ピスタチオの栄養と効果効能・調理法・保存法
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ピスタチオの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、ピスタチオに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
ピスタチオとは
ピスタチオ(pistachio)は、ウルシ科カイノキ属の木になる木の実です。鮮やかな緑色をしていることから「緑の宝石」とも呼ばれ、また香りや味が良く栄養価が高いことから日本では「ナッツの女王」と呼ばれることもあります。
ピスタチオの原産地は古代トルコやペルシャなど地中海沿岸地方とされており、自生していたものを食用に栽培するようになったのがはじまりです。その後、ヨーロッパから1880年代にアメリカへ伝わり、世界中で親しまれるようになりました。
現在、ピスタチオはイランで全体の約50%を生産しており、次いでアメリカのカリフォルニア州、トルコ、シリアと続きます。日本で出回っているピスタチオはほとんどがアメリカ産です。
1年を通して店頭に並ぶピスタチオですが、アメリカやイタリアなど北半球が産地のものは9〜10月に旬を迎えます。
ピスタチオの種類
販売されているピスタチオには、生の状態のものと、ローストされた状態のものがあります。
生のピスタチオ
生のピスタチオの特徴は、柔らかい触感とコクのある甘みです。
生のピスタチオとは、加熱や味付けなどの加工を行っていない、収穫されたままの状態のピスタチオを指します。ローストしていないため鮮やかな緑色をしており、そのまま食べるのはもちろんお菓子や料理に使うこともできます。
ローストされたピスタチオ
ローストされたピスタチオは素焼きされた状態を指し、香ばしさやカリっとした食感を楽しむことができます。
ピスタチオに含まれる成分・栄養素
ピスタチオ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | ピスタチオ いり 味付け |
廃 棄 率 | % | 45 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 615 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 2573 |
水 分 | g/100 g | 2.2 |
たんぱく質 | g/100 g | 17.4 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 15.8 |
脂 質 | g/100 g | 56.1 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 55.9 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 6.15 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 30.92 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 16.42 |
コレステロール | mg/100 g | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 20.9 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | -8.2 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.9 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 8.3 |
食物繊維総量 | g/100 g | 9.2 |
灰 分 | g/100 g | 3.4 |
ナトリウム | mg/100 g | 270 |
カリウム | mg/100 g | 970 |
カルシウム | mg/100 g | 120 |
マグネシウム | mg/100 g | 120 |
リン | mg/100 g | 440 |
鉄 | mg/100 g | 3 |
亜鉛 | mg/100 g | 2.5 |
銅 | mg/100 g | 1.15 |
マンガン | mg/100 g | - |
ヨウ素 | µg/100 g | - |
セレン | µg/100 g | - |
クロム | µg/100 g | - |
モリブデン | µg/100 g | - |
レチノール | µg/100 g | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 120 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 0 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 120 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 10 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 1.4 |
β-トコフェロール | mg/100 g | Tr |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 25.5 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0.6 |
ビタミンK | µg/100 g | 29 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.43 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.24 |
ナイアシン | mg/100 g | 1 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 1.22 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 59 |
