きくらげの栄養と効果効能・調理法・保存法
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きくらげの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、きくらげに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
きくらげとは
きくらげ(木耳)は、キクラゲ科キクラゲ属に分類されるきのこの一種で、天然のものは広葉樹の枯れ木や倒木などに発生します。英語ではwood ear mushroomやJew's ear mushroomなどと呼ばれています。
木に生えている様子が耳のように見えることから「木耳」という漢名が付き、コリコリした食感が海産物のクラゲと似ているため、きくらげと呼ばれるようになりました。
かつては中国産のきくらげが主流でしたが、近年では国産品も増加してきました。生のきくらげを天日または火力で乾燥させたものは、乾燥きくらげとして流通しています。
きくらげは4~10月に収穫されるため、生きくらげの旬は6~9月ですが、乾燥きくらげは年間通して出回っています。
独特の歯応えが楽しめるきくらげは、中華料理を中心とした炒め物やスープの具材のほか、豚骨ラーメンのトッピングとしても親しまれています。
きくらげの品種・種類
きくらげの種類と、それぞれの特徴や栄養素の違いを解説します。
あらげきくらげ
日本で出回っているきくらげのほとんどが、あらげきくらげ(荒毛木耳)と呼ばれる種類です。表面に灰色の細い毛がびっしりと生えているのが特徴で、ビロードのような感触があり、「裏白きくらげ」とも呼ばれます。
きくらげのなかでも、ビタミンD・食物繊維・カルシウム・鉄の含有量が突出して多く、栄養豊富なきのこです。
きくらげ
きくらげは、あらげきくらげの仲間ですが、全体的に小ぶりで薄く、黒っぽい色をしていて毛はあまり目立ちません。涼しく湿った場所で良く生育する品種です。
あらげきくらげよりカロリーや炭水化物量が低く、ダイエットに向いています。
白きくらげ
白きくらげは、透き通るような白い色をしたきくらげで、別名は「銀耳」(ぎんじ)です。楊貴妃も食べていたと言われており、中国では高級食材として利用されています。あらげきくらげの色が白い品種と見た目は似ていますが別物です。
ビタミンDなどの含有量はあらげきくらげに劣りますが、白きくらげにはカリウムやビタミンの一種であるビオチンが豊富に含まれています。
きくらげに含まれる成分・栄養素
きくらげ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | あらげきくらげ 乾 | あらげきくらげ ゆで | あらげきくらげ 油いため | きくらげ 乾 | きくらげ ゆで | しろきくらげ 乾 | しろきくらげ ゆで |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 171 | 35 | 107 | 167 | 13 | 162 | 14 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 715 | 147 | 447 | 699 | 54 | 678 | 59 |
水 分 | g/100 g | 13.1 | 82.3 | 64.2 | 14.9 | 93.8 | 14.6 | 92.6 |
たんぱく質 | g/100 g | 6.9 | 1.2 | 2.3 | 7.9 | 0.6 | 4.9 | 0.4 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 4.4 | -0.8 | -1.5 | 5.1 | -0.4 | 3.3 | -0.3 |
脂 質 | g/100 g | 0.7 | 0.1 | 5.2 | 2.1 | 0.2 | 0.7 | Tr |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 0.4 | -0.1 | -5 | 1.3 | -0.1 | 0.5 | - |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.08 | -0.01 | -0.38 | 0.29 | -0.03 | 0.1 | - |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.11 | -0.02 | -3.01 | 0.33 | -0.03 | 0.23 | - |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.19 | -0.03 | -1.36 | 0.62 | -0.06 | 0.15 | - |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 77 | 16.1 | 27.8 | 71.1 | 5.2 | 74.5 | 6.7 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | 0.9 | -0.2 | -0.3 | 2.7 | -0.2 | 3.6 | -0.3 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 6.3 | 1.3 | 2.4 | 0 | 0 | 19.3 | 1.2 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 73.1 | 15 | 26.2 | 57.4 | 5.2 | 49.4 | 5.2 |
