グルタミンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
9637views
グルタミンの基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。
グルタミンとは
グルタミン(glutamine)はタンパク質を構成するアミノ酸の一種です。体内に存在する遊離アミノ酸の約60%を占めており、ほとんどは筋肉や血液内に存在しています。免疫力向上や筋肉の分解を阻止する働きがあり、健康的な体を維持するには欠かせない栄養素です。
グルタミンは体内で合成できるので非必須アミノ酸に分類されますが、ストレスが溜まっているときや運動後は大量に消費されてしまうことから、準必須アミノ酸とも言われます。熱に弱い性質があるため、食品から摂取する際には工夫が必要です。
グルタミンとグルタミン酸の違い
グルタミンと類似する栄養素であるグルタミン酸との違いを解説します。
グルタミン酸はグルタミンと同じく非必須アミノ酸の一種です。体内で神経伝達物質として働き、脳の活性化を促すことで認知症予防作用があります。また、リラックス作用のあるGABAの生成促進や、血圧の低下作用なども報告されています。
グルタミン酸が多く含まれる食品は、昆布や大豆などです。うまみ成分のもととなり、化学調味料にもナトリウム結合させたグルタミン酸ナトリウムが配合されています。
グルタミン酸の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
グルタミンの効果・働き
グルタミンの効果・効能について解説します。
タンパク質の合成に役立つ
体内でタンパク質を合成するには20種類のアミノ酸が必要です。そのひとつを構成するのがグルタミンです。
タンパク質は人間の筋肉や臓器、皮膚、髪の毛をつくる要素。十分なグルタミンを摂ることで体を健康に保つだけでなく、正常な肌や髪を維持するのにも役立つでしょう。
タンパク質の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
筋肉の分解を阻止
グルタミンは筋タンパク質の合成に関わる栄養素です。しかし風邪をひいたときや運動したときには体内で大量に消費され、不足分のグルタミンを補うために筋肉を分解してしまいます。
そのため、より体力を消耗しやすいトレーニング中は十分なグルタミンの補給が重要です。
筋トレの効果を高める栄養素・食べ物・食生活|NANIWA SUPLI MEDIA
胃腸の働きを正常に
グルタミンは消化管のエネルギー源として利用されます。そのため十分な量を摂取することで、健康な胃腸の維持に役立つでしょう。
特に重要なのは、腸管に存在する絨毛(じゅうもう)という突起を回復させる働きです。柔毛が正常に機能することで、栄養素の吸収効率もアップします。しかしグルタミンが不足すると絨毛が薄くなり、潰瘍ができたり、細菌の侵入を許してしまったり健康を害する危険性が高まります。
胃腸の調子が悪いときにおすすめの胃に優しい食べ物・飲み物|NANIWA SUPLI MEDIA
免疫力アップをサポート
グルタミンはリンパ球やマクロファージなど免疫細胞のエネルギー源となる栄養素です。また、腸管の柔毛を正常に維持することで、最近やウイルスの侵入を防ぐ働きもあります。これらの作用により免疫力向上を後押しし、風邪予防にもつながるでしょう。
グルタミンと免疫機能の関係性を調べた研究では、運動後のアスリートにグルタミンが含まれた飲料水を与えたところ、感染症の発生率が下がったと言います。
免疫力を高める食べ物・飲み物と心がけたい生活習慣|NANIWA SUPLI MEDIA
がん治療の副作用軽減
グルタミンは医療現場で、がん治療時の副作用対策としてしばしば用いられる栄養成分のひとつでもあります。放射線治療や抗がん剤治療は、食道炎や粘膜炎などの副作用が生じる場合があります。また、腸内細菌が減ることで、腸内環境も乱れやすくなってしまいます。
グルタミンは小腸のエネルギー源となることで、免疫力や腸のバリア機能向上をサポートします。さらにグルタミンの継続摂取により、放射線治療や化学療法治療での逆流性食道炎や口内炎を抑制する作用が確認された実例も報告されています。
成長ホルモンの分泌を促進
グルタミンは成長ホルモンとの関わりが深い栄養素です。グルタミンの摂取で、90分後の成長ホルモン濃度が上昇したという実験報告もあります。
成長ホルモンとは筋タンパク質の合成や、体脂肪の燃焼に役立つ物質です。体に重要な働きをしますが、加齢とともに減ってしまうと言われています。
肝機能を助ける
グルタミンには肝臓の働きを助けて、二日酔いを予防する効果があります。二日酔いの原因は肝臓で作られるアセトアルデヒド。グルタミンは体内で糖を作り出す際に、アセトアルデヒドの分解を邪魔する補酵素を消費し、肝機能の働きを向上させます。
さらにアミノ酸の一種であるアラニンと一緒に摂取するとより効果的です。実験ではアルコールを摂取した後にグルタミンとアラニンを摂取してもらったところ、優位に体内のアルコール量が低下しました。