パントテン酸 | mg/100 g | 1.06 |
ビオチン | µg/100 g | - |
ビタミンC | mg/100 g | 0 |
食塩相当量 | g/100 g | 0.7 |
アルコール | g/100 g | - |
硝酸イオン | g/100 g | - |
テオブロミン | g/100 g | - |
カフェイン | g/100 g | - |
タンニン | g/100 g | - |
ポリフェノール | g/100 g | - |
酢酸 | g/100 g | - |
調理油 | g/100 g | - |
有機酸 | g/100 g | - |
重量変化率 | % | - |
備考 | 廃棄部位: 殻 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
ピスタチオの効果・効能
ピスタチオに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
β-カロテン
ピスタチオが持つβ-カロテンは、緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイド(天然色素)で、体内に入ると一部は脂肪組織に蓄えられ、残りはビタミンAに変換されてビタミンAとして効果を発揮します。
β-カロテンには強い抗酸化作用があり、ストレスなどで発生する活性酸素を除去して、老化を防止したりがん・動脈硬化など生活習慣病を予防したりします。
また、ビタミンAとして働き、視機能の改善・目や皮膚の粘膜を健康に保つ・免疫機能をコントロールするといった効果も期待できる栄養素です。
不飽和脂肪
ピスタチオの約半分は脂質でできており、その脂質の多くは不飽和脂肪酸です。
不飽和脂肪酸の一種であるオレイン酸は血中の悪玉コレステロールを減らし、コレステロール値を安定させる働きがあります。この働きによって血液をサラサラにし、動脈硬化など生活習慣病の予防に役立ちます。
また、オレイン酸には肌の乾燥を防ぐ効果もあり、シワやニキビなどの肌トラブル予防に効果があります。
不溶性食物繊維
食物繊維には、水溶性と不溶性の2種類があり、ピスタチオには不溶性食物繊維が多く含まれています。
不溶性食物繊維は便のカサを増やして腸を刺激し、腸のぜん動運動を促進する働きがあります。その結果、便秘の予防・解消に繋がります。
カリウム
カリウムは人体に必須のミネラルの一種で、他のナッツに比べてピスタチオには多く含まれています。カリウムには細胞内液の浸透圧を維持・調整したり、ナトリウム(水分)を保持・排出する働きがあります。
過剰なナトリウムによる高血圧に対して、ナトリウムを排出して血圧を下げたり、血流を改善してむくみを予防したりといった効果が期待できます。
ビタミンB2
ビタミンB2は水溶性のビタミンで、成長期や妊娠中に不足すると成長障害を引き起こすことから「発育のビタミン」「成長のビタミン」とも呼ばれています。
ビタミンB2を摂取することで、皮膚・毛髪・爪など全身の発育を促したり、皮膚や粘膜を健康に保って口内炎やニキビなど肌荒れを予防したりなどの効果が期待があります。
ビタミンB2をはじめビタミンB群が不足すると、糖質や脂質がエネルギーに変換されず、体に蓄積してしまいます。食事制限やダイエットをしている際は、ビタミンB2を積極的に摂取することで、効果的にダイエットすることができます。
ビタミンB6
ビタミンB6はたんぱく質の代謝を促し、丈夫で健康な皮膚や粘膜・毛髪・歯・爪を作るのに効果を発揮します。
また、赤血球のヘモグロビンの生成にも大きく関わっており、鉄や葉酸とともに貧血の予防に効果があります。
さらに、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の合成にも関わっており、精神を安定させる働きを持っています。PMS(月経前症候群)の症状改善に繋がるため、PMSに悩まされている女性は積極的に摂取したい栄養素と言えます。
ピスタチオの食べ方
ピスタチオの栄養素を損なわない食べ方や食べる際の注意点などを解説します。
ピスタチオの殻のむき方
ピスタチオは硬い殻におおわれています。殻の割れ目が小さかったり、硬すぎて指の力だけでは開かない場合は、別のピスタチオの殻を割れ目に差し込んでねじることで、てこの原理を使って楽に開けることができます。
ピスタチオのおすすめ調理法
ピスタチオに含まれるβ-カロテンは、油と一緒に摂取することで吸収率を上げることができます。他の食材と炒めたり、パスタなどの具材に使うと良いでしょう。
ピスタチオを食べる際の注意点
ピスタチオに含まれる不飽和脂肪酸は熱に弱い性質を持っています。不飽和脂肪酸を効果的に摂取したい場合は、ローストされたピスタチオではなく、生のピスタチオを食べるのが良いでしょう。
また、ピスタチオの半分は脂質でできているため、食べ過ぎると皮脂が過剰に分泌されて毛穴詰まりを起こし、ニキビができやすくなってしまいます。さらに、ピスタチオには食物繊維が豊富に含まれており、食べ過ぎるとお腹を下してしまう恐れがあります。
ピスタチオの1日の摂取量の目安は10〜30粒です。
ピスタチオの保存方法
ピスタチオの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
生のピスタチオ
ピスタチオを保存する際に気をつけたいのが酸化です。ピスタチオには油脂が多く含まれており、油脂は空気(酸素)にふれると傷むのが早まってしまいます。
酸化を防ぐために、保存する際は真空パックやジップロック、密閉できる瓶に入れましょう。生のピスタチオは水分が多いため、常温で保存するとカビが生えてしまう可能性があります。冷蔵庫で保存するようにしましょう。
生のピスタチオの保存期間は、約3ヶ月です。
ローストされたピスタチオ
ローストされたピスタチオも同様に、酸化を防ぐためにできる限り空気に触れない保存容器に入れます。ピスタチオを含むナッツは光にも弱いため、直射日光を避け、冷蔵庫で保存します。ローストされたナッツは20度以下の低温にすると酸化を遅らせることができます。
ローストされたピスタチオの保存期間は約6ヶ月です。