そばの栄養と効果効能・調理法・保存法
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そばの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、そばに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
そばとは
そばとは、そばの実を製粉したそば粉で作られる麺類です。
そば粉はまとまりにくいため、一般的にはつなぎ粉を混ぜ合わせて作られますが、「そば粉:つなぎ粉=8:2」のそばは「二八そば(にはちそば)」と呼ばれます。つなぎをまったく使わずそば粉100%で作られるそばは「十割そば(じゅうわりそば)」と呼ばれ、そばの風味と香ばしさがより一層強いのが特徴です。
日本でのそばの歴史は古く、縄文時代には食されていたと考えられています。しかし今のような麺の状態で食べられるようになったのは江戸時代からです。「更科そば」「藪そば」「砂場そば」の三大そばが生まれたのも、この頃だったと言われています。
そばの実は全国的に栽培されていますが、主な生産地は北海道や長野県、茨城県などです。収穫時期は年2回あり、6月から8月に収穫されるものは「夏そば」、9月から11月にかけて収穫されるものは「秋そば」と呼ばれます。
日本以外には、中国・ネパール・モンゴルなどで栽培され、古くから食されてきました。中国で生まれた「韃靼そば(だったんそば)」は苦味が強く、日本のそばが「甘そば」と呼ばれるのに対し、「苦そば」という名称で親しまれています。
そばの挽き方による種類
そばの実は、殻・種皮・胚乳・胚芽で構成され、挽く方法により種類や栄養素が変わります。
一番粉
そばの実を挽いたときに、最初に出る粉が一番粉です。胚乳の中心部が多く含まれ、白っぽい見た目をしています。栄養素としてはデンプン質が豊富です。
三大そばのひとつである更科そばは、この一番粉を使っています。弾力があり、のどごしも良い点が特徴です。
二番粉
一番粉よりさらに挽いたものが二番粉です。胚乳だけでなく胚芽部分も含まれてくるので、栄養価が高くなります。
一番粉よりそばの風味や香りが豊かになるので、バランスの良いそばと言えるでしょう。
三番粉
二番粉をさらに挽くと三番粉になります。色が濃くなりグレーがかった見た目が特徴です。
種の甘皮や胚の残りも挽かれるため、そばならではの風味が強いですが、ときにはえぐみを感じる場合もあります。栄養素はタンパク質が主体です。
四番粉
四番粉は一番最後に出てくる粉で、タンパク質や繊維質などが多く含まれている部分です。そば殻まで挽かれるため色合いも濃くなります。
主な利用方法は飼料ですが、乾麺やそば菓子などの色付けに使用されることも多いです。食用に使用される粉は「末粉」とも呼ばれます。
そばに含まれる成分・栄養素
そば100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
そばには、タンパク質や食物繊維が豊富に含まれています。また、カテキンやルチンなどのポリフェノール類が多いことでも知られる食品です。
そばは穀物類の中では比較的カロリーの低い食べ物ですが、一方で高い栄養価を誇ります。小麦や米の胚芽部分を取り除いて作られるうどんや白米と違い、そばは精製しないで加工するため栄養素が多く含まれます。
なお成分表を見ると乾麺のほうが生そばより栄養価が高いように見えますが、あくまで100gあたりの比較です。一食あたりの栄養素で比べた場合、ほとんど栄養素の含有量に違いはありません。
食品名 | 単位 | そば 生 | そば ゆで | 干しそば 乾 | 干しそば ゆで | そば粉 全層粉 | そば米 |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 274 | 132 | 344 | 114 | 361 | 364 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 1146 | 552 | 1439 | 477 | 1510 | 1523 |
水 分 | g/100 g | 33 | 68 | 14 | 72 | 13.5 | 12.8 |
たんぱく質 | g/100 g | 9.8 | 4.8 | 14 | 4.8 | 12 | 9.6 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 8 | -3.9 | 11.4 | -3.9 | 10 | -8 |
脂 質 | g/100 g | 1.9 | 1 | 2.3 | 0.7 | 3.1 | 2.5 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | -1.7 | -0.9 | -2.1 | -0.6 | 2.9 | -2.3 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.4 | -0.21 | -0.49 | -0.15 | 0.6 | -0.49 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.42 | -0.22 | -0.5 | -0.15 | 1.11 | -0.89 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.8 | -0.42 | -0.97 | -0.3 | 1.02 | -0.82 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 54.5 | 26 | 66.7 | 22.1 | 69.6 | 73.7 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | -56.4 | -27 | -72.4 | -23.6 | 70.2 | -70.8 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 1 | 0.5 | 1.6 | 0.5 | 0.8 | 1 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 1.7 | 1.5 | 2.1 | 1 | 3.5 | 2.7 |
食物繊維総量 | g/100 g | 2.7 | 2 | 3.7 | 1.5 | 4.3 | 3.7 |
灰 分 | g/100 g | 0.8 | 0.2 | 3 | 0.4 | 1.8 | 1.4 |
ナトリウム | mg/100 g | 1 | 2 | 850 | 50 | 2 | 1 |
カリウム | mg/100 g | 160 | 34 | 260 | 13 | 410 | 390 |
カルシウム | mg/100 g | 18 | 9 | 24 | 12 | 17 | 12 |
マグネシウム | mg/100 g | 65 | 27 | 100 | 33 | 190 | 150 |
リン | mg/100 g | 170 | 80 | 230 | 72 | 400 | 260 |
鉄 | mg/100 g | 1.4 | 0.8 | 2.6 | 0.9 | 2.8 | 1.6 |
亜鉛 | mg/100 g | 1 | 0.4 | 1.5 | 0.4 | 2.4 | 1.4 |
銅 | mg/100 g | 0.21 | 0.1 | 0.34 | 0.1 | 0.54 | 0.38 |
マンガン | mg/100 g | 0.86 | 0.38 | 1.11 | 0.33 | 1.09 | 0.76 |
ヨウ素 | µg/100 g | 4 | Tr | - | - | 1 | - |
セレン | µg/100 g | 24 | 12 | - | - | 7 | - |
クロム | µg/100 g | 3 | 2 | - | - | 4 | - |
モリブデン | µg/100 g | 25 | 11 | - | - | 47 | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | - | - | - | - | - | - |
β-カロテン | µg/100 g | - | - | - | - | - | - |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | - | - | - | - | - | - |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.2 | 0.1 | 0.3 | 0.1 | 0.2 | 0.1 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0.1 | Tr | 0.2 | 0.1 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 1.9 | 0.8 | 1.3 | 0.5 | 6.8 | 1.9 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0.1 | Tr | 0.1 | 0 | 0.3 | 0.1 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.19 | 0.05 | 0.37 | 0.08 | 0.46 | 0.42 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.09 | 0.02 | 0.08 | 0.02 | 0.11 | 0.1 |
ナイアシン | mg/100 g | 3.4 | 0.5 | 3.2 | 0.6 | 4.5 | 4.3 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.15 | 0.04 | 0.24 | 0.05 | 0.3 | 0.35 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 19 | 8 | 25 | 5 | 51 | 23 |
パントテン酸 | mg/100 g | 1.09 | 0.33 | 1.15 | 0.22 | 1.56 | 1.53 |
ビオチン | µg/100 g | 5.5 | 2.7 | - | - | 17 | - |
ビタミンC | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 | 2.2 | 0.1 | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | 190 | - | 260 | - | - |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
