ナトリウムの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品
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ナトリウムの基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、1日の摂取目安量、多く含む食品について解説します。
ナトリウムとは
ナトリウム(sodium)は人体に必須のミネラルの一種で、体内の水分量を調節するほか、神経や筋肉が正常に働くのに重要な役割を持っています。
食事においては、主に食塩(塩化ナトリウム)の形で摂取されます。
ナトリウムは通常の食事をしていれば不足・欠乏することはなく、現代人にとってはむしろ過剰摂取によるリスクに注意が必要な栄養素です。
とりわけ日本人は欧米諸国と比べてもナトリウム摂取量が多く、ナトリウムの摂取量低下、つまり減塩とあわせて、ナトリウムを排出する働きを持つカリウムの適切な摂取が推奨されています。
ナトリウム量と塩分相当量の違い
ナトリウムは、Naという元素記号で表されるアルカリ金属元素のひとつです。
これに対して塩分(食塩)は、ナトリウムに塩素(Cl:クロール)が化合した塩化ナトリウム(NaCl)という化合物であり、両者には塩素の分だけ差があります。
そのため、ナトリウム量に塩素の分を加味することで、化合したあとの塩分相当量を割り出すことができるのです。
ナトリウム量と塩分相当量を換算するための計算式は、次の通り。
ナトリウム(mg)×2.54÷1,000=食塩相当量(g)
計算式に照らし合わせて、たとえばナトリウムが1g(1,000mg)含まれている場合、食塩相当量は1,000mg×2.54÷1,000=2.54gとなります。
ナトリウムの効果・働き
ナトリウムの持つ効果・効能・働きについて解説します。
ナトリウムを摂取・保持することは水分を保持することであり、ナトリウムの損失は水分を失うことに繋がります。
そのため、ナトリウムの不足・欠乏は疲労感などの症状として現れます。
またナトリウムとカリウムは、相互に作用してお互いの濃度の差を生み出すことによって、神経インパルスの伝達、筋肉の収縮、心機能などの働きを果たします。
濃度の差を調節する機能のために、安静にしているときのエネルギー消費のうち20~40%ものATP(エネルギー)が用いられるほど、ナトリウムとカリウムは人体にとって重要な栄養素です。
また小腸でのナトリウムの吸収は、塩化物、アミノ酸、ブドウ糖、および水分の吸収に重要な役割を果たします。
塩酸(HCL)の形での塩化物は胃液の重要な成分ともなり、多くの栄養素の消化と吸収を助けます。
さらに血液の量や血圧を調整する身体の働きは、ナトリウム量を調整することで機能しています。
ナトリウムが不足・欠乏すると起こる症状
ナトリウムが不足・欠乏すると、低ナトリウム血症を引き起こします。低ナトリウム血症の症状は、次の通りです。
- 頭痛
- 脱水症状
- 吐き気、嘔吐をともなう食欲不振
- 筋力の低下、筋肉の痙攣、筋肉の痛み
- 極度の疲労
- 見当識障害(方向感覚の喪失)
- 失神
さらに、重篤な急性低ナトリウム血症の合併症として、脳水腫(脳のはれ)、脳卒中、昏睡、脳損傷などもあります。
急性または重篤な低ナトリウム血症は、迅速かつ適切な処置がなされないと命に関わる場合もあります。
ナトリウムが不足・欠乏する原因と対策
ナトリウムが不足・欠乏する原因は、次の通りです。
- 長時間の持久運動による大量の発汗
- 激しい下痢
特に、高温・多湿の環境下での作業やスポーツが原因で不足・欠乏することが多いため、長時間運動をする際は水分と共にこまめな補給を心がけることが大切です。
なおナトリウムの必要量は平均摂取量に対してかなり低水準であり、たとえ非常に低塩分の食事をしていても、食事による摂取不足から欠乏することはまずありません。
ナトリウムを過剰摂取すると起こる症状
ナトリウムを過剰摂取すると、次の症状を引き起こします。
- 水分をためこむことによるむくみ
- 口の渇き
- 高血圧
- 胃がん、食道がん、動脈硬化など生活習慣病のリスク増大
