松茸の栄養と効果効能・調理法・保存法

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Matsutake mushroom

松茸の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、松茸に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

松茸とは

松茸(Matsutake mushroom)は、キシメジ科キシメジ属のきのこの一種です。食用きのこでは最高級品とされ、独特の香りを活かし、炭火焼きや土瓶蒸し、お吸い物、炊き込みご飯の具材などさまざまな料理に利用されています。

松茸の全長は10~20cmで、カサの部分は直径10~15cmくらいが一般的なサイズです。カサが開くと胞子が拡散されて香りが抜けやすくなるため、カサが開く前の松茸のほうが高価です。

松茸は、主にアカマツの木に発生する天然のきのこで、しいたけやえのきたけのように人工的に栽培することの難しい品種です。

人工栽培が難しいために流通量が安定しないことが、松茸が高価な理由のひとつです。さらに松茸が生育するアカマツ林の減少や環境悪化も、松茸の値上がりを後押ししています。

松茸の品種・種類

国産松茸と輸入松茸の違いや、それぞれの特徴は次の通りです。

国産松茸

国内産の松茸は、長野県を筆頭に、東北地方の岩手・山形、近畿地方の和歌山・京都・兵庫などで多く収穫されます。国産松茸の旬は、9~10月です。

バランスのとれた風味と歯応えが魅力の国産松茸ですが、収穫量が少なく高級品として扱われています。

国産松茸は、輸入松茸と比較して香りが強いのが特徴です。日本産と韓国産の松茸の香り成分を比較した近年の研究では、日本産の松茸に、より多くの香気成分が含まれていることがわかりました。

輸入松茸

その年により異なりますが、現在では市場に流通する松茸の90%以上が輸入品です。中国産・韓国産のほか、アメリカやカナダで採れる「アメリカマツタケ」、スウェーデンやフィンランド産の「北欧産松茸」、トルコやモロッコ産の「オウシュウマツタケ」がよく知られています。

海外産の松茸は、輸送に時間がかかることなどから、国産品と比べて香りが弱く食感は柔らかめです。価格は、国産品よりも安価に設定されています。産地により旬の時期が異なるため、7~11月ごろまで長く楽しめるのが特徴です。

柳松茸

柳松茸(やなぎまつたけ)は、「まつたけ」という名が付くものの、松茸とは別種のオキナタケ科フミヅキタケ属のきのこです。

シャキシャキした食感とクセのない風味が特徴で、松茸の味や香りとは似ていません。長野県で主に栽培されています。

松茸に含まれる成分・栄養素

松茸100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

食 品 名単位まつたけ 生やなぎまつたけ 生
廃 棄 率%310
エネルギーkJ13284
kcal3220
水 分g88.392.8
たんぱく質アミノ酸組成によるたんぱく質g1.2-
たんぱく質g22.4
脂質脂肪酸のトリアシルグリセロール当量g0.2Tr
コレステロールmg00
脂質g0.60.1
炭水化物利用可能炭水化物(単糖当量)g1.60.7
g
利用可能炭水化物(質量計)g1.50.7
差引き法による利用可能炭水化物g3.41.1
**
食物繊維総量g4.73
糖アルコールg1.40
炭水化物g8.24
有機酸g--
灰分g0.90.7
無機質ナトリウムmg21
カリウムmg410360
カルシウムmg6Tr
マグネシウムmg813
リンmg40110
mg1.30.5
亜鉛mg0.80.6
mg0.240.2
マンガンmg0.120.08
ヨウ素μg31
セレンμg822
クロムμg140
モリブデンμg12
ビ タ ミ ンレチノール(ビタミンA)μg00
α|カロテンμg00
β|カロテンμg00
β|クリプトキサンチンμg00
β|カロテン当量μg00
レチノール活性当量μg00
ビタミンDμg0.60.4
α-トコフェロールmg00
β-トコフェロールmg00
γ-トコフェロールmg00
δ-トコフェロールmg00
ビタミンKμg00
ビタミンB1mg0.10.27
ビタミンB2mg0.10.34
ナイアシンmg86.1
ナイアシン当量mg8.36.5
ビタミンB6mg0.150.11
ビタミンB12μg00
葉 酸μg6333
パントテン酸mg1.912.61
ビ オ チ ンμg1811
ビタミンCmg00
アルコールg--
食塩相当量g00
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

