β-カロテンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
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β-カロテンの基本情報、似た栄養素との違い、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、1日の摂取目安量、多く含む食品ランキング、効率よく摂取する方法について解説します。
β-カロテン(ベータカロテン)とは
β-カロテンは、ニンジン・ほうれん草・かぼちゃなどの緑黄色野菜(※)に多く含まれるカロテノイドの一種です。
カロテノイド(カロチノイド)とは動植物に含まれる天然の色素のことで、大きくカロテン類・キサントフィル類に分かれ、いずれも強い抗酸化作用を持っています。
β-カロテン以外のカロテン類で代表的なものとして、トマトに含まれる赤色のカロテノイドであるリコピンなども有名ですが、カロテン類の中で最も多く自然界に存在する栄養素はβ-カロテンです。
1930年に発見され、ニンジン(carrot)の橙色のもとになっていることからカロテンと名付けられました。
体内に取り込まれたβ-カロテンは、一部が脂肪組織に蓄えられβ-カロテンとして働き、残りはビタミンAに変換されてビタミンAとして効果を発揮します。
※緑黄色野菜……カロテン類を、可食部100g中に600μg以上含む野菜の総称。
プロビタミンAとビタミンAの違い
体内でビタミンAとして働く栄養素のことを総称して、ビタミンA前駆体(プロビタミンA)と呼びます。
β-カロテンを始めとするプロビタミンAとビタミンAの大きな違いは、過剰摂取の心配がない点です。
プロビタミンAはビタミンAが不足したときだけビタミンAに変換されるため、プロビタミンAを大量に摂取してもビタミンAが体内で過剰になることはありません。
ビタミンAは脂溶性ビタミンであるため、水溶性ビタミンであるビタミンCなどと比べて体内に蓄積しやすく、過剰摂取すると次のような過剰症を引き起こします。
- 吐き気
- 頭痛
- 倦怠感
- 食欲不振
- めまい
- 皮膚乾燥(乾燥肌)
- 落屑(外側皮膚の喪失)
- 脳水腫
特に妊娠初期の妊婦が過剰摂取すると、出生異常を引き起こすケースも確認されています。
これに対して、プロビタミンAは過剰摂取の心配がありません。
β-カロテンとその他のプロビタミンAの違い
プロビタミンAにはβ-カロテンのほかに、α-カロテン、β-クリプトキサンチンなどの種類があり、それぞれ吸収効率が異なります。
各成分の吸収効率の内訳は次の通りです。
レチノール | ビタミンAのこと。吸収率は70~90% |
β-カロテン | レチノールの1/12の吸収率 |
α-カロテン | レチノールの1/24(β-カロテンの1/2)の吸収率 |
β-クリプトキサンチン | レチノールの1/24(β-カロテンの1/2)の吸収率 |
その他のプロビタミンAカロテノイド | レチノールの1/24(β-カロテンの1/2)の吸収率 |
また、日本人の食事摂取基準(2020 年版)では、上記の吸収効率を踏まえて次の計算式でレチノール活性当量(ビタミンA換算値)を算出しています。
レチノール活性当量(μgRAE)=レチノール(μg)+β-カロテン(μg)×1/12+α-カロテン(μg)×1/24+β-クリプトキサンチン(μg)×1/24+その他のプロビタミンAカロテノイド(μg)×1/24
出典:日本人の食事摂取基準(2020 年版)
β-カロテンの効果・働き
β-カロテンの持つ効果・効能・働きについて解説します。
抗酸化作用により活性酸素を除去
β-カロテンをはじめ、天然色素成分であるカロテノイドは強い抗酸化作用を持っていることが知られています。
抗酸化作用とは、体内で発生した活性酸素を除去する働きのこと。
増えすぎた活性酸素をそのままにしておくと、老化の促進・動脈硬化・がんなどの原因になることから、抗酸化作用の強いカロテノイドは、老化防止・動脈硬化予防・がん予防などの効果が期待できます。
ビタミンAとして働き健康を促進する
β-カロテンはプロビタミンAであるため、体内でビタミンAとして働きます。
ビタミンAの代表的な効果は次の通りです。
- 視機能の改善や夜間視力の維持
- 目や皮膚の粘膜を健康に保つ
- 免疫機能の制御
- 正常な成長と発達を助ける
ビタミンAのより詳細な効果・働きについては、ビタミンAの項も参照してください。
β-カロテンが不足・欠乏すると起こる症状
β-カロテンおよびカロテノイド自体の欠乏症の報告は今のところありません。
ただし、β-カロテンはプロビタミンAの中でもビタミンAとして働く割合の高い栄養素であることから、不足するとビタミンA欠乏症に陥る可能性があります。
ビタミンAが不足・欠乏すると起こる可能性のある症状は次の通りです。
- 夜盲症
- 視力の低下
- 目の疲れ
- 眼球の乾燥
- 肌荒れ・爪の変形、割れ・粘膜の乾燥