ナトリウムはカリウムと相互に作用するため、カリウムを多く含む野菜や果物を一緒に摂ることで、ナトリウムの排泄を促進することができます。
ナトリウムの1日の摂取目安量
ナトリウムは不足しにくい栄養素であることから摂取目安量は設定されていません。
代わりに摂取目標量として、成人男性で食塩相当7.5g未満(ナトリウム約3,000mg)、成人女性で食塩相当6.5g未満(ナトリウム約2,600mg)が設定されています。
なお、日本人の食事摂取基準(2020 年版)において参考とした時点での日本人の成人1日当たりのナトリウム摂取量は、食塩相当量で男性およそ11g、女性およそ9gです。
以前に比べると減少したものの、世界的に見るとまだまだ高い状況であり、引き続きナトリウムの摂取を意識的に控える必要があるでしょう。
なお、ナトリウムの必要量は本来、塩分相当量で1日当たり2g程度です。
ナトリウムの食事摂取基準(mg/日()は食塩相当量[g/日])
性別 | 男性 | 女性 | ||||
年齢等 | 推定平均必要量 | 目安量 | 目標量 | 推定平均必要量 | 目安量 | 目標量 |
0 ~ 5 (月) | ─ | 100(0.3) | ─ | ─ | 100(0.3) | ─ |
6 ~11(月) | ─ | 600(1.5) | ─ | ─ | 600(1.5) | ─ |
1 ~ 2 (歳) | ─ | ─ | (3.0未満) | ─ | ─ | (3.0未満) |
3 ~ 5 (歳) | ─ | ─ | (3.5未満) | ─ | ─ | (3.5未満) |
6 ~ 7 (歳) | ─ | ─ | (4.5未満) | ─ | ─ | (4.5未満) |
8 ~ 9 (歳) | ─ | ─ | (5.0未満) | ─ | ─ | (5.0未満) |
10~11(歳) | ─ | ─ | (6.0未満) | ─ | ─ | (6.0未満) |
12~14(歳) | ─ | ─ | (7.0未満) | ─ | ─ | (6.5未満) |
15~17(歳) | ─ | ─ | (7.5未満) | ─ | ─ | (6.5未満) |
18~29(歳) | 600(1.5) | ─ | (7.5未満) | 600(1.5) | ─ | (6.5未満) |
30~49(歳) | 600(1.5) | ─ | (7.5未満) | 600(1.5) | ─ | (6.5未満) |
50~64(歳) | 600(1.5) | ─ | (7.5未満) | 600(1.5) | ─ | (6.5未満) |
65~74(歳) | 600(1.5) | ─ | (7.5未満) | 600(1.5) | ─ | (6.5未満) |
75 以上(歳) | 600(1.5) | ─ | (7.5未満) | 600(1.5) | ─ | (6.5未満) |
妊婦 | 600(1.5) | ─ | (6.5未満) | |||
授乳婦 | 600(1.5) | ─ | (6.5未満) |
出典:日本人の食事摂取基準(2020 年版)
ナトリウム含有量の多い食品&少ない食品ランキング
ナトリウムの含有量をもとに、各食品群におけるナトリウムの多い食品ランキングと、一部の少ない食品ランキングを紹介します。
全食品中でナトリウム含有量の多い食品ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | 調味料及び香辛料類/(食塩類)/精製塩/業務用 | 39000 |
1 | 調味料及び香辛料類/(食塩類)/精製塩/家庭用 | 39000 |
1 | 調味料及び香辛料類/(食塩類)/食塩 | 39000 |
4 | 調味料及び香辛料類/(食塩類)/並塩 | 38000 |
5 | 調味料及び香辛料類/(だし類)/顆粒おでん用 | 22000 |
6 | し好飲料類/昆布茶 | 20000 |
7 | 調味料及び香辛料類/(だし類)/顆粒中華だし | 19000 |
8 | 調味料及び香辛料類/(その他)/即席すまし汁 | 18000 |
9 | 調味料及び香辛料類/(だし類)/固形ブイヨン | 17000 |
10 | 調味料及び香辛料類/(だし類)/顆粒和風だし | 16000 |
ナトリウム含有量の多い穀類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | プレミックス粉/から揚げ用 | 3800 |
