ピーナッツの栄養と効果効能・調理法・保存法

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peanuts

ピーナッツの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、ピーナッツに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

ピーナッツとは

ピーナッツ(Peanuts)とは落花生の殻を外すと出てくる実の部分を指します。「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」では、落花生は種実類に分類されますが、生物学上の分類はマメ科ラッカセイ属の豆類です。

落花生はナッツ類とは異なるので、木になるのではなく地中で育ちます。花が咲いたあとに、子房柄(しぼうへい)が地中に向かって根のように伸びていく様から「落花生」と名付けられました。

原産地は南アメリカと言われ、中国を経由して日本に伝わったのは江戸時代です。古くは南京豆、沖縄ではジーマーミ―などさまざまな呼び方で昔から親しまれてきました。

国内の主な生産地は千葉県ですが、生産量が少ないため市販されている安価のピーナッツはほとんどが輸入物です。千葉県産のピーナッツは高級品として扱われており、価格帯も高い傾向にあります。

国産落花生の収穫時期は主に9月から10月ですが、収穫されてから1週間ほど乾燥したのちに出荷されるため、旬の時期は10月頃になります。

ピーナッツの品種・種類

ピーナッツは細かく分類すると1600種も品種があると言われています。品種系統はヴァージニア、スパニッシュ、バレンシアの3タイプですが、日本で主に栽培されているのは大粒種のヴァージニアです。

ここでは落花生のメッカである千葉県のブランド品種について詳しくご紹介していきます。

千葉半立

千葉県でもっとも多く栽培されているのが千葉半立(ちばはんだち)です。甘く濃厚な味で、煎るとさらに風味が良くなります。栽培が難しいため、収穫量が少なく貴重な品種です。

中手豊

中手豊(ナカテユタカ)は、千葉半立に比べるとかなり栽培しやすい品種です。収穫量が多く、県内で取り扱われている落花生のなかでは比較的安価で購入できます。

実はやや大ぶりであっさりとした味わいが特徴。殻が白く見た目も美しいので贈答用として使用されます。

郷の香

郷の香(さとのか)は中手豊を品種改良して作られた品種です。渋みが少なく皮が薄いので、茹で落花生用として栽培されています。

おおまさり

一般的な品種に比べ、約2倍ほどの大きさを誇るのがおおまさりです。「大きな莢(さや)で味もほかの品種より勝る」という意味でおおまさりの名がつきました。

郷の香と同じく茹で落花生用の品種で、甘味が強くやわらかい口当たりが特徴です。

Qなっつ

Qなっつは、2018年に生まれた新品種です。品種名は、アルファベットでPの次がQということから「Pナッツを超えるQナッツ」という意味が込められています。

中手豊に似てあっさりとした味わいが特徴。病気にも強い品種です。

ピーナッツに含まれる成分・栄養素

ピーナッツ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

ピーナッツには、タンパク質、炭水化物、脂質、ミネラル、ビタミンの5大栄養素が含まれています。

特にタンパク質は100gあたり25g程度とかなり豊富です。高タンパク質といわれる肉や大豆に匹敵する含有量を誇ります。

ピーナッツは脂質量も多く、カロリーは高い傾向にあります。ただ、ピーナッツの脂肪分は植物性脂肪で不飽和脂肪酸が豊富なため、さまざまな健康作用が期待できます。

さらにピーナッツはGI値が低く、血糖値の上昇が緩やかな点も特徴。タンパク質が豊富で太りにくい食材でもあるため、ダイエットや筋トレをしている人に向いていると言えるでしょう。また、低GI値の食品は糖尿病予防にも役立ちます。

