キャベツの栄養と効果効能・調理法・保存法
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キャベツの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、キャベツに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
キャベツとは
キャベツ(cabbage)は、ブロッコリーや白菜などと同じくアブラナ科の植物です。原産国はヨーロッパと言われています。
その歴史は数千年前にものぼり、日本で本格的に食されるようになったのは明治時代からです。現在は、愛知県や群馬県、千葉県などで多く栽培されています。
旬は品種により異なり、代表的なものとして春キャベツは3月~5月、冬キャベツは1~3月頃が旬です。キャベツは葉から芯まですべて食すことができ、サラダやスープ、煮物、炒め物などさまざまな料理に活用されています。
ちなみに、見た目の似ているレタスはキク科のため、まったく別の野菜です。
キャベツの品種・種類
スーパーなどで1年中見られるキャベツには、たくさんの種類があります。ここでは代表的な種類をいくつか説明していきましょう。
春キャベツ
春キャベツは、名前の通り春から初夏にかけて収穫されるキャベツです。新キャベツとも呼ばれます。水分量が通常のキャベツより多く、やわらかいのが特徴です。
葉の色が濃いので、サラダや浅漬けにすると見栄えもよいでしょう。
冬キャベツ
冬に収穫されるキャベツを冬キャベツ(寒玉)と呼びます。冬の寒さから身を守るため、葉が固いのが特徴です。春キャベツに比べ、白っぽい見た目をしています。
加熱しても煮崩れしにくいので、ロールキャベツやスープなどの料理と相性がよいです。
紫キャベツ(レッドキャベツ)
紫キャベツは、アントシアニン色素が含まれているため、葉が紫色になります。一般的なキャベツより厚みのある葉が特徴です。若干苦味が感じられる品種もあります。
サラダなど、生食として利用されることが多い品種です。
サボイキャベツ(ちりめんキャベツ)
サボイキャベツは、フランスのサボイ地方で栽培されたことからこの名がつきました。日本では、特徴的な見た目からちりめんキャベツと呼ばれています。
葉がしわしわとしていて、まるでレースのような見た目のキャベツです。
グリーンボール
グリーンボールは、通常のキャベツよりひと回り小さいサイズのキャベツです。小さいながらも栄養価が高く、βカロテンを多く含みます。
ボールのような丸い見た目が特徴で、厚めの葉はやわらかく甘みもあります。
芽キャベツ(メキャベツ)
芽キャベツは、脇芽が結球したもので、だいたい一口サイズほどの大きさのキャベツです。小さいですが、葉はぎゅっと詰まっています。
ベルギーが原産と言われるメキャベツの旬は、12月~2月。アクが強いので、一度下茹でしてから調理するのがおすすめです。
キャベツに含まれる成分・栄養素
キャベツ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
キャベツは、ミネラルや食物繊維、ビタミン類などを多く含有しています。
特に顕著なのはビタミン類です。ビタミンKやビタミンCのほか、ビタミン様作用物質のビタミンUが豊富に含まれています。
ミネラルの中で特筆すべきは、カリウムやカルシウムの豊富さです。キャベツのカリウム量は、野菜のなかでも多い部類に入ります。
低カロリーでありながらさまざまな成分を含んだキャベツは、効率よく栄養を補給できる野菜と言えるでしょう。
ただし、茹でて調理する場合は水溶性の栄養素が流れ出てしまうので注意が必要です。
表でも、カリウムやビタミンCなどの値が減少していることが読み取れます。栄養をなるべく残さず摂取するには、食べ方に工夫が必要になります。
食品名 | 単位 | キャベツ 結球葉 生 | キャベツ 結球葉 ゆで | キャベツ 結球葉 油いため | グリーンボール 結球葉 生 | レッドキャベツ 結球葉 生 | めキャベツ 結球葉 生 | めキャベツ 結球葉 ゆで |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 23 | 20 | 81 | 20 | 30 | 50 | 49 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 96 | 84 | 337 | 84 | 126 | 209 | 205 |
水 分 | g/100 g | 92.7 | 93.9 | 85.7 | 93.4 | 90.4 | 83.2 | 83.8 |
たんぱく質 | g/100 g | 1.3 | 0.9 | 1.6 | 1.4 | 2 | 5.7 | 5.3 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 0.9 | -0.6 | -1.1 | -1 | -1.3 | -3.9 | -3.7 |
脂 質 | g/100 g | 0.2 | 0.2 | 6 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 0.1 | -0.1 | -5.7 | (Tr) | Tr | -0.1 | -0.1 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.02 | -0.02 | -0.44 | -0.01 | 0.01 | -0.02 | -0.02 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.01 | -0.01 | -3.49 | (Tr) | Tr | -0.01 | -0.01 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.02 | -0.02 | -1.54 | -0.01 | 0.01 | -0.05 | -0.05 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 | (Tr) | 0 | 0 | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 5.2 | 4.6 | 5.9 | 4.3 | 6.7 | 9.9 | 9.8 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | 3.5 | 1.9 | -2.7 | -3.2 | -3.5 | -4.2 | -4.1 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.3 | 0.6 | 1.4 | 1.4 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 1.4 | 1.5 | 1.6 | 1.3 | 2.2 | 4.1 | 3.8 |
