ラズベリーの栄養と効果効能・調理法・保存法
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ラズベリーの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、ラズベリーに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
ラズベリーとは
ラズベリーは、バラ科イチゴ属の植物になる食用の果実です。英語では「Raspberry(ラズベリー)」、フランス語では「Framboise(フランボワーズ)」といい、日本では「木いちご」とも呼ばれます。
生で食べられるほか、ケーキ・タルトなどの洋菓子、ジャムやジュース、果実酒に利用されるのが一般的です。
ラズベリーと見た目がよく似ているブラックベリーは、同じバラ科イチゴ属の仲間。ラズベリーと違う点として、ブラックベリーは栽培用の原産品種が「セイヨウヤブイチゴ」であること(ラズベリーの原種は「ヨーロッパキイチゴ」)、果実の色が濃いこと、産毛がないこと、中が空洞になっていないこと、酸味が少ないことが挙げられます。
原産はヨーロッパや北アメリカ。日本には19世紀頃に伝えられたと言われています。市場に出回っているラズベリーのほとんどはアメリカからの輸入になりますが、国内でも北海道や宮城県、長野県などで栽培されています。
1年を通して店頭に並ぶラズベリー。輸入ものには旬はありませんが、国産ラズベリーの旬は6〜9月ごろです。
ラズベリーの品種・種類
ラズベリーの代表的な品種を紹介します。
インディアンサマー
インディアンサマーは、ラズベリーの代表的な品種です。果実は赤色で、サイズは2〜3g程度。
1年に2度収穫ができる「二季なり性」のため、たくさん収穫することができます。濃厚な味わいがあり、生食、ジャム、果実酒などに用いられます。
マリージェーン
マリージェーンは、インディアンサマーと同様で二季なり性の品種です。果実は紅色で、平均異常に大きな実をつけます。
濃厚で甘みが強く、食べごたえがあります。旬は6〜7月と10月ごろの2回です。
ジョイゴールド
ジョイゴールドは二季なり性の大粒品種。黄色の果実と、生食向きの強い甘みが特徴です。
ブラックキャップ(ブラックベリー)
ブラックキャップは、名前の通り、熟すと黒色になる珍しい品種です。サイズは3〜5gほどで、ブラックベリーとも呼ばれます。
一季なり性で、旬は6月下旬ごろです。甘みの中に、爽やかな酸味があります。
ラズベリーに含まれる成分・栄養素
ラズベリー100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
参考として、ブルーベリーの成分表を並記しています。
ラズベリーは100gあたり41kcal、糖質は5.5g。ブルーベリーやいちごなど他のベリー類に比べても低カロリー・低糖質の果物です。
食品名 | 単位 | ラズベリー 生 | ブルーベリー 生 |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 41 | 49 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 172 | 205 |
水 分 | g/100 g | 88.2 | 86.4 |
たんぱく質 | g/100 g | 1.1 | 0.5 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | - | -0.3 |
脂 質 | g/100 g | 0.1 | 0.1 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | - | -0.1 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | - | -0.01 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | - | -0.01 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | - | -0.04 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 10.2 | 12.9 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | -5.6 | -8.6 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.7 | 0.5 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 4 | 2.8 |
食物繊維総量 | g/100 g | 4.7 | 3.3 |
灰 分 | g/100 g | 0.4 | 0.1 |
ナトリウム | mg/100 g | 1 | 1 |
カリウム | mg/100 g | 150 | 70 |
カルシウム | mg/100 g | 22 | 8 |
マグネシウム | mg/100 g | 21 | 5 |
リン | mg/100 g | 29 | 9 |
鉄 | mg/100 g | 0.7 | 0.2 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.4 | 0.1 |
銅 | mg/100 g | 0.12 | 0.04 |
マンガン | mg/100 g | 0.5 | 0.26 |
ヨウ素 | µg/100 g | - | 0 |
セレン | µg/100 g | - | 0 |
クロム | µg/100 g | - | Tr |
