バターの栄養と効果効能・調理法・保存法

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butter

バターの定義や歴史、主要な種類などの基本情報、マーガリンとの違い、バターに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

バターとは

バター(butter)とは、牛乳に含まれる乳脂肪の脂肪粒を集め、練り上げた乳製品です。

乳及び乳製品の成分規格等に関する省令では、「バターとは、生乳・牛乳・特別牛乳・生水牛乳から得られた脂肪粒を練圧したもの」と定めています。さらに、「乳脂肪分80.0%以上・水分17.0%以下」であることが、成分規格の条件です。

乳脂肪分が少ないなどの理由から規格を満たさない製品は、バターではなく「乳等を主要原料とする食品」として扱われます。

バターの歴史は古く、一説には紀元前2000年ころのインドで、バターの原型が作られていたのではないかと考えられています。当時のバターは医薬品として使われており、食用になったのは紀元前60年ごろです。

日本にバターが来たのは奈良時代と考えられていますが、バター製造が始まったのは明治時代でした。昭和に入ると、一般家庭でもバターの消費量が増えましたが、高価であったため、より安価なマーガリンが普及し始めました。

現在では、国民1人当たりの年間消費量は、バター約0.6kgに対しマーガリン約1.0kgと、マーガリンの消費量のほうが多くなっています。

しかし、近年はマーガリンに含まれるトランス脂肪酸が健康を害すると話題になったことから、バターへの注目が集まっています。特に美容やダイエット効果を期待して、バターコーヒーも普及し始めました。高カロリーなイメージがありますが、ダイエットフードとして期待されています。

マーガリンとの違い

バターとマーガリンの違いは原料です。牛乳の脂肪分を使用するバターと異なり、マーガリンは植物性油脂を使用します。

マーガリンにはバターのような乳臭さはなく、さっぱりと軽い味わいが特徴です。

マーガリンの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

バターの種類

バターの種類は、製法や食塩添加の有無によって分類されています。味や香り、適した調理方法が異なります。

製法の違い(非発酵・発酵)

原料のクリームを乳酸菌によって発酵させたものを発酵バター、発酵させていないものを非発酵バターと呼びます。

乳酸発酵させることでバターのコクが増し、香り高いバターになります。ヨーロッパでは発酵バターが一般的なため、普段非発酵バターを食べている人は、初めて現地のバターを食べたときに驚くかもしれません。

日本では、乳酸発酵させない非発酵バターが主流で、独特のクセや香りが少なく食べやすいのが特徴です。牛乳の臭みが苦手な人は、非発酵バターを選ぶとよいでしょう。

食塩添加の違い(有塩・食塩不使用)

バターには、発酵・非発酵の違いだけでなく、食塩を添加しているか否かの違いもあります。食塩を1.5~2%程度添加したバターを有塩バター、食塩不使用のバターを無塩バターと呼びます。

有塩バターは、食塩により味がよくなり、パンに塗ったり料理に使ったりとそのまま使用できることが特徴です。

無塩バターは、食塩を後から添加していないという意味で「食塩不使用」と表記されます。無塩バターは塩気が少ないため、主にお菓子作りなどに使われます。なお、原料に塩分が含まれるため、無塩バターも完全な無塩ではありません。

グラスフェッドバター

グラスフェッドバターは、牧草のみを食べさせて育てた乳牛の乳から作ったバターです。

乳牛飼育では、牧草だけでなく穀類などの飼料を食べさせることが一般的なため、牧草のみで育った牛のバターは貴重とされています。そのため、日本で販売されているグラスフェッドバターは、100g500円~1,000円と、通常のバターよりも高価です。

グラスフェッドバターは、普通のバターと違いさっぱりとした味わいで、乳製品特有のしつこさが少ないのが特徴。コレステロールを下げる効果のある、不飽和脂肪酸も多く含まれるため、健康志向の人から注目されています。

バターとMCTオイルを入れるバターコーヒーには、一般的にグラスフェッドバターが使われます。

バターに含まれる成分・栄養素

バター100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

バターはカロリーが高く、太りやすいイメージがありますが、実際にパンに塗る1回量は10g程度。10gのバターに含まれるコレステロールは約20mg、カロリーは約70kcalです。

