フェンネルの栄養と効果効能・調理法・保存法

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Fennel

フェンネルの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、フェンネルに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

フェンネルとは

フェンネル(Fennel)は、地中海沿岸原産のセリ科ウイキョウ属の植物です。古代ギリシャ・ローマ時代から、葉・根・種子が薬草やハーブとして利用されてきました。

フェンネルは英語名で、フランス語ではフヌイユ、イタリア語ではフィノッキオと呼ばれます。一般的にフェンネルと呼ばれるのはハーブとして使う葉の部分や種子で、フィノッキオというときは野菜として食べる鱗茎(球根・バルブ)部分のことを指しています。

漢方では茴香(ういきょう)と呼ばれ、味覚や嗅覚を刺激して胃液と唾液の分泌を促す、芳香性健胃剤に用いられています。

ふわふわとした羽のような形状のフェンネルの葉には、甘みのある爽やかな香りがあり、魚料理の味付けによく使われます。ディルやタイムと共に「魚のハーブ」と称されることも。

フェンネルの若い茎は柔らかく、セロリのように食べられるほか、肥大した鱗茎は野菜として使われています。

種子は、フェンネルシードとしてハーブティーや菓子の材料になります。フェンネルの精油は種子から蒸留したもので、食品の味付けや歯磨き粉などの化粧品類にも使用されます。

海外から輸入されることの多いフェンネルは、産地によって旬の時期が異なります。日本国内で栽培されているフェンネルの旬は、5月~7月です。フェンネルシードは、1年を通して流通しています。

フェンネルの品種・種類

フェンネルの代表的な品種・種類を紹介します。

スイートフェンネル(スウィートフェンネル)

スイートフェンネルは、フェンネルの基本種です。葉に強い香りがあるのが特徴で、ハーブやスパイス、薬用植物として主に利用されます。

フローレンスフェンネル(フィノッキオ)

フローレンスフェンネルは、株元が丸く肥大する品種で、鱗茎を野菜として食べることができます。フローレンスフェンネルの鱗茎は、フィノッキオというイタリア野菜として流通しています。

ブロンズフェンネル

ブロンズフェンネルは、葉が銅色をした園芸品種です。鑑賞に適した品種ですが、ハーブとして利用することができ、白ワインビネガーに漬けるとルビー色のハーブビネガーが作れます。

スティッキオ

スティッキオは、日本の種苗会社がフェンネルを品種改良した野菜です。鱗茎部分がフェンネルほど肥大しないのが特徴で、スティックタイプのフィノッキオという意味でスティッキオと名付けられました。フェンネル特有の香りは弱めです。