松茸の効果・効能

松茸に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

香り成分による食欲増進効果

松茸特有の香りは、香気成分のマツタケオール(1-オクテン-3-オール)や桂皮酸メチル(メチルシンナメート)によるものです。日本人に好まれる香りで、食欲を増進させる効果が期待されています。人工的にも生成でき、香料としても利用されてきました。

これらの香り成分は、松茸のカサのヒダ部分に多く存在しています。桂皮酸メチルは、韓国産松茸に比べて日本産松茸のほうが1.8倍ほど多く含まれていることが研究で実証されています。

このことからも、香りを堪能したいなら国産松茸がおすすめと言えるでしょう。

便秘解消に有効な食物繊維

食物繊維は、野菜やきのこなどの植物性食品に豊富な栄養素です。人体にとって有益な作用を多く持つことから「第6の栄養素」とも呼ばれています。

松茸には、β-グルカンなどの食物繊維が多く含まれています。食物繊維は、腸の善玉菌の働きを助けて腸内環境を整えたり、腸のぜん動運動を活発にして便秘を解消したりします。

また食物繊維には、生活習慣病の原因となる脂質・糖・塩分を吸着して体外に出しやすくする働きも。糖尿病や肥満、脂質異常症の予防に効果的です。

食物繊維の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法| NANIWA SUPLI MEDIA

塩分量を調節する作用のあるカリウム

松茸には、健康を維持するうえで不可欠なミネラル類も豊富です。なかでも、必須ミネラルの一種であるカリウムには、ナトリウムを排出しやすくする機能があり、塩分の摂りすぎにより引き起こされる高血圧やむくみの改善に役立ちます。

カリウムは、神経刺激の伝達や筋肉の収縮にも関わっています。不足すると、脱力感・食欲不振・筋力低下・不整脈といった症状がみられることがあります。

カリウムの効果効能・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法| NANIWA SUPLI MEDIA

鉄・葉酸で貧血を予防する

松茸には、貧血予防に役立つ鉄や葉酸が多く含まれています。鉄不足により起こり得る、鉄欠乏性貧血・集中力の低下・頭痛・食欲不振などの予防に効果的な食材と言えるでしょう。

一方、葉酸は赤血球を造ることから「血のビタミン」とも呼ばれる栄養素です。胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減させる効果が認められていて、妊娠を考えている女性や妊娠中にとって特に重要です。

松茸は、貧血気味の人や、通常時より多くの鉄・葉酸の摂取が推奨される妊婦・授乳婦にうれしい食材と言えます。

鉄の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法| NANIWA SUPLI MEDIA

葉酸の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法| NANIWA SUPLI MEDIA

骨を丈夫にするビタミンD

ビタミンDは、松茸をはじめとするきのこ類に豊富な脂溶性ビタミンの一種です。ビタミンDには、腸管からのカルシウムの吸収を促す作用があり、骨と歯の健康維持に貢献します。

松茸自体にもカルシウムが含まれていますが、乳製品や葉物野菜などのカルシウムが豊富な食材と食べ合わせることで、より高い効果が期待できるでしょう。

ビタミンDの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ| NANIWA SUPLI MEDIA

松茸の食べ方

松茸の栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

松茸を洗う場合は「ため水」を使う

風味が落ちたり、栄養素が損なわれたりするため、きのこ類は通常水洗いしません。松茸も同様に、水洗いはせず、湿らせたふきんなどで表面の汚れを拭き取るだけにしましょう。

しかし天然ものの松茸には、人工栽培されたきのこよりも泥やゴミが多く付着している可能性が高いため、汚れが気になる場合は軽く水洗いする必要があります。松茸を洗うときは、流水ではなく、ボウルにためた水で優しく洗うようにしましょう。