食物繊維総量 | g/100 g | 79.5 | 16.3 | 28.6 | 57.4 | 5.2 | 68.7 | 6.4 |
灰 分 | g/100 g | 2.2 | 0.3 | 0.6 | 4 | 0.2 | 5.3 | 0.3 |
ナトリウム | mg/100 g | 46 | 10 | 11 | 59 | 9 | 28 | 2 |
カリウム | mg/100 g | 630 | 75 | 130 | 1000 | 37 | 1400 | 79 |
カルシウム | mg/100 g | 82 | 35 | 29 | 310 | 25 | 240 | 27 |
マグネシウム | mg/100 g | 110 | 24 | 37 | 210 | 27 | 67 | 8 |
リン | mg/100 g | 110 | 11 | 18 | 230 | 10 | 260 | 11 |
鉄 | mg/100 g | 10.4 | 1.7 | 4.3 | 35.2 | 0.7 | 4.4 | 0.2 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.8 | 0.1 | 0.3 | 2.1 | 0.2 | 3.6 | 0.3 |
銅 | mg/100 g | 0.18 | 0.04 | 0.06 | 0.31 | 0.03 | 0.1 | 0.01 |
マンガン | mg/100 g | 1.15 | 0.2 | 0.33 | 6.18 | 0.53 | 0.18 | 0.01 |
ヨウ素 | µg/100 g | 25 | 1 | - | 7 | 0 | 0 | 0 |
セレン | µg/100 g | 10 | 2 | - | 9 | Tr | 1 | 0 |
クロム | µg/100 g | 4 | 1 | - | 27 | 2 | 7 | 0 |
モリブデン | µg/100 g | 10 | 1 | - | 6 | Tr | 1 | 0 |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンD | µg/100 g | 128.5 | 25.3 | 37.7 | 85.4 | 8.8 | 15.1 | 1.2 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | -0.8 | 0 | 0 | 0 | 0 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | (Tr) | 0 | 0 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | -1.6 | 0 | 0 | 0 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | (Tr) | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 | -6 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.01 | 0 | 0 | 0.19 | 0.01 | 0.12 | 0 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.44 | 0.07 | 0.11 | 0.87 | 0.06 | 0.7 | 0.05 |
ナイアシン | mg/100 g | 1.7 | 0.1 | 0.1 | 3.2 | Tr | 2.2 | Tr |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.08 | 0.01 | 0.02 | 0.1 | 0.01 | 0.1 | 0.01 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 15 | 1 | 4 | 87 | 2 | 76 | 1 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.61 | 0 | 0.06 | 1.14 | 0 | 1.37 | 0 |
ビオチン | µg/100 g | 20.6 | 1.2 | - | 27 | 1.3 | 86.9 | 4.4 |
ビタミンC | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
