ビワの栄養と効果効能・調理法・保存法
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ビワの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、ビワに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
ビワとは
ビワ(枇杷/Loquat)は、バラ科ビワ属の果物です。ビワの葉には、咳を鎮静したり、胃を丈夫にしたり、体内の余分な水分を排出したりとさまざまな効果があり、古い仏教経典では「大薬王樹(だいやくおうじゅ)=薬木の王」として紹介されています。ビワの実にも、葉と同様に咳を鎮める効果があります。
ビワの原産国は中国の揚子江上流部とされており、日本には江戸時代に伝来しました。現在、国内に出回っているビワの約3分の1は長崎県で作られ、次いで千葉県、香川県、和歌山県と続きます。
ビワの旬は5〜6月の初夏ですが、ハウス栽培も盛んなので、1月ごろには早生種が出回り始めます。
ビワの品種・種類
ビワの代表的な品種を紹介します。
茂木(もぎ)
茂木は、西日本を代表するビワの品種です。中国から持ち込まれた種子が、長崎県茂木町で育てられて広まったビワで、現在でも長崎県で最も多く作られています。
実の重さは1個50gほどと小ぶりで、甘みが強いのが特徴。旬は5〜6月です。
長崎早生
長崎早生は、早いものだと1月頃には出荷される品種です。1個あたりの重さは40
〜60gで、果肉は柔らかく、みずみずしい味わいが楽しめます。ほとんどの長崎早生はハウス栽培されています。
田中
田中は、明治時代に植物学者の田中芳男氏が育成したのが始まりと言われる品種です。果実の重さは60〜80gと比較的大ぶり。収穫直前まで酸味が強く、未熟なものはすっぱいと感じることも多いですが、完熟すると甘みと酸味のバランスが取れた味わいになります。
大房(おおぶさ)
大房は千葉県で多く生産されているビワで、「房総ビワ」としても流通しています。1個あたりの重さは約100gと大きく、酸味が低いため食べやすいビワです。
瑞穂(みずほ)
瑞穂は果実が大きい品種で、大きいものだと1個あたり150gにもなります。果肉は柔らかく、強い甘みに適度な酸味が感じられます。
楠(くすのき)
楠は高知県で誕生した品種です。1個あたりの重さは約50gと小さめで、種が大きく可食部が少ないのが特徴です。寒さに弱いため、現在ではあまり作られれいません。
涼風(すずかぜ)
涼風は茂木と楠を交配して誕生したビワです。糖度が高くて甘く、少ない酸味、しっかりとした果肉、たっぷりの果汁が特徴。主に長崎県で生産されています。
ビワに含まれる成分・栄養素
ビワ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | ビワ 生 | ビワ 缶詰 |
廃 棄 率 | % | 30 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 40 | 81 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 167 | 339 |
水 分 | g/100 g | 88.6 | 79.6 |
たんぱく質 | g/100 g | 0.3 | 0.3 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | -0.2 | - |
脂 質 | g/100 g | 0.1 | 0.1 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | -0.1 | -0.1 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.02 | -0.02 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | (Tr) | (Tr) |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.05 | -0.05 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 10.6 | 19.8 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | - | - |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.4 | 0.3 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 1.2 | 0.3 |
食物繊維総量 | g/100 g | 1.6 | 0.6 |
灰 分 | g/100 g | 0.4 | 0.2 |
ナトリウム | mg/100 g | 1 | 2 |
カリウム | mg/100 g | 160 | 60 |
カルシウム | mg/100 g | 13 | 22 |
マグネシウム | mg/100 g | 14 | 5 |
リン | mg/100 g | 9 | 3 |
鉄 | mg/100 g | 0.1 | 0.1 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.2 | 0.1 |
銅 | mg/100 g | 0.04 | 0.17 |
マンガン | mg/100 g | 0.27 | 0.1 |
ヨウ素 | µg/100 g | 0 | - |
セレン | µg/100 g | 0 | - |
クロム | µg/100 g | 0 | - |
