パプリカの栄養と効果効能・調理法・保存法
11383views
パプリカの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、パプリカに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
パプリカとは
パプリカ(bell pepper)は、鮮やかな色が特徴のナス科トウガラシ属に分類される植物の果実です。赤色、オレンジ色、黄色のパプリカが一般的ですが、そのほかにも茶色・緑色・紫色・白色・黒色などさまざまな色のパプリカが存在します。
パプリカの原産地は熱帯アメリカとされており、日本で本格的に普及し始めたのは1990年代に入ってからです。オランダからパプリカが輸入されるようになったことと、洋食ブームとが重なり広まっていきました。
現在の日本ではオランダ産や韓国産など輸入物のパプリカも多いため1年を通して食べられますが、国産のパプリカは7月から9月頃が旬。主な生産地は、熊本県や宮城県です。
また、見た目が似ている野菜にピーマンがありますが、生物学上は同じ分類になります。
日本人は色の違いによってパプリカとピーマンを分けて呼びますが、英語では区別せずどちらも「bell pepper」です。
パプリカとピーマンの違い
パプリカとピーマンは分類学上は同じ野菜ですが、収穫のタイミングが異なります。
一般的に市販されている緑色のピーマンは成熟する前に収穫されるのに対し、パプリカは完熟させた状態で収穫される果実です。成長の過程で赤色や黄色に変化し、ピーマン独特の苦味が抑えられます。
また、一般的なピーマンはしし唐に似た細長い形をしていますが、パプリカはベル型ピーマンという、サイズが大きく肉厚の品種が一般的です。
パプリカとピーマンは栄養面にも違いがあり、パプリカは完熟した状態で収穫される分、ピーマンよりも栄養価の面で優れています。特にパプリカは色素成分の一種であるカロテノイド類が豊富で、緑色のピーマンに比べるとβ-カロテン量は倍以上です。
パプリカに含まれる成分・栄養素について
パプリカに含まれる成分・栄養素について解説します。
パプリカの成分表
パプリカ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | 赤パプリカ 生 | 赤パプリカ 油いため | 黄パプリカ 生 | 黄パプリカ 油いため | トマピー 果実 生 |
廃 棄 率 | % | 10 | 0 | 10 | 0 | 15 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 30 | 69 | 27 | 66 | 31 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 126 | 289 | 113 | 276 | 130 |
水 分 | g/100 g | 91.1 | 86.6 | 92 | 87.6 | 90.9 |
タンパク質 | g/100 g | 1 | 1 | 0.8 | 0.8 | 1 |
アミノ酸組成によるタンパク質 | g/100 g | -0.8 | -0.8 | -0.6 | -0.6 | - |
脂 質 | g/100 g | 0.2 | 4.3 | 0.2 | 4.3 | 0.2 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | -0.1 | -4.1 | -0.1 | -4.1 | - |
飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.02 | -0.31 | -0.02 | -0.31 | - |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | (Tr) | -2.47 | (Tr) | -2.47 | - |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.05 | -1.12 | -0.05 | -1.12 | - |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 7.2 | 7.6 | 6.6 | 6.9 | 7.5 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | -5.3 | -4.6 | -4.9 | -5.1 | - |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.5 | 0.5 | 0.4 | 0.4 | 0.6 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 1.1 | 1.1 | 0.9 | 0.9 | 1 |
食物繊維総量 | g/100 g | 1.6 | 1.6 | 1.3 | 1.3 | 1.6 |
灰 分 | g/100 g | 0.5 | 0.5 | 0.4 | 0.4 | 0.4 |
ナトリウム | mg/100 g | Tr | Tr | Tr | Tr | Tr |