二日酔いの予防・解消に効く食べ物&飲み物10選|NANIWA SUPLI MEDIA
肝臓にいい食べ物・飲み物・食事方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
心血管の健康促進
グルタミンは、心疾患を持つ患者に対しても有効な作用を持つと考えられています。近年の研究により、グルタミンには抗酸化作用と抗炎症作用があり、心血管の健康を維持する作用があることがわかりました。さらに高血圧症や高脂血症など、心疾患を悪化させる疾患を抑制する作用が期待されます。
また、グルタミンの補給が心血管疾患による心臓の損傷を軽減したという研究も報告されています。
心臓病(心筋梗塞・狭心症など)の予防・改善におすすめの食べ物|NANIWA SUPLI MEDIA
グルタミンが不足・欠乏すると起こる症状
グルタミンはタンパク質合成や免疫機能の維持、腸の健康に関わる栄養素です。そのため不足すると筋力や免疫力の低下、腸内環境の悪化による消化不良などが起きる可能性があります。
特に筋肉が減れば、肥満を招く危険性も高まります。さらに体力の低下により、罹患リスクも上昇するので、健康のためにもグルタミンの摂取は欠かせません。
グルタミンを過剰摂取すると起こる副作用
グルタミンは肝臓に機能する栄養素なので、過剰摂取すると肝臓に負担がかかるリスクが高まります。肝臓に疾患を持っている人は、かかりつけ医に相談してからグルタミンの摂取量を決めるようにしましょう。
また、グルタミンが多く含まれるのは肉や魚、卵などです。普段の食事からグルタミンを多く摂取しようとすると量が必要になるので、脂質やカロリーを摂り過ぎてしまう可能性があります。さらに味付けに使う調味料が増えれば、塩分や糖分の摂り過ぎにつながるので気をつけましょう。
グルタミンの1日の摂取目安量
グルタミンの摂取量は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では定められていません。
近年、グルタミンを効率よく摂取できるサプリメントが販売されていますが、1日40g程度を上限としている製品が多いようです。成人を対象とした臨床実験によれば、グルタミンの経口摂取は1日20g~30gの摂取で副作用がないことがわかっています。
ただしサプリメントでの摂取は手軽な一方で、過剰摂取のリスクがあります。必ず製品ごとの摂取量を守るようにしましょう。
グルタミンを多く含む食品
グルタミンを多く含む食品は次の通りです。
- 大豆
- 小麦粉
- 肉
- 魚
- 卵
- チーズ
グルタミンを効率よく摂取する方法
グルタミンと効率的に摂取する方法や、適切な摂取タイミングなどを解説します。
サプリメントを活用
グルタミンは熱に弱い栄養素です。そのため食品から摂取する際は、生のまま食べるのがおすすめです。しかしグルタミンが多く含まれる肉や魚などは生食できない場合が多いので、より効率よく摂取するならサプリメントが利用しやすいでしょう。サプリメントなら持ち運べるので、必要なときにすぐに摂取できます。
ただし過剰摂取には十分気をつけてください。1日40g以内の摂取量を守り、製品ごとの飲み方に従いましょう。飲むタイミングについては次に説明します。
おすすめの摂取タイミング
グルタミンを摂取するタイミングは、運動前後か就寝前が良いでしょう。運動によりグルタミンが大量に消費されるので、前後で補っておくと安心です。一方、寝る前の摂取は成長ホルモンの分泌を促せます。成長ホルモンは筋肉の合成や体脂肪の燃焼に関わる物質なので、効率的な体作りやダイエットにもつながるでしょう。
もしくは朝食時もおすすめです。グルタミンは胃腸のエネルギー源となるので、早い時間からの代謝アップを手助けしてくれます。食後より空腹時の摂取のほうが効率的に作用しやすいので、朝一番に摂取するのが適切です。
クレアチンやクエン酸とともに
グルタミンと相性の良い栄養素も紹介します。
まずはクレアチンです。クレアチンは負荷の強い運動時のエネルギー源となるため、トレーニングのパフォーマンスを向上させる効果が期待できます。筋トレの効果をより高めたい人はクレアチンも一緒に摂取すると良いでしょう。近年はグルタミンとクレアチンが一緒に配合されたサプリメントも多くあります。
疲労回復が目的ならクエン酸と合わせて摂取しましょう。クエン酸は体内のクエン酸サイクルの活性化させ、エネルギーを補うことで疲労回復効果が見込めます。
参考文献
- アミノ酸 | e-ヘルスネット
- たんぱく質 | e-ヘルスネット
- グルタミンの成分情報|協和発酵バイオの健康成分研究所
- グルタミンはアスリートの感染を減らす役割がありますか?|国立医学図書館
- 経口グルタミン負荷後の血漿重炭酸塩および成長ホルモンの増加|国立医学図書館
- 肝臓の健康とアミノ酸|より深く知る アミノ酸のヒミツ!|アミノ酸大百科|味の素株式会社
- グルタミン論文要旨 A|アイドゥ株式会社
- アミノ酸タウリン、L-グルタミンおよびL-アルギニンのリスク評価|国立医学図書館
- 進行食道癌患者の全身性免疫および腸バリア機能に対するグルタミンサプリメントおよび放射線化学療法の効果。|Semantic Scholar