- 免疫力の低下による感染症リスクの上昇
- 鉄欠乏性貧血の悪化
β-カロテンを過剰摂取すると起こる症状
β-カロテンはプロビタミンAであるため、大量に摂取しても体内に蓄積することはなく、過剰摂取のリスクはありません。
β-カロテンの1日の摂取目安量
β-カロテン、もといビタミンAの1日の摂取目安量は下記表の通りとなっています。
なお、ここでビタミンAの摂取目安量を示したのは、日本人の食事摂取基準(2020 年版)においてβ-カロテン単独の摂取目安量が示されていないためです。
β-カロテン単独の必要摂取目安量はなく、不足・欠乏による影響も特に報告されていませんが、仮にビタミンAの摂取目安量をβ-カロテン単独で補おうとした場合、必要摂取量は次のようになります。
- 成人男性:9,600~10,800μg
- 成人女性:7,800~8,400μg
- 妊婦(後期):7,800~8,400μg+960μg
- 授乳婦:7,800~8,400μg+5,400μg
ビタミンA の食事摂取基準(μgRAE/日)※1
性 別 | 男 性 | 女 性 | ||||||
年齢等 | 推定平均必要量 2 | 推奨量 2 | 目安量 3 | 耐容上限量 3 | 推定平均必要量 2 | 推奨量 2 | 目安量 3 | 耐容上限量 3 |
0 ~ 5 (月) | ─ | ─ | 300 | 600 | ─ | ─ | 300 | 600 |
6 ~11(月) | ─ | ─ | 400 | 600 | ─ | ─ | 400 | 600 |
1 ~ 2 (歳) | 300 | 400 | ─ | 600 | 250 | 350 | ─ | 600 |
3 ~ 5 (歳) | 350 | 450 | ─ | 700 | 350 | 500 | ─ | 850 |
6 ~ 7 (歳) | 300 | 400 | ─ | 950 | 300 | 400 | ─ | 1,200 |
8 ~ 9 (歳) | 350 | 500 | ─ | 1,200 | 350 | 500 | ─ | 1,500 |
10~11(歳) | 450 | 600 | ─ | 1,500 | 400 | 600 | ─ | 1,900 |
12~14(歳) | 550 | 800 | ─ | 2,100 | 500 | 700 | ─ | 2,500 |
15~17(歳) | 650 | 900 | ─ | 2,500 | 500 | 650 | ─ | 2,800 |
18~29(歳) | 600 | 850 | ─ | 2,700 | 450 | 650 | ─ | 2,700 |
30~49(歳) | 650 | 900 | ─ | 2,700 | 500 | 700 | ─ | 2,700 |
50~64(歳) | 650 | 900 | ─ | 2,700 | 500 | 700 | ─ | 2,700 |
65~74(歳) | 600 | 850 | ─ | 2,700 | 500 | 700 | ─ | 2,700 |
75 以上(歳) | 550 | 800 | ─ | 2,700 | 450 | 650 | ─ | 2,700 |
妊婦(付加量)初期 | +0 | +0 | ─ | ─ | ||||
妊婦(付加量)中期 | +0 | +0 | ─ | ─ | ||||
妊婦(付加量)後期 | +60 | +80 | ─ | ─ | ||||
授乳婦(付加量) | +300 | +450 | ─ | ─ |
※2 プロビタミンA カロテノイドを含む。
※3 プロビタミンA カロテノイドを含まない。
出典:日本人の食事摂取基準(2020 年版)
β-カロテンを多く含む食品
β-カロテンを多く含む食品を、全食品・野菜・果物・海藻・香辛料・飲料の順で、それぞれランキング形式で紹介します。
β-カロテンを多く含む食品ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | 藻類/あまのり/ほしのり | 38000 |
2 | 藻類/まつも/素干し | 30000 |
3 | 藻類/あまのり/味付けのり | 29000 |
4 | 調味料及び香辛料類/パセリ/乾 | 28000 |
5 | 藻類/いわのり/素干し | 25000 |
5 | 藻類/あまのり/焼きのり | 25000 |
7 | 藻類/あおのり/素干し | 20000 |
8 | 野菜類/とうがらし/果実、乾 | 14000 |
9 | 野菜類/しそ/葉、生 | 11000 |
9 | 野菜類/(にんじん類) にんじん、根、冷凍、油いため | 11000 |
全食品の中でβ-カロテンを最も多く含むのは、「海の野菜」とも呼ばれる海苔でした。その含有量は、カロテンの名前の由来となったニンジンの3倍以上です。
ただしあくまでも100gあたりの含有量であるため、味付けのりを数枚食べただけではさすがに十分な量とは言えません。
