モリブデンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
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モリブデンの基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、1日の摂取目安量、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。
モリブデンとは
モリブデン(molybdenum)は、原子番号42、元素記号Moのクロム族元素のひとつです。
鉄と混ぜるとサビにくいステンレス鋼を作ることができるため、包丁や医療用メスの素材として使われるほか、航空機やロケットのエンジンとしても利用されます。
人間の体内には約9mgほど含まれる微量ミネラルで、肝臓や腎臓に存在してキサンチンオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼの補酵素(モリブデン補欠因子)として機能します。
特に尿酸を生成するうえで重要な役割を持っており、そのほか糖質や脂質の代謝にも関わります。
モリブデンの効果・働き
モリブデンの持つ効果・効能・働きについて解説します。
貧血を予防する
モリブデンは、人体が鉄を利用するために必要な酵素の主原料として用いられるため、貧血を予防する効果があります。
ただしモリブデンは、鉄の吸収や利用効率を高める銅の排泄にも関わっており、銅の摂取量に対してモリブデンの摂取量が過剰になるとモリブデン中毒および銅欠乏症を起こす可能性があります。
貧血予防のためには、モリブデン、銅、鉄をバランスよく摂取することが大切です。
食道がんを予防する
メカニズムの詳細は明らかになっていませんが、一部の地域や研究において、モリブデンの欠乏が食道がんのリスクを増大させるという報告があります。
このことから、モリブデンを摂取することががん予防にもつながると考えられます。
モリブデンが不足・欠乏すると起こる症状
モリブデンが不足・欠乏すると起こる症状は次の通りです。
- 貧血
- 疲労
- 尿酸代謝障害
- 不妊
- 神経過敏
- 昏睡
- 頻脈(脈拍が速い状態:脈拍数が100/分以上)
- 頻呼吸(呼吸が速い状態:呼吸数が25/分以上)
- 脳の委縮
- 痙攣
- 精神異常
- 水晶体異常
- 食道がんリスクの増大
モリブデンが不足・欠乏する原因と対策
食品に含まれるモリブデン量はごく微量であるものの、必要量も少ないため通常の食事で十分に摂取することができます。
そのため、モリブデン欠乏症の事例自体ほとんど知られていません。
ところが、先天的にモリブデン補欠因子や亜硫酸オキシダーゼが欠損している場合、体内に亜硫酸が蓄積することにより、脳の萎縮・機能障害・痙攣・水晶体異常などが生じ、多くは新生児期に死に至ります。
また、モリブデンをほとんど含まない輸液による完全静脈栄養を18か月間継続したクローン病患者において、血漿メチオニンと尿中チオ硫酸の増加、血漿と尿中尿酸及び尿中硫酸の減少、神経過敏、昏睡、頻脈、頻呼吸などが発症したという報告もあります。
これらの症状は、モリブデン酸塩を投与したところ改善しました。
なお後天的なモリブデン欠乏(モリブデンの摂取不足によるモリブデン欠乏)に関する報告はこの一例のみであり、後天的なモリブデン欠乏自体がごくごく稀な症状であることが伺えます。
モリブデンを過剰摂取すると起こる症状
モリブデンを過剰摂取すると起こる可能性のある症状は次の通りです。
- 下痢
- 胃腸障害
- 昏睡
- 心不全
- 尿酸代謝異常
- 関節の痛み
- 高尿酸血症
- 痛風
モリブデンはその他の重金属に比べて毒性が低く、また過剰に摂取されたモリブデンは尿から排泄されるためほとんど蓄積しないので、過剰症が問題となることは稀です。
モリブデンの過剰摂取や中毒症状に関する研究のほとんどはラットやマウスによる動物実験で、人の健康に与える害について研究したものはあまりありません。
なお、体内の銅の量が極端に少ない場合、モリブデンの中毒症状が起こるリスクが高まることがわかっています。
モリブデンの1日の摂取目安量
モリブデンの1日の摂取目安量は、成人男性で25~30μg、成人女性で25μg、授乳婦には+3μgの付加量が設定されています。
納豆1パック(50g)に含まれるモリブデンが145μgであるため、推奨量を満たすことは難しくありません。