モリブデン | µg/100 g | - | 1 |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 19 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 10 | 55 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 0 | 0 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 19 | 55 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 2 | 5 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.8 | 1.7 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0.1 | Tr |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 1.9 | 0.6 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 1.6 | Tr |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.02 | 0.03 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.04 | 0.03 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.6 | 0.2 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.07 | 0.05 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 38 | 12 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.43 | 0.12 |
ビオチン | µg/100 g | - | 1.1 |
ビタミンC | mg/100 g | 22 | 9 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - |
重量変化率 | % | - | - |
備考 | 別名: レッドラズベリー、西洋きいちご果実全体 | 試料: ハイブッシュブルーベリー果実全体 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
ラズベリーの効果・効能
ラズベリーに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
アントシアニン:眼精疲労の改善・眼病の予防
ラズベリーには、ポリフェノールの一種である「アントシアニン」が多く含まれています。
アントシアニンは、目の網膜にある「ロドプシン」と呼ばれるタンパク質の再合成を促し、目を酷使することによって生じる目のしょぼつきやぼやきを改善する働きがあります。
また、白内障や緑内障などの眼病予防にも効果的です。
エラグ酸:美白効果・老化防止・がん予防
エラグ酸は、アントシアニンと同じくポリフェノールの一種です。
エラグ酸は強い抗酸化力を持っており、シミの原因となるメラニン色素の生成を抑制したり、細胞の酸化による過酸化脂質の生成を抑えて老化を防いだり、ウィルスから体を守ったり、がん細胞の増殖を抑制したりする効果があります。
ラズベリーケトン:脂肪を分解する・育毛を促進する
ラズベリーの甘酸っぱい香りの成分である「ラズベリーケトン」は、脂肪分解酵素が脂肪と結合するのを促進し、脂肪分解を助ける働きがあります。
これにより、ダイエット効果が期待できるのです。また、ラズベリーケトンには毛髪を生やしている細胞を増やし、育毛を促進する効果があるという報告もあります。
ビタミンC:美白効果・免疫力アップ
ビタミンCは水溶性のビタミンで、骨や腱をつくるコラーゲンを生成するのに必要な栄養素です。
ビタミンCを摂取することで、細胞の老化を防ぐ、メラニン色素の生成を抑制して日焼けやシミ、そばかすを予防する、毛細血管を丈夫にする、免疫力を高めて感染症やがんを予防する、といった効果を得ることができます。
鉄:新陳代謝を促す・貧血予防
鉄には血液中のヘモグロビンの一部となって、体のすみずみまで酸素を運ぶという働きがあります。
この働きによって、二酸化炭素を回収して肩のコリや傷みを予防することもできます。
さらに肌にもしっかりと酸素を供給することで、新陳代謝とコラーゲンの合成を促し、シミをできにくくするなどの美容面でも嬉しい効果が得られます。
鉄が十分でないと、鉄欠乏性貧血による疲れ、だるさ、頭痛、眠気などの症状が出てしまいます。
食物繊維:腸内環境を整える・便秘の解消
食物繊維には「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類がありますが、ラズベリーに多く含まれるのは水溶性食物繊維です。
水溶性食物繊維は水に溶ける性質を持っており、腸内細菌(善玉菌)のえさになって腸内環境を整え、便秘の予防・解消に効果があります。
ラズベリーを調理する際の注意点
ラズベリーには、水に溶けやすい水溶性のビタミンCが豊富に含まれています。
ビタミンCは熱に弱い性質があるため、加熱調理をすると壊れてしまいます。ビタミンCを効率的に摂取したいのであれば、生のままで食べるのが良いでしょう。
ラズベリーの保存方法
ラズベリーの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
基本的に早く食べること
ラズベリーは傷みやすいデリケートな果物です。
日が経つとカビが生える可能性があるため、なるべく早く食べるようにしましょう。
冷蔵保存
冷蔵保存する場合は、密閉できる保存袋に入れて冷蔵庫に入れます。保存期間は2〜3日です。
冷凍保存
2〜3日で食べ切れないのであれば冷凍保存することもできます。
ラズベリー同士が重ならないようにバットなどに広げて並べ、冷凍庫で凍らせてください。こうすることで実がくっつかないので、食べやすくなります。
ラズベリーが凍ったら保存袋に入れて冷凍庫で保存しましょう。保存期間は約1ヵ月です。