2 | 中華スタイル即席カップめん/油揚げ | 2700 |
2 | 中華スタイル即席カップめん/非油揚げ | 2700 |
2 | 即席中華めん/非油揚げ | 2700 |
2 | 和風スタイル即席カップめん/油揚げ | 2700 |
6 | 即席中華めん/油揚げ味付け | 2500 |
7 | 手延そうめん・手延ひやむぎ/乾 | 2300 |
8 | 即席中華めん/油揚げ | 2200 |
9 | 干し沖縄そば/乾 | 1700 |
9 | 干しうどん/乾 | 1700 |
ナトリウム含有量の多い豆類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | 寺納豆 | 5600 |
2 | ろくじょう豆腐 | 4300 |
3 | 五斗納豆 | 2300 |
4 | 金山寺みそ | 2000 |
5 | ひしおみそ | 1900 |
6 | 繊維状大豆たんぱく | 1400 |
7 | 分離大豆たんぱく/塩分無調整タイプ | 1300 |
8 | 豆腐竹輪/焼き | 900 |
9 | 豆腐よう | 760 |
10 | 豆腐竹輪/蒸し | 740 |
ナトリウム含有量の多い野菜類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | ザーサイ/漬物 | 5400 |
2 | だいこん類/漬物/みそ漬 | 4400 |
3 | しょうが/漬物/酢漬 | 2800 |
3 | やまごぼう/みそ漬 | 2800 |
5 | かぶ/漬物/ぬかみそ漬/根、皮むき | 2700 |
6 | なす類/漬物/こうじ漬 | 2600 |
7 | たかな/たかな漬 | 2300 |
8 | きゅうり/漬物/ぬかみそ漬 | 2100 |
9 | だいこん類/漬物/福神漬 | 2000 |
10 | なす類/漬物/からし漬 | 1900 |
ナトリウム含有量の多い果物ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | うめ/梅漬/塩漬 | 7600 |
2 | 梅干し/塩漬 | 7200 |
3 | 梅びしお | 3100 |
4 | 梅干し/調味漬 | 3000 |
5 | うめ/梅漬/調味漬 | 2700 |
6 | オリーブ/塩漬/スタッフドオリーブ | 2000 |
7 | オリーブ/塩漬/グリーンオリーブ | 1400 |
8 | オリーブ/塩漬/ブラックオリーブ | 640 |
9 | くこ、実、乾 | 510 |
10 | いちご/乾 | 260 |
ナトリウム含有量の多い海藻類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | カットわかめ 乾 | 9300 |
2 | 塩昆布 | 7100 |
3 | 乾燥わかめ/素干し | 6600 |
4 | ひとえぐさ/素干し | 4500 |
5 | 刻み昆布 | 4300 |
6 | 乾燥わかめ/板わかめ | 3900 |
6 | あおさ/素干し | 3900 |
8 | あおのり/素干し | 3200 |
9 | くきわかめ/湯通し塩蔵、塩抜き | 3100 |
10 | みついしこんぶ/素干し | 3000 |
10 | がごめこんぶ/素干し | 3000 |
10 | ながこんぶ/素干し | 3000 |
ナトリウム含有量の少ない海藻類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | てんぐさ/寒天 | 2 |
2 | てんぐさ/ところてん | 3 |
3 | すいぜんじのり/素干し、水戻し | 5 |
4 | えごのり/おきうと | 20 |
5 | 乾燥わかめ/灰干し、水戻し | 48 |
6 | ほしひじき/ステンレス釜、ゆで | 52 |
7 | ほしひじき/鉄釜、ゆで | 52 |
8 | ほしひじき/鉄釜、油いため | 64 |
9 | ほしひじき/ステンレス釜、油いため | 64 |
10 | カットわかめ 水煮の汁 | 68 |
参考文献
ナトリウム(塩化物)←これをもとに加筆