一方で耐容上限量として、成人男性で600μg、成人女性で500μgが設定されていますが、これは必ず超過してはならない数値というよりも、「この程度の摂取量であれば健康被害の報告はない」という数値です。
モリブデンは、穀類・豆類・種実類に豊富に含まれていることから、特に日本では諸外国と比べて平均摂取量が多くなる傾向にあります。
取り分け国内の菜食主義者においては、平均540μg/日摂取している女性も報告されていますが、健康障害は報告されていません。
モリブデンの食事摂取基準(μg/日)
性 別 | 男 性 | 女 性 | ||||||
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 |
0~5 (月) | ─ | ─ | 2 | ─ | ─ | ─ | 2 | ─ |
6 ~11(月) | ─ | ─ | 5 | ─ | ─ | ─ | 5 | ─ |
1~2 (歳) | 10 | 10 | ─ | ─ | 10 | 10 | ─ | ─ |
3~5 (歳) | 10 | 10 | ─ | ─ | 10 | 10 | ─ | ─ |
6~7 (歳) | 10 | 15 | ─ | ─ | 10 | 15 | ─ | ─ |
8~9 (歳) | 15 | 20 | ─ | ─ | 15 | 15 | ─ | ─ |
10~11(歳) | 15 | 20 | ─ | ─ | 15 | 20 | ─ | ─ |
12~14(歳) | 20 | 25 | ─ | ─ | 20 | 25 | ─ | ─ |
15~17(歳) | 25 | 30 | ─ | ─ | 20 | 25 | ─ | ─ |
18~29(歳) | 20 | 30 | ─ | 600 | 20 | 25 | ─ | 500 |
30~49(歳) | 25 | 30 | ─ | 600 | 20 | 25 | ─ | 500 |
50~64(歳) | 25 | 30 | ─ | 600 | 20 | 25 | ─ | 500 |
65~74(歳) | 20 | 30 | ─ | 600 | 20 | 25 | ─ | 500 |
75 以上(歳) | 20 | 25 | ─ | 600 | 20 | 25 | ─ | 500 |
妊婦(付加量) | +0 | +0 | ─ | ─ | ||||
授乳婦(付加量) | +3 | +3 | ─ | ─ |
目安量 (AI,adequate intake):ある性・年齢階級に属する人々が、ある一定の栄養状態を維持するのに十分な量。(特定の集団において不足状態を示す人がほとんど観察されない量)
耐容上限量 (UL,tolerable upper intake level):ある性・年齢階級に属するほとんど全ての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことがないとみなされる習慣的な摂取量の上限。
出典:日本人の食事摂取基準(2020 年版)
モリブデンを多く含む食品
モリブデンを多く含む食品を、全食品・穀類・豆類・種実類・野菜類・肉類・飲料・菓子類の順で、それぞれランキング形式で紹介します。
モリブデンを多く含む食品ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | 豆類/だいず/[全粒・全粒製品]/いり大豆/青大豆 | 800 |
2 | 豆類/だいず/[全粒・全粒製品]/全粒/ブラジル産/黄大豆/乾 | 660 |
3 | だいず [全粒・全粒製品] 全粒 国産 黒大豆 乾 | 570 |
4 | やぶまめ、乾 | 460 |
5 | だいず [全粒・全粒製品] 全粒 国産 青大豆 乾 | 450 |
5 | 豆類/だいず/[全粒・全粒製品]/きな粉/全粒大豆/青大豆 | 450 |
7 | 豆類/りょくとう/全粒、乾 | 410 |
8 | 豆類/らいまめ/全粒、乾 | 380 |
8 | 豆類/だいず/[全粒・全粒製品]/きな粉/全粒大豆/黄大豆 | 380 |
8 | 豆類/だいず [全粒・全粒製品] きな粉、脱皮大豆、青大豆 | 380 |
8 | 豆類/ささげ/全粒、乾 | 380 |
モリブデンを多く含む穀類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | 玄米粉 | 120 |
2 | オートミール | 110 |
3 | 五穀 | 81 |
4 | もち米 | 79 |
5 | そば粉/表層粉 | 77 |
5 | 上新粉 | 77 |
7 | 半つき米 | 76 |
8 | 七分つき米 | 73 |