カリウム | mg/100 g | 210 | 220 | 200 | 210 | 210 |
カルシウム | mg/100 g | 7 | 7 | 8 | 8 | 8 |
マグネシウム | mg/100 g | 10 | 10 | 10 | 10 | 8 |
リン | mg/100 g | 22 | 24 | 21 | 23 | 29 |
鉄 | mg/100 g | 0.4 | 0.7 | 0.3 | 0.5 | 0.4 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.3 |
銅 | mg/100 g | 0.03 | 0.03 | 0.04 | 0.04 | 0.07 |
マンガン | mg/100 g | 0.13 | 0.14 | 0.15 | 0.16 | 0.12 |
ヨウ素 | µg/100 g | - | - | - | - | - |
セレン | µg/100 g | - | - | - | - | - |
クロム | µg/100 g | - | - | - | - | - |
モリブデン | µg/100 g | - | - | - | - | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 | 71 | 74 | 33 |
β-カロテン | µg/100 g | 940 | 980 | 160 | 160 | 1700 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 230 | 240 | 27 | 28 | 500 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 1100 | 1100 | 200 | 210 | 1900 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 88 | 92 | 17 | 18 | 160 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 4.3 | 4.4 | 2.4 | 2.5 | 4.3 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0.2 | 0.2 | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0.2 | 0.2 | Tr | Tr | 0.1 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | Tr | Tr | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 7 | 7 | 3 | 3 | 4 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.06 | 0.06 | 0.04 | 0.04 | 0.05 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.14 | 0.16 | 0.03 | 0.03 | 0.09 |
ナイアシン | mg/100 g | 1.2 | 1.2 | 1 | 1 | 1.2 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.37 | 0.39 | 0.26 | 0.27 | 0.56 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 68 | 71 | 54 | 56 | 45 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.28 | 0.29 | 0.25 | 0.26 | 0.33 |
ビオチン | µg/100 g | - | - | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 170 | 180 | 150 | 160 | 200 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | 4.1 | - | 4.1 | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | 96 | - | 96 | - |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
パプリカに含まれる成分の特徴
パプリカには、抗酸化作用のある栄養素が多く含まれています。ビタミンCやビタミンEのほか、α-カロテンやβ-カロテンなどのカロテノイド類が豊富です。特にビタミンCについては、一般的にビタミンCが豊富なイメージの強いレモンよりも、多くのビタミンCが含まれています。
さらにカリウムなどのミネラルも多く含まれるなど、パプリカはとても栄養価の高い食材と言えるでしょう。
色や品種による栄養価の違い
成分表を見ると、赤パプリカや黄パプリカといった色の違いによっても栄養素の違いが見られます。黄色パプリカは色素成分のα-カロテンの含有量に優れ、赤色パプリカはβ-カロテンが豊富です。