そばの効果・効能
そばに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
ルチンで高血圧症予防
そばにはポリフェノールの一種であるルチンが多く含まれています。ルチンで注目されている働きは、血圧降下作用です。
ルチンの高い抗酸化作用は毛細血管を丈夫にし、血管の弾力性を強化する働きが期待されています。血流をスムーズにしてくれることで、高血圧予防として活躍してくれるでしょう。
食物繊維で便秘改善
そばは食物繊維を多く含みますが、特に豊富なのが不溶性食物繊維です。不溶性食物繊維は保水性が高く、水分を吸収して膨らむことで腸のぜん動運動を促してくれます。
また、腸内で発酵して善玉菌のエサになってくれるので、腸内環境の改善に欠かせない栄養素です。
食物繊維の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法|NANIWA SUPLI MEDIA
タンパク質豊富で筋力アップに
そばに含まれるタンパク質は、良質なアミノ酸で構成されています。体内で生成できない9種類の必須アミノ酸がバランス良く含まれているので、体内でタンパク質の利用率を高めたい人には最適です。
そばはカロリーも低いため、筋トレやダイエット中の食事として使い勝手の良い食品と言えます。
タンパク質の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
カテキンやビタミンで肥満予防
そばには、緑茶に多く含まれるカテキンというポリフェノールが豊富です。カテキンには脂肪細胞の分解作用があり、血糖値の急激な上昇を抑える作用も期待されています。
さらにそばは、糖質の代謝を促すビタミンB1やビタミンB2も多く含まれます。まさにダイエットにぴったりの食品でしょう。
ビタミンB群の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
コリンのコレステロール低下作用
コリンとは、ビタミンと似た働きをする栄養素です。肝臓の働きをサポートする作用があり、脂質の代謝を促進することでコレステロールを低下させます。
肝臓に脂肪が溜まる脂肪肝の予防としても期待されています。
そばの食べ方や注意点
そばの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
そば湯にも栄養素がたっぷり
そばにはビタミンB類をはじめとした水溶性の栄養素が豊富です。代表的な栄養素であるルチンも、水に溶けやすい性質を持っています。
栄養素を余すことなく摂取するなら、そばを湯がいたそば湯も一緒に飲むようにしましょう。そのまま飲むだけでなく、味噌汁や煮物の出汁としても活用できます。
茹でずに作るそばがきとは
そばがきとは、そば粉をお湯でこねて団子のように丸めた料理です。「かいもち」とも呼ばれます。そばのように、麺つゆにつけて食べる方法が一般的です。
茹でないため水溶性の栄養素が失われず、効率的に栄養を摂取できます。
そばと一緒にビタミンの豊富な野菜類を
そばに足りない栄養素を補うなら、ビタミンの豊富な野菜を取り入れると良いでしょう。そばに不足するビタミンAやビタミンCが豊富な野菜が適しています。
特にルチンはビタミンCと相性が良いので、大根おろしをのせた「おろしそば」はおすすめです。
海藻類や芋類と合わせて
そばには食物繊維が多く含まれますが、不溶性食物繊維のほうが含有量が高い傾向にあります。食物繊維の理想的な摂取量は「不溶性食物繊維:水溶性食物繊維=1:2」なので、水溶性食物繊維を補いましょう。
わかめをはじめとした海藻類は、水溶性食物繊維が豊富です。山芋も水溶性食物繊維が多いうえに、ねばねば成分のムチンが糖質の吸収を抑えてくれるので、ダイエット中の人に適しています。
そばの薬味にも重要な役割が
そばを食べる際に忘れてはいけない薬味。実はそばと薬味の組み合わせも、栄養価を高める大事な要素です。
例えば、わさびの辛味成分であるシニグリンはそばに含まれるビタミンB2の働きを高め、ねぎのアリシンはビタミンB1の吸収効率をアップしてくれます。七味にはとうがらしのカプサイシンが含まれるので、ダイエット効果を後押ししてくれるでしょう。
そばの保存方法
そばの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
乾麺タイプのそばは長持ちするうえに常温でも保存できますが、手打ちそばなど生の状態のそばは日持ちしづらいというデメリットがあります。生のそばをおいしい状態で保存するには、以下のようなコツが必要です。
冷蔵保存の場合
冷蔵庫で保存する場合は、そばが乾燥しないよう気を付けましょう。密閉容器に入れたら、手ぬぐいを被せて上から霧吹きなどを使って湿らせると良いです。野菜室で保存すれば3日程度は日持ちします。
茹でたそばでも、同様の方法で冷蔵庫にて3日ほど保存が可能です。
冷凍保存の場合
生そばを冷凍保存する場合は、一食ずつラップや保存袋に入れ密閉させてから保存します。
保存期間の目安は1ヶ月です。茹でた状態のそばも冷めたら一食ずつ分けて、冷凍庫で約1ヶ月ほど保存できます。
食べるときは冷蔵庫の野菜室で解凍させるか、凍ったまま湯がいて食べましょう。