桃の栄養と効果効能・調理法・保存法
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桃の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、桃に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
桃とは
桃(peach)は、バラ科モモ属の落葉樹で、夏になるとみずみずしく甘い果実を実らせます。桃の果実は生で食べることができますが、シロップ漬けにした缶詰やネクターなどのジュースも人気です。
桃の原産地は中国です。桃を食べた仙人が不老不死になったという中国の伝説から「仙果」と呼ばれ、不老長寿の象徴とされてきました。
日本における桃の歴史も古く、弥生時代の遺跡から桃の種が見つかったり、古事記や日本書紀にも桃が登場しています。
桃の主な生産地は、山梨県・福島県・長野県などです。桃が最も多く出回る旬の時期は7~8月で、早生品種は6月ごろから流通しはじめます。
ネクタリンなどの一部の品種を除き、桃の果皮には細かな毛がうっすらと生えています。
桃の品種・種類
桃には多くの品種がありますが、大きく白桃系・黄桃系の2種類に分けられます。果皮に産毛が生えない品種や変わった形の品種もあります。主な桃の種類と特徴を説明します。
白桃系
白桃は、白い果肉とピンク色の果皮を持つ大型の桃です。白桃の果肉はジューシーで柔らかく、生食に向いています。
1800年代に岡山県で発見された「白桃」が日本の桃の元祖となる品種で、これを品種改良して「川中島白桃」「あかつき」などの品種が産まれました。
黄桃系
黄桃は、果肉および果皮が黄色い桃です。白桃系の桃より果肉がややかたく、主に缶詰などの加工用として生産されています。近年では、白桃のような柔らかな食感が楽しめる「黄金桃」など、生食に適した品種も出回るようになりました。
黄桃系の桃には、白桃にはほとんど含まれないβ-カロテンなどのカロテノイド色素が多く含まれています。β-カロテンは、眼の機能や皮膚・肌を健康に維持する機能がある栄養成分です。缶詰の黄桃からもβ-カロテンを摂取することができます。
ネクタリン
ネクタリンは、一般的な桃とは異なり表面に毛が生えていないため、皮ごと食べられる品種です。表面がツルツルしていることから油桃と呼ばれることもあります。
柔らかで甘い白桃と比較すると、ネクタリンの果肉は引き締まっていて酸味が多いのが特徴です。ネクタリンには、アンチエイジングに効果的なβ-カロテン・血圧を低下させるカリウム・貧血を予防する葉酸などが豊富に含まれています。
蟠桃(ばんとう)
中国原産の蟠桃は、円盤のような平べったい形をした桃です。中国での歴史は古く、西遊記のなかでは孫悟空が食べた不老不死の桃として描かれています。
果肉や皮の色は白桃と似ていて、果肉には濃厚な甘みがあります。
桃に含まれる成分・栄養素
桃100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | もも 生 | ネクタリン 生 | もも 30 %果汁入り飲料(ネクター) | もも 缶詰 白肉種 果肉 | もも 缶詰 黄肉種 果肉 | もも 缶詰 液汁 |
廃 棄 率 | % | 15 | 15 | 0 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 40 | 43 | 48 | 85 | 85 | 81 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 167 | 180 | 201 | 356 | 356 | 339 |
水 分 | g/100 g | 88.7 | 87.8 | 88 | 78.5 | 78.5 | 79.5 |
たんぱく質 | g/100 g | 0.6 | 0.7 | 0.2 | 0.5 | 0.5 | 0.3 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 0.4 | -0.4 | - | - | - | - |
脂 質 | g/100 g | 0.1 | 0.3 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | -0.1 | -0.2 | -0.1 | -0.1 | - | - |
飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.01 | -0.02 | -0.01 | -0.01 | - | - |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.03 | -0.08 | -0.04 | -0.03 | - | - |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.03 | -0.11 | -0.05 | -0.04 | - | - |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 10.2 | 10.7 | 11.6 | 20.6 | 20.6 | 19.8 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | 8.4 | -8 | - | -16.6 | - | -19.3 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.6 | 0.7 | 0.2 | 0.5 | 0.5 | 0.3 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 0.7 | 1 | 0.2 | 0.9 | 0.9 | 0 |
