ぜんまいの栄養と効果効能・調理法・保存法

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osmund

ぜんまいの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、ぜんまいに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

ぜんまいとは

ぜんまいとは、ゼンマイ科ゼンマイ属に属するシダ植物の仲間です。山菜の一種で、若芽を食します。渦を巻いたような特徴的な形をしており、わらびやこごみなどによく似ていますが、綿毛の有無で見分けることができます。わらびやこごみには、ぜんまいのような綿毛がありません。

ぜんまいは日本全国の山に自生しており、古くから親しまれてきた食品です。煮物をはじめ、ナムルや炊き込みご飯などの具材に使われます。

細かく切って使うのが一般的ですが、東北地方や新潟県では一本のままぜんまいを煮込む「一本煮」や「竿煮」などの郷土料理が存在します。ぜんまいの独特な形が古銭に似ていたため、縁起を担いでお正月に「一本煮」を食べる地域もあるようです。

山に自生するぜんまいは、3月から6月にかけて採取され、4月から5月に旬を迎えます。九州地方では4月頃に旬を迎え、気温の変化に伴い東日本側の地域に順に旬が訪れます。一方、東北地方では畑栽培されているぜんまいもあり、とくに山形と秋田が収穫量の多い地域です。

食用だけでなく、東北地方ではぜんまいの綿を古くから織物繊維として活用していました。採れる量が少ないため、ぜんまいを使った織物は大変貴重とされています。

ぜんまいの種類

ぜんまいはひとつの株に「男ぜんまい」と「女ぜんまい」が存在し、見た目に違いがあります。

男ぜんまいは胞子をつける胞子葉です。葉の膨らみが大きく、表面に胞子によるザラつきが見られます。一方、女ぜんまいは光合成を盛んに行い、葉をつける栄養葉です。茎が太く、葉の表面がツルツルとしています。

山に自生するぜんまいを採るときに、女ぜんまいを優先して収穫するのは、次の年に子孫を残しやすくするためです。また、女ぜんまいもすべて取り切らずに残すことが、山菜採りのマナーです。

加工方法による違い

スーパーで市販されているぜんまいには、水煮ぜんまいと干しぜんまいがあります。

水煮ぜんまいはアク抜きを行ない、水で茹でた状態のぜんまいです。下茹で済みなのでやわらかく、そのまま使うことができます。使い勝手の良い加工品と言えるでしょう。

一方、干しぜんまいはぜんまいを乾燥させた加工品です。水で戻す手間がありますが、水煮ぜんまいに比べ食感と風味が優れ、素材の良さを感じられます。アク抜きされていないタイプの製品もあるので、調理に使う際は注意しましょう。

ぜんまいに含まれる成分・栄養素

ぜんまい100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

ぜんまいには、カリウムをはじめとしたミネラル、ビタミンB1・ビタミンB2などのビタミンが多く含まれています。また、体内でビタミンAと同様の働きをするβ-カロテンも豊富です。

食 品 名単位生ぜんまい 若芽 生生ぜんまい 若芽 ゆで干しぜんまい 干し若芽 乾干しぜんまい 干し若芽 ゆで
廃 棄 率%15000
エネルギーkJ111721161101
kcal271727725
水 分g90.994.28.591.2
タンパク質アミノ酸組成によるタンパク質g-1.3-0.8-10.8-1.3
タンパク質g1.71.114.61.7
脂質脂肪酸のトリアシルグリセロール当量g----
コレステロールmg0000
脂質g0.10.40.60.1
炭水化物利用可能炭水化物(単糖当量)g----
g
利用可能炭水化物(質量計)g----
差引き法による利用可能炭水化物g3.20.939.82
****
食物繊維総量g3.83.534.85.2
糖アルコールg----
炭水化物g6.64.170.86.8
有機酸g----
灰分g0.70.25.50.2
無機質ナトリウムmg22252
カリウムmg34038220019
カルシウムmg101915020
マグネシウムmg1791409
リンmg372020016
mg0.60.37.70.4
亜鉛mg0.50.44.60.3
mg0.150.11.20.14
マンガンmg0.40.223.340.2
ヨウ素μg----
セレンμg----
クロムμg----
モリブデンμg----
ビ タ ミ ンレチノール(ビタミンA)μg0000
α|カロテンμg4221290
β|カロテンμg50042068015
β|クリプトキサンチンμg149370
β|カロテン当量μg53043071015
レチノール活性当量μg4436591
ビタミンDμg0000
α-トコフェロールmg0.60.51.40.2
β-トコフェロールmgTr0Tr0
γ-トコフェロールmg0.10.10.40
δ-トコフェロールmg0000
ビタミンKμg343412020
ビタミンB1mg0.020.010.10
ビタミンB2mg0.090.050.410.01
ナイアシンmg1.40.780
ナイアシン当量mg-1.8-0.9-11-0.4
ビタミンB6mg0.0500.020
ビタミンB12μg0000
葉 酸μg21059991
パントテン酸mg0.640.123.10
ビ オ チ ンμg----
ビタミンCmg24200
アルコールg----
食塩相当量g000.10
備 考廃棄部位: 株元及び裸葉硝酸イオン: 0 g株元及び裸葉を除いたものゆでた後水冷し、水切りしたもの硝酸イオン: 0 g硝酸イオン: 0 g硝酸イオン: 0 g
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