フェンネルに含まれる成分・栄養素

フェンネル100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

名前フェンネルシードフェンネルバルブ(球根)単位
8.8190.21g
エネルギー34531kcal
エネルギー1443129kJ
タンパク質15.81.24g
総脂質(脂肪)14.870.2g
8.221.05g
炭水化物、違いによる52.297.3g
食物繊維、総食物繊維39.83.1g
砂糖、NLEAを含む合計-3.93g
カルシウム、Ca119649mg
鉄、Fe18.540.73mg
マグネシウム、Mg38517mg
リン、P48750mg
カリウム、K1694414mg
ナトリウム、Na8852mg
亜鉛、亜鉛3.70.2mg
銅、銅1.0670.066mg
マンガン、Mn6.5330.191mg
セレン、Se-0.7µg
ビタミンC、総アスコルビン酸2112mg
チアミン0.4080.01mg
リボフラビン0.3530.032mg
ナイアシン6.050.64mg
パントテン酸-0.232mg
ビタミンB-60.470.047mg
葉酸、合計-27µg
葉酸-0µg
葉酸、食品-27µg
葉酸、DFE-27µg
コリン、合計-13.2mg
ビタミンB-1200µg
ビタミンB-12、追加-0µg
ビタミンA、RAE748µg
レチノール00µg
カロチン、ベータ-578µg
カロチン、アルファ-0µg
クリプトキサンチン、ベータ-0µg
ビタミンA、IU135963IU
リコピン-0µg
ルテイン+ゼアキサンチン-607µg
ビタミンE(アルファ-トコフェロール)-0.58mg
ビタミンE、追加-0mg
ビタミンD(D2 + D3)、国際単位00IU
ビタミンD(D2 + D3)00µg
ビタミンK(フィロキノン)-62.8µg
脂肪酸、総飽和0.480.09g
14:0-0.002g
16:00.480.079g
18:0-0.009g
脂肪酸、全一価不飽和9.910.068g
16:1-0.002g
18:19.910.065g
20:1-0g
22:1-0g
脂肪酸、総多価不飽和1.690.169g
18:21.690.169g
18:3-0g
18:4-0g
20:4-0g
20:5 n-3(EPA)-0g
22:5 n-3(DPA)-0g
22:6 n-3(DHA)-0g
脂肪酸、トータルトランス-0g
コレステロール00mg
トリプトファン0.253-g
スレオニン0.602-g
イソロイシン0.695-g
ロイシン0.996-g
リジン0.758-g
メチオニン0.301-g
シスチン0.222-g
フェニルアラニン0.647-g
チロシン0.41-g
バリン0.915-g
アルギニン0.68-g
ヒスチジン0.331-g
アラニン0.789-g
アスパラギン酸1.833-g
グルタミン酸2.956-g
グリシン1.107-g
プロリン0.9-g
セリン0.9-g
アルコール、エチル-0g
カフェイン-0mg
テオブロミン-0mg
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:FoodData Central|USDA(米国農務省)

フェンネルの効果・効能

フェンネルに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

消化促進・健胃作用が期待できる香り成分のアネトール

フェンネルの甘い香りは、アネトールという成分によるものです。アネトールは、フェンネルの葉・鱗茎・種子に含まれています。

健胃剤にも用いられているアネトールには、胃の働きを高め、胃酸の分泌を促進する効能があります。胃腸の調子が悪いときや食欲がないときにもおすすめのハーブです。

また、フェンネルには腸のぜん動運動を促す効果があることも認められており、便秘解消にも効果的です。

咳止め・去痰作用で喉の調子を整える

フェンネルに含まれるアネトールには去痰作用があり、咳や痰が出るときにも役立ちます。

実際に、生薬として咳止め(去痰剤)にも使われているハーブです。フェンネルシードをハーブティーやシロップにすれば、喉への良い効果が期待できるでしょう。

抗菌作用のある爽やかな香りで口臭を予防

清涼感のある香りを持つフェンネルには、口臭を予防・緩和する効果があります。

インドなどでは、フェンネルシードを食後に噛んで口内をリフレッシュする習慣があります。日本にあるインド料理店でも、スパイシーな料理を食べたあとのお口直しとして、フェンネルシードを砂糖でコーティングしたお菓子を提供していることがあります。

また、フェンネルの種子から抽出される精油には、試験管内での抗菌作用も認められています。精油をお湯に垂らしてうがい薬やマウスウォッシュとして利用し、口臭や喉の痛み、歯周病などの予防にも役立てられます。

カリウムでむくみを予防

フェンネルの葉・茎・種子には、余分な塩分を体外に排出する効果のあるカリウムが多く含まれています。カリウムは、必須ミネラルの一種で、細胞の浸透圧を調節しています。

カリウムが豊富なフェンネルは、塩分の摂りすぎが原因となるむくみ・高血圧の改善や、利尿作用・発汗作用も期待できる食材です。

カリウムの効果効能・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

ビタミンAによるアンチエイジング効果

フェンネルの種子や根は、ビタミンA(レチノール)を豊富に含んでいます。ビタミンAは、皮膚や粘膜を健康に保つ働きがあり、抗酸化物質として老化やがんを予防する効果も期待できます。

