レバーの栄養と効果効能・調理法・保存法
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レバーの基本情報、牛・豚・鶏レバーの違い、レバーに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
レバーとは
レバー(liver)とは、主に牛や豚、鶏の肝臓を指します。その他に、馬、羊などの家畜や魚類のレバーも食べられており、魚類の肝臓は、肝(きも)と呼ばれることもあります。
世界三大珍味の1つであるフォアグラは、ガチョウのレバーです。ガチョウを太らせ、肝臓に中性脂肪を蓄積させ、脂肪肝の状態にしたレバーを「フォアグラ」と呼びます。
日本では、焼き鳥やレバニラ炒めなどにして食べる機会の多いレバーですが、海外ではペースト状(レバーペースト)にして食べるのが定番です。ペーストのままパンに塗って食べるほか、レバーペーストのソーセージやハムなども販売されています。
レバーの種類
レバーの種類と、それぞれの特徴について説明します。家畜の肝臓を統一してレバーと呼びますが、牛や豚、鶏など、動物の種類によって食感が異なります。
牛レバー
牛のレバーは、豚や鶏のレバーに比べて大きく、食べ応えがあります。肉質も柔らかく、旨味が強いのが特徴です。
一般的に豚や鶏のレバーと比べて臭みが強く、下処理をしっかりする必要があります。調理方法としては、炒め物や揚げ物にするのがおすすめです。
豚レバー
豚レバーは、牛や鶏のレバーよりも鉄が豊富に含まれています。鶏レバーよりもコレステロールが少ないため、脂質が気になる人におすすめです。
豚レバーは弾力のある食感が特徴で、炒め物にすると食感を活かせます。
鶏レバー
鶏のレバーは、しっとりとした食感をしており、煮物やスープ、シチューといった煮込み料理に入れるのがおすすめです。牛や豚レバーよりも、臭みが少なく、レバー独特の味が苦手な人でも食べやすいレバーでしょう。
焼き過ぎると水分が抜けてパサパサとした食感になるため、火の通し過ぎには注意が必要です。一方で、加熱不十分だと食中毒のリスクが高まります。調理する際は、中心まで火が通っていることを確認するなど注意が必要です。
馬レバー
馬レバーは、馬刺しとして提供されることも多く、生食が可能なレバーです。
馬肉には、重大な症状を引き起こす腸管出血性大腸菌が少ないといわれており、食品衛生法の規制対象ではありません。馬レバーの販売に規制はありませんが、寄生虫などのリスクはありますので、鮮度のよいものを購入したり、信頼できる専門店から購入したりするのがよいでしょう。
馬レバーは、牛と比べてコリコリとした食感が特徴で、臭みの少ないことが人気の理由です。
レバーに含まれる成分・栄養素
レバー100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
レバーは、高タンパク低カロリーの食べ物です。筋肉を作るのに必要なタンパク質を多く含む一方でカロリーが低いため、ダイエット食品として注目されています。
肥満の原因となるコレステロールは、鶏のレバーが最も高い値を示していますが、牛・豚・鶏とも飽和脂肪酸は少ないことがメリットです。飽和脂肪酸は、過剰に摂取するとエネルギーとして体内に貯蔵され、肥満になりやすくなると考えられています。
レバーは、肉類の他の部位と比べて、ビタミンAが非常に多いことが特徴です。例えば、牛肉にはビタミンAがほとんど含まれませんが、牛レバー100gには1,000μgものビタミンAが含まれています。豚・鶏のレバーはさらに多く、13,000~14,000μgです。
食 品 名 | 単位 | 牛レバー 生 | 豚レバー 生 | 鶏レバー 生 | 豚レバーペースト | 豚スモークレバー | |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
エネルギー | kJ | 502 | 484 | 422 | 1532 | 768 | |
kcal | 119 | 114 | 100 | 370 | 182 | ||
水 分 | g | 71.5 | 72 | 75.7 | 45.8 | 57.6 | |
たんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質 | g | 17.4 | 17.3 | 16.1 | 11 | 24.9 |
たんぱく質 | g | 19.6 | 20.4 | 18.9 | 12.9 | 29.6 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | 2.1 | 1.9 | 1.9 | 33.1 | 4.5 |
コレステロール | mg | 240 | 250 | 370 | 130 | 480 | |
脂質 | g | 3.7 | 3.4 | 3.1 | 34.7 | 7.7 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | -3.7 | -2.5 | -0.6 | 2.9 | 2.9 |
g | |||||||
利用可能炭水化物(質量計) | g | -3.3 | -2.3 | -0.5 | 2.7 | 2.9 | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 7.4 | 7.1 | 4.7 | 6.9 | 10.3 | |
* | * | * | * | * | |||
食物繊維総量 | g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
