女性で600~650mgです。
牛乳コップ1杯でおよそ220mgのカルシウムが摂取できるので、3~4杯の牛乳で1日分のカルシウムを摂取することができる計算になります。
なお、身体の成長に伴って必要量が増える成長期には最大1,000mg(12~14歳男性)の摂取が推奨される一方で、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020 年版)では、最低健康障害発現量を3,000mgとし、耐容上限量は2,500mgとしています。
通常の食事からこの量のカルシウムを摂取するケースは非常に稀ですが、前述の通りサプリメントなどを使用する場合は注意すべき値と言えるでしょう。
カルシウムの食事摂取基準(mg/日)
性 別 | 男 性 | 女 性 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 |
0 ~ 5 (月) | ─ | ─ | 200 | ─ | ─ | ─ | 200 | ─ |
6 ~11(月) | ─ | ─ | 250 | ─ | ─ | ─ | 250 | ─ |
1 ~ 2 (歳) | 350 | 450 | ─ | ─ | 350 | 400 | ─ | ─ |
3 ~ 5 (歳) | 500 | 600 | ─ | ─ | 450 | 550 | ─ | ─ |
6 ~ 7 (歳) | 500 | 600 | ─ | ─ | 450 | 550 | ─ | ─ |
8 ~ 9 (歳) | 550 | 650 | ─ | ─ | 600 | 750 | ─ | ─ |
10~11(歳) | 600 | 700 | ─ | ─ | 600 | 750 | ─ | ─ |
12~14(歳) | 850 | 1,000 | ─ | ─ | 700 | 800 | ─ | ─ |
15~17(歳) | 650 | 800 | ─ | ─ | 550 | 650 | ─ | ─ |
18~29(歳) | 650 | 800 | ─ | 2,500 | 550 | 650 | ─ | 2,500 |
30~49(歳) | 600 | 750 | ─ | 2,500 | 550 | 650 | ─ | 2,500 |
50~64(歳) | 600 | 750 | ─ | 2,500 | 550 | 650 | ─ | 2,500 |
65~74(歳) | 600 | 750 | ─ | 2,500 | 550 | 650 | ─ | 2,500 |
75 以上(歳) | 600 | 700 | ─ | 2,500 | 500 | 600 | ─ | 2,500 |
妊婦(付加量) | 0 | 0 | ─ | ─ | ||||
授乳婦(付加量) | 0 | 0 | ─ | ─ |
カルシウムを多く含む食品
カルシウムを多く含む食品を、全食品・野菜・海藻・乳製品・飲料の順で、それぞれランキング形式で紹介します。
カルシウムを多く含む食品ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
---|---|---|
1 | 魚介類/(えび類)/加工品/干しえび | 7100 |
2 | 魚介類/(かに類)/加工品/がん漬 | 4000 |
3 | 魚介類/<魚類>/とびうお/焼き干し | 3200 |
4 | 調味料及び香辛料類/バジル/粉 | 2800 |
5 | 魚介類/(いわし類)/かたくちいわし/田作り | 2500 |
6 | 調味料及び香辛料類/ベーキングパウダー | 2400 |
7 | 魚介類/(いわし類)/かたくちいわし/煮干し | 2200 |
8 | 魚介類/(えび類)/さくらえび/素干し | 2000 |
9 | 魚介類/(えび類)/加工品/つくだ煮 | 1800 |
10 | 調味料及び香辛料類/タイム/粉 | 1700 |
10 | 種実類/けし/乾 | 1700 |
カルシウムを多く含む野菜ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
---|---|---|
1 | 干しずいき、乾 | 1200 |
2 | とうがらし/葉・果実、油いため | 550 |
3 | 切干しだいこん/乾 | 500 |
4 | とうがらし/葉・果実、生 | 490 |
5 | パセリ/葉、生 | 290 |
5 | なずな/葉、生 | 290 |
7 | かぶ/漬物/ぬかみそ漬/葉 | 280 |
8 | だいこん/葉、生 | 260 |
8 | モロヘイヤ/茎葉、生 | 260 |
10 | かんぴょう/乾 | 250 |
10 | かぶ/葉、生 | 250 |
カルシウムを多く含む海藻ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
---|---|---|
1 | ほしひじき/鉄釜、乾 | 1000 |
1 | ほしひじき/ステンレス釜、乾 | 1000 |
3 | 乾燥わかめ/板わかめ | 960 |
4 | 刻み昆布 | 940 |
5 | まつも/素干し | 920 |
5 | ひとえぐさ/素干し | 920 |
7 | ほそめこんぶ/素干し | 900 |
8 | カットわかめ 乾 | 870 |
9 | あらめ/蒸し干し | 790 |
10 | まこんぶ/素干し | 780 |
10 | 乾燥わかめ/素干し | 780 |
カルシウムを多く含む乳製品ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
---|---|---|
1 | ナチュラルチーズ/パルメザン | 1300 |
2 | ナチュラルチーズ/エメンタール | 1200 |
3 | 脱脂粉乳 | 1100 |
4 | 全粉乳 | 890 |
5 | ナチュラルチーズ/チェダー | 740 |
6 | ナチュラルチーズ/ゴーダ | 680 |
7 | ナチュラルチーズ/エダム | 660 |
8 | プロセスチーズ | 630 |
9 | チーズホエーパウダー | 620 |
10 | ナチュラルチーズ/ブルー | 590 |
カルシウムを多く含む飲料ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
---|---|---|
1 | 青汁/ケール | 1200 |
2 | 紅茶/茶 | 470 |
3 | せん茶/茶 | 450 |
4 | 抹茶 | 420 |
5 | 玉露/茶 | 390 |
6 | ミルクココア | 180 |
7 | インスタントコーヒー | 140 |
7 | ピュアココア | 140 |
9 | 昆布茶 | 88 |
10 | 紹興酒 | 25 |
カルシウムを効率よく摂取する方法
カルシウムを効率的に摂取したい場合は、魚介類・乳製品・ケール原料の青汁といったカルシウム含有量の多い食品をバランスよく取り入れることが大切です。
またカルシウムの摂取量の増やすだけでなく、カルシウムの吸収に関わる栄養素の摂取も意識することでより効率的にカルシウムが働くことができます。