食塩相当量 | g/100 g | 0.1 | 0 | 0 | 0.1 | 0 | 0.1 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | 4.9 | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | 490 | 290 | - | 1000 | - | 1500 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
きくらげの効果・効能
きくらげに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
丈夫な骨・歯をつくるビタミンD
ビタミンDにはカルシウムの吸収を助ける作用があり、骨・歯を強くするのに欠かせない栄養素です。加えて、神経の伝達作用や免疫機能の調節にも重要な役割を果たしています。
ビタミンDは、きくらげをはじめとしたきのこ類や魚介類などに含まれているほか、日光に当たることで生成されます。日本人に不足しがちな栄養素と言われており、ビタミンD不足は骨粗しょう症の原因にもなります。
きくらげにはビタミンDのほかカルシウムも含まれており、骨の健康維持に有用な食材と言えるでしょう。
ビタミンDやカルシウムはあらげきくらげに特に多く含まれているので、効率良く摂りたい方にはあらげきくらげがおすすめです。
食物繊維で便秘解消
食物繊維は、整腸作用や便秘予防、血糖値上昇の抑制、コレステロールを低下させるなど、体にとってさまざまな良い効能を持つ成分です。
きくらげは食物繊維が豊富な食材として知られており、茹でたあらげきくらげには、ごぼうの約3倍もの食物繊維が含まれています。
水溶性食物繊維・不溶性食物繊維の2種類に分けられる食物繊維ですが、きくらげには、腸のぜん動運動を活発にして便通を促す不溶性食物繊維が豊富なため、便秘の予防・改善に最適な食材です。
鉄など豊富なミネラル類で貧血予防
きくらげには、鉄・カルシウム・リン・マグネシウム・亜鉛などの必須ミネラル類が含まれています。
そのなかでも、貧血を予防する鉄が豊富で、油で炒めたあらげきくらげには、ほうれん草の2倍以上の鉄が含まれています。きくらげは、鉄を特に多く必要とする妊娠中・授乳期の女性にとっても役立ちます。
また、ナトリウムの排出を促すカリウムが多いのも、きくらげの成分組成の特徴です。カリウムは白きくらげに多く含まれているため、塩分の摂りすぎが気になるときは白きくらげを利用してみてください。
低カロリー&コレステロール抑制作用
きくらげは、100gあたり35kcal(あらげきくらげ・茹で)と低カロリーで、脂質や炭水化物も少ないため、ダイエット向きの食材です。
また、食物繊維を多く含むことから、便秘が原因の太りすぎや肥満にも効果が期待できます。食物繊維には血糖値やコレステロールを抑える作用もあるので、体質改善や減量にきくらげを役立ててみてください。
きくらげの食べ方
きくらげの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
乾燥きくらげの戻し方
乾燥きくらげの戻し方は、水を使う方法とお湯を使う方法の2通りがありますが、早く戻したい場合はお湯で戻すのがおすすめです。
水で戻す場合、生きくらげの食感に近づけるためには6時間ほど置く必要がありますが、お湯を使えば15~30分ほどで食べやすい硬さに戻ります。
ただし、熱湯で一気に戻すと栄養素が流出してしまう可能性があるため、約40度のぬるま湯1Lに砂糖5gと炭酸水250mlを入れると、栄養を逃さずにきくらげを戻すことができます。
きくらげの調理方法
ビタミンDは脂溶性の栄養素なので、油と一緒に摂取することで体内に吸収されやすくなります。油を使った炒め物やラーメンの具材として用いると、きくらげに含まれるビタミンDを効率的に摂取できます。
また、きくらげに含まれている非ヘム鉄は、肉類に含まれるヘム鉄と比べて、体に吸収されにくい鉄です。
非ヘム鉄は、たんぱく質やビタミンCと共に摂取すると吸収率が高まる性質を持っているため、たんぱく質が豊富な卵やビタミンCを多く含むトマト・ほうれん草などの野菜と合わせて調理してみましょう。
きくらげを食べる際の注意点
きくらげには多くの食物繊維が含まれているため、食べ過ぎると下痢や軟便を引き起こす可能性があります。
食物繊維の1日の摂取目安量は、成人で18~21gです。乾燥きくらげは1日5g程度、生きくらげは35~40gほどを摂取量の目安としてください。
症例は多くありませんが、きくらげが原因で腸閉塞を発症した事例も報告されているので、極端な食べ過ぎには気を付けましょう。
きくらげの保存方法
きくらげの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
冷蔵保存
生きくらげや水で戻した乾燥きくらげは、野菜などと同じように冷蔵保存が基本です。冷蔵庫の野菜室で保存するのがベストですが、ビニール袋に入れたり、ラップで包んでおくと乾燥を防げます。冷蔵保存する場合は、1週間を目安に食べきってください。
冷凍保存
生きくらげを長期保存する場合は冷凍しましょう。一度湯通ししたきくらげを小さくカットして水気をきり、冷凍用の保存袋に入れて冷凍してください。加熱調理する場合、解凍は不要で凍ったまま使用できます。