食物繊維総量 | g/100 g | 1.3 | 1.7 | 0.4 | 1.4 | 1.4 | 0.3 |
灰 分 | g/100 g | 0.4 | 0.5 | 0.1 | 0.3 | 0.3 | 0.3 |
ナトリウム | mg/100 g | 1 | 1 | 3 | 4 | 4 | 4 |
カリウム | mg/100 g | 180 | 210 | 35 | 80 | 80 | 80 |
カルシウム | mg/100 g | 4 | 5 | 2 | 3 | 3 | 2 |
マグネシウム | mg/100 g | 7 | 10 | 2 | 4 | 4 | 4 |
リン | mg/100 g | 18 | 16 | 4 | 9 | 9 | 7 |
鉄 | mg/100 g | 0.1 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.1 | 0.1 | Tr | 0.2 | 0.2 | 0.1 |
銅 | mg/100 g | 0.05 | 0.08 | 0.01 | 0.04 | 0.04 | 0.04 |
マンガン | mg/100 g | 0.04 | 0.06 | 0.02 | 0.03 | 0.03 | 0.03 |
ヨウ素 | µg/100 g | 0 | - | - | - | - | - |
セレン | µg/100 g | 0 | - | - | - | - | - |
クロム | µg/100 g | 0 | - | - | - | - | - |
モリブデン | µg/100 g | 1 | - | - | - | - | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 | - | 0 | 0 | - |
β-カロテン | µg/100 g | 0 | 150 | - | Tr | 160 | - |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 9 | 180 | - | 0 | 97 | - |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 5 | 240 | Tr | Tr | 210 | Tr |
レチノール活性当量 | µg/100 g | Tr | 20 | 0 | 0 | 17 | 0 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.7 | 1.4 | 0.4 | 1.2 | 1.2 | 0 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.01 | 0.02 | Tr | 0.01 | 0.01 | 0.01 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.01 | 0.03 | 0.01 | 0.02 | 0.02 | 0.01 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.6 | 0.7 | 0.2 | 0.3 | 0.3 | 0.3 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.02 | 0.01 | Tr | 0.01 | 0.01 | 0.01 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 5 | 12 | 2 | 4 | 4 | 3 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.13 | 0.2 | 0.1 | 0.07 | 0.07 | 0 |
ビオチン | µg/100 g | 0.3 | - | - | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 8 | 10 | 2 | 2 | 2 | 2 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | 0.4 | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | - | - | - | - | - |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