モリブデン | µg/100 g | 0 | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 510 | 320 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 600 | 310 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 810 | 470 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 68 | 39 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.1 | 0.2 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0.1 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.02 | 0.01 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.03 | 0.01 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.2 | 0.2 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.06 | 0.02 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 9 | 9 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.22 | 0 |
ビオチン | µg/100 g | 0.1 | - |
ビタミンC | mg/100 g | 5 | Tr |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - |
重量変化率 | % | - | - |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
ビワの効果・効能
ビワに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
β-カロテン
ビワの果皮や果肉には、β-カロテンが豊富に含まれています。β-カロテンは、緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイド(天然色素)で、体内に取り込まれると一部は脂肪組織に蓄えられ、残りはビタミンAに変換されビタミンAとして機能します。
β-カロテンを摂取すると、抗酸化作用によって活性酸素を除去し、老化の促進や動脈硬化・がんなど生活習慣病の予防に効果が期待できます。また、ビタミンAの働きとして、視機能の改善・目や皮膚の粘膜を健康に保つ・免疫機能を正常にコントロールする、といった効果もあります。
カリウム
カリウムは人体に必須のミネラルの一種です。体内にナトリウムが過剰になると高血圧になってしまいます。カリウムはナトリウムを排出して細胞内液の浸透圧を調整し、血圧を下げる効果があります。
また、心筋の活動を正常に保って血の流れを改善し、水分がたまることによるむくみを解消するのにも役立ちます。
食物繊維
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類がありますが、ビワは不溶性食物繊維を多く含んでいます。不溶性食物繊維は便のかさを増やして腸を刺激し、ぜん動運動を促します。その結果、便秘の予防や解消につながります。
ポリフェノール(クロロゲン酸)
ビワには、クロロゲン酸というポリフェノールの一種が含まれています。主にコーヒー豆に多く含まれているため、「コーヒーポリフェノール」と呼ばれることもあります。
クロロゲン酸は、抗酸化作用によって生還習慣病を予防するほか、中性脂肪の蓄積による脂肪肝を予防したり、体内の糖(グルコース)を合成を抑えて糖尿病を予防したりするため、ダイエット効果が期待できます。
ビワの食べ方
ビワの栄養素を損なわない食べ方・洗い方・食べる際の注意点を解説します。
ビワの食べ方
ビワは皮を剥いて食べることが一般的ですが、皮にはカリウムやβ-カロテンなど、実よりも多くの栄養素が含まれています。そのため、これらの栄養素をより摂取するには、皮ごと食べるのが良いでしょう。
ビワの洗い方
皮ごと食べる場合、皮についている農薬を落とすために、未使用の柔らかいスポンジでビワの表面を優しくこすりながら水洗いし、水気をキッチンペーパーなどで拭き取ってください。
ビワを食べる際の注意点
ビワの果肉や種子には、青酸を含む天然の有害物質(シアン化合物)が多く含まれています。熟している状態では、果肉に含まれるシアン化合物はごくわずかです。種子のシアン化合物は熟してもあまり減らないものの、種子ごと食べることがなければ基本的に健康への心配はありません。
しかし、一部インターネットや書籍などの情報では「ビワの種子が健康に良い」として、ビワの種子を乾燥・粉末状にして摂取することを推奨しているものがあります。その場合、シアン化合物を一度に大量に摂取することになり、健康被害の危険性が高まってしまいます。
農林水産省でも、ビワの種子を食べたことによる健康被害報告はまだないものの、ビワの種子を食べる場合は注意が必要であるとして注意喚起しています。
ビワの保存方法
ビワの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
常温保存
ビワは温暖な気候で育つ果物なので、冷蔵庫で保存すると低温障害を起こしてしまいます。ビワを保存する際は、冷蔵保存ではなく常温保存します。冷たいビワを好む人は、食べる1〜2時間前に冷蔵庫に入れて冷やしておくと良いでしょう。
常温保存する際も直射日光が当たったり、湿度が高い場所は傷みやすくなってしまうため、冷暗所で保存します。このとき、乾燥しないように新聞紙で包んだり、紙袋に入れましょう。常温での保存期間は2〜3日です。
冷凍保存
長期で保存したい場合は冷凍保存しましょう。ビワは日持ちがせず傷みやすい果実なので、カットせずにまるごと冷凍保存します。
まず、ビワを水洗いしたらキッチンペーパーなどで水気を優しく拭き取ります、冷凍用保存袋に重ならないように入れ、空気を抜いて口を閉じたら冷凍庫で保存します。冷凍での保存期間は約1ヶ月です。
解凍方法
冷凍のビワを解凍する際は、基本的に常温で自然解凍し、夏場など気温が高い場合は冷蔵庫で解凍します。完全に解凍すると水分がたくさん出てしまうので、半解凍の状態が良いでしょう。
半解凍の状態まで溶けたら、ビワのおしりの方から頭に向かって皮を剥きます。皮を剥いたあとは断面が茶色に変色しやすいので、なるべく早く食べるようにしましょう。