糖アルコール | g | - | - | - | 0 | 0 | |
炭水化物 | g | 3.7 | 2.5 | 0.6 | 3.6 | 2.6 | |
有機酸 | g | - | - | - | 0.1 | 0.1 | |
灰分 | g | 1.5 | 1.7 | 1.7 | 3 | 2.5 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 55 | 55 | 85 | 880 | 690 |
カリウム | mg | 300 | 290 | 330 | 160 | 280 | |
カルシウム | mg | 5 | 5 | 5 | 27 | 8 | |
マグネシウム | mg | 17 | 20 | 19 | 15 | 24 | |
リン | mg | 330 | 340 | 300 | 260 | 380 | |
鉄 | mg | 4 | 13 | 9 | 7.7 | 20 | |
亜鉛 | mg | 3.8 | 6.9 | 3.3 | 2.9 | 8.7 | |
銅 | mg | 5.3 | 0.99 | 0.32 | 0.33 | 0.92 | |
マンガン | mg | - | - | 0.33 | 0.26 | 0.3 | |
ヨウ素 | μg | 4 | 1 | 1 | 3 | 4 | |
セレン | μg | 50 | 67 | 60 | 28 | 81 | |
クロム | μg | Tr | 0 | 1 | 3 | 1 | |
モリブデン | μg | 94 | 120 | 82 | 48 | 190 | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 1100 | 13000 | 14000 | 4300 | 17000 |
α|カロテン | μg | - | - | - | - | - | |
β|カロテン | μg | - | - | - | - | - | |
β|クリプトキサンチン | μg | - | - | - | - | - | |
β|カロテン当量 | μg | 40 | Tr | 30 | Tr | 0 | |
レチノール活性当量 | μg | 1100 | 13000 | 14000 | 4300 | 17000 | |
ビタミンD | μg | 0 | 1.3 | 0.2 | 0.3 | 0.9 | |
α-トコフェロール | mg | 0.3 | 0.4 | 0.4 | 0.4 | 0.6 | |
β-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | Tr | 0 | |
γ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0.1 | 0.4 | 0 | |
δ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | 0.2 | 0 | |
ビタミンK | μg | 1 | Tr | 14 | 6 | 1 | |
ビタミンB1 | mg | 0.22 | 0.34 | 0.38 | 0.18 | 0.29 | |
ビタミンB2 | mg | 3 | 3.6 | 1.8 | 1.45 | 5.17 | |
ナイアシン | mg | 14 | 14 | 4.5 | 6.8 | 18 | |
ナイアシン当量 | mg | 18 | 19 | 9 | 9.5 | 26 | |
ビタミンB6 | mg | 0.89 | 0.57 | 0.65 | 0.23 | 0.66 | |
ビタミンB12 | μg | 53 | 25 | 44 | 7.8 | 24 | |
葉 酸 | μg | 1000 | 810 | 1300 | 140 | 310 | |
パントテン酸 | mg | 6.4 | 7.19 | 10 | 2.35 | 7.28 | |
ビ オ チ ン | μg | 76 | 80 | 230 | 29 | 130 | |
ビタミンC | mg | 30 | 20 | 20 | 3 | 10 | |
アルコール | g | - | - | - | - | - | |
食塩相当量 | g | 0.1 | 0.1 | 0.2 | 2.2 | 1.8 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
レバーの効果・効能
レバーに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
ビタミンAが免疫力を増強
レバーには、ビタミンAが豊富に含まれています。
ビタミンAは、視覚や生殖機能、免疫機能を健康に維持する栄養素です。皮膚や粘膜を正常に保つことで、病原体の侵入を阻害し、免疫防御として働いています。また、体内で病原体と戦う白血球の機能を、正常に働かせる作用も持つため、風邪や感染症の予防に効果的です。
ビタミンAは、にんじんやかぼちゃ、トマト、ほうれん草などの野菜に多く含まれる栄養素ですが、レバーや乳製品にも多く含まれます。
ビタミンAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ|NANISA SUPLI MEDIA
鉄で貧血予防
レバーには、鉄が多く含まれているため、貧血予防に効果的な食べ物です。
体内の鉄が欠乏すると、貧血の原因になります。血中成分の赤血球は、鉄を含むヘモグロビンから構成されており、貧血とは、血中のヘモグロビン濃度が基準値以下になった状態です。健康な人の体内には、約3~4gの鉄が貯蔵されていますが、1日に約1mgが汗や尿となって損失しています。