桃の効果・効能
桃に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
便秘解消に効果的な食物繊維
水溶性食物繊維の一種であるペクチンが多く含まれている桃は、便秘解消に役立つ果物です。
ペクチンには腸の調子を整えて、便秘や下痢などお腹の不調を改善する効果があります。整腸作用に加えて、血液中のコレステロールや中性脂肪を減少させる効果も期待されています。
桃の品種のなかで、ペクチンをはじめとする食物繊維を特に多く含んでいるのはネクタリンです。また、缶詰の桃からも生の桃とほぼ同等の食物繊維を摂取することができます。
カリウムで高血圧・むくみを改善
桃に豊富なカリウムは、細胞内液の浸透圧を調節する働きがあるミネラルの一種です。
カリウムには、余分なナトリウムを体外へ排出させる働きがあります。カリウムを多く含む桃は、塩分の摂りすぎが一因で生じる高血圧やむくみの解消に効果的です。
塩分の多い食事のデザートには、桃を積極的に取り入れてみてください。ただし、カリウムには水に溶けやすい性質があり、缶詰にすると半分以上が失われてしまいます。カリウムを多く摂りたいときは、生の桃を食べるようにしましょう。
免疫機能を高めるビタミンC
桃は、風邪やウイルスに負けない体を作るのに欠かせない栄養素であるビタミンCを含んでいます。ビタミンCは、桃をはじめとする果物や野菜に豊富な水溶性ビタミンの一種で、アスコルビン酸とも呼ばれます。
ビタミンCには、体内に侵入した菌やウイルスと戦う白血球の働きを助ける作用があります。風邪をひいて体の抵抗力が落ちているときや、感染症が流行する季節は、ビタミンCを含む桃を積極的に食べるようにしましょう。
また、免疫力を高める効果のほか、生活習慣病予防・がん予防・美肌作用・鉄の吸収促進など、ビタミンCには多くの効能があります。
肌トラブルや美容に効果的な桃の葉
タンニン・マグネシウム・カリウムなどの栄養素が豊富な桃の葉には、消炎作用や新陳代謝向上作用があります。入浴剤やローションなどとして、湿疹・あせも・肌荒れ・日焼けなどの肌トラブルに古くから利用されてきました。
また、桃の葉から抽出したモモ葉エキスには抗炎症作用・保湿作用などの効能があることから、多くの化粧品の成分に用いられています。
桃の食べ方
桃の栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
栄養豊富な皮ごと食べる
桃の皮にはポリフェノールやビタミンなどの栄養素が豊富に含まれています。桃の栄養を余さず摂取するには、皮ごと食べるのがおすすめです。
ただし、白桃や黄桃など「毛桃」と呼ばれる種類の桃の皮には産毛が生えています。産毛が残っていると食感が悪くなるだけでなく、痒みやアレルギー症状を引き起こすこともあるため、食べる前に取り除くようにしましょう。
桃の皮の産毛は、軽く擦りながら水洗いし、ふきんなどの柔らかい布で拭うと大部分を除去できます。ネクタリンなど、もともと毛が生えない品種もあります。
桃の缶詰は糖質やカロリー量に注意
桃の缶詰は保存が利く便利な食材ですが、シロップで漬けているため糖質の含有量が高く、カロリーも生の桃の2倍以上です。ダイエットや糖質制限中に桃を食べる場合、シロップ漬けの缶詰は避けましょう。
また、桃を缶詰に加工することで、カリウム・ビタミンCなど水に溶け出しやすい栄養素も大幅に失われてしまいます。桃の栄養価を最大限に摂取したいなら、果実の生食がおすすめです。
桃の種・未熟果には有害物質が含まれている
桃の種や未熟な果実には人体に有害な成分が含まれており、大量に食べると健康被害を引き起こす可能性があります。
桃をはじめとするビワ・あんず・梅などバラ科の植物の種や未熟な果実には、アミグダリン・プルナシンなどの青酸を含む天然の有害物質「シアン化合物」が含まれています。
シアン化合物は、熟した果実にはわずかな量しか含まれないので、完熟果は食べても問題ありません。未熟な桃の果実や、桃の種および種の粉末などを誤って食べないように気を付けましょう。
桃の保存方法
桃の栄養素を損なわない保存方法を解説します。
新鮮さを保つには常温保存がベスト
桃は冷気と乾燥に弱いため、冷蔵保存より常温保存が適しています。
かたい桃を柔らかく追熟させたい場合は、風通しの良い冷暗所に置いて保存しましょう。桃を常温で保存できる期間の目安は、購入してから3~4日程度です。
桃の皮は柔らかくデリケートなので、キッチンペーパーや新聞紙などで果実一つひとつを包み込んでビニール袋に入れ、乾燥や傷を予防するのがおすすめです。
丸ごと冷凍すると変色しにくい
桃を長期保存したい場合は冷凍してください。桃の果肉は、空気に触れると色が悪くなるため、変色が気になるときは皮を剥かずに丸ごと冷凍するのがおすすめです。
桃を丸ごと冷凍する場合は、水洗いしてから水気をふき取って、ラップで一つひとつ包んで冷凍保存用の密閉できる袋に入れて凍らせます。
一度凍らせた桃は、解凍すると皮が簡単に剥けるようになります。解凍方法は、自然解凍か流水解凍がおすすめです。