さらに新品種のトマピーにはビタミンCやβ-カロテンが多く含まれているのがわかります。
パプリカの効果・効能
パプリカに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
ビタミンCの細胞保護作用
パプリカには抗酸化作用を持つビタミンCが多く含まれます。ビタミンCは、活性酸素を除去することで細胞を保護する作用が期待されている栄養素です。
また、皮膚や細胞を構成するコラーゲンの合成に欠かせない成分でもあり、シミ予防や美白といった美容面での効果も期待できます。
ビタミンEの過酸化脂質抑制作用
脂溶性ビタミンの一種であるビタミンEは、ビタミンCと同じく抗酸化物質として注目されている栄養素です。特に過酸化脂質の生成を抑える作用があるため、動脈硬化予防に役立ちます。
さらにビタミンEはビタミンCとの相乗効果でより抗酸化作用を発揮するため、どちらも豊富に含まれているパプリカは理想的な食材と言えるでしょう。
むくみ予防にカリウム
ミネラルの一種であるカリウムには、細胞内の浸透圧を調整する際にナトリウム(塩分)の排出を促す作用があります。
塩分を過剰摂取すると身体が水分を溜め込みやすくなってしまうため、ナトリウムを排出してくれるカリウムはむくみ予防に期待できる栄養素です。
カロテノイドの高い抗酸化作用
パプリカにはカロテノイドと呼ばれる色素成分が豊富です。カロテノイドは、β-カロテンをはじめとしたカロテン類と、カプサンチンやククルビタキサンチンなどのキサントフィル類に大別され、パプリカにはどちらの栄養素も含まれています。
両方とも抗酸化作用の高い栄養素ですが、特に近年注目を浴びているのはキサントフィル類です。パプリカに含まれるキサントフィルを用いた実験では、マウスの脂肪細胞における炎症を抑制する作用が見られました。抗肥満作用や抗ガン作用にさらなる期待が寄せられています。
パプリカの食べ方と注意点
パプリカの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
ワタや種ごと食べるのがおすすめ
パプリカのワタや種の部分は捨ててしまいがちですが、じつは栄養素が多く含まれている部分です。
栄養をまるごと摂取したい人は丸のまま焼いて食べたり、ワタと種を取らずにそのまま加熱調理をしたりしてみましょう。しかし、ワタと種は食感に影響を与える部分ですので、食感を重視したい場合は取り除くことをおすすめします。
食感を良くするための下ごしらえ
パプリカはワタも種も食べられますが、食感や料理の見た目を良くしたい人は次の手順で下ごしらえをしてみましょう。
まず、水ですすぎ洗いをしたら縦半分に切り、ヘタと種を取り除きます。このとき、V字に切り込みを入れるとヘタが取りやすくなりますよ。内側にある白いワタ部分を包丁で削ぎ落しながら取り除けば、下ごしらえは完了です。
食感をさらによくするためには、パプリカの薄皮をむくと良いでしょう。パプリカをオーブントースターで焦げ目がつくまで焼くと、薄皮を手で簡単に剥がせるようになります。
栄養を効率よく摂取するなら「生食」がおすすめ
パプリカに含まれる水溶性のビタミンは熱に弱いことが知られているため、栄養素を効率よく摂取するには生食がベストです。さらに、生のまま食べる場合でも水に長時間さらすのは禁物。水溶性ビタミンだけでなく、水に溶けやすいカリウムまで流れ出てしまいます。
パプリカはピーマンと異なり甘みが強いので、そのままでもおいしく食べられるのが魅力です。サラダのトッピングやスムージーなどに活用してみましょう。
加熱調理は栄養素の特性を考えて
パプリカを加熱調理する際は、少し工夫が必要です。例えば煮汁ごと食べられるスープとして活用すれば、溶けだしてしまった水溶性の栄養素も余すことなく摂取できるでしょう。
また、ビタミンEなどの脂溶性ビタミンにとっては加熱調理にメリットがあります。脂溶性ビタミンは油に溶けやすい栄養素なので、油を使って炒めれば吸収率が高まるためです。
パプリカを食す際は、積極的に取り入れたい栄養素を考えながら調理をするといいかもしれませんね。
パプリカの保存方法
常温保存、冷蔵保存、冷凍保存の最適な方法を紹介します。
常温保存
パプリカは常温で保存が可能です。パプリカは熱い地域で育つ野菜のため、低温に弱く最適温度は10度と言われています。そのため室温が高くなる夏場以外は、保存袋などに入れて常温で保存しましょう。
袋に入れる際はまとめて入れても大丈夫ですが、1つ痛むとほかのパプリカも傷みやすくなるので、気づいたら取り除くようにしてください。
冷凍保存
長く持たせたいときや夏場は冷蔵庫で保存します。保存袋に入れて野菜室に入れましょう。保存期間は1週間ほどです。
カットしたものは日持ちしないため、冷蔵保存で1日から2日を目安に食べ切りましょう。
冷凍保存
冷凍保存する場合は、丸のままでもカットした状態でも保存できます。カットしたパプリカは種部分から傷むため、種はすべてキレイに取り除く工程が大事です。
水気をよく切り保存袋に入れて冷凍庫で保管すれば、約1ヶ月は持ちます。冷凍したパプリカは食感が損なわれてしまうので、生食せず加熱調理に使いましょう。解凍せず凍ったまま調理に使えます。