食品名単位落花生 乾 大粒種落花生 乾 小粒種落花生 いり 大粒種落花生 いり 小粒種落花生 バターピーナッツ落花生 ピーナッツバター
廃 棄 率%3030303000
エネルギー(kcal)kcal/100 g562562585585592640
エネルギー(kJ)kJ/100 g235123512448244824772678
水 分g/100 g662.12.12.40.6
タンパク質g/100 g25.425.426.526.525.525.4
アミノ酸組成によるタンパク質g/100 g23.7-24.4-24.223.8
脂 質g/100 g47.547.549.449.451.350.7
トリアシルグリセロール当量g/100 g46.846.950.3-50.349.948.1
飽和脂肪酸g/100 g8.3310.028.95-10.769.911.35
一価不飽和脂肪酸g/100 g22.7619.1524.44-20.5722.7220
多価不飽和脂肪酸g/100 g13.7415.6614.75-16.8215.1614.7
コレステロールmg/100 g000000
炭水化物g/100 g18.818.819.619.618.220.5
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g10.8-11-920.1
水溶性食物繊維g/100 g0.40.40.30.30.50.6
不溶性食物繊維g/100 g776.96.96.45.5
食物繊維総量g/100 g7.47.47.27.26.96.1
灰 分g/100 g2.32.32.42.42.62.8
ナトリウムmg/100 g2222120350
カリウムmg/100 g740740770770760660
カルシウムmg/100 g505050505047
マグネシウムmg/100 g170170200200190180
リンmg/100 g380380390390380370
mg/100 g1.61.61.71.721.6
亜鉛mg/100 g2.32.3333.12.7
mg/100 g0.590.590.690.690.640.65
マンガンmg/100 g1.561.56--2.811.48
ヨウ素µg/100 g11--1-
セレンµg/100 g2020--5-
クロムµg/100 g44--1-
モリブデンµg/100 g8888--68-
レチノールµg/100 g000000
α-カロテンµg/100 g------
β-カロテンµg/100 g------
β-クリプトキサンチンµg/100 g------
β-カロテン当量µg/100 g667767
レチノール活性当量µg/100 g111111
ビタミンDµg/100 g000000
α-トコフェロールmg/100 g10.110.110.610.61.94.8
β-トコフェロールmg/100 g0.40.40.30.30.20.3
γ-トコフェロールmg/100 g667.17.13.37.2
δ-トコフェロールmg/100 g0.30.30.30.30.40.5
ビタミンKµg/100 gTrTrTrTr1Tr
ビタミンB1mg/100 g0.850.850.230.230.20.2
ビタミンB2mg/100 g0.10.10.10.10.10.09
ナイアシンmg/100 g171717171716.2
ビタミンB6mg/100 g0.460.460.460.460.480.36
ビタミンB12µg/100 g000000
葉酸µg/100 g767657579887
パントテン酸mg/100 g2.562.562.192.192.421.88
ビオチンµg/100 g92.392.3--95.6-
ビタミンCmg/100 g000000
食塩相当量g/100 g00000.30.9
アルコールg/100 g------
硝酸イオンg/100 g------
テオブロミンg/100 g------
カフェインg/100 g------
タンニンg/100 g------
ポリフェノールg/100 g------
酢酸g/100 g------
調理油g/100 g------
有機酸g/100 g------
重量変化率%------
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ピーナッツの効果・効能

ピーナッツに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

良質なタンパク質がダイエットをサポート

タンパク質は筋肉や臓器を構成する大事な栄養素です。体内でタンパク質を合成するには20種類のアミノ酸が必要なため、アミノ酸がバランスよく含まれたタンパク質を摂取する必要があります。

ピーナッツは必須アミノ酸を9種類すべて含有している食材です。特にバリン、ロイシン、イソロイシンなどの分枝鎖アミノ酸量が顕著で、ナッツ類で栄養価が高いと言われるアーモンドよりも多く含まれています。

分枝鎖アミノ酸は筋肉増強をサポートする作用があり、ロシアの研究では分枝鎖アミノ酸を摂取したアスリートの筋肉量増加が見られました。ダイエット効果にも期待できそうなアミノ酸です。

オレイン酸のコレステロール低下作用

ピーナッツに含まれる植物性脂肪は不飽和脂肪酸の含有率が高く、特に一価不飽和脂肪酸のオレイン酸が多く含まれています。

オレイン酸はオリーブオイルなどにも含まれ、血中の悪玉コレステロール値を低下させる作用が期待されてる成分です。悪玉コレステロールは動脈硬化などの原因になりえるので、生活習慣病予防に役立つでしょう。

リノール酸は血流を促進

ピーナッツは不飽和脂肪酸のリノール酸が豊富です。リノール酸は必須脂肪酸と呼ばれ、人間の体内で合成できない分、食品から摂取する必要があります。

リノール酸の主な働きは、血管内の血栓を防ぐ作用です。血栓は血流を妨げ、高血圧を招く可能性が高くなるので、リノール酸は日頃から摂取すべき栄養素と言えます。

ビタミンEの高い抗酸化作用

ピーナッツはナッツ類と同様にビタミンEを多く含んでいます。ビタミンEは高い抗酸化作用を持つことが知られている成分です。

抗酸化作用とは体内で作られる活性酸素を抑制する働きで、活性酸素が原因となるがんや動脈硬化、老化の防止に期待できます。

鉄で貧血予防

ピーナッツには、貧血予防効果が期待できるミネラルの鉄が含まれます。鉄は赤血球を作るのに必要なヘモグロビンの成分で、身体のすみずみまで酸素を届けるのに役立ちます。

なお、ピーナッツに含まれる非ヘム鉄は、動物性食品に含まれるヘム鉄と一緒に摂取することで吸収効率が高まります。そのため、鉄の補給を期待する場合は動物性食品と組み合わせて摂取するようにすると良いでしょう。

亜鉛のさまざまな生理活性作用

味覚と関係が深い亜鉛は、味覚以外にもさまざまな作用があります。タンパク質やDNAの合成だけでなく、免疫系にも作用する大事な栄養素です。

食事制限で無理なダイエットをしている人は亜鉛が不足しがちになるため、効率的な摂取を心がけましょう。

食物繊維とカリウムで高血圧予防

ピーナッツは、塩分の摂りすぎを予防できる食材です。ミネラルの一種であるカリウムは、細胞の浸透圧調整をするうえで、ナトリウム(塩分)の排出をおこなってくれます。

さらに食物繊維は腸のぜん動運動を促し、ナトリウムだけでなく糖や脂質の排出も促す栄養素です。ピーナッツは高血圧予防はもちろんですが、糖尿病や肥満対策もサポートしてくれるでしょう。