また、フェンネルの鱗茎には、体内で必要な量だけビタミンAに変換されるプロビタミンAの一種β-カロテンが豊富です。

ビタミンAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ|NANIWA SUPLI MEDIA

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フェンネルの食べ方

フェンネルの部位ごとの食べ方や食べ合わせ、食べるうえでの注意点などを解説します。

フェンネルの葉の食べ方

フェンネルの葉は、生でも加熱調理しても食べられます。カリウムやビタミンCなど水に溶けやすい栄養素を摂りたいときは、サラダや料理のトッピングとして生のまま食べるほうが良いでしょう。

強い香りのある葉は、肉や魚料理の臭み消しとして活躍し、特に魚との相性が抜群です。一度に使い切れないフェンネルの葉は、ペーストに加工したり、バターに混ぜて使ったりすることもできます。

フェンネルの根(フィノッキオ)の食べ方

フェンネルの鱗茎部であるフィノッキオは、玉ねぎのようにあらゆる料理に使える野菜です。スライスして生食することもできるほか、スープや炒め物の具材として活用できます。

フィノッキオは、加熱調理したほうがフェンネル特有の香りやクセがマイルドになります。

フェンネルシードの食べ方

フェンネルシードは、料理のスパイスや、クッキーなどの菓子に混ぜて風味付けに利用することができます。カレーなどのスパイシーな料理を食べたあと、マウスフレッシュとして噛んでも良いでしょう。

またフェンネルシードは、お湯を注ぐことでハーブティーとして楽しめます。フェンネルのハーブティには、消化促進や口内を爽やかにする効果が期待でき、食後に飲むお茶としてもおすすめです。

ビタミンAは油と摂取することで吸収率アップ

フェンネルの根などに豊富なビタミンAとβ-カロテンは、油と一緒に摂取することで吸収率が高まる脂溶性の栄養素です。

脂を含む肉や魚と食べ合わせたり、油で炒めたりすると栄養を多く摂ることができます。サラダとして食べる場合は、オイルを含むドレッシングをかけるのがおすすめです。

妊娠中・授乳中のフェンネル摂取は注意

フェンネルには女性ホルモンのエストロゲンと似た作用があることがわかっています。妊娠中・授乳中・女性ホルモンが関連する疾患のある方は、使用に注意が必要です。

特に、妊娠中のウイキョウ油(フェンネルシードから抽出した油)と種子は、使用禁忌です。その他の部位についても、妊婦の摂取には信頼できる十分な情報が無いため、使用しないほうがよいでしょう。

また、ヨーロッパなどではフェンネルに母乳の出を良くするという言い伝えがありますが、授乳中のフェンネル摂取には危険性が指摘されています。

乳がん・子宮がん・卵巣がん・子宮内膜症・子宮筋腫など、女性ホルモンが関与する疾患の患者も摂取を控えましょう。

フェンネルの保存方法

フェンネルの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

葉と鱗茎部は分けて冷蔵保存

葉付きのフェンネルを保存するときは、葉と鱗茎を切り分けて保存すると、鮮度や香りを長く維持することができます。

切り分けたフェンネルは、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存してください。細く繊細なフェンネルの葉は、乾燥しやすいため、乾燥予防に新聞紙で包んでも良いでしょう。冷蔵保存したフェンネルは、2~3日を目安に使い切ります。

フェンネルは冷凍することもできる

すぐに食べきれないフェンネルの葉と鱗茎は、冷凍して保存することができます。冷凍する場合、水洗いして水気をふき取ってから冷凍保存用袋に入れて凍らせます。

葉・鱗茎共に、あらかじめ食べやすい大きさに切っておくと便利です。冷凍したフェンネルは、凍ったまま料理に使用することができます。

フェンネルの葉を長期保存する場合は、ペーストにしたりバターに混ぜ込んだりする方法もあります。

参考文献

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