ゆずの栄養と効果効能・調理法・保存法
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ゆずの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、ゆずに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
ゆずとは
ゆず(yuzu)は、ミカン科ミカン属の果実です。酸味が強いため、そのまま生で食べることはありませんが、果汁を搾ったり、果皮を薄くスライスしたりして料理の香り付けや飲料、お菓子に使われます。
冬至とゆず湯
日本では昔から、冬至にゆずを入れた湯につかる風習があります。これは爽やかなゆずの香りや含まれる成分が免疫力向上に効果があることに加え、「ゆず=ゆうずう(融通)が利く」「冬至=湯治」という語呂合わせから、運気を上げる儀式として広まったという説があります。
ゆずの原産地
ゆずの原産地は中国の長江上流で、日本には奈良時代に伝わりました。国内のおもな生産地は高知県、徳島県、愛媛県などです。
ゆずの旬
ゆずの旬は11月〜12月頃の冬の時期。ゆずは貯蔵性があるので、収穫されたあと春頃まで貯蔵され、店頭に並ぶ場合もあります。また、ゆずはハウス栽培もされており、春頃から青ゆずの出荷が始まります。
ゆずの品種・種類
ゆずは大きく「本柚子」「花柚(はなゆ)」「獅子柚子」の3種に分類されます。
本柚子
本柚子は、果実や果皮の香りが高い普通種のゆずです。徳島県木頭村で選抜された「山根系」、種と棘がなく、人気の品種「多田錦」などがあります。ママレードジャムや砂糖漬けなどに適しています。
花柚
花柚は、日本原産と言われているゆずの近縁種です。「花柚子」「一才ゆず」「常柚(とこゆ)」とも呼ばれます。果実は約50gで、本柚子に比べると小さめです。お吸い物や料理の香り付けなどに利用されます。
獅子柚子
獅子柚子は、名前に「柚子」とついていますが、文旦という柑橘類の一種です。「鬼柚子」「ジャガタラ柚」とも呼ばれます。500g~1kgの大きさ、黄色くゴツゴツした果皮が特徴で、生食に向かずジャムや砂糖漬けに加工されます。
ゆずとその他の柑橘類の違い
ゆずと似た柑橘類との違いについて解説します。
ゆずとかぼすの違い
ゆずの近縁種にかぼすがあります。かぼすは1個140gほどでテニスボールくらいの大きさです。若いうちに収穫されるため果皮は緑色ですが、追熟すると黄色になります。
黄色く熟れてから出荷されることの多いゆず果汁に比べて、かぼすは酸味が強い傾向にあります。
ゆずとすだちの違い
すだちもゆずの近縁種で、果汁は焼き魚の風味づけに使われます。大きさは1個40gほどでゴルフボールほどの大きさです。徳島県の特産品で、全体の生産量の約9割は徳島で生産されています。
かぼすと同様、すだちもゆずに比べると強い酸味があります。
ゆずとライムの違い
ゆずやすだち、かぼすと同様のミカン属ミカン科のライムは、熱帯や亜熱帯の地域で栽培される果実です。ライムはレモンに比べると香りは柔らかく、独特の苦味があるのが特徴。酸味の強さは柑橘類のなかでトップクラスです。
ゆずとレモンの違い
レモンはその他の柑橘類と比べて、透き通るような特徴的な香りがあります。かぼすやすだちと比べるとやや酸味は弱いものの、それらのような丸みがなく、口の中に入れたときにピリッとした酸味があるのが特徴です。
ゆずに含まれる成分・栄養素
ゆず100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | ゆず 果汁 生 | かぼす 果汁 生 | すだち 果汁 生 | ライム 果汁 生 | レモン 果汁 生 |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 21 | 25 | 20 | 27 | 26 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 88 | 105 | 84 | 113 | 109 |
水 分 | g/100 g | 92 | 90.7 | 92.5 | 89.8 | 90.5 |
たんぱく質 | g/100 g | 0.5 | 0.4 | 0.5 | 0.4 | 0.4 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | - | - | - | - | - |
脂 質 | g/100 g | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.2 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | - | - | - | - | -0.1 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | - | - | - | - | -0.02 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | - | - | - | - | -0.01 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | - | - | - | - | -0.03 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 7 | 8.5 | 6.6 | 9.3 | 8.6 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | - | - | - | -1.9 | -3.1 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.3 | 0.1 | 0.1 | 0.2 | Tr |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 0.1 | 0 | Tr | 0 | 0 |
食物繊維総量 | g/100 g | 0.4 | 0.1 | 0.1 | 0.2 | Tr |
灰 分 | g/100 g | 0.4 | 0.3 | 0.3 | 0.4 | 0.3 |
ナトリウム | mg/100 g | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 |
カリウム | mg/100 g | 210 | 140 | 140 | 160 | 100 |
カルシウム | mg/100 g | 20 | 7 | 16 | 16 | 7 |
マグネシウム | mg/100 g | 11 | 8 | 15 | 9 | 8 |
リン | mg/100 g | 11 | 8 | 11 | 16 | 9 |
鉄 | mg/100 g | 0.1 | 0.1 | 0.2 | 0.2 | 0.1 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.1 | Tr | 0.2 | 0.1 | 0.1 |
銅 | mg/100 g | 0.02 | 0.03 | 0.03 | 0.03 | 0.02 |
マンガン | mg/100 g | 0.1 | 0.04 | 0.05 | 0.01 | 0.03 |
ヨウ素 | µg/100 g | - | - | - | - | - |
セレン | µg/100 g | - | - | - | - | - |