食物繊維総量 | g/100 g | 1.8 | 2 | 2.2 | 1.6 | 2.8 | 5.5 | 5.2 |
灰 分 | g/100 g | 0.5 | 0.3 | 0.6 | 0.7 | 0.8 | 1.1 | 1 |
ナトリウム | mg/100 g | 5 | 3 | 6 | 4 | 4 | 5 | 5 |
カリウム | mg/100 g | 200 | 92 | 250 | 270 | 310 | 610 | 480 |
カルシウム | mg/100 g | 43 | 40 | 53 | 58 | 40 | 37 | 36 |
マグネシウム | mg/100 g | 14 | 9 | 17 | 17 | 13 | 25 | 22 |
リン | mg/100 g | 27 | 20 | 33 | 41 | 43 | 73 | 75 |
鉄 | mg/100 g | 0.3 | 0.2 | 0.4 | 0.4 | 0.5 | 1 | 1 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.2 | 0.1 | 0.2 | 0.2 | 0.3 | 0.6 | 0.5 |
銅 | mg/100 g | 0.02 | 0.02 | 0.03 | 0.03 | 0.04 | 0.07 | 0.07 |
マンガン | mg/100 g | 0.16 | 0.14 | 0.19 | 0.18 | 0.2 | 0.29 | 0.25 |
ヨウ素 | µg/100 g | 0 | 0 | - | - | - | - | - |
セレン | µg/100 g | Tr | Tr | - | - | - | - | - |
クロム | µg/100 g | 1 | 0 | - | - | - | - | - |
モリブデン | µg/100 g | 4 | 3 | - | - | - | - | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 49 | 57 | 77 | 110 | 36 | 710 | 680 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 1 | 2 | 2 | 0 | 0 | 10 | 10 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 50 | 58 | 78 | 110 | 36 | 710 | 690 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 4 | 5 | 7 | 9 | 3 | 59 | 57 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.1 | 0.1 | 1.1 | 0.2 | 0.1 | 0.6 | 0.5 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 1.8 | 0 | 0 | 0 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 78 | 76 | 120 | 79 | 29 | 150 | 160 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.04 | 0.02 | 0.05 | 0.05 | 0.07 | 0.19 | 0.13 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.03 | 0.01 | 0.04 | 0.04 | 0.03 | 0.23 | 0.16 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.2 | 0.1 | 0.2 | 0.4 | 0.3 | 0.9 | 0.6 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.11 | 0.05 | 0.15 | 0.13 | 0.19 | 0.27 | 0.22 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 78 | 48 | 130 | 53 | 58 | 240 | 220 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.22 | 0.11 | 0.3 | 0.31 | 0.35 | 0.76 | 0.65 |
ビオチン | µg/100 g | 1.6 | 1.2 | - | - | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 41 | 17 | 47 | 47 | 68 | 160 | 110 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | Tr | Tr | Tr |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | 5.8 | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | 0.1 | - | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | 89 | 80 | - | - | - | 100 |