抗酸化作用のあるレスベラトロールも

ピーナッツの薄皮には、近年高い注目を浴びているレスベラトロールが含まれています。レスベラトロールはポリフェノールの一種でブドウや赤ワインなどにも含まれている栄養素です。

期待されている働きは抗酸化作用で、ピーナッツの薄皮に含まれるレスベラトロールを使った研究では高い抗酸化活性が確認されたと言われています。

ピーナッツの食べ方や注意点

ピーナッツの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

生落花生の茹で方・炒り方

旬の時期に生の落花生を購入できたら、おすすめの食べ方は茹でて食べる方法です。新鮮な落花生は茹でるだけで格別なおいしさを味わえます。

茹でる方法は簡単で、流数で良く洗った落花生をたっぷりの温塩水で40分から50分ほどかけて煮るだけです。水に対して3%ほどの塩を入れた温塩水を用意すると、塩気もちょうど良い塩梅になります。茹で上がったらザルにあげて、ホクホクの食感を楽しみましょう。

茹でて食べる以外に、炒る方法があります。殻付きのまま炒る場合は、フライパンで30分から40分ほどで炒りあがります。殻から外せばもっと短時間での調理も可能です。

ビタミンCと一緒に摂取してミネラルの吸収率アップ

亜鉛や鉄などのミネラルはビタミンCと一緒に摂取すると吸収率がアップするので、野菜と組み合わせて摂取しても良いでしょう。

手軽に取り入れやすいのは、殻付きの乾燥タイプや、炒ったローストピーナッツなどの加工品です。加工品は使い勝手がよく、サラダのトッピングに使うほかお菓子などにも加えることができます。

酢ピーナッツで相乗効果

ピーナッツの薄皮には、抗酸化作用の期待されるレスベラトロールが豊富に含まれています。レスベラトロールを損なわずに摂取するため、ピーナッツの薄皮ごとおいしく食べる方法として酢ピーナッツが注目されています。

作り方は、ピーナッツをお酢と適量のはちみつで漬けるだけ。ピーナッツと酢は栄養素の面から見ても相性がよく、血管拡張作用や整腸作用をもつ酢酸と、カリウムや食物繊維の豊富なピーナッツを組み合わせることで、相乗効果を期待できます。

落花生アレルギーに注意

落花生はアレルギーを引き起こす可能性があるので注意が必要です。加工食品においては小麦粉や蕎麦などと同様にアレルギーの表示義務があります。

特に落花生のアレルギーは重篤な症状になる場合があるため、アレルギーを持っているかわからない子供にあげるときは気を付けてください。アレルギー症状としては蕁麻疹や咳などの症状が現れ、ひどい場合は呼吸困難が生じる可能性があります。

食べ過ぎは腹痛を招く

ピーナッツは食物繊維が豊富なので、食べ過ぎるとまれに腹痛を起こしてしまう人がいるようです。健康に良いからと言って過剰に摂取しすぎず、加減して食べましょう。

ピーナッツの1日の摂取目安量は20~30粒程度です。

ピーナッツの保存方法

ピーナッツの栄養素を損なわない保存方法を解説します。生落花生のほか、乾燥生落花生や炒り落花生それぞれの保存方法を紹介しましょう。

生落花生の保存

生の落花生は殻付きのままでも、冷蔵庫の野菜室で3日ほどしか日持ちしません。なるべく購入したその日に食べきるのがおすすめです。

長期保存したい場合は、茹でてから冷凍庫で保存しましょう。茹でたら殻から外し、水気をよくとってから保存袋に入れます。殻は霜ができやすく、冷凍庫の臭いの元となるため必ず外しましょう。保存期間は約1ヶ月です。使う際は、解凍せずにそのまま加熱調理できます。

乾燥落花生の保存

乾燥タイプの生落花生は冷蔵庫で保存できます。空気に触れるとピーナッツに含まれる脂質が酸化して臭いを発するので、必ず保存袋に入れ密閉させることが重要です。

また、乾燥タイプは湿気が大敵なので、湿度の高い野菜室ではなく冷蔵室に保存しましょう。半年から1年ほどは日持ちします。

炒り落花生の保存

ローストピーナッツやバターピーナッツなどのすでに炒ってあるタイプは、早めに食べる分には常温保存でも構いません。ただ、酸化しないように袋の口をしっかり閉め、直射日光の当たらない場所で保存してください。

冷蔵保存する場合は、乾燥タイプと同じく野菜室ではなく冷蔵室がベストです。2週間を目安に食べきるようにしましょう。

参考文献

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