イソフラボンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
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イソフラボンの基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、1日の摂取目安量、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。
イソフラボンとは
イソフラボンとは、大豆胚芽(芽の部分)に多く含まれるポリフェノール(フラボノイド)の一種です。
女性ホルモン(エストロゲン)と似た働きを持つことから、ファイトエストロゲン(植物性エストロゲン)とも呼ばれます。
骨粗しょう症の予防や更年期障害の軽減などに効果的です。
本来イソフラボンは、豆類、穀類、野菜類などの中に少量づつ存在含まれているのですが、人が摂取する食材の中では大豆製品が最も濃厚なイソフラボン源であることから、大豆イソフラボンとも呼ばれます。
イソフラボンの種類
イソフラボンには、糖が結合した構造のイソフラボン配糖体とは別に、糖が外れた構造のイソフラボン非配糖体(アグリコン)があります。
イソフラボンは通常、食品に含まれているときにはイソフラボン配糖体として存在していますが、摂取すると体内で腸内細菌の作用などによって糖の部分が分離して、イソフラボンアグリコンとなります。
そのため、栄養素について記述される「イソフラボン」ないし「大豆イソフラボン」とは、基本的に「イソフラボンアグリコン」のことを指します。
なおイソフラボンアグリコンには、ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインの3種類と、それぞれに3種類の配糖体(ゲニスチン、ダイジン、グリシチン)、配糖体のアセチル化体、及びマロニル化体などの種類があります。
イソフラボンとエストロゲンの違い
イソフラボンアグリコンは、分子構造が女性ホルモンの一種であるエストロゲンに似ており、エストロゲンの働きである第二次性徴の発現や、月経周期の調節などといった重要な働きをサポートします。
イソフラボンとエストロゲンが異なるのは、イソフラボンがエストロゲン不足時にはエストロゲンとして機能するのに対して、エストロゲンが過剰な際にはエストロゲンの働きを阻害する機能を見せる――つまり、エストロゲンを調整する機能がある点です。
そのため、女性の不定愁訴の改善のために安心して摂取することができ、特にホルモンバランスが乱れやすい更年期の女性にとって、非常に強い味方と言えるでしょう。
イソフラボンの効果・働き
イソフラボンの効果・効能・働きについて解説します。
エストロゲンをサポートして更年期障害を軽減する
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、一般的に8~9歳ごろに卵巣から分泌されるようになり、女性らしい体づくりをサポートします。
エストロゲンは40歳ごろから減少しはじめ、閉経を数年後に控えた年齢(更年期)になると、分泌量が極端に低下し、月経周期の乱れ・月経量の変動、更年期によるのぼせ・ほてり(ホットフラッシュ)のほか、精神不安などさまざまな症状が見られるようになります。
イソフラボンは、こうしたエストロゲンの減少・欠乏が原因で起こる更年期障害や不定愁訴の軽減に効果的です。
カルシウムをコントロールして骨粗しょう症を予防・改善
エストロゲンは、カルシウムをコントロールする物質のひとつでもあり、カルシウムが骨から過剰に溶け出すのを防ぐ作用をもっています。
骨量を増やす作用もあるため、骨粗しょう症の予防・改善に効果的です。
エストロゲンに似た作用を持ったイソフラボンも同様に、骨粗しょう症の予防・改善に効果が期待できます。
その他のエストロゲンの働き
更年期障害の軽減、骨粗しょう症の予防・改善も含め、エストロゲンは次の働きを持っています。
- 肌の新陳代謝を促進して肌を健康で美しく保つ
- 髪のツヤやハリを保つ
- 卵巣内の卵胞を成熟させて卵子を育て、排卵に備える
- 子宮内膜を厚くして受精卵の着床を準備する
- 乳房・性器・皮下脂肪を発育させ、丸みのある女性らしい体を作る
- コレステロールの増加を抑制して動脈硬化を防ぐ
- 骨を丈夫にする
- 周期的な生理を起こす
- 自律神経を安定させる
- 膣や膀胱の伸縮性や自浄作用を高める
イソフラボンが不足・欠乏すると起こる症状
イソフラボンは、エストロゲンの不足を補う働きを持っていますが、イソフラボンが不足・欠乏することによって起こる症状などは報告されておらず、イソフラボン自体は必須の栄養素に含まれていません。
イソフラボンを過剰摂取すると起こる症状
イソフラボンは過剰摂取しても体外に排出されるため、食品から摂取する程度の量であれば基本的にリスクは低いとされています。
ただし、そのほかのポリフェノール(フラボノイド)と異なり、エストロゲンに似た働きを持つことから、過剰摂取によってホルモンバランスを崩してしまう可能性や、それによる副作用などが懸念され、2006年に厚生労働省よりイソフラボンの過剰摂取に対して警告が出されました。
なお、過剰摂取による具体的な症状は報告されておらず、リスクが懸念されているのも特定保健用食品やサプリメントなどの、一部のイソフラボン添加食品を大量に摂取した場合のみです。
具体的な摂取目安量は次項で紹介しますが、一般的な食品を摂取する限り、食事からイソフラボンを過剰摂取することは基本的にないと考えてよいでしょう。
イソフラボンの1日の摂取目安量
イソフラボンの1日の摂取目安量は40~50mg、上限値は70~75mgです。
なおこの上限値について農林水産省および食品安全委員会は、
この量を毎日欠かさず長期間摂取する場合の平均値としての上限値であること、また、大豆食品からの摂取量がこの上限値を超えることにより、直ちに、健康被害に結びつくというものではないことを強調しておく
