グルタミン酸の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法

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栄養素

グルタミン酸の基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。

グルタミン酸とは

グルタミン酸(グルタミンさん、glutamic acid, glutamate)とは、非必須アミノ酸の一種です。体内でアミノ酸の生成に関わり、神経伝達物質の材料となるセリンや、エネルギー源として利用されるアスパラギン酸を生み出します。リラックス作用のあるGABAの材料にもなる栄養素です。

グルタミン酸は海藻類や野菜などの身近な食品に多く含まれており、体内でも合成できるので欠乏する心配はほとんどありません。また、うま味成分として化学調味料にも含まれますます。化学調味料に配合されているのは、ナトリウムと結合したグルタミン酸ナトリウムです。

グルタミン酸・グルタミン・グリシンの違い

グルタミン酸と類似する栄養素・成分との違いを解説します。

グルタミン

グルタミン(glutamine)は、グルタミン酸と同じく非必須アミノ酸の一種です。体内で合成できますが、運動でエネルギーを消費したり、強いストレスがかかったりすると大量に消費されてしまいます。そのため準必須アミノ酸にも分類され、食品からの摂取が重要な栄養素です。

特に筋肉を強化する作用が注目されており、トレーニング前後に摂取すると効果的と言われています。筋トレの補助としてグルタミンサプリメントを摂取したい場合は、L-グルタミンが配合されているものを選ぶとよいでしょう。

ただしグルタミンの過剰摂取は肝臓にダメージを与えるため、1日の摂取量目安は40g程度です。サプリメントを利用する場合は過剰摂取に気をつけましょう。

グルタミンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA

グリシン

グリシン(glycine)もグルタミン酸と同じく非必須アミノ酸です。体内でセリンやスレオニンなどのアミノ酸から合成されます。食品にも多く含まれており、エビやカニなどの甲殻類、鶏の軟骨、豚足などに豊富に含まれています。

グリシンはタンパク質を構成するアミノ酸の一種で、コラーゲンの合成にも関わります。また、高い抗酸化作用を持つことから、美容効果が期待される栄養素です。

グルタミン酸の効果・働き

グルタミン酸の効果・効能について解説します。

アンモニアの解毒作用

グルタミン酸には、脳内のアンモニアを無毒化する作用があります。アンモニアは体内に溜まると、神経伝達物質の働きを阻害してしまう物質です。

このアンモニアとグルタミン酸が結合すると、体内でグルタミンが合成されます。その作用に伴い、尿の排泄も促されるので、グルタミン酸には利尿作用があると考えられています。

脳機能の活性化

グルタミン酸は興奮系の伝達物質です。脳機能を活性させるため、認知症予防や学習能力アップに役立つと考えられています。加えて脳に悪影響を与えるアンモニアを解毒するので、さらに脳の働きを促進するでしょう。

実際にグルタミン酸を継続摂取した高齢患者では、認知スコアや言葉による意思疎通の向上が確認されました。ただし過剰摂取は脳の細胞にダメージを与えるリスクがあるため、注意が必要です。

GABAの生成

グルタミン酸は、神経伝達物質であるGABA(γ-アミノ酪酸)の材料となる物質です。GABAは、体のリラックス作用や睡眠の質を向上させる働きがあります。

GABAの詳しい効果は以下の記事も参考にしてください。

GABAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA

脂肪の蓄積を抑制

グルタミン酸には肥満を抑制する作用があります。

研究では高脂肪食をエサとするラットにグルタミン酸を与え続けたところ、普通の飲料水を摂取させたグループに比べ皮下脂肪量や内臓脂肪量などが低下しました。グルタミン酸が消化の促進を手助けしているためだと考えられます。

また、生後3週齢のラットにグルタミン酸配合の粉ミルクを摂取させた実験では、小児肥満が抑制されました。グルタミン酸が配合されていない粉ミルクを摂取したグループは、いずれも体重の増加が見られたと言います。