通常、食事として1日に約20mgの鉄を摂取しても、体内に吸収されるのは1mg程度です。汗や尿として約1mgが出ていくため、月経中などの大量に血液を失う状態では、鉄が不足して貧血を起こしやすくなります。
妊娠中や月経中、成長期には、鉄が不足しやすいため、鉄の多い食べ物を意識して食べるとよいでしょう。
また、無理なダイエットでも、鉄が不足して貧血を起こしやすくなります。極端な食事制限はせず、鉄を含めたミネラル・ビタミンをきちんと摂ると、美容や健康に効果的です。
鉄の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANISA SUPLI MEDIA
亜鉛は美容にもよい
亜鉛は、細胞の生成・再生にかかわる栄養素で、身体の成長や創傷の治癒にも必要不可欠な栄養素です。特に、皮膚や粘膜の健康を保つ作用を持っており、肌荒れを予防・改善します。
また亜鉛には、全身の細胞に存在し、免疫機能を正常に働かせる役割もあります。レバーには、身体の免疫力を増強と成長に必要な亜鉛を多く含むため、妊娠中の女性や子どもに欠かせない栄養素です。
亜鉛の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANISA SUPLI MEDIA
レバーの食べ方
レバーの栄養素を損なわない下処理の方法・調理方法・食べ方などを解説します。
レバーの下処理
レバーは下処理をおこなうことで、独特の臭みを減らせます。レバーの下処理で一般的なのは、次の方法です。
・塩水に漬ける
・牛乳に漬ける
食べやすい大きさに切ったレバーを流水で洗い、塩水、あるいは牛乳に漬けます。塩水の場合は20~30分程度、その間何度か水を変えるとよいでしょう。
一方、牛乳を使う場合は、食べやすい大きさに切ったレバーを洗って、1~3時間程度漬け込みます。塩水よりも手間と費用がかかりますが、レバーの臭みをしっかりとりたいときにおすすめの方法です。
ただし、牛乳の代わりに豆乳を使うと、豆乳の臭みがついてしまうため、レバーの臭みとりには向きません。
定番のレバニラ炒めはスタミナ増強に効果的
レバーを使った料理といったら、レバニラ炒めです。
レバーとニラは食感の相性がよいだけでなく、栄養素をお互いに高める効果もあります。レバーに多く含まれる鉄は、ビタミンCによって体内への吸収率が上がる栄養素です。ニラには、ビタミンCが豊富に含まれており、レバーと一緒に食べることで、鉄を効率的に取り込めます。
またニラに含まれるアリシンには、疲労回復の効果があるため、レバーと併せて食べると、スタミナ増強を期待できるでしょう。
ニラの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANISA SUPLI MEDIA
臭みが苦手な人はクリームシチューもおすすめ
レバーの臭みが苦手な人は、クリームシチューの鶏肉代わりにレバーを入れるのもおすすめです。牛乳が臭みとりの役割を果たし、独特のにおいを消せます。
また、ビタミンCが豊富な野菜と一緒に食べられるため、レバーの鉄が吸収されやすくなります。ブロッコリーやかぼちゃ、じゃがいもは、ビタミンCが豊富なため、クリームシチューに入れる野菜として効果的です。
使用するのは牛・豚のレバーでもよいですが、特に鶏レバーの食感がクリームシチューと相性がよいでしょう。
ブロッコリーの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANISA SUPLI MEDIA
日本では牛の生レバーの提供が禁止されている
富山県の焼肉店で2011年に起きた食中毒事件により、食品衛生法が改正され、生食用牛レバーの販売・提供が禁止されました。提供された牛のユッケと厨房の器具から、腸管出血性大腸菌O111が検出され、5名の死者を出した事件です。
牛レバーを切ったときに使用した包丁やまな板を、共用していたことが判明し、翌年2012年より、生食用の牛レバーの提供が禁止されました。
調理用レバーも、中心まで火が通るように加熱したものを食べるようにしましょう。
豚・鶏レバーも生で食べると危険
豚肉や豚・鶏レバーを含む生の内臓・肉を食べると、肝炎ウイルスや細菌によって食中毒を起こすリスクがあります。また、寄生虫に汚染されている可能性もあり、生食は危険です。
レバーの中には、E型肝炎ウイルスと呼ばれる急性肝炎を引き起こすウイルスに汚染されているものもあり、感染すると致死率は1~2%です。比較的軽症といわれるA型肝炎に比べて10倍もの致死率であり、特に妊婦では致死率が20%を超えると考えられています。
E型肝炎ウイルスや細菌は熱に弱いため、レバーを十分に加熱することで感染リスクを大きく減らせます。レバーは生で食べず、必ず中心部まで加熱調理しましょう。
レバーの保存方法
レバーの栄養素を損なわない・傷みにくい保存方法を解説します。
レバーは長く冷蔵保存すると食中毒の原因に
レバーなどの肉類の内臓は、保存期間が長くなると傷みやすいだけでなく、細菌が繁殖して食中毒を引き起こす原因にもなります。レバーを買ってきたら、冷蔵保存して、数日以内に食べるのが基本です。
加熱調理後は、栄養を損なうことなく、冷蔵庫で数日程度の保存ができます。
レバーを長期間保存したいなら冷凍保存する
レバーが余ってしまった場合など、しばらく保存したい場合は、生のまま冷凍保存することも可能です。
冷凍するときは、レバーを1cm程度の薄さに切ってから、流水で洗います。さらに、20~30分程度塩水に浸して血抜きをし、キッチンペーパーで水気をとって、密閉容器に入れて冷凍保存します。
冷凍庫で保存するときの使用目安は、おおよそ2~3週間です。