現在の日本人のコレステロール1日平均摂取量は、男性で340mg、女性は290mgとされており、バターに含まれるコレステロール量は多いとは言えません。

バターに含まれる飽和脂肪酸は、ステアリン酸や、パルミチン酸などの中鎖脂肪酸が多いのが特徴です。中鎖脂肪酸は、エネルギーとして消費されやすく、体内に貯蔵されにくいメリットがあります。

食 品 名単位無発酵バター 有塩バター無発酵バター 食塩不使用バター発酵バターマーガリン 家庭用 有塩
廃 棄 率%0000
エネルギーkJ2880296429382939
kcal700720713715
水 分g16.215.813.614.7
たんぱく質アミノ酸組成によるたんぱく質g0.5-0.4-0.50.4
たんぱく質g0.60.50.60.4
脂質脂肪酸のトリアシルグリセロール当量g74.57774.678.9
コレステロールmg2102202305
脂質g81838083.1
炭水化物利用可能炭水化物(単糖当量)g0.6-0.6-0.9
g*
利用可能炭水化物(質量計)g0.5-0.6-0.8
差引き法による利用可能炭水化物g6.86.39.94.7
***
食物繊維総量g0000
糖アルコールg----
炭水化物g0.20.24.40.5
有機酸g----
灰分g20.51.41.3
無機質ナトリウムmg75011510500
カリウムmg28222527
カルシウムmg15141214
マグネシウムmg2222
リンmg15181617
mg0.10.40.4Tr
亜鉛mg0.10.10.10.1
mgTr0.010.01Tr
マンガンmg00.010.01Tr
ヨウ素μg23-2
セレンμgTrTr-1
クロムμg10-0
モリブデンμg33-2
ビ タ ミ ンレチノール(ビタミンA)μg5007807600
α|カロテンμg21-12
β|カロテンμg190190-290
β|クリプトキサンチンμg63-0
β|カロテン当量μg190190180300
レチノール活性当量μg52080078025
ビタミンDμg0.60.70.711
α-トコフェロールmg1.51.41.315
β-トコフェロールmg0000.7
γ-トコフェロールmg0.10.10.137
δ-トコフェロールmg0006.2
ビタミンKμg17243053
ビタミンB1mg0.01000.01
ビタミンB2mg0.030.030.020.03
ナイアシンmg0Tr0Tr
ナイアシン当量mg0.1-0.1-0.10.1
ビタミンB6mgTrTr00
ビタミンB12μg0.10.10.10
葉 酸μgTr11Tr
パントテン酸mg0.060.080Tr
ビ オ チ ンμg0.40.3-0.2
ビタミンCmg0000
アルコールg----
食塩相当量g1.901.31.3
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

バターの効果・効能

バターに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

不飽和脂肪酸

脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。不飽和脂肪酸は、主に植物油脂に多く含まれる脂肪酸で、ヒトの体内では合成できないため、食べ物として摂取する必要があります。

バターに多く含まれるオレイン酸も不飽和脂肪酸の1種で、血圧を下げたり、悪玉コレステロールを抑制したりする働きを持つ栄養素です。血栓ができるのを予防し、動脈硬化を防ぐ効果があると考えられています。

ビタミンA

ビタミンAはレチノイドとも呼ばれ、レチノールとレチナール、レチノイン酸に分類されます。主成分はレチノールで、目や皮膚を健康に保つために必要な栄養素です。

レチノールが不足すると、視覚異常や皮膚の乾燥・角質化が起こると考えられており、ビタミンAを正しく摂取すると、美容効果を期待できます。

ビタミンAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ|NANIWA SUPLI MEDIA

ビタミンE

ビタミンEは、強い抗酸化作用のある栄養素です。脂肪酸が酸化されるのを防ぐことで、有害物質の増加を抑制する働きがあります。体内の酸化が亢進すると、老化が起こりやすくなるため、加齢が気になる人は、抗酸化作用のある食べ物を意識するとよいでしょう。