出典:大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A|農林水産省
としています。
たとえば1日目に100mg、2日目も100mgのイソフラボンを摂取した場合、平均摂取量は100mgです。
ところが3日目に10mgしか摂取しなかった場合、その平均値は200÷3=約67mgとなります。
つまり、摂取目安上限を超える日が数日あったとしても、平均して上限値以下であれば問題はなく、仮に上限を超える日が数日続いたとしても、それによってただちに何らかのリスクがある数値ではないということです。
またこれに加えて、食品安全委員会は「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」の中で、
日常の食生活に加えて、特定保健用食品により摂取する大豆イソフラボンの摂取量が、大豆イソフラボンアグリコンとして30 mg/日の範囲に収まるように適切にコントロールを行うことができるのであれば、安全性上の問題はないものと考えられる
出典:大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の 安全性評価の基本的な考え方|食品安全委員会
としています。
こちらも摂取量目安の上限値と同様に、この量を毎日欠かさず摂取した場合の上限値であり、かつただちに健康被害につながることのない、かなり慎重な値であることも明記されています。
これに対して、平成14年国民栄養調査(厚生労働省)による、大豆・大豆製品・醤油・みそなどの食品摂取量から試算した大豆イソフラボン(アグリコン)の平均摂取量は、16~22mg/日であり、上限値はおろか上乗せ摂取目安である30mg/日にも足りていません。
以上のことから、食事によりイソフラボンを摂取するうえでは、上限値を気にしすぎずバランスのよい食生活を心がけることが推奨されます。
ただし、妊婦及び胎児、乳幼児、小児については科学的に十分なデータがないことなどから、大豆イソフラボンを特定保健用食品として日常的な食生活に上乗せして摂取することは推奨できません。
また、特定保健用食品以外に、個別の健康食品として大豆イソフラボンのサプリメントなどがありますが、これに関して食品安全委員会では安全性の評価を行っていません。
過剰摂取にならないようイソフラボンの摂取量を抑えたい場合は、サプリメントによる摂取を控えるべきでしょう。
イソフラボンを多く含む食品
イソフラボンを多く含む食品について、国内の研究データと海外の研究データをそれぞれ紹介します。
国内におけるイソフラボン含有量の調査結果
食品名(検体数) | 含有量(mg) | 平均含有量(mg) |
大豆(11検体) | 88.3〜207.7 | 140.4 |
煮大豆(3検体) | 69.0〜74.7 | 72.1 |
揚げ大豆(1検体) | 200.7 | 200.7 |
黄粉(2検体) | 211.1〜321.4 | 266.2 |
豆腐(4検体) | 17.1〜24.3 | 20.3 |
凍り豆腐(1検体) | 88.5 | 88.5 |
おから(1検体) | 10.5 | 10.5 |
金山寺みそ(1検体) | 12.8 | 12.8 |
油揚げ類(3検体) | 28.8〜53.4 | 39.2 |
納豆(2検体) | 65.6〜81.3 | 73.5 |
味噌(8検体) | 12.8〜81.4 | 49.7 |
醤油(8検体) | 0.7〜1.2 | 0.9 |
豆乳(3検体) | 7.6〜59.4 | 24.8 |
海外におけるイソフラボン含有量の調査結果
食品 | サービング(1食分) | 全イソフラボン(mg) | ダイゼイン(mg) | ゲニステイン(mg) |
大豆タンパク質濃縮物 | 3.5オンス(約100g) | 94.6 | 38.2 | 52.8 |
大豆タンパク質濃縮物(アルコール洗浄) | 3.5オンス(約100g) | 11.5 | 5.8 | 5.3 |
ミソ | ½カップ(約110g) | 57 | 22.6 | 32 |
茹でた大豆 | ½カップ(約65g) | 56 | 26.5 | 26.9 |
テンペ | 3オンス(約85g) | 51.5 | 19.3 | 30.7 |
大豆(乾燥焼き) | 1オンス(約30g) | 41.6 | 17.4 | 21.2 |
豆乳 | 1カップ(約210g) | 6.2 | 2.4 | 3.7 |
豆腐ヨーグルト | ½カップ(約100g) | 21.3 | 7.5 | 12.3 |
豆腐 | 3オンス(約85g) | 19.2 | 8.1 | 10.1 |
大豆ホットドッグ | 1つ | 11 | 3 | 6 |
大豆ソーセージ | 3本 | 10.8 | 3.3 | 6.9 |
大豆チーズ、モッツァレッラ | 1オンス(約30g) | 1.9 | 0.5 | 0.6 |
出典:大豆イソフラボン|Oregon State University
イソフラボンを効率よく摂取する方法
最後に、イソフラボンを無駄なく効率よく摂取する方法を紹介します。
イソフラボンは加熱による損失がほとんどないため、加熱調理との相性がよいと言えます。
一方で、煮込む時間が長い調理では煮汁に溶け出してしまうため、より効率的に摂取するなら短時間で調理するか、煮汁ごと食べられる料理が最適です。
また、イソフラボン組成の加熱による変化や加工条件による変化について調査した研究によると、脱脂工程を経た低脂肪豆乳は、通常の豆乳よりイソフラボンが減少することも報告されています。
脱脂に限らず、工程によって含有イソフラボンが大きく変わる可能性もありますので、イソフラボンの摂取を目的として豆乳を飲む際は、無調整豆乳を選ぶとよいでしょう。
参考文献
» イソフラボン|栄養素の説明|栄養療法~薬だけに頼らない根本治療をめざす、心と身体に優しい治療法。|オーソモレキュラー栄養医学研究所
大豆イソフラボン|Oregon State University