風味や栄養素の流出が気になるときは、真水ではなく食塩を溶かした塩水で洗うのもおすすめです。

カサの開き具合で味わいや適した料理が変わる

松茸は、カサの開き具合によって「コロ」「つぼみ」「中つぼみ」「開き」と異なる呼び方で区別されます。カサの開き具合で風味や食感も異なり、適した料理や食べ方が異なります。

コロ:コロは、カサがまだ開いていない長さ6cm以下の未成熟な松茸です。柔らかい食感が楽しめるものの、香りはやや弱め。比較的安価なため、家庭用に向いています。柔らかさを活かし、煮物として楽しむのがおすすめです。

つぼみ:つぼみは、香りとうまみのバランスが優れた、最も高価な松茸です。カサに膨らみが出てきて、裏側の膜切れがない状態を指します。贈答用や懐石料理にも使用され、炭火焼きや土瓶蒸しなどに適しています。

中つぼみ(中開き):つぼみよりカサの開きが進み、膜切れが30%以内の状態を中つぼみと呼びます。つぼみの次に評価が高く、香りが立ち見た目も美しい状態です。炭火焼きや天ぷらとして楽しまれます。

開き:開きは、カサが80%以上開いた状態です。香りが最も強く、松茸ご飯やお吸い物、パスタの具材などに適しています。香りが強い一方で、香りが飛ぶのも早いため、入手したら早めに調理しましょう。他の状態と比べるとお手頃な価格で販売されています。

ビタミンC豊富なすだち・レモンと合わせて鉄の吸収率アップ

松茸には鉄が豊富です。ただし、松茸などのきのこ類に含まれるのは非ヘム鉄で、肉や魚から摂取できるヘム鉄に比べ、体に吸収されにくいのが難点です。

そこで役立つのが、非ヘム鉄の吸収を高める作用のあるビタミンCです。松茸料理に、ビタミンCの豊富なすだち・レモンなどの柑橘類を絞ることで、効率よく鉄を摂取できます。

そのほかのビタミンCが豊富な食材は、以下の記事で紹介しています。

ビタミンCの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA

カルシウムを含む食材と食べる

松茸に豊富なビタミンDには、腸管からのカルシウム吸収を促進する作用があります。

カルシウムは、乳製品や小魚、葉物野菜に豊富です。松茸にもカルシウムは含まれていますが、他の食材とうまく食べ合わせることで、より効果的に栄養を摂取できるでしょう。

カルシウムの効果効能や多く含まれる食材が気になる方は、次の記事も参考にしてみてください。

カルシウムの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法| NANIWA SUPLI MEDIA

松茸は必ず加熱して食べる

生の松茸を食べると、食中毒やアレルギー症状が出ることがあります。きのこ類全般に言えることですが、松茸は内部までしっかりと火を通してから食べるようにしましょう。

松茸の保存方法

松茸の栄養素を損なわない保存方法を解説します。

乾燥に注意して冷蔵保存する

松茸は、冷蔵庫の野菜室で保存してください。乾燥が進むと風味や香りが失われ、栄養価も損なわれる可能性があります。湿らせたキッチンペーパーや新聞紙で一つひとつ包んでからビニール袋に入れることで乾燥を防ぎましょう。

松茸を冷蔵保存できる目安期間は2~3日です。

食べきれない松茸は冷凍保存も可能

一度に食べきれない松茸は、冷凍することもできます。冷凍した松茸は、1ヶ月程度の長期保存が可能になりますが、食感や風味が損なわれるため、焼き物ではなく炊き込みご飯やお吸い物の具材として利用するのがおすすめです。

松茸を冷凍する場合、表面の汚れを取ってから石づきを落とし、ラップで一つずつ包んで凍らせます。スライスしてから冷凍してもOKです。冷凍松茸は、凍った状態のまま料理に使うことができます。

参考文献

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