消化促進作用

グルタミン酸は消化をスムーズにする働きが期待されています。研究では胃粘膜にあるグルタミン酸の受容体には、胃酸や消化酵素を抑制するホルモンを生み出す細胞が豊富に含まれていることがわかりました。グルタミン酸を摂取するとこのホルモンの分泌が抑制され、胃液や消化酵素が増えると考えられます。

また、グルタミン酸には胃腸の粘膜を保護する作用もあります。グルタミン酸を日常的に摂取することで、疾患予防や胃腸の健康にも役立つでしょう。

血圧低下作用

グルタミン酸の継続摂取により、血圧低下作用が期待されています。

日本・中国・イギリス・アメリカを対象とした研究では、グルタミン酸の摂取量が多いほど収縮期血圧、拡張期血圧の値が低くなる結果となりました。具体的には、グルタミン酸の摂取割合が4.72%高いと、収縮期血圧が1.5~2.5mmHg、拡張期血圧が1.0~1.6mmHgほど低くなったとのことです。

美容効果

アミノ酸は肌の天然保湿成分で、肌の天然保湿因子の約半分はグルタミン酸が関わっていると考えられています。

資生堂の研究では肌に含まれるD-グルタミン酸が肌のバリア機能を高めることがわかりました。ただし食品に多く含まれるのはD-グルタミン酸ではなく、L-グルタミン酸と言われています。美肌機能を求めるならば、D-グルタミン酸が含まれる化粧品を使うのがよいでしょう。

また、納豆に含まれるポリグルタミン酸も美容に役立つと考えられています。ポリグルタミン酸はグルタミン酸が複数結合してできた物質です。納豆のネバネバ成分のもとで、高い保湿性が期待されています。

グルタミン酸が不足・欠乏すると起こる症状

グルタミン酸は脳の活性化やアンモニアの解毒作用があるので、不足・欠乏すると脳機能低下や排尿阻害が起きると考えられます。ただし身近な食品に含まれる成分なので、基本的に欠乏する危険性はないと言われています。

グルタミン酸を過剰摂取すると起こる副作用

グルタミン酸を過剰摂取すると起こる症状は次の通りです。

  • 神経症
  • 幻覚
  • 手足の痺れ
  • 睡眠障害
  • てんかん発作

グルタミン酸は神経伝達物質の一種なので、上記のような症状が出ると考えられます。

また、化学調味料に含まれるグルタミン酸ナトリウムを過剰摂取すると、手足の痺れのほか頭痛・のぼせなどの症状が起きると言われています。しかし、ほとんどが腸管で代謝されてしまうので、通常の摂取量では問題ありません。

グルタミン酸の1日の摂取目安量

グルタミン酸の1日の摂取目安量は、厚生労働省で明確に定められていません。多くの食品に含まれている栄養素であり、通常の食事で摂り過ぎることがほとんどないため、健康被害の心配は少ないと言えます。

ただしサプリメントで摂取する場合は、過剰摂取の危険性が高まるため気を付けましょう。製品ごとの摂取量を守って摂取してください。

グルタミン酸を多く含む食品

一般的にグルタミン酸は昆布をはじめとした海藻類、野菜などに多く含まれていると言われています。ここではグルタミン酸を多く含む食品を、全食品・魚介類・海藻類・肉類・野菜の順で、それぞれランキング形式で紹介します。

全食品中でグルタミン酸を多く含む食品ランキング

順位食品名成分量100gあたりmg
1こむぎ [その他] 小麦たんぱく 粉末状29000
2<牛乳及び乳製品> (その他) カゼイン19000
3だいず [その他] 大豆たんぱく 分離大豆たんぱく 塩分無調整タイプ17000
4<魚類> とびうお 煮干し12000
5こむぎ [ふ類] 焼きふ 釜焼きふ11000
6だいず [豆腐・油揚げ類] 凍り豆腐 乾11000
7だいず [その他] 湯葉 干し 乾11000
8<魚類> とびうお 焼き干し10000
9<畜肉類> ぶた [その他] ゼラチン10000
10<魚類> (かつお類) 加工品 かつお節9900
出典:日本食品標準成分表2020年版(七訂)