9 | 黒米 | 72 |
10 | アルファ化米/一般用 | 69 |
10 | アルファ化米/学校給食用強化品 | 69 |
10 | うるち米 | 69 |
モリブデンを多く含む豆類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | いり大豆/青大豆 | 800 |
2 | 全粒/ブラジル産/黄大豆/乾 | 660 |
3 | 全粒 国産 黒大豆 乾 | 570 |
4 | やぶまめ、乾 | 460 |
5 | きな粉/全粒大豆/青大豆 | 450 |
5 | 全粒 国産 青大豆 乾 | 450 |
7 | りょくとう/全粒、乾 | 410 |
8 | らいまめ/全粒、乾 | 380 |
8 | きな粉/全粒大豆/黄大豆 | 380 |
8 | きな粉、脱皮大豆、青大豆 | 380 |
8 | ささげ/全粒、乾 | 380 |
モリブデンを多く含む種実類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | ごま/ねり | 150 |
2 | ごま/むき | 120 |
2 | けし/乾 | 120 |
4 | ごま/いり | 110 |
5 | らっかせい/いり、大粒種 | 96 |
6 | らっかせい/ピーナッツバター | 92 |
6 | ごま/乾 | 92 |
8 | すいか/いり、味付け | 90 |
9 | らっかせい/乾、大粒種 | 88 |
9 | らっかせい/乾、小粒種 | 88 |
モリブデンを多く含む野菜類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | えだまめ/生 | 240 |
2 | えだまめ/冷凍 | 190 |
3 | そらまめ/未熟豆、生 | 150 |
4 | グリンピース/冷凍 | 77 |
5 | グリンピース、冷凍、油いため | 74 |
6 | グリンピース/生 | 65 |
7 | グリンピース、冷凍、ゆで | 60 |
8 | らっかせい/未熟豆、生 | 58 |
9 | りょくとうもやし/生 | 55 |
10 | パセリ/葉、生 | 39 |
モリブデンを多く含む肉類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | ぶた/[その他]/スモークレバー | 190 |
2 | ぶた/[副生物]/肝臓/生 | 120 |
3 | うし/[副生物]/肝臓/生 | 94 |
4 | にわとり/[副生物]/肝臓/生 | 82 |
5 | ぶた/[副生物]/じん臓/生 | 72 |
6 | ぶた/[ソーセージ類]/レバーソーセージ | 60 |
7 | ぶた/[その他]/レバーペースト | 48 |
8 | うし/[副生物]/じん臓/生 | 43 |
9 | にわとり/[その他]/つくね | 12 |
10 | にわとり/[その他]/チキンナゲット | 7 |
モリブデンを多く含む飲料ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | 青汁/ケール | 130 |
2 | インスタントコーヒー | 7 |
3 | 紅茶/茶 | 2 |
4 | せん茶/茶 | 1 |
4 | 清酒/普通酒 | 1 |
4 | ぶどう酒/赤 | 1 |
4 | 昆布茶 | 1 |
モリブデンを多く含む菓子類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | 米菓/あられ | 130 |
1 | みしま豆 | 130 |
3 | ひなあられ/関西風 | 120 |
4 | 米菓/甘辛せんべい | 79 |
5 | 米菓/しょうゆせんべい | 69 |
6 | らくがん/もろこしらくがん | 44 |
7 | 八つ橋 | 38 |
8 | 甘納豆/あずき | 36 |
9 | くし団子/みたらし | 35 |
10 | ずんだもち | 31 |
モリブデンを効率よく摂取する方法
モリブデンを多く含む食品を日常的に摂取している人であれば、マルチミネラルサプリメントなどによって補う必要は特にありません。
むしろ、モリブデンのみ過剰になってしまわないよう、銅や鉄との摂取量のバランスを意識した方がよいでしょう。
「モリブデンの効果・働き」でも示した通り、モリブデンは鉄の吸収や利用効率を高める銅の排泄にも関わっており、銅の摂取量に対してモリブデンの摂取量が過剰になると、モリブデン中毒および銅欠乏症を起こす可能性があります。