β-カロテンを多く含む野菜ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | とうがらし/果実、乾 | 14000 |
2 | にんじん、根、冷凍、油いため | 11000 |
2 | しそ/葉、生 | 11000 |
4 | モロヘイヤ/茎葉、生 | 10000 |
4 | にんじん、根、冷凍、ゆで | 10000 |
6 | にんじん/根、皮むき、油いため | 9900 |
7 | にんじん/根、冷凍 | 9100 |
8 | にんじん/グラッセ | 8600 |
8 | ほうれんそう/葉、冷凍/ ゆで | 8600 |
10 | ほうれんそう/葉、通年平均、油いため | 7600 |
しそやトウガラシなど、一部の薬味となる野菜をのぞき、野菜の中でβ-カロテンを最も多く含むのはやはりニンジンです。
しかし生で比較すると、モロヘイヤの方がより多くのβ-カロテンを含有しています。
β-カロテンを多く含む果物ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | ドライマンゴー | 5900 |
2 | あんず/乾 | 4800 |
3 | メロン/露地メロン/赤肉種、生 | 3600 |
4 | あんず/生 | 1400 |
5 | パッションフルーツ/果汁、生 | 1100 |
5 | すもも類/プルーン/乾 | 1100 |
7 | すいか/赤肉種、生 | 830 |
8 | くこ、実、乾 | 800 |
9 | バナナ/乾 | 670 |
10 | あんず/ジャム/低糖度 | 630 |
果物の中でβ-カロテンを最も多く含むのはドライマンゴーでしたが、野菜類と同じく生と乾燥で大きく含有量に差があります。
生の状態で最も多くβ-カロテンを含んでいるのは、夕張メロンなどに代表される赤肉種のメロンです。
100gあたり3,600μgのβ-カロテンを含有しており、これは生の西洋カボチャ(100gあたり3,900μg)に匹敵する含有量と言えます。
β-カロテンを多く含む海藻ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | あまのり/ほしのり | 38000 |
2 | まつも/素干し | 30000 |
3 | あまのり/味付けのり | 29000 |
4 | いわのり/素干し | 25000 |
4 | あまのり/焼きのり | 25000 |
6 | あおのり/素干し | 20000 |
7 | ひとえぐさ/素干し | 8500 |
8 | わかめ/乾燥わかめ/板わかめ | 8400 |
9 | わかめ/乾燥わかめ/素干し | 7700 |
10 | かわのり/素干し | 5600 |
海藻類の中で最も多くβ-カロテンを含むのは、全食品ランキングでも登場した通り干し海苔です。
下位を見ると、わかめも比較的豊富なβ-カロテンを含有していることが分かります干し海苔・岩海苔などと合わせて、味噌汁に入れて摂取すると効率的かもしれません。
β-カロテンを多く含む調味料・香辛料ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | パセリ/乾 | 28000 |
2 | チリパウダー | 7600 |
3 | とうがらし/粉 | 7200 |
4 | パプリカ/粉 | 5000 |
5 | バジル/粉 | 2400 |
6 | キムチの素 | 1500 |
7 | チリペッパーソース | 1400 |
7 | セージ/粉 | 1400 |
7 | トウバンジャン | 1400 |
10 | トマトペースト | 1000 |
調味料・香辛料の中でβ-カロテンを最も多く含むのは、乾燥パセリでした。
乾燥状態のため生食の野菜や果物と一概に比較することはできませんが、もともとパセリは栄養豊富な緑黄色野菜のひとつ。ビタミンCなどの美容効果が期待できる栄養素も豊富に含んでいます。
β-カロテンを多く含む飲料ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | 青汁/ケール | 10000 |
2 | 昆布茶 | 30 |
日本食品標準成分表2015年版(七訂)で分類される飲料の中でβ-カロテンを含むものは青汁と昆布茶の2つのみでしたが、ケールの青汁に含まれるβ-カロテン量は圧巻です。
ケールの生食でのβ-カロテン含有量は、100gあたり2,900μgとランキング上位の食材に比べるとやや見劣りします。青汁の原料として用いることで真価を発揮する野菜と言えるでしょう。
β-カロテンを効率よく摂取する方法
β-カロテンは脂溶性ビタミンのため、油炒め・揚げ物・天ぷらなどにして、油といっしょに食べることで吸収効率が高まります。
油を抑えたい場合は、卵の黄身のような脂質の多い食べ物といっしょに食べたり、生で食べたい場合はドレッシングとあえたりすることで同じく吸収効率を高めることができます。