クロム | µg/100 g | - | - | - | - | - |
モリブデン | µg/100 g | - | - | - | - | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 | - | 0 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 | - | 0 | 0 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 15 | 21 | - | 0 | 13 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 7 | 10 | Tr | 0 | 6 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 1 | 1 | 0 | 0 | 1 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.2 | 0.1 | 0.3 | 0.2 | 0.1 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.05 | 0.02 | 0.03 | 0.03 | 0.04 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.2 | 0.1 | 0.2 | 0.1 | 0.1 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.02 | 0.03 | 0.08 | 0.05 | 0.05 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 11 | 13 | 13 | 17 | 19 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.29 | 0.15 | 0.13 | 0.16 | 0.18 |
ビオチン | µg/100 g | - | - | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 40 | 42 | 40 | 33 | 50 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | - | - | - | - |
備考 | 全果に対する果汁分: 25 % | 全果に対する果汁分: 35 % | 全果に対する果汁分: 25 % | 全果に対する果汁分: 35 % | 全果に対する果汁分: 30 % |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
ゆずの効果・効能
ゆずに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
ビタミンC:免疫力の向上・美白効果・リラックス効果
ゆずにはビタミンCが豊富に含まれています。ビタミンCは水溶性のビタミンで、体内で合成することができないため食べ物などから摂取する必要があります。
ビタミンCには、強い抗酸化作用があり、免疫力を高めて感染症を予防したり、老化の原因となる活性酸素を除去して細胞を若々しく保ったりします。
コラーゲンの生成を助けて肌にハリをもたらす、シミやそばかすの原因となるメラニン色素の生成を抑制して、美白効果を助ける働きもあります。
また、ストレスをやわらげる副腎皮質ホルモンや幸せな気持ちを作り出すドーパミンなどの合成をサポートするため、ビタミンCを摂取することでリラックス効果が期待できます。
ペクチン:整腸作用・糖尿病や動脈硬化の予防
ゆずに含まれる「ペクチン」は水溶性食物繊維の一種で、ゆずの皮に多く含まれています。ペクチンには善玉菌を増殖させて腸内環境を整える作用があり、下痢や便秘を予防・改善する効果があります。
さらに、ペクチンには糖分の吸収を抑制する働きがあるため、インスリンの分泌が低下し、糖尿病を予防することができます。血液中の悪玉(LDL)コレスてロールを減少させる働きもあり、動脈硬化や高血圧の予防に役立ちます。
リモネン:血流改善・消化吸収を助ける
ゆずの香り成分である「リモネン」は、交感神経を活性化させて血流の流れを良くしたり、体内の代謝を促したり、吸い込むことでリラックス効果をもたらしたりします。
また、唾液の分泌を促す作用があるため、消化吸収を促し、食欲を増進させる効果も期待できます。
ヘスペリジン:冷えの改善
「ヘスペリジン」は、ゆずの皮やすじに多く含まれている栄養素で、ポリフェノールの一種です。
ヘスペリジンには末梢血管を強くして血流をよくする作用があり、冷えの改善に効果が期待できます。コラーゲンの生成に関わるビタミンCの働きを助ける働きもあるため、抹消血管を丈夫にする効果もあります。
ゆずの食べ方・使い方
ゆずの栄養素を損なわない食べ方や使い方を解説します。
ゆずの食べ方
ゆずの皮は爽やかな香りが強く、料理の風味づけに利用することができます。また、鮮やかな黄色をしているので料理を華やかにする使い方もあります。
また、絞ったゆずの果汁をオイルといっしょに混ぜてドレッシングとして楽しむこともできます。
ゆずの皮をスライスし、果肉から種を取り除いて砂糖といっしょに煮詰めればママレードジャムになります。果汁や果肉を使ったジュースやスムージーであれば、水に溶けやすい水溶性のビタミンCを無駄なく摂取することができます。
ゆずの使い方
ゆずは、湯船に浮かべて「ゆず湯」として使うこともできます。ゆずを丸ごとお湯に浮かべたり、半分にカットしてよりゆずの爽やかな香りを引き出したりと、さまざまな楽しみ方があります。
ゆずの皮には油分が含まれており、それが肌の水分の蒸発を防いで保湿効果をもたらします。また、果皮に含まれる「リモネン」という香り成分が交感神経を刺激し、血流を良くするため、体を温めてくれます。
ゆず湯の注意点
肌がデリケートな人は、リモネンに触れるとヒリヒリとしたかゆみを感じることがあります。刺激が不安な場合は、ゆずをカットせずに丸ごと使うようにしてください。
ゆずの保存方法
ゆずの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
常温保存:保存期間は約1週間
冬場であれば、常温保存が可能です。ゆずの水分が飛ばないように新聞紙に包んで、直射日光の当たらない場所で保存しましょう。常温保存での保存期間は1週間です。
冷蔵保存:保存期間は約2週間
丸ごと冷蔵保存する場合は新聞紙で包んでから、カットしたゆずは酸化しないように断面をラップで包み、冷蔵庫の野菜室に入れます。冷蔵保存での保存期間は約2週間です。
冷凍保存:保存期間約1ヶ月
すぐに使い切れない場合は、冷凍保存が良いでしょう。冷凍保存での保存期間はおよそ1ヵ月です。
部位別の保存方法
ゆずの部位別の保存方法を解説します。
ゆずの皮
まず、ぬるま湯でゆずを優しく洗います。水気をキッチンペーパーで拭き取ったら、皮を約2cm幅になるように剥きます。
この時、皮の裏側の白い繊維を残すように着ると、爽やかな香りを保つことができます。切り終わった皮は、重ならないようにラップに包み、冷凍用保存袋に入れて、冷凍庫で保存します。
ゆずの果汁
絞った果汁をアルミカップや製氷皿に流し入れ、冷凍庫で凍らせます。
ゆずの果肉
ゆずを半分に切って、切り口をぴったりとラップで包み、冷凍用保存袋に入れます。果肉を使うときは、自然解凍をします。