備考 | 別名: かんらん、たまな廃棄部位: しん | 別名: かんらん、たまなしんを除いたもの | 別名: かんらん、たまなしんを除いたもの | 廃棄部位: しん | 別名: 赤キャベツ、紫キャベツ廃棄部位: しん | 別名: こもちかんらん、姫かんらん、姫キャベツ | 別名: こもちかんらん、姫かんらん、姫キャベツ |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
キャベツの効果・効能
キャベツに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
健胃作用のあるキャベジン
キャベジンとはビタミンUのことです。ビタミンUは、ビタミンと同じ働きをすることなどからビタミン様物質に分類されますが、実はビタミン類には含まれません。胃腸薬の名前からも知られている通り、胃の働きをサポートする作用が期待されています。
1996年にはラットにビタミンUを投与し、胃の粘液成分であるムチンの変化を調べる研究がおこなわれました。
ビタミンUは胃粘膜の損傷を抑制し、さらに表面に存在するムチンを増加させたことから、胃の保護作用があるとされています。
体内機能を正常に保つビタミン類
ビタミンは、水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンに大別されます。キャベツは、ビタミンC、ビタミンB群、ナイアシンなどの水溶性ビタミンを豊富に含んでいる野菜です。
特にビタミンCは抗酸化作用を持ち、大気汚染や紫外線により発生するフリーラジカルから細胞を守る働きを担っています。
脂溶性ビタミンとして注目すべきはビタミンKでしょう。骨の形成を調節したり、血液の凝固を促進したりなど、身体にとっては欠かせない栄養素です。最近では脳神経への作用についても研究で明らかになっています。
2017年の芝浦工業大学による研究では、マウスの神経幹細胞にビタミンKの化合物を投与し培養したところ、ニューロンへの分化誘導作用があることがわかりました。脳神経の形成に深い関わりがあるとして、今後の研究にも期待が高まっています。
高血圧予防に重要なミネラル類
キャベツにはミネラルが多く含まれていますが、なかでもカリウムとカルシウムについて言及していきます。
カリウムのすぐれた作用は浸透圧調節機能です。ナトリウムの排出を促し、塩分の摂りすぎを抑制します。高血圧を招く原因のひとつは食塩の過剰摂取ですので、高カリウムの食材を摂取することで予防作用が期待できるでしょう。
また、カルシウムは骨を形成する栄養素として名高いですが、近年では血圧を降下させる作用も注目されています。
東京大学の研究では、生活習慣病による高血圧患者にカルシウムを摂取させ経過を観察したところ、血圧の低下が見られました。しかし、そのメカニズムは未だ研究段階と言えます。
便秘や糖尿病予防に効果的な食物繊維
食物繊維には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があります。キャベツにはどちらも含まれますが、特に豊富なのが不溶性食物繊維です。不溶性食物繊維は、水に溶けないうえに保水作用があり、便の体積増加やぜん動運動の促進に役立ちます。
一方、水溶性食物繊維は水に溶けやすい栄養素です。糖の消化吸収を緩やかにし、血糖値の上昇を抑制する働きが注目されています。
キャベツの調理方法
キャベツの栄養素を損なわない洗い方や調理方法を解説します。
キャベツの洗い方
使う前に、傷ついた外側の葉は取り除いてしまいましょう。使う分だけ、1枚ずつ丁寧に葉を剥がし、洗っていきます。葉と葉の間に冷水を流し込むと剥がしやすいですよ。
水に長く漬けすぎると、水溶性の栄養素が溶け出してしまうので注意しましょう。
キャベツのおすすめ調理方法
キャベツには多彩な料理方法がありますが、なるべく栄養をそのまま摂取したいなら生食がおすすめです。千切りにしてサラダや主菜の付け合わせとして活用します。
しかし生食では量が食べられないので、蒸し野菜もレパートリーに加えるとよいでしょう。ラップにくるんでレンジで加熱すれば、水溶性の栄養素も流出しにくいです。炒める場合は、加熱時間を短くすることで栄養の流出を極力抑えられます。
また、捨ててしまいがちな芯は、意外と重要です。芯には葉よりも栄養が多く含まれています。ただ、そのままでは食べにくいので、削ぎ切りにするのが得策です。炒め物や汁物のほか、より薄く切ってサラダとしても食べられます。
ただし、煮込みすぎると臭みが出てしまうので、歯ごたえが残る程度に加熱してください。
キャベツを調理する際の注意点
キャベツには水溶性の栄養素が多く含まれているため、茹でる際は注意が必要です。スープなどの料理であれば、茹で汁ごと食べられるので栄養を余すことなく摂取できます。
一方、高カリウム食を控えたほうがよい透析患者は、キャベツの調理法に注意すべきです。スープにする場合は、キャベツを別茹でしてから加えると、カリウムの摂取量を抑えることができます。
キャベツの保存方法
キャベツの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
キャベツは涼しい場所を好むため、基本的には冷蔵庫で保存してください。およそ2週間は保存が可能です。
ひと玉丸ごと保存する場合は、芯をくりぬいて濡らしたキッチンペーパーなどを詰めると、より栄養分が失われにくく長持ちします。また、一気に消費しない場合は、1枚ずつ葉を剥がして利用するのがおすすめです。
半分などにカットしたキャベツを保存する場合は、切り口から変色しやすいので賞味期限は短くなります。なるべく長く新鮮な状態を保つためにも、ラップを外してビニール袋などに入れ替え保存しましょう。
より長期保存したい場合は、塩茹でして冷凍庫に入れる方法もあります。解凍するだけですぐに調理できるので、使い勝手もよいです。