またビタミンEには、免疫力と高める効果もあります。皮膚を健康に保つことで、ウイルスや細菌が体内に侵入するのを防ぐ働きをします。

ビタミンEの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

発酵バターには整腸作用もある

発酵バターは、乳酸菌の発酵作用を利用して作られています。

乳酸菌とは、糖を栄養素として乳酸などの物質を作る細菌の総称で、ヨーグルトなどに含まれるビフィズス菌などが有名です。乳酸菌は、ヒトの腸内に住んでおり、腸内バランスを保つ働きをしています。

乳酸菌が多く含まれる発酵バターには、腸内の乳酸菌を増やして有害菌の増殖を抑制し、腸を活発にする整腸作用があります。

乳酸菌の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

バターの食べ方

バターの栄養素を損なわない調理方法・食べ方などを解説します。

発酵バターはおつまみにピッタリ

乳製品特有のクセや芳醇な香りが特徴の発酵バターは、おつまみにおすすめです。

発酵バターを塗ったガレットはもちろん、そのまま食べることもできます。日本では非発酵バターが主流のため、バターをそのまま食べる習慣はありませんが、ヨーロッパでは冷えたバターをそのまま食べることもあります。

そのまま食べるときは、レーズンが入った発酵バターがワインとよく合います。チーズのように、クセを楽しみたい大人の食べ方をしたい人にピッタリです。

バターコーヒーの作り方

美容やダイエット効果が注目されているバターコーヒーは、材料があれば自宅でも作れます。必要なものは、コーヒーとグラスフェッドバター、MCTオイル、そして泡だて器です。泡だて器は、100円ショップなどで販売されている簡易なもので構いません。

MCTオイルは、ココナッツなどに含まれる中鎖脂肪酸を主成分とする油です。中鎖脂肪酸はエネルギーに変換されやすい構造をしており、体内にたまりにくいため、ダイエット中でも摂取しやすい油として注目されています。

バターコーヒーは、コーヒー1杯に対し、グラスフェッドバター10gとMCTオイルを大さじ1杯加え、泡だて器で混ぜ合わせて作るのが一般的です。バターやMCTオイルの量は、お好みで変えてもよいでしょう。

パンやお菓子を作るときは無塩バターを選ぶ

パンやお菓子を作るときには、食塩不使用の無塩バターを使用しましょう。

パンを作る際は有塩バターで代用することも不可能ではありませんが、塩気が強くなってしまうためおすすめできません。お菓子作りでも同様で、どうしても有塩バターを使ってパンやお菓子を作る場合は、有塩バターを前提としたレシピを使用しましょう。

なお、食塩不使用のマーガリンで代用することは可能です。

バターの保存方法

バターの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

ラップやバターケースに入れて冷蔵庫で保存

バターは脂肪酸が多く含まれるため、酸化して風味が劣化しやすい食品です。また冷蔵庫内にある他の食材のにおいが移りやすいことにも注意しましょう。

バターを保存するときは、銀色の紙の上からラップで包み、冷蔵保存をします。さらに密閉容器に入れると、空気に触れにくくなるため、脂肪酸の酸化を予防できます。

近年はバターケースも注目されていて、バターを入れるだけでカットでき、そのまま密閉保存ができることが特徴です。デザインもよいため、バターの保存容器として人気があります。

冷凍保存するときは切り分けてから

バターは、冷凍庫で密閉容器に入れて保存すると、半年程度は風味や栄養素を損なうことなく保管できます。

ただし、バターは温度変化に弱いため、小分けにして冷凍しましょう。バターは温度変化によって、固体になったり液体になったりと形を変える性質があります。解凍と冷凍を繰り返すことは、固体成分と液体成分が分離してしまう原因となります。

分離したバターは、本来の滑らかさがなくなり風味も落ちるため、1回量に分けて冷凍保存しましょう。

食塩不使用バターは有塩バターより保存期間が短い

食塩不使用のバターは、有塩バターよりも保存期間が短いことに注意しましょう。

食品に添加される食塩は、保存性を高める役割も果たしています。有塩バターは食塩が入っているため、保存性が高いことが特徴です。

一方、食塩が添加されていない無塩バターは、有塩バターよりも傷みやすいデメリットがあります。

参考文献

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