ぜんまいの効果・効能

ぜんまいに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

カリウムで高血圧症予防

カリウムは人体の細胞内に多く存在する成分です。細胞内液の浸透圧を調整する過程で、ナトリウム(塩分)の排出を行ないます。

ナトリウムは過剰摂取するとむくみのほか、高血圧症やがんの発生リスクを高める成分です。とくに高血圧症の要因の多くは塩分の摂り過ぎと言われています。高血圧症を予防するにはカリウムの積極的な摂取が望ましいです。

β−カロテンの抗酸化作用

β-カロテンは色素成分の一種で、高い抗酸化作用が期待できます。体内の活性酸素を取り除いたり、活性酸素が発生すること自体を抑えたりする働きがあります。

活性酸素は体内に過剰発生すると老化の進行やがんの発生につながる物質です。過酸化脂質を増やし、動脈硬化を進行させる要因でもあります。健康維持のためにも抗酸化作用の高い食品を取り入れるのが重要でしょう。

β-カロテンが目の健康維持に

β-カロテンは体内でビタミンAと同様の働きをする栄養素です。ビタミンAは視機能に深く関わっているため、不足すると目の渇きや視力の低下につながる恐れがあります。とくにアルコールを大量に摂取すると、ビタミンAが多く消費されてしまいます。

目の健康が気になる人は、ビタミンAだけでなくβ‐カロテンが豊富な食品も摂取すると良いでしょう。

葉酸が胎児の神経管閉鎖障害を阻止

ぜんまいには、DNA合成に関わる葉酸が豊富に含まれています。葉酸は細胞増殖には重要な栄養素なので、とくに妊娠初期は通常より多めの摂取が推奨されています。欠乏すると胎児に神経管閉鎖障害が発生する確率が高まると言われているため、注意が必要です。

妊娠時期は、1日あたりの推奨摂取量+400µgを目安に摂取しましょう。

ビタミンB1とビタミンB2が代謝サポート

ぜんまいに含まれるビタミンB群は体内で補酵素として働き、必要な栄養素の代謝を助けてくれます。

ビタミンB1はブドウ糖の代謝を促進し、脳への栄養補給をサポート。疲労物質の排出作用もあり、疲労回復のビタミンと呼ばれています。また、ビタミンB2は糖質と脂質の代謝に関わる栄養素です。糖質や脂質をうまくエネルギー化することで肌荒れ防止に役立ちます。

ぜんまいの食べ方や注意点

ぜんまいの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

ぜんまいの選び方

旬時期に生のぜんまいを購入する場合は、茎が短めで太いものを選びましょう。茎が長いものは、食感や味が落ちている可能性があります。

また、ぜんまいの種類のうち食感が良いとされるのは女ぜんまいです。女ぜんまいは茎部分がやわらかいですが、男ぜんまいは芽が出るのが早い分硬めで食感があまり良くない傾向にあります。

ぜんまいのアク抜き方法

生のぜんまいはアクが強いので、必ずアク抜きしてから調理しましょう。

鍋にたっぷりの水を入れ沸騰させたら、重曹か木炭を入れます。食べやすい大きさに切ったぜんまいを入れたら、沸騰するまで煮立たせるだけです。その後は鍋から外し、落し蓋をした状態で冷めるのを待ちましょう。しばらく浸しておくと水が茶色に変わるので、水をその都度交換します。水の色が薄くなってきたら下処理完了です。

乾燥ぜんまいの戻し方

市販されている乾燥ぜんまいの場合は、戻しながらアク抜きします。鍋に水と乾燥ぜんまいを入れて沸騰させたら、火を止めてひと晩かけて冷まします。水を都度交換し、水がほぼ透明になったら調理に使いましょう。

戻し方は比較的簡単ですが時間がかかるため、調理に使いたいタイミングから逆算して下処理を始めると良いでしょう。

油で炒めるとβ-カロテンの吸収アップ

ぜんまいには脂溶性のβ-カロテンが多く含まれるので、油を使うと吸収効率がアップします。下処理したぜんまいを油で炒め、コチュジャン・砂糖・醤油などで味をつけるナムルがおすすめの調理法です。

また、ぜんまいの煮物を作るときも、はじめに油で炒めることで旨味と香ばしさが増します。

煮物の場合は煮過ぎず食感を残すようにすると、よりおいしく食べられるでしょう。

ぜんまいの保存方法

ぜんまいの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

水煮ぜんまいや干しぜんまいなどの加工品は、パッケージに記載されている保存方法に従って保存しましょう。ここでは生のぜんまいを長期保存する場合の方法を紹介します。

乾燥保存

乾燥保存は、綿毛を取り除いたぜんまいを天日干しする方法です。干している間は1日に数回手で揉み込むようにしてください。

しっかり乾燥させたら、保存袋に入れて冷暗所に保存しましょう。

水煮保存

水煮保存は、水で煮てから冷蔵保存する方法です。少し硬めに茹でて、茹で汁ごと瓶などに詰めます。茹で汁が少ないとカビが発生する要因となるので、瓶の口いっぱいまで茹で汁を入れるのがポイントです。

軽く蓋をしたあとに蒸し器で40分程度加熱して、瓶を真空状態にするとより長持ちします。さらに熱湯で30分程度加熱して殺菌すれば完成です。

瓶詰めしたものは冷蔵庫に入れて保存しましょう。

冷凍保存

冷凍保存する際は、まず塩を加えたたっぷりのお湯でぜんまいを硬めに茹でます。茹で上がったら冷水に入れ、水をよく切って小分けにラップにくるみましょう。

使うときは自然解凍してから調理に利用します。

参考文献

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