全食品で比較すると、小麦や大豆などのグルタミン酸含有量が高いことがわかります。そのほか、魚介類や肉類にも豊富に含まれています。

グルタミン酸を多く含む魚介類ランキング

順位食品名成分量100gあたりmg
1<魚類> とびうお 煮干し12000
2<魚類> とびうお 焼き干し10000
3<魚類> (かつお類) 加工品 かつお節9900
4<魚類> (かつお類) 加工品 削り節9900
5<魚類> (いわし類) しらす干し 半乾燥品5600
6<魚類> (かれい類) まこがれい 焼き4000
7<魚類> (さば類) ごまさば 焼き4000
8<魚類> (あじ類) まるあじ 焼き3900
9<魚類> (さけ・ます類) しろさけ 焼き3900
10<魚類> (たら類) すけとうだら たらこ 生3900
出典:日本食品標準成分表2020年版(七訂)

魚類でもっとも多く含まれるのが、とびうおの煮干しでした。そのほかかつお節にも多く含まれるので、出汁として活用するとグルタミン酸を手軽に摂取できるでしょう。

グルタミン酸を多く含む海藻類ランキング

順位食品名成分量100gあたりmg
1あまのり 味付けのり7100
2あまのり 焼きのり4600
3ひとえぐさ つくだ煮4400
4あまのり ほしのり4300
5あおのり 素干し3100
6あおさ 素干し2300
7わかめ カットわかめ 乾2000
8(こんぶ類) つくだ煮1700
9(こんぶ類) まこんぶ 素干し 乾1500
10ひじき ほしひじき ステンレス釜 乾1300
出典:日本食品標準成分表2020年版(七訂)

魚介類に比べると全体的に含有量は少ないですが、のりやわかめ、昆布をはじめとした海藻類にもグルタミン酸は多く含まれています。

グルタミン酸を多く含む肉類ランキング

順位食品名成分量100gあたりmg
1<畜肉類> ぶた [その他] ゼラチン10000
2<畜肉類> うし [加工品] ビーフジャーキー9200
3<畜肉類> ぶた [大型種肉] ヒレ 赤肉 焼き5900
4<鳥肉類> にわとり [若どり・主品目] むね 皮なし 焼き5800
5<鳥肉類> にわとり [若どり・副品目] ささみ ソテー5600
6<鳥肉類> にわとり [若どり・主品目] むね 皮つき 焼き5100
7<鳥肉類> にわとり [若どり・副品目] ささみ 焼き4900
8<畜肉類> うし [輸入牛肉] もも 皮下脂肪なし ゆで4800
9<畜肉類> ぶた [大型種肉] もも 皮下脂肪なし 焼き4800
10<畜肉類> ぶた [ソーセージ類] ドライソーセージ4800
出典:日本食品標準成分表2020年版(七訂)

豚のゼラチンやビーフジャーキーに比べ、鶏のむね肉やささみなどであれば、日常的に摂取しやすいでしょう。

グルタミン酸を多く含む野菜ランキング

順位食品名成分量100gあたりmg
1(トマト類) ドライトマト4500
2えだまめ 生2100
3そらまめ 未熟豆 生1700
4かんぴょう 乾1200
5(にんにく類) にんにく りん茎 生1000
6(えんどう類) グリンピース 冷凍 油いため920
7ブロッコリー 花序 生910
8(えんどう類) グリンピース 冷凍 ゆで900
9(えんどう類) グリンピース 生880
10(えんどう類) グリンピース 冷凍860
出典:日本食品標準成分表2020年版(七訂)

ほかの食品類に比べて含有量は少なめですが、野菜にもグルタミン酸は含まれます。ドライトマトやグリンピースなら普段の食事にも取り入れやすいでしょう。

グルタミン酸を効率よく摂取する方法

グルタミン酸は水や熱に弱い性質があります。そのため、生のまま食べる方法がもっともおすすめです。ただし肉類のように生で食べられない食品に関しては、煮汁ごと摂取できる汁物にするとよいでしょう。

水に溶けやすい性質を活かせば、グルタミン酸を余すことなく効率よく摂取できます。またはグルタミン酸の多いかつお節や昆布で出汁をとって味噌汁にする方法もあります。

参考文献

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